やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

『モーツァルト 天才の秘密』、を読む

2006-10-27 | 雑記

        


『モーツァルト 天才の秘密』(中野 雄著/文春新書)、を読みました。

おそらく、モーツァルトに関する書籍など、綺羅星のごとくありますが、
この新書の面白いところは、読んでゆくにつれて、
”激しく挑むモーツァルト”の姿が浮かび上がってくるところでした。

それは、父であり、絶大な師でもあったレオポルトに対してであり、、
コロレド大司教を含むザルツブルグの街に対してでもあり、
そして、モーツァルトの音楽に、時に熱狂し、時に冷たく突き放した
時代そのものでもあったやうです。

常に新作を要求され、作曲家といふよりは、演奏者としての比重が大きかった
当時の音楽状況のなかで、
「モーツァルトの音楽は、実戦に鍛えられた音楽である。
 一作一作に生活と人生がかかっていた。
 だから聴く者の心をうつ」(本書より)
といふ、音楽プロデューサーであるといふ著者の視点にはうなずくものがあります。

結局、旅先での母の死意外は何の成果ももたらさなかったマンハイム・パリへの旅行ののち、モーツァルトの音楽に”深み”が増してくるあたりは、
読んでゐて、切なくなると同時に、曲自体をすぐに聴きたくなります。


この種の本にある、推薦ディスクの紹介欄も、
著者の、感性にあふれた独自の解釈で推薦された盤が多く
(といふよりも、小生のディスクと共通してゐるので嬉しくなったのですが)
さういふ意味でも、手ごろなモーツァルト入門書にもなってゐます。