掲載写真はイアン・ハンターの新作「FINGERS CROSSED」。ジャケットの右下に
描かれたタイトル通りに指をクロスさせた絵を見た瞬間、何故か木村カエラのDVDを
想起してしまったが、そんなことはともかく(笑)今作はなかなかの力作である。
モット時代のバンド・メイトであったデイル・グリフィンや、何かと関係のあった
デヴィッド・ボウイの死というハードな側面と対峙しながらも、今を見据えて前進する
イアン・ハンターの存在自体が私には嬉しい。
わかりやすいアッパーなナンバーを立て続けに繰り出せば、「まだまだ元気」とか
「精力的」なんて言われるのだが、本作が過去の数作と違うのはミディアム・テンポの
曲に力が漲っているように感じられるからである。まあ、これは聴き手の捉え方次第で
どうとでも解釈できるので私の解釈が正しいかどうかは実際に聴いた人にしかわからない。
かつて、モット・ザ・フープルは「ストーンズを父に、ディランを母に生まれた」なんて
アルバムの帯に書かれたことがあった。自他ともにディランの影響を認めるハンターの
作風であるが、体制に抗い価値の正当な評価を見誤るなと常に歌ってきたその姿勢は
今作でも変わらない。だがハンターの本当に凄い処は、そういった全ての警告は単純な
他者批判でなく、全て自分に当てはまり自分に返ってくることを理解していることである。
今作は国内盤が流通している。国内盤は輸入盤を先行予約した人が特典としてダウンロード
できた2曲をボーナス・トラックとしてCDに収録している。できれば国内盤を手にして
じっくり聴いていただきたい。ソロ・キャリア中5指に入る傑作なのだから。
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