GYAOで、大島渚監督の『愛の亡霊』『愛のコリーダ』を初めて見る。
共に、30年ほど前の、評判、話題になった映画でしたが、
繋ぎ繋ぎで、何とか一ヶ月近くもかけて(こんなことが出来るのが、GYAOのよいところですが)見ましたが、
残念ながら、さして面白い映画ではありませんでした。
二つの映画とも、性愛のシーンは激しく(当時の日本で、メジャーなところでのこれらの描写、といふ意味では風穴をあけたのでせうが)、肝心の映画としてうったへてくる部分が余りにも少ない。
それは、2作品に共通していへるのですが、
肝心の主人公達の演技の下手さ、台詞の拙さ、
それを後押しするやうな、脇役や端役の人たちの素人ぽい演技が目を覆ふばかりのもので、
結果、映画としてのリアリティ、重さ、激しさ、切なさ等々を表現しきれてゐないもどかしさばかりが
見終はった後に残ってしまふだけでした。
ある意味、異常なまでの性愛癖にとりつかれた女の、
夜叉のやうな狂ほしさや、それゆゑの哀しさが、殆んど現はれてこない。
『愛のコリーダ』のクライマックス・シーンのあと、
おそらく、大島監督だらう声のエンディングのアナウンスが入ったところあたりは、
正直、殆んど興醒めに近いものでした。
大島渚ほどの監督が、こんな作品で納得してゐたのだらうか?