いつの時代でも同じだが、英米の音楽雑誌やマスコミというものはポップな
要素を多く持つバンドに厳しい。それがヒット曲を出すようなバンドで、加えて
メンバーのルックスがまとまっていたりなんかしていたら大変である。
クイーンやベイ・シティー・ローラーズの例を出すまでも無いが、パイロットも
厄介な評価をされたバンドではなかろうか。
74,5年というのはグラム・ロックこそ衰退したものの、ハード・ロックとプログレが
幅を効かせていた時代である。今思えば、派手ではなくしかし的確な演奏でメロディー・ラインの
しっかりした1曲3分半の曲を演奏するバンドにとっては受難の時代だったのかもしれない。
パイロットが75年に出した2枚目のアルバム『SECOND FLIGHT』は彼らのキャリアの
中で一番好きなアルバムだ。デヴィッド・ペイトンの作る曲はどれも覚えやすいメロディーで
それを歌う彼の声の甘さが曲に上手くマッチしている。時にクイーンのような音色も聴かせる
イアン・ベアースンのギターの役割は大きく、派手なソロを弾くわけではないが、特に
イントロで顕著な煌びやかなフレーズは、一聴して耳に残る。イントロのフレーズというのは
ある意味最重要なわけで、これで耳に残らなければCD時代の今ならあっという間に
曲を飛ばされるだろうし、ラジオの時代ならスイッチを切られるか別の局にチャンネルを
変えられてしまうのだから。
アルバムを聴いて、まず『CALL ME AROUND』『JANUARY』の2曲の印象が強いのだが
後にその2曲が順にシングル・カットされたことを知ると、「なるほど。やっぱりね。」と
意味も無く納得。レコードでいうとA面の真ん中にインストを配するのも面白い。
一昔前だったらクイズ番組のオープニング・テーマにでもなりそうなのだが、レコードの
頭でなく中盤にインストがあるのもいいなあと思ったのがこの盤である。
そう言えば、リトル・フィートの「TIME LOVES A HERO」も中盤に面白いインストがあった。
バンドはこの後、曲作りでパットンと共に大きな役割を担っていたビリー・ライオールが抜け
3人組となってよりハードな側面を強めたアルバム「MORIN HEIGHTS」を出す。
アラン・パースンズからロイ・トーマス・ベイカーにプロデューサーが変わったせいか、より
ハードになった音は以前より高く評価されたのだが、私はやっぱり2枚目の方が好きである。
最初の書き出しに話を戻すと・・・。一番のアイドルでポップなのは、あの4人組なんだけど
彼らはO.K.で、あのバンドに影響を受けたような音だと叩かれる、というのも何とも不可思議で
可笑しな話である。まあ、こんなことを書く私ではあるが、日本のバンドだと多分熱心には
聴かないのだろうな。(笑)
さて、次はパイロットとは逆にハードになってからの音が好きなバンドを取り上げようかな。