まさか、今になってフル・ステージの映像を見ることができるとは。
掲載写真はエレファントカシマシの映像作品「LIVE FILM エレファントカシマシ 1988.
09.10 渋谷公会堂」。ここでの映像の断片は当時のテレビやエピック時代の映像を
集めたDVDで見ることができたし、音だけだと13年に出たファースト・アルバムの
デラックス・エディションのディスク2で聴くことができた。しかし、今回はフル・ステージを
捉えた映像である。単純に嬉しい。(笑)
メンバーの髪型や服装が時代を感じさせるが、それよりも何よりもメジャー・デビューから
半年後の大きなステージで、自分たちが置かれた状態と取り巻く環境への戸惑いや憤りを
時に直線的に時に自虐的にぶち撒ける不遜な感じがおそろしく格好いい。しかし、単に怒りを
持っているだけではなく、世の中の歯車の一部であることのやりきれなさと、そこに
気付いてしまっていることへの嘆きと優しさがあるからこそ、彼らは今も支持されているのでは
なんてことを思わせるに十分な映像だと思う。
客電つけっぱなし、舞台は何の演出も無くおまけに設営用の大道具が剥き出しで置かれたまま
という異様な演出は、これを撮影した大人達の思惑が働いているのだが、この異様さも
バンド・ブームの中にあって異質だった彼らを他のバンド群と明確に差別化するための
演出だったのだろうか、と今になって考える。それにしても、荒々しく素敵な演奏である。
新曲『風と共に』は穏やかで、
これもエレファントカシマシの持つ良い側面の一つが突出した形で、結実したものだ。
添付された今年の武道館公演での演奏を12曲収録したライブ盤を聴いて、新旧の曲の
出来に、いい意味で大きな差が無いことに気付けば、彼らと同時進行で歳をとるのも
悪くないなと思える今宵である。私もちょっとは成長しないといけないのだけど。(笑)