Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ビッグに「ビッグデータ」を考える

2014-03-12 18:29:39 | Weblog
ビッグデータということばに食傷気味の方は、マーケティング業界にも少なくないと思われる。ある人は、膨大なデータなんて前から使ってるよというだろうし、別の人は、使えないデータはいくら数が増えても意味がない、というだろう。どちらにも、それなりの理がありそうだ。

しかし、そのときイメージされる「ビッグデータ」は、どこまで「ビッグ」なのだろう?本書を一瞥すると、そんな思いに駆られるはずだ。編者の一人、Rick Smolan はコンサルタントでもなければ学者でもなく写真家だ。過去に Day in the Life of Japan という写真集も出している。

本書は、100人近い写真家やライター、ジャーナリストらを動員した、一種のクラウドソーシングで生まれた写真集であり、エッセイ集であり、インフォグラフィック集でもある。タイトルが示すように、ビッグデータと人間の生について、多数のイメージと論説が収集されている。

The Human Face of Big Data

Rick Smolan, Jennifer Erwitt
Against All Odds Productions

この本は、サイズもまた想像以上にビッグである。価格は現時点で5千円、高いと感じる向きもあろうが、これだけの質と量の写真や寄稿が集められていることからすると、むしろ割安である。この価格にできたのは、EMC を始めいくつかの企業がスポンサーになっているからだろう。

この本は、「ビッグデータ」の可能性をどこまでビッグに考えるか、を読者に迫る。そこには、情報処理技術や解析技術とともに、イマジネーションやクリエイティビティが必須になる。サイエンティストとアーティストがともに協働することで、人間の顔をしたビッグデータが実現する。

自分が今後ビッグデータのプロジェクトに関わるとき(ぜひそうしたいと思っている)、ときおり本書をめくって「初心に還る」ようにしたい。