ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/01/24 『曽我梅菊念力弦』菊五郎劇団の底力を痛感

2006-02-04 19:14:58 | 観劇
1/24に観てきた国立劇場の『曽我梅菊念力弦(そがきょうだいおもいのはりゆみ)』の感想を真面目に書きたい。新春公演のてぬぐいGETねらいで花道外にしたのだが、そちらは全くかすりもしなかったけど、めげずに書くことにする。
その時の簡単なご報告の記事はこちら
その記事に元古典めざましタイこと「バリバリかしまし娘~まいど!」さんからTBをいただいたが、めちゃくちゃ面白い。このややこしい話の面白あらすじもあるのであらすじはその記事を読んでいただきたいm(_ _)m
かしまし娘さんの記事はこちら
今回は観劇前に「『曽我梅菊念力弦』ができるまで」と題したレクチャーを受講したのだが、その時におききしたこととの関係で観劇しながらフムフムと思ったこと。168年ぶりの復活上演で残っていない舞台装置などは錦絵や絵草子などの絵などを参考に作り出すのだという。今回珍しいなと思ったのは銭湯の場と最後に大立ち回りをする万年橋初午祭の藤棚の場の舞台装置。それも稽古中に人物の動きとの関係での変更が入るので筋書の中にあらかじめ刷り込んである道具帳の絵とは最終的に違った舞台になっていたりするということをちゃんとこの目で確認できたのは面白かった。

そして時代の曽我物と世話の世界をどうつなぐのだろうと思って観ていたが、曽我の十郎の家臣・鬼王新左衛門(信二郎)の弟が養子にいって大工の六三郎(菊五郎)になっているという一点でつなげていたのだった。全く無理やりだが、曽我物と庶民に身近な世話物をこうしてつないで新春狂言にするという工夫をしたんだなあということがわかる通し上演になっていた。
世話物好きな私は世話物の世界から幕開けしてもらってすーっと入っていけた。

花道の外だが菊之助のおそのが花道から出てくるのを至近距離でしっかり見る。本当に綺麗~。鶴ヶ岡八幡宮の前という設定。菊十郎の梶原源太景季のなれのはて(無理無理の設定)の夜鷹の元締めが難癖をつけていたぶり、通りかかった普請場棟梁の六三郎(菊五郎)に助けられ~、その男ぶりに惚れてお礼代わりに~とかいっちゃってしっかりと色模様になる。『おその六三』のパロディの始まり~。菊五郎丈はちょっとこれだけ近距離で見るのはちょっと苦しいけれど片目をつぶる気持ちで観た~。
第二場の鶴ヶ岡八幡宮での時代の場面。松緑の曽我五郎の見せ場で姿と動きはなかなか堂々としていてよいが、どうも声が一本調子。父上の個性的な低音にもう少し似てくれるといいなあ。亀蔵の梶原景時は憎憎しい敵役でいい。亀蔵さんの方が勝ってるな。
第二幕はおそのが芸者づとめに出た後に妹おはん(菊之助の二役目)が盗まれてしまったお家の重宝「あまくにの一刀」が質入されているという質屋に嫁入りする場面。質屋の息子がちょっと足りなさそうな醜男で松也が好演。初めて婿殿を見たおはんの菊之助が気絶しそうになるという場面に客席はどっとわく。床入りを迫る婿殿から逃げ回っていたら、そこに盗賊が押し入り、頭目・新藤徳次郎(菊五郎の二役目)のいい男ぶりに醜男にぞっとした反動からか一気に色模様へ。おはんは徳次郎の子を宿してしまい、「あまくにの一刀」も盗まれたから縁談も流れてしまう。その後、新藤徳次郎は商売を始めて帯屋長右衛門と名乗っていたところにおはんと再会。『おはん長右衛門』のパロディとなる。
三幕目で「曽我対面」的場面となる。松緑の五郎と仇の工藤祐経・富十郎の対面で絵面にきまって幕。ここで十郎の愛人・大磯の虎に芝雀、五郎の愛人・化粧坂の少将に松也が並ぶ。松也の二役目の美しさに大満足。父譲りの三枚目から女方まで守備範囲を広くとれるのが好ましい。

