やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

J.S.Bach: Matth-Passion - Leonhardt/LPB(1989Live)

2012-02-01 | 音楽を
ふたりのグスタフが好きでした。

グスタフ・マーラーと、グスタフ・レオンハルトー。

そのレオンハルトが死去されてゐたのを、うかつにも終ぞ知りませんでした。

いつも定期的に覗いてゐるオランダの方のサイトに、レオンハルト/ラ・プティット・バンドに依るマタイ受難曲のライブがアップされてゐて、素晴らしい! と喜んで、でもその静止画面に”レオンハルトの思ひ出にー”とあり、? と思って調べたら、1月の中旬に亡くなったさうです。

レオンハルトのバッハの演奏CDは、そのほとんどが書棚にあります。
ピリオド演奏の先駆者でもあり、その息苦しいまでの楷書の演奏は、でもしかし、バッハの演奏の最右翼ともいへるもので、まったく気楽に聴けるものではなく、思はず正座をしてしまふやうな剛なものです。

人里はなれた山中に、案内板やノボリや土産物店もなにもなく、忽然とその姿を見せる古刹の寺のやうな、圧倒的な存在感のバッハでした。(話は違ひますが、その逆が、最近世界文化遺産に登録された中尊寺でせうかー、二度と行きたくはない場所でした)

とまれ、1989年パリで演奏されたといふマタイ受難曲の全曲を聴きました。

J.S.Bach: Matth醇Bus-Passion - Leonhardt/LPB(1989Live)


CDのやうに、非常に小規模の演奏で、女声合唱は使はず少年合唱で、ソプラノも少年に依るボーイ・ソプラノでした。ライブなので、少年の声が不安定のままのところもありましたが、この原典主義の演奏を一気に聴き、何よりも驚いたのは、終局”涙ながらに跪き”の静謐さでした。

3時間前後のこの巨大な受難曲の大団円の終曲は、あるひは、人類にとって、生きるためのひとつのよりしろともいへる奇跡の音楽、です(と、小生は勝手に考へてゐます。そして、小生のメールの着信音もこの音楽です)。
それゆゑ、ドラマティックな演奏をする指揮者も多いのですが、このレオンハルトの、なんと清楚で、ひそやかに曲を終へる技の見事さかー!


それにしても、80歳を越えた高齢だったとはいへ、レオンハルトの死は、限りなく悲しいー。

合掌。