10CCの名前を知ったのは高校1年の時である。クラスの友人が高鳴る胸の
鼓動を隠しつつ(笑)一人で見に行った映画の中で印象に残った曲があったというのだ。
映画の名前は「ガールズ/恋の初体験」。(笑)残念ながら私は今に至るまで未見なのだが
友人は、劇中で使われた『I'M NOT IN LOVE』という曲が良かったというのだ。
得体のしれないグループ名に、何とも軟弱な感じの映画。当時の私には到底受け入れ難い
要素ばかりである。しばらくして、その友人が「10CCの「オリジナル・サウンドトラック」という
LPに、『I'M NOT IN LOVE』が入っとるらしいけん、俺はそれを買う。」と言うではないか。
「えっ、「ガールズ」のサントラじゃないの?。」と、とんちんかんなことが脳裏に浮かんだが
何れにしろ、興味の無い話なので適当に聞き流したものだ。
その後、ラジオで件の曲を聴いたのだが、「軟弱な出来損ないのクイーン」という、今思えば
不当にとんでもない印象を持ってしまい、尚更聴く気がしなかったし、かのローリング・ストーン・
レコード・ガイドでも、こき下ろされていたので、これは私には縁のないバンドだということにした。
ところが、転機というものはあるもので、これも何かの拍子で彼らのバンド名がアルバム・タイトルに
なった1STを聴くことになってしまう。『RUBBER BULLETS』『DONNA』と続いたアルバムA面の
2曲が終わる頃には、すっかり興味を持ってしまったのだから、柔軟な対応というのは
何事においても大切である。(笑)
リアル・タイムでいえば、10CCは黄金の4人から、とっくに2つに分裂していて雑誌の広告には
「TEN OUT OF 10」(邦題:ミステリー・ホテル)が大々的に出ていたし、
ミュージック・マガジン界隈では分裂した内のゴドレイ&クレイムの方の人気が高かったようにも
記憶する。しかし、件のアルバムは買ったものの押入れ行きだし、数あるゴドレイ&クレイムの
盤も大して気に入ったものはない。「ギズモ・ファンタジア」は未だに持て余している。(笑)
結局、私が聴く10CCのアルバムは1STから77年の「DECEPTIVE BANDS」(邦題:愛ゆえに・・・・・)
までである。77年の盤はともかく、10CCは四人の個性がぶつかり合って、その魅力を
発揮していたとみるべきなのだろう。
そんな10CCの5枚組ボックスが登場した。4枚のCDにはレア・トラックの類は少なく、
シングルB面曲を収録してくれたのが有難いくらいであるが、私の目当てはまたもDVDであった。
10CCの映像というのは、「ライブ・イン・コンサート」のタイトルでVHS時代に出たものを見たことが
あったが、DVDでリリースされた10CC&ゴドレイ&クレイムの「GREATEST HITS & MORE」を
見たことがなかったので。今回のDVDは4人時代の映像が多いのと、見たこともないPVを多く収録
しているのが興味を惹いた。
『DONNA』と『ART FOR ART'S SAKE』のPVを見ることができただけでも満足であったが
77年や78年の曲の映像も悪くは無かった。テレビ出演時のリップシンク物が多くても
35年以上前の映像というだけで、有り難味が増すというのだから爺相手の商売が成り立つという
ものだ。(笑)
そうは言っても今回のボックス、気に入らない点も多々ある。まず、デザイン。ストーム・トーガスンの
デザインは人の気を引くが、私にとっては常にそれが良い方向へ向かうものではない。
今回のデザインも私にはちょっとトゥー・マッチ。それと価格設定。私はHMVのマルチ・バイで
輸入盤を4000円弱で購入できたが、普通に買えば値段が少々高いかも。来年出る国内盤は
15000円だから、これは安いとは言えない。まあ、熱心なファンなら値段なんて問題ないのだろうが
何でもかんでも欲しがる私(笑)にとっては、やっぱり高いというのが本音。
さて、今からオリジナル・アルバムを順に聴くとしますか。