ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

13/03/26 三月花形歌舞伎の昼と夜をまとめてご報告(^^ゞ

2013-04-13 23:59:22 | 観劇

三月花形歌舞伎は3/20に昼の部、26の千穐楽に夜の部を観た。昼の部観劇後の散策等の記事だけアップしている。肝心の観劇についてだが、四月歌舞伎公演を観る前にまとめて書いておきたい。
「歌舞伎美人」の三月花形歌舞伎の公演情報はこちら
<昼の部>
【妹背山婦女庭訓】「三笠山御殿」
2012年1月の坂東玉三郎初春特別公演では「道行恋苧環」と続けて観ている。その時に玉三郎の指名で共演した松緑の鱶七、玉三郎から教えてもらっての菊之助初役のお三輪ということで、遅れないように気合を入れて観たが、その期待にたがわぬ舞台だった。
亀三郎の求女、右近の橘姫もなかなかの好演。ここが好一対でないとお三輪の嫉妬が共感しにくい。團蔵の豆腐買おむらも加役のお役ぶりが予想以上によくて昼の部でも千穐楽の夜の部でも舞台写真が売り切れていて買えなかった(^^ゞ
橘太郎以下のいじめの官女と菊之助のお三輪の間合いもよく、菊之助の美声もよく通っていじめの場面が実によくわかり、どんどんと惨めな気持ちになっていくお三輪の気持ちが伝わってくる。そして、花道の七三まですごすごと帰りかけるお三輪が御殿の奥から聞こえた祝言の囃子声を耳にして「あれを聞いては帰られぬ」といい、嫉妬の炎に包まれて荒れ狂い、ついに「疑着の相」で御殿奥まで進もうとするところも迫力あり。
そこを鱶七に刺されてしまうが、「女悦べ。それでこそ天晴高家の北の方・・・・・・」との言葉に納得して悦びはするのだが、「それでも最後に求女さんのお顔が見たい」と言いながら果てる姿はその声の美しさで一層の哀れさを誘った。
これだけでも「三月花形歌舞伎」は見応えがあった。それなのに空席がけっこうあったのが勿体ないと思えた。3月は東京の歌舞伎公演が多すぎだからまぁ仕方ないのだろう。4月からの散財を前に全部観るわけにはなかなかいくまい。

【暗闇の丑松】
2006年6月の幸四郎主演の「暗闇の丑松」を記事アップしている。
お米をいびる養母のお熊の萬次郎が絶品でまず物語に引き込まれる。松緑の丑松と梅枝のお米との若い夫婦の愛情の強さから、生きられるだけ一緒に生きていたいという気持ちの切迫感が伝わってきた。
そこで後半の悲劇が際立つ。女房に会いたくて江戸に戻った板橋の宿で女郎姿のお米に再会、お米の言葉を信じない丑松。妓夫の三吉の橘太郎の絶品の語りでお米の言葉の真実に気がついたときはもう遅かった。
長い間自分を騙していた料理人の兄貴分の四郎兵衛への復讐。團蔵とその女房お今の高麗蔵の悪人ぶりがまたよくて、脇役も揃って花形歌舞伎の「暗闇の丑松」は芝居になっていた。ただし、物語が暗いのが如何ともしがたい。

<夜の部>
【一條大蔵譚】「檜垣」「奥殿」
『演劇界』4月号の表紙は、染五郎の檜垣の茶屋での一條大蔵卿のつくり阿呆の時の笑顔だったが、私は残念ながらこの場面はあまり誉めたくない。公家の気品を保ちつつのつくり阿呆という感じがなく、染五郎自身がつくり阿呆ぶりを楽しんでしまっているように見えてしまった。ここは記事アップしていないが、昨年の平成中村座での勘九郎の舞台の方がよかったと思えた。
鬼次郎、お京夫婦の松緑、壱太郎が若々しくてよい。女狂言師として舞ってみせる壱太郎もよし。
「奥殿」で鬼次郎、お京夫婦になじられ折檻されて本心をあらわす常盤御前の芝雀が立派だった。平氏に注進に走ろうとする勘解由を成敗する大蔵卿からは、染五郎もなかなか立派で、見得もしっかりと極まった。勘解由の妻鳴瀬の吉弥もよく、夫の罪に連座しての自害は哀れ。最後に絵面に極まっての幕切れはいつ見てもいい。
【二人椀久】
夜の部はうかうかしている間に3階B席の上手正面がとれず、右袖をとったら正解だった。椀屋久兵衛の花道での踊りがこんなに長かったっけというくらいあり、染五郎の踊りをしっかり楽しめた。花街通いを親が止める言葉に耳をふさぎという歌詞と振りもよくわかった。
菊之助の松山太夫は2006年3月の富十郎との共演の舞台を観ているが、今回は堂々とした傾城ぶりだった。
染五郎初役の椀久との連舞は、若々しい二人の色恋を強く感じさせた。お互いの羽織と打掛をとりかえて着て舞う場面ではお互いの身体からの移り香を感じることができるのだということまでイメージできて、なんとエロティックなのだろうと陶然としてしまった。
それなのに想う人の姿は消え、打掛に見えたのは我が羽織となり、狂気の幻は消えていく。なかなか切ない舞踊劇だ。
  
三月は昼も夜も2演目ずつということで幕間は長く終演時間も早かった。千穐楽夜の部終演のあとはミニミニオフ会を有楽町駅近くのジョナサンでふぶきさん、さちぎくさんとご一緒した。
さちぎくさんからは「二人椀久」の詞章は古いのに、振り付けが新しいのだと教えていただいたが、まだまだ私は舞踊は寝ないでしっかり観ることができるかどうかというレベル(苦笑)そういえば、「二人椀久」は詞章のコピーもいただいていたのにすっかり忘れていた。すみません、できの悪い弟子ですが、よろしくお願いしますm(_ _)m
さて、明日はいよいよ新しい歌舞伎座の第一部第二部を観る。遅れないように頑張ろう。