ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/09/30 映画『トランスアメリカ』にかすかな希望

2006-10-04 23:59:17 | 映画(映画館、DVD、TVを含む)
日本における「性同一性障害」の認知度。TVドラマ『3年B組金八先生』で上戸彩が女の子なのに心は男の子として演じたことで一気に高まったと思う。かくいう私もその一人。それまでは同性愛者との区別がついていなかった。ダンカン・タッカー監督作品 『トランスアメリカ』は日本封切時にチェックしていたのだがなかなか行けなかった。MOVIX会員ポイントがたまってそれで何か母娘で観ようとした時に上映最終週でやっていたので観てきた。

あらすじは以下の通り。
LAに住む主人公のブリーは男性だが性同一性障害で女性になるための手術を重ねてきた。その最後の手術を1週間後に控えた彼に電話がかかってくる。元の名前のスタンリーの息子が逮捕され、父に引取りを希望しているのだという。学生だった頃に一度だけエマという女性を抱いたことがあり、その時にできた子かもしれない。ブリーは知らんふりしようとしたがセラピストに説得されてNYに飛ぶ。面会した男娼のトビーはブリーを教会の女性だと勘違いしそれに便乗。1ドルで保釈された彼をボロ車を買って母親の元に返そうとする。しかし母のエマは自殺していた。一緒にLAまで送って欲しいというトビー。ブリーは彼が眠っている間に継父の住む家へ送り届けようとする。トビーは反発するが無理やりに対面させる。そこで明かされた継父に性的虐待をされていた事実。
彼の夢の実現のためのLA行きをともにするトランスアメリカ=大陸横断の旅が始まった。立ちションせざるを得なくなって下半身をトビーに見られてしまい、トランスセクシャルであることがばれ、蔑むトビーとのやりとり。そこを乗り越えたと思ったらヒッチハイカーのヒッピーを乗せたことから車も持ち物全てを盗まれるトラブル。レストランで知り合ったナバホ族の男に一夜の宿と次の日の町までの同行を頼むことができて乗り切る。そこでの温かいやりとり。
困り果てたブリーは長らく音信不通にしていたダラスの実家にお金を借りに行く。そこでの家族との切ないやりとり。特に厳格な母親はブリーの親不孝を責めたてるが、同行者が孫であると明かすと態度が一変する。真実を明かさない約束なのにベタベタし始める母。
道中で心を開いたトビーはブリーを愛し結婚を迫る。追い詰められて真実を明かすと傷ついた彼は金目のものを持っていなくなってしまう。
そしてなんとか最後の手術を終えたブリーはやっと「本当の自分」を手に入れた。日常生活に戻ったブリーの元に新しい生活をスタートさせたトビーがたずねてくる。ふたりは新しい親子関係をスタートさせたのだった。

このブリー役が女優であることで話題になっていたが、フェリシティ・ハフマンは見事だった。昨年の『NINAGAWA十二夜』で菊之助が見せた演技の男女反対バージョンである。女優が男性が女装しているように見せるのだ。それらしい衣装とメイク。一番の難関の声。低い声を訓練して出している。冒頭が女声を出す練習場面というのがなんともすごい。突然予想を超えた息子が出現しての困惑、敬虔なクリスチャンとして接していたのに徐々に息子への愛情が芽生えていく様子に感動してしまう。

男娼のトビーを演じるケヴィン・ゼガーズはなかなかハンサムくんだ。この設定が萩尾望都の漫画『残酷な神が支配する』の主人公と同じだ。めざす夢が同性愛ポルノ俳優というのがなかなか逞しいと笑ってしまうが。
ナバホ族の男やブリーの家族などの脇役も個性的で見ごたえ十分。ブリーのお仲間に泊めてもらおうとしてパーティーに遭遇した場面の本物のトランスセクシャルさんたちの迫力?魅力にも圧倒される。マイノリティの置かれた状況の大変さつらさだけでなく支えあう姿が伝わってきて嬉しい。
旅するアメリカの自然や中西部の町の保守的な雰囲気も見ごたえがある。町の入り口の塀には星条旗と自由の国とアメリカを讃えるような言葉がペンキで書かれていた!(一度職場の半分経費半分自己負担の研修ツアーでサンフランシスコとロサンゼルスに行った経験から映像からある程度は立体的なイメージが立ち上がってきたのは有難かった。そのツアー中に湾岸戦争の地上戦が勃発したので黄色いリボンが飾られたショッピングセンターなどもしっかり見てきた。いろいろ考えさせられた貴重な経験)

人生への希望を照らし出すような作品だった。インディーズの作品だそうだが、こういう映画がここまでヒットしたということにかすかな希望を感じる。まだまだ世の中、捨てたものではないと。

写真は 『トランスアメリカ』のCDの写真画像。


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1 コメント

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★「ようこそ劇場へ」のbutlerさま (ぴかちゅう)
2006-10-10 23:47:32
TB返しを有難うございましたm(_ _)m

土曜日とはいえ映画の日の前日だったのでシネコンなのにけっこうすいてました。翌日の映画の日も頑張って『花田少年史』を観に行ったらチケットブースの前は長蛇の列。やはり1000円は魅力ですよね。

さて本題。心を開いて人と人の関係をつくっていくって特に屈折を抱えた人間は臆病になります。そこを乗り越えて温かい関係が築けそうだという感触を得た時、生きていてよかったと思えるんじゃないかと思いました。

butlerさんのご覧になった『フラガール』もレディースデイに観ようと思ってます。
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