ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/09/16 新橋演舞場「憑神(つきがみ)」

2007-09-18 23:59:40 | 観劇

橋之助とG2がタッグを組んでの新橋演舞場第2弾は「憑神(つきがみ)」。昨年9月の「魔界転生」は予想以上に面白かった。そこで今回も迷うことなく3階B席GET。花道の真上だけど1列目だし全く文句なし。
両脇を熟年の男性陣の中に紅一点(笑)で座った。やっぱり原作が浅田次郎だからそちらのファンが多いのだろうかと思った。しかしすぐ左2列のおば様たちが開演してもしゃべっている。それも5~6人のグループ。役者が誰よねとか確認しあってなかなか静かにならない。両脇のおじさんたちが露骨に嫌がっていたが、私の方が先に堪忍袋を切って暗い中を立ち上がって押し殺した声で「静かに」と注意させていただいた。効果アリ。冒頭は土手の上での主人公の立ちションの場面だから緊張感がないといえばそうなんだけど、自分たちのグループだけ楽しければいいという態度はいかがなものか?!またうるさくなったら幕間に係員に注意を頼もうと思ったけど、それはしないですんだのが幸い。

概要は以下の通り(あらすじは松竹の公式サイトのものに配役を追加)。
脚本・演出=G2 美術=金井勇一郎
幕末の江戸。下級武士の別所彦四郎(中村橋之助)は、婿養子先から離縁され、妻(藤谷美紀)や子と離れ離れに。もともと別所家は、代々将軍の影武者をつとめる由緒ある家柄であったが、今は雑用ばかりの御徒士の中で甲冑の管理を請け負っていた。実家に出戻った彦四郎であったが、別所家のお役目は兄(デビット伊東)がつとめ、兄嫁(秋本奈緒美)にも邪魔者扱い。タダ飯食いの毎日で母(野川由美子)と肩身の狭い思いをしていた。
そんなある日、ひょんなことから朽ちかけた祠に出合う。三巡…?出世稲荷と名高い三囲稲荷と字が違えど、困ったときの神頼み!と、手を合わせたのがはじまりだった…。なんと現れたのは、神は神でも憑神さまだったのだ!以下省略。

「三巡」とは憑神が3人巡ってくるということなんだという。3人の憑神は人間にも見える姿で現れる。
1番目:貧乏神(伊勢屋)=升毅
2番目:疫病神(九頭竜関)=コング桑田
3番目:死神(おつや)=鈴木杏
主人公の彦四郎は榎本武揚の親友という設定。「新選組!!」スペシャル番組で土方歳三とともに片岡愛之助演じる榎本武揚が五稜郭にたてこもっていたっけ。榎本武揚のウィキペディアの項はこちら
釜次郎と名乗っていた頃からの榎本を葛山信吾。「宝塚BOYS」でもよかったけれど、今回も海軍の制服が長身に似合ってカッコいい!今回一番美味しい役かもしれない。

彦四郎は婿入り先の家がつとめる御家人としてのお役目を生真面目につとめていたことが裏目に出た。ゆるくおつとめをしたい同僚に疎まれて、追い払うべく罠を仕掛けられて失職。そのために舅(螢雪次朗)に愛想をつかされ離縁させられた。剣術の腕も半端でなく三河以来の徳川家の家臣であることに誇りをもった武士。しかしながら倒幕側の勢いは増し、大政奉還、江戸の無血開城、慶喜は水戸に蟄居と醸成は大きく動く。
それにしても榎本釜次郎が乗り込む開陽丸と薩長軍の軍船の海戦の場面は秀逸だった。貧乏神と疫病神の2人がこの海戦についての解説もしてくれる。今回のために特別につくられた2つの盆が回ってそれぞれの船が横に向いて砲撃を放つ。赤い火と煙の絵が黒衣に差し上げられ、黒衣がサッと横になってV字開脚をすると足の裏側の水色が見えて水柱がたっているという表現。
洪水の水を表す巨大な水色の装置も面白かったし、全体にはシンプルな金井勇一郎の舞台装置がよかった。

彦四郎を慕っていた元部下の小文吾の福田転球。修験者のような術を身につけているということなのだが数珠も持って「臨兵闘者皆陣列在前(りん・ぴょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん)」って九字の呪文を唱えると升毅の疫病神がヘロヘロするところで大爆笑。升毅ってカッコいい役だけじゃなくて笑いもOKの人だったのね。疫病神のコング桑田も関取り姿なので肉襦袢を着て大熱演。レミゼのテナルディエが初見だったのだが、今回も涙もろい疫病神が可愛くてよかった。
とにかく予想以上の大コメディだった。
貧乏神と疫病神の2人は「憑神」はそれぞれ一度だけ「宿替え」をお願いすることができることになっているという。貧乏神と疫病神の2人にはしかるべきところに行っていただいて、局面を変えるのに大いに役立っていただいた。
ところが最後の死神は九字の呪文もきかないほどの通力を持っている。ところがおつやは彦四郎に情が移ってしまって命を奪いきれない。「宿替え」を頼んでよと言い出す始末だが、彦四郎は死神だけは他の人におしつけられないと断る。

