やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

キース・ジャレットの思ひで

2008-07-14 | 音楽を


キース・ジャレットの『メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー』
といふアルバムを聴く。
ソロ・ピアノでのアルバムです。

彼が難病におちいり、その回復の兆しが見へたときに、録音されたものだといふ。
モノローグ、のやうな演奏であり、聴いてゐてつらくなるやうな印象です。
そこには、かつての豊饒の即興の世界もなく、さりとて、ビル・エヴァンスのやうな研ぎ澄まされた音もない。




キース・ジャレットを、感動をもって聴いたのは、20年以上前の頃。
在京のころ、原宿の同潤会アパートの一室でした。
当時、小生が勤めてゐた会社が、同潤会アパートの一室を改装し、モデルルームとして使ってゐました。
同期の社員がそこの責任者で、何かの用事で行った折り、「留守番をしてくれ。ヒマだったら、これを聴いてみないか、とてもいいよ」と置いていったCDが『ケルン・コンサート』でした。
カルテットによる『生と死の幻想 』はすでに聴いてゐたと思ふ。
けれど、当時流行りだった、白一色の部屋に響き渡るキースの硬質なピアノの音色と、まるで作曲されたやうな(余りに見事なので、さういふ話もある)即興の1時間余の演奏は、圧倒的な彼の天分を疑うすべもありませんでした。



5年ほどして、山形へゆくことにした、と決めた小生に、若い同僚たちが私的に小さな別れの会を開いてくれました。
日頃、コルトレーンを熱く語ってゐた小生に、ジャズを教へてもらったお礼です、と探してくれた、ジャズが流れるレストランでした。
楽しいひと時を過ごしたのち、「今、リクエストをしてきました。餞別、です」と同僚が自慢げに笑った。
店内に流れてきたのは、『クリフォード・ブラウンの思ひ出』だった。名盤『スティル・ライブ』の最後のトラック、です。



山形に移り住んでからも、「文化や情報は、やはり東京だ!」と叱咤激励する、私淑した先輩の言葉を信じて、色々なコンサートにもでかけました。確か、オーチャード・ホールだったと思ひますが、キース・ジャレットがオーケストラとモーツァルトのピアノ協奏曲を弾くのを聴きましたが、「何故、こんなことをするのだらう」といふ思ひだけでした。彼が、いち時期、クラシックにのめりこんでゐる時でした。透明な音色、達者な演奏、けれど、悲しいかな、聞こえてきたのはモーツァルトの音楽ではなく、キースの音楽でもありませんでした。


けれどすでに、このころからトリオの演奏は名盤の目白押しになって、小生も大体のCDは聴いてゐますが、やはり、最近は少し枯渇気味なのかしらん。
キースの、良い意味での恍惚としたインプロビゼイションの醍醐味は、いつ聴いても感動しますし、少し枯れたそれが出てくることをひそかに望んでゐます。




最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (KEN)
2008-07-16 00:26:00
はじめまして、千葉のKENといいます。
キースのこのアルバム自分も好きでよく聴いています、特に朝起きたときのBGM・・うなり声もなく、ほんとに純粋無垢な感じですね。
やはりキースはトリオがいいですね、一番よく聴くのがステイルライブ、一曲目のマイ・ファニーバレンタインは最高ですね。5月にキースのソロコンサートに東京芸術劇場にいってきました。
Unknown (神丘 晨)
2008-07-16 20:01:32
KEN 様

ご覧いただき、有難うござゐます。
さうですね、やはり、「スティル・ライブ」の全曲、まったく隙のない恍惚としたキースの演奏は、聴くたびに感激します。
おっしゃる通り、手垢にまみれたマイ・ファニーバレンタインを、ゾクゾクとした気持ちで聞かせたのは、彼くらゐでせう。

コメントを投稿