トランプ政権が脱退を表明し、新型コロナウイルス対応でも批判が絶えないWHOの歴史と現状の問題点をフランス独自の視点から遠慮なく描いたドキュメンタリーです。現事務局長のテドロス氏の対抗馬であったデュストブラジ氏の話も交えてかなり批判的な内容ではありますが、国際機関というだけで崇めてしまう日本のメディアには作れない内容の濃さがありました。
以下に新型コロナについての新視点も加えて、歴史的経緯のまとめを印象に残った点を時系列で示して備忘録的に記します。
NHKの番組ホームページからの画像
- 東西冷戦下に弱小国連組織として設立されたWHOが天然痘撲滅で一躍脚光を浴びる。
WHOは1948年に国連の一機関として設立されますが、一部の国々しか参加せず、活動も盛んではありませんでしたが、東西の医師達が協力して天然痘を撲滅した事から政治から独立した、医師と科学者達による人類の健康に資する国際機関として注目されるようになった。
- アル・マータ宣言が却って先進国の反発を招く
1978年、当時ソ連の一部であったカザフスタン、アル・マータにおける総会で、西暦2000年までに全世界の人々を健康にする(医療と公衆衛生を平等に展開する)事を目標に掲げ、WHOの意義が高揚されたが、かえって米英などの先進国から、後進国が平等に発展することへの反発が出る結果に。
- 対AIDS対策では消極的であり後手に回る
1979年に未知のウイルスであるHIVが同性愛者やアフリカで蔓延したが、WHOは道徳的問題を理由に積極的に動かず、結局アフリカに蔓延。
1990年UNAIDSというWHOとは別の機関が作られて対応。
- 予算が足りず、民間財団の寄付に頼る運営
中小国家も大国と同じ1票という状況を嫌がり、大国は負担金をカットして結局民間の財団による「使途限定」というひも付きの寄付金頼みの運営になる(下図)。運営方針はワクチンなどの偏った内容になる。
Wikiに提示されたWHOの出資者 中国は10指にも入っていないが絶大な影響力がある。
GAVIアライアンスは「予防接種のための世界同盟」の事で経済グレート・リセットを目論むWEF(世界経済フォーラム)が設立。ゲイツ財団と共に世界にワクチンを強要する事を目的としている。
参考までに:EUが掲げる全国民へのワクチンパスポート導入への手順(2018年からプロジェクト開始)コロナのお蔭で予定通りに、抵抗なく2022年にはワクチンパスポートが本格的に導入されようとしている。
- 2003年SARS1対策で中国に喝
2002年末のSARS1が広東で発生した際は、当時WHO事務局長、医師でノルウエー首相経験者のブルントラント氏は中国に対して強い態度で情報公開と対応責任を迫り、封じ込めに成功。中国としては大国のメンツを潰された結果となり、国家としてWHO乗っ取り(コントロール)を目標に動き出す。
- 中国の反撃
弱小国も平等に1票を逆手に取り、積極的にアフリカに支援することで国連の主要機関のトップを中国人が占める事に成功。WHOも2007年から2017年の間、香港の衛生トップであったマーガレット・チャン氏がWHO事務局長となった。その次は事務局次長のフランス、デュストブラジ氏が立候補したが、中国が推した現テドロス氏が事務局長になる。
- テドロス事務総長の就任と新型コロナ対策
2019年12月武漢での新型肺炎集団発生の報告を受けてからも、中国の指示で世界的アラートの発令を遅らせ、人の交流も継続する事を中国の言われるままに容認、いよいよ世界で新型コロナが発生してからパンデミックを宣言するWHOの新型コロナへの初期対応の不完全さについては周知のとおり。
〇 好対照を示した台湾当局の対応
番組では台湾の衛生主任である陳時中氏のインタビューを載せていたのですが、注目に値するのは「2019年10月に武漢で正体不明の感染症発生との情報があり、2003年の台湾におけるSARSの経験からすぐに国家的な準備態勢に入り、12月肺炎発生の報告と同時に隔離や入国制限の処置をした。」と台湾における新型コロナ封じ込めの経緯を明かしていました。大事なのは「2019年10月に正体不明の感染症の情報」を既に台湾当局が掴んでいた事実で、当然中国当局も掴んでいたはずです。番組内に非常に大事な事実がシレっと挿入されていました。そしてそれが武漢ウイルス研究所関連であったからこそ、12月に新型肺炎の危険を訴えた民間病院の医師を「騒ぐな」と処罰した訳です。台湾がWHO加盟国(団体)で、しかも2003年当時の様な中国から独立した組織であったならば、10月の段階でWHOにアクションを起こすよう警鐘を発したはずです。
その後、台湾のジャーナリストがWHOの広報官に今後の台湾加盟について取材をした時の映像が流されましたが、「質問が聞こえない」とはぐらかされた上、再度質問した段階で通信回線を一方的に切る、という対応をされました。
〇 彷徨い続けるWHO
日本ではWHOというだけで、公平中立な上に非常にレベルの高い、権威ある国際組織であると思い込んでいるメディアや人たちが沢山います。そのような時代もありましたが、それは時代と世界情勢によって変化するものです。2000年頃「米国の医療が日本よりはるかに優れている」というとんでもない「デマ」に私も「医学は一流だけど医療は三流だ!」と反論していた事を思いだします。さすがに米国民の医療格差はマイケル・ムーア監督の映画「シッコSicko2007年」などで紹介されて今では米国医療の実態が理解されました。
日本も「日本国民のため」になる政策を、WHOの見解を丸のみにすることなく、独自の情報と解析を行って検討してゆく必要があります。少なくとも欧州の国々にはその基盤と心構えがあることをこのドキュメンタリーは示していると思いました。
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