HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

未来から来たトッド

2012-03-11 08:18:07 | ROCK

昨年リリースされたトッド・ラングレンの2枚のアルバムは、どちらも私にはピンとこなかった。
ロバート・ジョンスンのカバー集と、かつて自身がプロデュースしたミュージシャンの曲のカバー集
だったのだが、トッドの煌めきというか魔法はそこにはなかった。特に後者は、当時自身が
ミュージシャンをプロデュースする際に、他者と衝突しながらも他者をねじ伏せ、自身を貫いたエゴと緊張感と
それを裏付ける曲の出来栄えを誇ったものなのだから、おいそれと超える事の出来ないものに
チャレンジしただけに、その壁は高かったとしか言いようが無い。

トッドが過去を振り返るような企画は2010年にもあり、この年の前半は「魔法使いは真実のスター」を、
後半は「未来から来たトッド」と「ヒーリング」を再現したライブが話題になった。
掲載写真は2010年9月14日に行われたライブから、ショーの前半の「未来から来たトッド」再現パートが
収録されたDVD。後半の「ヒーリング」再現パートは後日発売されるとのこと。

例によって日本盤は輸入盤と比べると高いのだが、今回は日本盤を買った方が良いだろう。
まず、日本盤はDVDだけでなくライブを収録したCDが添付されていること、DVDにはライブ前日に行われた
内容の濃いインタビューが60分(これもインタビューの前半だけだ)収録されていて、これを字幕付きで
見て内容を理解するのとしないのとでは面白味が全く違ってくるという2点において、日本盤の購入を薦めるものだ。

「TODD (未来から来たトッド)」は、まずジャケットに惹かれた。髪を緑やピンクに染めたトッドの大写しの
ジャケットがまず気に入ったのだ。2枚のレコードに様々なスタイルの曲が配されているのは、「魔法使いは真実の
スター」の延長線のようで面白かったし、歴史的にみればユートピア結成の源になっているのも興味深い。
ただ、ユートピア結成後の続くトッドのソロ・アルバム「INITIATION(未来神)」は、やりすぎ感があって
私はあまり好きではない。(笑)

そんなバラエティーに富んだアルバムの再現を映像で見ることができるのだから、これが嬉しくないわけがない。
『THE SPARKS OF LIFE』のエンディングで派手なギター・ソロが終わる時に、トッドがキーボードを
タクトで叩きながら「だめだ、もっと愛を込めろ」と言い『AN ELPEE'S WORTH OF TOONS (一枚のLPに賭ける)』
に突入するシーンにトッドのファンなら、思わず笑みもこぼれるだろう。正にアルバムの再現である。

中盤あたりから、クラプトンにもらった例のカラフルなペイントが施されたSGを弾きまくるのだが、
あのギターがまだ健在なのが何とも嬉しい。ネックはかつて折られたことがあるはずなので、それ以外にも
当然様々なリペアが施されているだろうが、あのギターを見た大多数の人はクリームを思い起こすはずで
それを思えば後にトッドがロバート・ジョンスンのカバー集を出すのも不思議ではないか、と今更のように
思ったり。

個人的なハイライトは『IZZAT LOVE? (それが愛なのか?)』から『HEAVY METAL KIDS』へと
間髪入れずに演奏されるシーン。アルバム中でもこの2曲の流れが好きだっただけに、このシーンも
パーフェクトに再現されていて嬉しい限り。最後の『SONS OF 1984(1984年の子供たち)』演奏中に
ステージのカーテンが閉まり、客席から姿が見えなくなった後もしばらくメンバーとコーラス隊が
アカペラで歌い続ける演出もエンディングに相応しいものだ。

そして、特典扱いのインタビューが面白い。「魔法使いは真実のスター」に添付された葉書を返送すると、
次作である「未来から来たトッド」に添付されるポスターに返送者の名前が印刷されたのだが、そのアイディアが
アルバ-ト・グロスマンのものだったのは初めて知った。過去に関係したミュージシャンの名前がどんどんでてきて
例えばジャニス、ザ・バンド、ローラ・ニーロ、パティ・スミスの何れの事も余り良く言わないというか、
いろいろあったのが如何にもトッドという感じである。特にバッドフィンガーの「STRAIGHT UP」を巡っての
ジョージ・ハリスンとのいきさつは、あくまでトッドの弁を聞く限りではトッドの言い分が正当である。
スティーヴィー・ニックスが「世界で一番素敵な曲」と言った曲の名を知りたいなら、今回のDVDを見るべきだろう。

「ヒーリング」は、それほど好きな盤ではないがインタビューの続きを含めて、後半のDVDの登場が
待ち遠しい。

コメント
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