そして彦四郎は時代の変化に悩んだ末、家康の影武者の子孫としての誇りを全うする死に場所を見つけてしまった。上野の彰義隊に慶喜になりすまして行って2000人の浪人たちとともに徳川家への忠義のために死のうというのだ。息子の覚悟を知って母も決然と送り出す。結末は「死神」の運命を前向きに受けとめての「死」。彦四郎に情が湧いている私には素直に受け止められない。

あれあれ、さっきまで楽しく楽しく観てたのになんだよ~。こういう最後は嫌いなんだよ~。原作を知らなかったから結末も予想ついてなかったからなぁ。
好みでない結末にかなりテンションが下がってしまった。

いいのよ、いいの。要は結末が好みに合わなかっただけだし、2500円なんだから金と時間を損したとまでは思わない。
橋之助×G2のカンパニーの第二弾としては成功でしょう。次回作も期待したい。当面3階B席で楽しむのがちょうどよさそう。
写真は松竹の公式サイトよりチラシの画像。
G2プロデュースのサイトはこちら升毅×コング桑田×福田転球の対談が面白かった。

観劇後は彩の国芸術劇場で源氏物語の朗読会に行かれていたさちぎくさんと私がお互いの中間点の赤羽駅で落ち合ってお茶会。ベッカーズが改札を出なくてもいい構内にあって禁煙コーナーもある。玲小姐さんも合流してくれてこの間それぞれが観た舞台の報告など2時間ばかり盛り上がる。下がっていたテンションもここで回復できた。皆様に感謝m(_ _)m


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4 コメント

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ヒコさ~ん・・・ (ムンパリ)
2007-10-17 18:15:37
ぴかちゅうさん、こんにちは。
共通の観劇作品はお久しぶりです(笑)。
私は今回はどうも途中で眠ってしまったらしく、ぴかちゅうさんのレポを読んで、アア、そうだったのかと断片をつなげています。軍艦の解説シーンはバッチリ目を開けて見ましたよ♪
あの憑神様の<宿替え>システムはビックリしたけどすっごく面白かったですね。それを最後のオチに結びつけるところがよくできたお話だと思いました。
あれ! 結末がお好みじゃなかったんですか? たしかにエエ~ッ!て感じでしたね。彦四郎さんに惚れちゃいました?(笑)私のほうは逆で、ラストがイチバン盛り上がったんですよー。うう、ヒコさん、すみませ~ん。
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★ムンパリ様 (ぴかちゅう)
2007-10-18 01:30:40
幕末物といえば、上川さんが土方歳三をやった「燃えよ剣!」の舞台もよかったし、NHK正月時代劇「新選組!!土方歳三 最期の一日」(↓に感想あり)もよかったです。
http://blog.goo.ne.jp/pika1214/d/20060520
でも今回の作品はヒコさんの選んだ死に方が私の気に入らないのです。上野の山にたてこもる徳川幕府とともに滅んでいくことに何の意味があるのさ、時代に逆らって死んでいくのは権力者だけにしてほしいぞ~。こんな下級武士がそこまでやんなくてよろし~。
>彦四郎さんに惚れちゃいました?......惚れるまでいかなくてもかなり情が湧いているので中途半端につらくなってしまいました。
浅田次郎のこういう作品って好きじゃないみたいです。同じ浅田さんでももっと本格時代小説の方が面白いという話も聞いているので、いつか読んでみようかなぁと思っています(^^ゞ
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ラストは・・・。 (かずりん)
2007-10-25 11:18:07
物語のラスト、浅田先生曰く、彦四郎が覚悟を決め
花道を走っていく感じで書き上げた・・というのを
どこかで読んだので、↑これがあるのだろう・・・と
めっちゃ楽しみにしていたのですが
・・・・:走り抜けなかったね・・これが残念。
>こんな下級武士がそこまでやんなくてよろし~。
がはは♪♪もう大笑い♪
それをいっちゃ~~おしまいよ♪
でも分かる・・分かります・・・。
私は原作読んでそう思いましたもん!でも
お芝居のほうはすんなり入ってきたので、お金払って
見に行った甲斐があったなと思います・・・(笑)

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★かずりん様 (ぴかちゅう)
2007-10-26 23:39:13
「こんな下級武士がそこまでやんなくてよろし~」に共感していただきまして嬉しいです。大体、徳川慶喜自身が江戸をすてて水戸に行っちゃって影武者をしろと命じられているわけじゃないんだから、自分でそこまでやんなくていいよ、ヒコさん!って思ってしまったんです。死神のおつや同様に情が移ってしまったみたいなんです(^^ゞ
でも橋之助は応援したいので演舞場での主演公演はこれからもしっかり観ていきますよ~。
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