やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

『悼む人』

2010-03-11 | 本や言葉


天童荒太氏の『悼む人』を読みました。
傑作! です!!

ずゐぶんと以前、『家族狩り』を読んで衝撃を受け、『永遠の仔』にも感動し(TV化されたものも面白かったですが、原作の迫力には及ばなかった…)、その他の作品も読ませてもらって、この寡作の小説家にはいつも驚かされてゐる。

この『悼む人』も、いや彼の小説はいつもさうなのですが、読むのが辛くなるほど、激しくこころに迫り、作者の言葉が45度に胸に突き刺さる。
見ず知らずの人間の死を悼むために放浪の旅を続ける主人公の姿自体が異様ですが(この姿は、なぜか、遠藤周作の描く、優しく無力なイエスの姿にダブるー)、”亡くなった人の本質は、死に方ではなく、誰を愛し、誰に愛され、何をして人に感謝されたかにあるー”と語る姿には、不覚にも小生も自問してしまふ。

緻密な、まったく緻密な構成で作り上げられた小説ですが、ただ終章とエンディングには多少の疑問が残り、終章に関しては凛とした主人公が意外に簡単に女性を抱き、エンディングは予想されたものでした。

最近、『家族狩り』が大幅に改訂されて文庫になったさうです。近々、読み直してみたいものです。

公式サイトがありました。こちらです。