「魔王」作品1 と比肩する重みの ピアノ3重奏曲作品100。
シュパンツィヒ にも ボクレット にも カロリーネ・エステルハージ伯爵令嬢(1806-1851) にも出版譜では捧げられなかった
ピアノ連弾幻想曲作品103 D940 が カロリーネ に捧げられて出版されたことは超有名。だが、『ピアノ3重奏曲変ホ長調作品100の自筆譜』には「カロリーネ・エステルハージ伯爵令嬢に捧げる」と明記されているのだ! 出版楽譜には印刷されなかったので、ほとんど知られていない。新シューベルト全集も楽譜には書いて無い。主題カタログ新版(1978)に掲載されているだけであるから。最晩年の2作品をカロリーネに捧げたシューベルト。だが初演してもらうシュパンツィヒとボクレットの顔も立てなくてはならず、印刷譜には献呈者無しになったのだろう。カロリーネに献呈したらボクレットが弾かない、の可能性さえあった。知り合って9年になるカロリーネは上記4名よりも長いつきあいになるのだ。自筆譜はライプチヒの出版社プロープストからシューベルトに返却された後、無事にカロリーネに届けられたことだろう。