安住洋子の『しずり雪』(小学館)を読みました。
時代小説集です。
以前、山形市在住の評論家池上冬樹氏が朝日新聞で書評をしてゐたものです。
確かに、そこで指摘があったやうに、視点が時として動き、それぞれの作品が「誰の物語?」と戸惑ふところがあるのですが、読み終へた後の気持ちは、うっすらと初雪が降った景色のやうな、凛とした気持ちになります。
特に市井ものの作品が素晴しい。
作品集自体が連作的なベースがあり、さう大きな事件があるわけでもありませんが、穏やかな語り口と文章で、低い視線で紡がれる物語が気持ちのひだに入ってきます。
各地で連日のやうに起こる突発的な事故や事件(それも、短絡的な殺人が多い!)のなかで、ひとつやふたつ、重いものを胸に秘めながら生きてゆく主人公たちに共感した小説でした。
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