長年使っていたカーステが遂に壊れてしまった。以前から書いているように
私の車のカーステはCDやハードディスクではなく、カセットテープであった。
いまからカーステを付け替えるのも面倒に思え、どうしようと考えた結果、
i Podを専用のスピーカーにセットして、それを車内で聴くことにした。
もともと結構なエンジン音がするし、出力が6Wしかないので大した音で聴けない
のはわかっている。それでも、何にも音が無いのは寂しいのでとりあえずの
妥協点として様子をみようと思う。
そうすると、今度はi Podに音楽を取り込まなければならない。何回か曲の入れ替えを
したので現時点であまり曲が入っていなかったので手当たり次第にCDを用意して
取り込み始めた。まずはビートルズ関連から。
さて、困った。ポールとジョージの好きな曲は迷うことなく取り込んだ。問題は
ジョンであった。いざ、曲を選び始めると選んだそばから取り込む気が失せていくでは
ないか。つまり・・・。『MOTHER』や『IMAGINE』、『LOVE』その他沢山の曲を
わざわざ車内で聴く気にどうもなれそうもないのだ。う~む。困った・・・。
ま、今回は「動く車の中で聴く」という条件があるから仕方ないか。
とりあえず4曲ほど選んで、別のミュージシャンの曲を取り込み始める。
結局、取り込んだのは何年も前から何回も聴いた曲ばかりである。ヒット曲だらけ。
当たり前かもしれないけれど。
いくらレア盤だ何だといっても、入手した当初はうれしく思って何回か聴いたのに
曲とタイトルが一致する曲が何と少ないことか。私は一体今まで何をどんなふうに
聴いてきたのかと思うと、ちょっと空しくなる。
最近はBIG PINKからのレア盤再発にも
飽きてきた。3枚買って2枚ハズレ、なんてのが続いたからかもしれない。
しかし、掲載写真のアルバム「DREAMS」は違う。77年に自主制作でリリースされた
J . F . バルダッサーレの唯一作は、その在り様からレア盤と言われて然るべきものだろう。
だが、希少価値を云々するよりも、収録時間が30分にも満たないアルバムから
流れる曲に耳を預けた時の心地よさこそ、これから多くの人が体験すべきことである
のは間違いない。
車中で聴くかどうかは別にして、まずは私の頭の中で収録曲とタイトルが一致するように
しっかりと何度も聴かなければ・・・。
昨年のうちにアナログ・リイシューが成されていた、ニュー・ジャズ・オーケストラが
69年に発表した「LE DEJEUNER SUR L'HERBE」が遂にCD化された。個人的には
20数年待ち望んだCD化であったので、これは嬉しい。
ニール・アードレイとジョン・ハイズマンが中心となって結成されたNJOはロック者にも
聞き逃せない面子が参加している。ディック・ヘクトール・スミス、イアン・カー、
ジャック・ブルース、マイケル・ギブス、フランク・リコッティといった名前は
英国ジャズ・シーンに於いては「当たり前」のような名前なのだが、コロシアムや
ニュークリアスといったロック者の守備範囲にも抵触(笑)するので、興味は湧くという
ものだ。
アードレイ作のタイトル曲でアルバムは上品に幕を開ける。コルトレーンの『NAIIMA』
マイルス(というよりエヴァンス)の『NARDIS』という耳馴染みのある曲をとりあげて
いるのが、親近感の増幅に一役買う。個人的ハイライトは『DUKE FIRE』で、テーマの
後にハイズマンのドラム・ソロがあり、またテーマに戻るのだがコンパクトなドラムソロが
全く嫌味な感じがしないし、終始聴くことができるサックスのトーンがフリーキーで
あるのが心地よい緊張感を強いる。
録音されたのは68年9月。クリームの解散を目前に控えたジャック・ブルースが
どのような心境で参加したのかも今なら何となく察することができるような気がする
という意味でもロック者は気に留める価値のある盤である。
見ての通り、アルバム・ジャケットはモネの「草原の昼食」をモチーフにしている。
写真に写る二人の男がアードレイ(左)とハイズマン(右)である。
マネの絵を知るよりも先に、こっちのジャケットの方が刷り込まれてしまったのだけど。
単純に良い写真だと思う。