Garnetの部屋

たそがれGarnet の 独り言
(つれづれ日記より)

池波正太郎  「あるシネマディクトの旅」

2014年07月05日 | 読書
池波正太郎がこんなに楽しい本を残されているのは全く知らず、

自分の旅も思い出しつつ今回楽しみながら2度も読み返し

今更ながらフアンになってしまった。幼少の時から絵を描くことが

好きだったことは何かで読み、頭のすみにあったのですが、、。

フランス紀行文の執筆のため、いつも若い2人のお供を連れている。

** 池波正太郎 1923~1990 67才没(急性白血病)
昭和35年、「錯乱」  第43回直木賞
52年、「鬼平犯科帳」 第11回吉川栄治文学賞。
作品 「剣客商売」 「その男」 「真田太平記」等

鬼平はテレビで見たり見なかったり、主に食通の氏のエッセイ集が楽しく (確かに挿絵が必ずありましたね~) 「食卓の情景」 は愛読書の一つ。多分この本も愛読書となり手元に置くことになります。

「シネマディクト」??意味が分からないので調べてみました。辞書にはなく、相変わらずのインターネット情報によるとどうも、大好き、夢中、って感じらしい。 フランス映画を40何年も見続け、行かずしてフランスのすべてがわかるほどの
通、そんな昔からフランス映画の恵みをもろに受けることが出来た氏ならではの楽しい幾つかの文と挿絵をご紹介します。
                                           ***マルセイユの魚売り
** 「東京から約20時間の飛行でパリのドゴール空港へ着き、昼下がりの小雨の中をパリ市へ向かうと、車の中から、彼方の丘の上の、ビザンチンふうの白い寺院が目に入った。『あ、サクレ・クールが見えてきた』私がそういうと、同行のT君が、『パリは初めてなのに、よくわかりましたね』」、、、とこんな序文から始まっている。

私たち3姉妹で一週間のパリ滞在をしたとき、最初のホテルはとても思い出があった。ゆったりしたイギリスのコッツウオルズのホテルからパリに着いた途端、屋根裏部屋とも思えるパリのホテルの小さな窓から見える寺院らしき建物、夕焼けにきれいなシルエットとなって浮かんでいた。それがサクレ・クールでした。
左はその当時の私のつたない写真ですが、その時の情景と共にすんなりと熱中して読むことが出来た上記の本。クリックで近くのサクレ・クールです。
「さて、、、、。マルセイユの朝の旧港には魚介を売る屋台店が並び、その周りに人々がひしめいている。オノリーヌもいれば、パニスもセザールもいるというわけだ。その中に一人ジャン・ギャバンそっくり老人がいた。『ギャバンに似ている』と私がいい、、、、、おそらく、この老人マルセイユの人たちからも「ギャバンそっくり」と言われているに違いない」
                                           ***ニース
「ニースでは、空と海が同じ青さだ。空にも海があり、海にも空がある。 旧港を吹き抜けてくる、こころよい微風が花の匂いを運んできた。
二人はブイヤベースを食べたが、私はエビの何とか風に、グリーンサラダ。それに木苺の氷菓にした。
そのあとでコニャックとチーズ。」

     ***モンマルトの丘

「この日も昼る前から大朋さんの車で、あちこちとパリ市内をまわった。モンマルトの墓地へ行き、名優ルイ・ジューヴェの墓をカメラに収めたのだったが、近くに椿姫のモデルとなった高級娼婦の墓があって、女子学生らしい二人がノートを出してしきりに何かを書いている。
大朋さんが椿姫の墓を指し、『彼女をどう思うか?』と聞いたら、『すばらしい』二人とも、大きくうなずき、目を輝かせた。」
                                           ***パリの娼婦
「午後も遅くなってから、シャンゼリゼへ出た私は凱旋門の傍のデンマーク館へSとYを案内し、みがき立てたように清潔な食堂で、新鮮な魚介や、玉ねぎをそえたローストビーフをたのしんだ。
『どうだい。映画を観ようか』シャンゼリゼの大通りを渡りながら、私は言った。『いいですね。パリの映画館には一度も入っていないんですよ』 大通りをわたりきったところにある映画館に入ると「テレファン・バア」という暗黒街ものを上映していた。 フランソワ・ペリエだのレイモン・ペルグランだの、今や年老いたベテラン達が傍役で出演しており、フランス語がわからぬ私にも面白く観られた。」

(この絵は白黒で描かれていて、この娼婦の説明などはなく、映画の中身?なんでしょうか。とても美人で、雰囲気が満点。)
 


    ***アルハンブラ宮址
「私たちは、ほんのちょっと、スペインをのぞくことにした。 中略 旅行中のみやげものは、殆ど買わぬ私なのだが、スペインのロエベの皮製品には魅了されてしまい、黒のショルダーバッグや、やわらかい仔牛の皮の財布や小物を買った。ドイツ人のエンリック・ロエベが長い放浪を終えて、マドリッドに住み着いて創業したという。
それにしても、アルハンブラ宮が、これほどに美しいとは思わなかった。 2つの王宮や塔、望楼などの、サラセンとルネッサンスの形式が入りまじった建築を心ゆくまで鑑賞するとなったら、数日をグラナダへとどまらなくてはなるまい」

(2ページにわたって描かれている絵は、スキャンの加減で見にくいですが、ゴメンナサイ!
クリックで画像は見やすくなります)

まだまだ、楽しい絵や、わかり易くて面白い文、フランスワインの本拠地ブルゴーニュ、
ボーヌの話等、たくさん出てきました。思い出がいっぱいの同時進行、しかし残念ながら
スペインは10数年前、すっかり記憶は薄れていました。 
 ブルゴーニュ、ワイン畑

池波正太郎は生きていればまだ90才位、残念としか言えません。
偶然の本との出会いが自分を目覚めさせ、新たなフアンになってゆく。
比較的、時代物を読まなかった私ですが、現代ものに比べてずっと
奥深い人間性が味わい深く描かれている「藤沢周平」なんかも嬉しい
ですね。「鬼平犯科帳」読みたくなりました。
 
コメント (2)
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