やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

Requiem - Mozart by Gardiner

2012-02-17 | 音楽を

先日、モーツァルトのレクヰエム(だけ)に関する本を読んでゐて、この、奇跡的に後世に残った名曲の成り立ちに感心してゐました(その奇跡具合は、地球が、金星と火星との中間に位置できたことで、奇跡の惑星になったことのやうでもあります)。

映画『アマデウス』でのシーンのやうに、モーツァルト自身が自ら作曲出来たのは50分ほどのこの曲の冒頭の5分ほどで、彼の死後、そのあとは、色々な人間が手を加はへ、補足し、なんとか完成させて作曲の依頼者の伯爵に無事渡される。(それは、なるほど、曲を聴いてゆくとわかりますが、曲が進むにつれて緊迫感が薄れてゆき、決してモーツァルトはこんな書き方はしない、といふところまで出てきます)

なぜか? 妻コンスタンツェが作曲料の残金を欲しかったからですが、それもやむを得ないことだったでせう。それゆゑ、ひたすら金が欲しかった彼女の執念で、この名曲は奇跡的に生き残ったともいへのでせう。

以前、コンスタンツェと二人の息子達のその後を調べたことがありますが、彼女は、必死になって生き抜き、二人の息子を育て、弟のクサヴァーは親の七光りほど光は出ず、兄のカールは自らの音楽才能にさっさと見切りをつけ、ミラノのいち役人として静かな生涯を閉じてゐます。

とまれ、そんなモーツァルトのレクヰエムですが、意外にこれはといふ演奏に出会へない。
妙に深刻ぶって重たいだけだったり、ソリストが勘違ひして朗々と歌ってしまったり、例へばカラヤン/ヴィーン・フィル盤のやうに旋律を驚異的な美しさで表現して、でも聞き終ったら何も残らないものだったりー。

そんななかで、素晴らしい演奏に出会ひました。
ガーディナー/イングリッシュ・バロック・ソロイスツ&モンティヴェルディ合唱団のライブの模様です。

Requiem - Mozart by Gardiner


ガーディナーが盛んに各地を公演してゐたころのものらしいですが、一種、手垢にまみれたモーツァルトのレクヰエムを、いま生まれたばかりのやうに新鮮に演奏してゐます。

フォン・オッターとバーバラ・ボニーといふソリストも嬉しい。
それにしても、バーバラ・ボニーの声はなんと清冽な声なのだらう!
合唱団も素晴らしく、声の濁りが微塵もなく、まるで浮遊するやうなガーディナーの解釈を見事に表現してゐる。

ガーディナーの『マタイ受難曲』も独特の名演でしたが、しばらく、彼の演奏にはまってしまひさうな快演でした。