親父から電話があり、唐突にこんなことを言われた。
「お前、この間NHKでやったサンタナ見たか?。」
は?。何でサンタナ?。私が子供の頃からロックを聴くことに無理解だった親父が何を言うかと思えば。
「いや。テレビでやったのは知っとったけど、見なかった。」
「ほうか。面白かったぞ。ほんでの、お前、サンタナのCD持っとんか?。あったら焼いてくれや。」
「持っとることは持っとるけど。あんた、サンタナ聴くんで?。」
「おお。おい、持っとるってよ。」「ほら、持っとるゆうたやないの。ツェッペリンも持っとるよ。」
後ろでお袋と話しながら電話をしているようだ。
お袋は私が高校時代に聴いていたレコードの中では、サンタナやストーンズ、ボブ・マーリーに
ピンク・フロイド、ダイアー・ストレイツが好きだったので、お袋にCDを焼いてくれと頼まれるのなら
解るが、まさか親父が聴くようになったとは。70歳を過ぎてからのロック事始め(笑)である。
ここで、サンタナとはバンド名でカルロス・サンタナが個人名であることを話すほど私は野暮ではない。
ところが、驚きはまだ続く。私はこのあと、衝撃の名前を耳にしたのだ。
「ほんでの、お前、グランド・ファンク・レイルロードって知っとるか?。」
一体、何処でそんな名前を覚えたのだろう。私は呆気に取られて聞き返した。
「何ぃ?。グランド・ファンクぅ〜?」
「やっぱり、知らんか?。」
「いや、大概持っとるけど。」
「ほうか、ほうか。そんならの、グランド・ファンクとツェッペリンとディープ・パープルも焼いてくれ。」
「何処でそんな名前を知ったのかしらんけど、有名な曲だけ集めて焼こか?。それともCDをそのまま
丸ごと焼いたほうがええのか?」
「おお、丸ごと焼いてくれ。」
「あのねぇ、軽く50枚を超えるんだけど。」
「急がんでええから、全部焼いてくれ。」
何で今頃ロックなのだろう。よくよく話を聞けば、家の近くの後輩の家に行くと、よくロックがかかっていて
何回も遊びに行くうちに刷り込まれたんだとか。親父の後輩だから歳は60代後半から70代前半のはず。
いずれにせよ、70歳を過ぎてから聴くロックというのもあるものだ。(笑)
電話の向こうでお袋が「ストーンズとクイーンも焼いといて。」と言っているのが聞こえたが
これは聞こえなかったことにしよう。いや、お手軽にベスト盤でも忍び込ませておいて勘弁してもらうか。
電話を置いて、ふと思った。次に電話がかかってきたらきっとこう言うだろうって。
「おい、エリック・クラプトンって持っとるか?。」これなら理由は何となくわかるのだが、まあいい。
もし、聞かれたら、持っていないと答えることにしよう。(笑)