今回のブログは思いつきで音楽を語っているので、まったく専門外、勘違いや思い込みが多い内容ですが、まあ個人の経験と感想ということで受け流して頂ければと思います。
街の生活を唄った洋楽は昔からありますが、街そのもののご当地ソングというよりはそこに生きる人の気持ちとか、特に都市部での既成社会への若者のプロテストが賞賛されてヒットにつながるといった傾向は洋の東西を問わずあると思います。特に不満や葛藤を強く訴えかける内容が現在の「ラップ」や「ヒップホップミュージック」につながっていったのだろうと感ずるものがあります。
Stevie Wonder “Living for the city” スティービーワンダー「汚れた街」1973
中学・高校の頃に耳にして「何だこれは?」という感覚を覚えたのはまだあまり日本で知られていなかったスティービーワンダーの「汚れた街」という曲で、1973年のビルボードR&B1位を取ったヒット曲です。何を唄っているか良く分からなかったものの、単調なリズムに乗せて訥々と訴えかけてからサビで「何とか街で生きているぜ」みたいな曲だったので今までにない新鮮さがありました。日本でも「謡」とか西洋の宗教的なチャントといった言葉で訴える様な歌い方がありますが、日常的な生活の不満やプロテストをメロディよりもリズムを主体にのせて唄うやり方が洋楽の分野に現れたのは衝撃だったと思います。
Crusaders “Street life” クルセイダーズ 「ストリート・ライフ」1979
ジャズを聴くようになったのは大学に入った1980年頃からですが、カリフォルニアの街の特に黒人たちの生活を唄ったストリートライフはラップではありませんが、当時全く若手だった黒人シンガーRandy Craufordをフィーチャーして長尺の曲構成で、ストリートで生活する黒人たちの様子を歌い上げた点が新鮮でした。Wilton Felderの突き抜けるようなサックスがラップではないものの「ナラティブ」にイメージを伝えます。1993年頃に1年間ニューヨークで単身留学生活を送りましたが、寮で良く聞いていたラジオで週1度はこの曲がかかっており、「NYのイメージにも合っているのだろう、スタンダードと言われる曲はこうして作られるのだろう」と思いました。日本人にはピンときませんが、「十字軍」という名前の黒人グループの画期的といえる楽曲は、キリスト教社会の米国ではそれなりに強い衝撃で迎えられたのではないかと思います。
Pet Shop Boys “West end girls” ペットショップボーイズ ウエスト・エンド・ガールズ1985
ブリティッシュロックのラップの走りかな、と思うのがこれです。唄っている内容はどうにも憂鬱で自殺願望的なのに「なんともファッショナブル!」と思わせるサウンドでPVもロンドンの街並みが懐かしい感じです。今でも大人気で2012年のロンドン五輪の閉会式でも演奏され、2019年ウエストエンドのハイドパークでのライブでは会場全体で大合唱であり、「割と暗い歌詞なのに、どんだけ英国人はこの曲好きなんだ!」と思わせます。確かに英国らしい重厚で、格調を感ずる所もあって私も今聴いても新鮮さを感じます。
Jay Z featuring Alicia Keys “Empire State of Mind” ジェイZ エンパイア・ステイト・オブ・マインド 2009
これはもうラップ、ヒップホップの完成形とも言えると思います。2009年の全米1位のヒット曲ですが、雰囲気は1993年頃に私が単身赴任でNYの街を歩き回っていた頃の感じそのもので懐かしい感じがします。スティービーワンダーの汚れた街ではNYに着いた途端に麻薬の冤罪で逮捕されて散々だ、という内容が唄われますが、このJay Zの曲はそこまで否定的ではなく、「うまく行かない事も多いけど、夢や希望がある」内容です。それもそのはずで、作詞はJay Zと同じアパートに昔住んでいた人がロンドンでホームシックになり、NYを懐かしみながら書き上げた物だそうで、一度却下されたものがたまたまプロデューサー目に留まって大ヒットにつながった曲だそうです。Alicia Keysのグラマラスなサビの歌声もまたいい感じだと思います。