晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

佐伯泰英 『吉原裏同心(十七)夜桜』

2020-11-05 | 日本人作家 さ
今年も残すところ2か月を切りました。本当にいろいろありましたね。朝起きて、犬の散歩行って、朝食を食べて、仕事行って、夕飯食べて、風呂入って、寝て、これらの合い間合い間に本を読んで、休みの日に当ブログを更新する、こういった(当たり前の日常)を送れることに感謝しないとだめですね。

さて、吉原裏同心。チンタラチンタラと読んできて、ようやく十七巻目。

話は日本橋からスタート。橋の袂に、若い侍が立っています。その横には看板が。そこには「一丁(約109メートル)競争をして、自分に勝ったら金一両差し上げます。負けたら二分いただきます」と書かれてあり、横には「石州(石見国、現在の島根県西部)浪人、河原谷元八郎」と名前も。
人だかりの中から名乗りを上げる者が。(韋駄天の助造)こと飛脚の助造。
ひい、ふう、みい!で助造はスタートしますが、侍は遅れてようやく走り出します。助造が間もなくゴールという手前で侍が追いつき、そのまま抜き去って侍の勝ち。
これを見ていたのが、読売屋「世相あれこれ」の奉公人、代一。助造に話しかけると「あの侍、全力で走ってない」というのでビックリ。
代一は考えます。これは単なる銭稼ぎではなく、注目を浴びて話題になって誰かをおびき寄せようとしているのでは・・・

それじゃあ、というわけで、「謎の浪人と競走、五番勝負」という企画を吉原でやろうと提案すると、会所の四郎兵衛は「客寄せにいいね」と承諾。とはいえ、さすがに吉原の内でレースというわけにはいかず、見返り柳から五十間道~大門の手前までを使うことに。
この侍の素性を確かめようとしますが、石州の藩に確認するも「そんな名前のやつ知らん」と言われ、ある人の話によれば牢屋敷に入っていたという目撃情報が。
はたしてこの侍の目的は・・・
ちなみにこの五十間道、山谷堀沿いの日本堤から吉原大門までの通りなのですが、S字にくねくねと曲がっています。ここを将軍が鷹狩りに通るときに、直線だったら吉原が見えちゃうから道を曲げたそうな。

この話と同時進行的に、大籬の三浦屋の振袖新造(見習い、新人の遊女)の花邨が病気療養中、なのですが、じつは自分で醤油を飲んで具合が悪くなったというのです。肌も白いし美人なのですが、どうにも愛想が悪く客あしらいが下手とのこと。ところが、病気になって吉原の外に出るのも、足抜(脱走)の計画の一部だったのです・・・

今作は、今までの作品のような、吉原を狙う、あるいは誰かの命を狙うハッキリと分かる悪役が登場するにはするのですが、若干弱め。それよりも幹次郎と町奉行の(こちらは「表」同心)村崎とのやりとりや、身代わりの佐吉や竹松といった脇役のフォーカスといったような、「人間」をしっかりと描いているな、という印象を受けました。
コメント
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