掲載写真はG.T. ムーア&ザ・レゲエ・ギターズの2枚組CD「CRAZY GUITAR」。
ムーア&レゲエ・ギターズは70年代に2枚のオリジナル・アルバムを残しているが
本作は1枚のCDに幻のサード・アルバムを、もう1枚に70年代に残したライブを収録
している。
幻の3枚目の登場、というのが最大の売り文句であるが実質は3枚目用に録音されたのは
5曲で、他には73年や74年の録音が含まれている。何れも初登場音源で、これらの曲が
陽の目を見たのは実に喜ばしい。英国フォークのレコードを聴く上で、ある種の高みの
一つであったヘロンに在籍していただけあって、ムーア達の演奏から感じ取れるレゲエの
リズムに紛れ込んだ暖かみのあるフォークやソウル・ミュージックの要素が、紛れもなく
彼らのオリジナリティとなっているのが素敵だ。
収録曲の並びは録音順ではないので、前後の曲の質感の違いが気になる瞬間もあるが
1枚の盤として提出した際のまとまりや聴き応えという側面を優先したということだろう。
また、ライブ盤の方もメンバー違いによる75年の2回の演奏と、大所帯の77年の
演奏とそれぞれ違った趣を楽しめるのが嬉しい。
タチの悪いことに(笑)私は本作をオリジナルの2枚より気に入ってしまった。
ジェラルド・トーマス・ムーアと
言えば、現在も復活したヘロンでしっかりと活動していて、昨年の京都公演が2枚組CD
「LIVE IN KYOTO」として登場した。磔磔でのライブ盤であるのが、何となく嬉しい。
最新スタジオ盤であるボブ・ディランのカバー・アルバムを含む彼らのキャリアを、ほぼ
万遍なく網羅したセット・リストに不満のあろうはずもなく、年輪を重ねた渋い演奏を
聴くことができる。数多ある「LIVE IN JAPAN」の中でも日本が世界に誇る日本主導の
名ライブ盤をまた1枚手に出来たことになる。
ジャケット右上の「ヘロン実況録音 於:京都」という印を模したデザインが、西部講堂
公演時のフランク・ザッパに送られた「雑葉」印を想起させるのも、またいいのである。
両方の盤を末永く聴いていきたいと思う。