やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

ブリュッヘン/18世紀オーケストラ演奏会

2005-09-12 | 古きテープから
1991.5.16 ウィーン・コンツェルトハウス大ホール
指揮:フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ
   Cl:エリック・フーブリッヒ
プログラム:①モーツァルト/交響曲第31番「パリ」
       ②  ”    /クラリネット協奏曲
       ③  ”    /交響曲第38番「プラーグ」
  
久しぶりに聴いた18世紀オーケストラの音は、やはり新鮮でした。
80年代の初め、ブリュッヘンのコンセプトのもとに設立された同オーケストラは
、10年後のこの演奏会のやうに、80年代末の録音等を経て、まとまりと自信を確保してゐたのかもしれない。

”当時の音と演奏を再現”と云っても、それを図る為のすべはなく(資料はあったとしても)、やはり、指揮者や奏者のコンセプトや力量に負ふ処が多いのは当たり前かもしれません。
さういふ意味では、やはり、ブリュッヘンといふ音楽家は、傑出してゐます。

メリハリの強い31番の演奏に続いて、クラリネット協奏曲が素晴しい。
オリジナル楽器なので、音量はやせて小さく、ふくよかさも足りないけれど、
ある意味、このK622(死の年、それも2カ月ほど前に出来た作品)によく云はれる、諦めや祈りのやうな演奏ではなく、きっちりと前を見定めた演奏です。
生きる、生きながらへる意志を伴った演奏です。

妻コンスタンチェは30歳を前に夫に先立たれ、狂はんばかりに嘆き悲しんだ後、
二人の息子と共にたくましく生きながらへてゆく。
小生は、このあたりの話に大変興味があり、調べてもゐるのですが、そのたくましさ(女性ゆゑ?)につながってゆくやうな、つよさが印象的な演奏です。

プログラム最後の38番の交響曲は、曲の最初から壮大な祝典的な演奏を目指してゐます。
《フィガロの結婚》を熱狂して受け入れてくれたプラハの人達への手持ち土産的なこの交響曲は、あるひは、こんな演奏がイメージに近いのかもしれません。

31歳の、得意満面のアマデウスの笑みが、拍手を待ち切れずに聞いてゐるプラハの聴衆の姿が浮かぶやうな演奏です。

そして、この頃を境に、峠を越へたやうに、アマデウスの生活も変はり、作風も野望から他の追随を許さない軽みの世界へ入ってゆくのですが、それが見へ隠れしてゐるやうな演奏でもあります。


      


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