四幕目は深川仲町洗場(せんとうと読む)の場。男湯に一座の女方衆が女装のまま乗り込んできて脱ぎだす場面もどっと笑いをとる。ここでおそのが六三と再開。手に入れ黒子とか入れたおそのは『盟三五大切』の小万を思わせる。
おはんと徳次郎の再開の場面、ふたりの間の赤ん坊をも拾われてここにいるのだが、原作では徳次郎に邪魔にされて刺し殺されるところを今回はおはんがかばって抱きかかえながらの徳次郎殺しになる。コクーン『桜姫』でも赤子は殺さなかった演出だったことに重なる感じ。
南北は不義の仲に生まれた赤子は殺してしまうというストーリー展開がお好みのようだ。『桜姫東文章』では姫が赤子を殺すが、今回は父親の方が事情を知らないうちに殺してしまおうとする展開。どちらにしてもちゃんと殺すというやり方が江戸時代的にはふさわしいと思うのだが、今回の上演も毒気を薄めた感はある。国立劇場サイドの判断なのか、菊五郎さんの好みなのかわからないが。
追記:この作品、蘇我兄弟物のはずなのに十郎は出てこない。それよりも十郎の家臣・鬼王新左衛門と弟である六三郎のきょうだい、おそのとおはんのきょうだいの強い思いの話かなと思った。

再会したおそのと六三だが、六三にはおきぬという女房がいるのにおそのの身請けを請け負ってしまうハメになる。そのおきぬの養い親の長兵衛を団蔵が演じていたが、世話物の悪役を初めて見たがとてもよかった。六三は、その長兵衛を殺すハメになり、おそのが主筋の娘だとわかり自害しようとするが、そこを救うのが女房おきぬ(芝雀の二役目)。自分が身をひいて六三とおそのを添わせようとする。ここがよくわからないのだ。子無きは去るという覚悟からなのかなあ。いずれにせよ、芝雀は昨年見た『自雷也』での役といい、自分を犠牲にして男を救う女の役がハマル感じがある。
めぐりめぐって長兵衛のところにあった「あまくにの一刀」がまた奪われて、六三がそれを取り返すための大立ち回りが大詰めにある。藤棚の上での立ち回り、四天が大勢出て傘を開いて富士山の稜線を形作ったりする贅沢な立ち回り。国立劇場の横に広い舞台いっぱいに広がるのを見ると菊五郎劇団のもつ底力を目の当たりにした思いがした。

最後は「あまくにの一刀」が取り戻されておそのの家が再興がかなえられて大団円で終わるのだ。許す主家の千葉家の殿様が富十郎(二役目)。
おそのの母に田之助もいて、人間国宝が居並ぶこの舞台。脇役陣も含めて芝居達者が揃い、若手も美しく時分の花を咲かせ、バランスのよいとても贅沢な舞台だったと思う。国立劇場の菊五郎劇団の公演はこれからもしっかり観たいという思いを強くした。
写真はこの公演のポスターの中の菊五郎二役の写真部分をアップで携帯で撮影。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今月の (yukari57)
2006-02-05 02:47:39
菊五郎もいいようです。新世代というか、次世代のキクキチ対決が火花、とか。今日、楽しみです、とりあえず昼の部。
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すみません・・・ (ぽん太)
2006-02-05 12:23:34
ぴかちゅうさん、TBありがとうございました。こちらもTBいたしましたら、なぜか二重投稿に…。すみません。

とても詳細な感想にびっくり。すごいですねぇ。それにしても事前レクチャーは私も聞きたかったです。羨ましい。

制作過程がわかると一層面白いでしょうね!
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おはずかしながら (harumichin)
2006-02-05 22:24:51
TBありがとうございました。

こちらからも4回分TBさせていただいちゃいました。

すでに2月に入ってすっかり懐かしくなってしまったのですが・・・。
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紹介ありがとうございました (かしまし娘)
2006-02-06 11:16:42
ぴかちゅう様

本文での紹介ありがとうございました…でも、

お恥ずかしいです…。

「大詰」きちんと判ってないし…テンション落ちてきてるし…。



>舞台装置などは錦絵や絵草子などの絵などを参考に>作り出すのだという。

なんと!知りませんでした!



風邪が早く治りますように。ではまた!

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