HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

暗闇へ突走れ

2010-12-13 17:03:53 | ROCK

あまりに情報量の多い箱「THE PROMISE」。箱モノは一通り接すると、仕舞い込んでしまいがちだが
何度も聴かなければ見なければ、いや何度も見聴きしたくなる内容なので、なかなか他の物を
聴く時間が足りないという、嬉しいような間抜けなような状態である。

16歳の時に1年遅れで「THE RIVER」を、17歳で「BORN TO RUN」と「NEBRASKA」を
聴いた私がその次に買ったのが「DARKNESS ON THE EDGE OF TOWN」であった。
大学生になり一人暮らしを始めた18歳の6月である。中古盤で手にしたそれは、「NEBRASKA」を
別にして、何とも不親切な盤のように思えた。一聴して(私にとって)わかりやすい曲は冒頭の
『BADLANDS』だけで、どこか重く沈みこむように思えたのだ。何回か聴いていくうちに
このアルバムのみが持つ、どこか尖った感覚を了解したのだが、後に幾つか聴いたブートレグや
98年の「TRACKS」を聴いて「アウトテイクの方に耳馴染みの良さげな曲があるのに、なんで
あんな感じの選曲になったのだろう。」という疑問が沸き起こったのも事実。
そんなことは2010年にはすっかり忘れていたのだが、今回の箱は過去の疑問を思い起こさせ
そして、全ての疑問に答えてくれた。

78年の映像というのは幾つかあって、ブートレグで有名なものには78年8月のラーゴ(カラー)、
9月のキャピタル・シアター(モノクロ)があるが、今回のヒューストンは画質こそ今ひとつだが
(それでも巷のブートレグよりは良い)26曲の長尺で大満足だった。更に素晴らしいのは
ボスのファンなら誰でも知っている、あの『ROSALITA』を収録した日の映像が4曲も発掘
されたことだ。もともと英国の番組オールド・グレイ・ホイッスル・テストで放映するために
撮影されたものだが、今回の映像は数年前に出た同番組のオムニバスDVDより更に
画質が向上している。私の中ではこの日の『ROSALITA』は私的ロック3大映像の一つでもある。
後の一つはザ・フーの78年5月シェパートン・スタジオでの『WON'T GET FOOLED AGAIN』で
残り一つは、気分によって違ったものになる。(笑)話が脱線したが、そんな日の映像の
発掘には度肝を抜かれた。プライベートなスタジオや家でのレコーディング風景のほうが貴重なのだが。

ボスのブートレグで、一番多く買い一番多く聴いたのは78年のものだ。理由は明白で
退屈な曲が少ないから。当たり前だ、「BORN TO RUN」と「DARKNESS」の曲が大半を占める
のだから。

個人の重大な事件はいつも夜におきる。昼間は時間がのろまに流れ、夜は時の刻みが早く進行する。
一般的に、昼は基本的に自分の食いぶちを稼ぐためといっても社会の一員として、システムに
組みこまれ働いている。考えるのは仕事をいかに上手く、多く完遂するか、そして何よりも
早く終われるかどうか。夜は彼女や家族、仲間との時間の中で楽しい時間を過ごしたり、時に
惨めな時間を過ごす。幸福な出会いがあれば、対峙する局面もある。一人で決断しなければ
ならない瞬間もある。「DARKNESS ON THE EDGE OF TOWN」が放つ青白い光は
そんな我々の闇を照らしてくれる。

18歳の夏は1か月の間、友人達と泊まり込みで福井の民宿でアルバイトをした。最後の日に
給金を貰い、下宿先の京都に戻るやいなや買ったアルバムがボスの新譜「BORN IN THE U.S.A.」
だった。私が初めて自分が働いた金で買ったアルバムでもある。

コメント (3)
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