Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

下野竜也指揮読響第540回定期演奏会批評(No.2392)

2014-09-09 23:56:56 | 批評

骨格作り と ステンドグラス細工かのような細部の綿密な仕上げ が両立した 下野竜也指揮読響「ブルックナー:交響曲第9番」


 ブルックナー:交響曲第9番は、後期(第7番以降)の中で、ブルックナー自身が完成した第3楽章までを演奏する限りだと最短の曲なので、後期3大交響曲の中では最も演奏頻度が高く、私高本も最も多く聴いている。その全ての演奏に於いて

「下野竜也の目指すブルックナー第9番像」は、他の指揮者とは全く別物であり、細部の仕上げが異常な水準で細かに仕上がっている!


が圧倒的な印象。そして、骨格も勿論骨太!

  1. 各パート の アーティキュレーション が(楽器の特性を超越して)一致していた


  2. 基本音量が小さい上に本数が少ない 木管楽器群 が必要な箇所では、最前面に浮き上がり、ブルックナーの意図がはっきり伝わって来た



の2点が特に賞賛されるところである。終演後、あまりの名演に 下野竜也 がタクトを降ろした後も、しばらく拍手1つならず、10秒以上経過したと思える時から2階RAブロックから拍手が始まり館内大拍手となり、下野 が正面を向くや否や、ブラヴォーが殺到した。


「9月9日の演奏会なので、ハイドンとブルックナーの交響曲第9番」と言う人を喰った記述がプログラムノートに記載されていたが、これはいつもの 下野竜也 のリップ・サービス。「なぜ、モーツァルトで無く、ハイドンなのか?」は当日演奏を聴くまで解らなかった。だが、定期演奏会を通して聴いた後には、はっきり断言出来る。

ハイドン交響曲第9番第3楽章メヌエットトリオ中間部の「管楽器だけのアンサンブル」で、ブルックナーの心構えを奏者に与える為のプログラムビルディング


 上手かった! 読響の管楽器アンサンブル!! 曲自体は 第6~8番の「朝、昼、晩」に比べて印象は薄い初期の交響曲だが、この箇所の「明るい響き」は心に残る。


「下野竜也のスコアリーディング」は、『オーケストラ配置』から始まっており、極めて独創的



  1. ハイドンでは、左から Vn1(6) - Va(4) - Vc(2) - Vn2(6) だったのに、ブルックナーでは、Vn1(16) - Vn2(14) - Vc(10) - Va(12) だった


  2. ブルックナーの金管配置が、左から Hr - Tuba - Tbn - Timp - Tp



 猫頭ヒョーロンカの私高本の記憶では、下野竜也が同じ読響を指揮した ブルックナー交響曲第5番 では普通の配置だったような気がする。第5番もチューバを使用しているので、異なるのは 第3楽章の ホルン5番~8番奏者が持ち替える ワーグナーチューバだけである。すると

下野竜也 は ブルックナー交響曲第9番 では、この配置が最善! と判断した


ことになる。実際に、第1楽章展開部などで、チューバ と ホルン の連携が鮮やかに響くなど、耳新しい音響シーンが連発。ワーグナーホルン登場の第3楽章は特に印象深かった。


 先に「木管楽器群 が 最前面に浮き上がり」と記載したが、その裏には「金管楽器 と 弦楽器 が音量を抑制する」ことを意味する。

「ブルックナーは楽器毎に徹底して強弱記号を記載しない作曲家」であり、マーラーとは正反対


な一面はあまり知られていない。(現行の国際ブルックナー協会版楽譜が不明瞭な記載であることが原因、だと私高本は感じている。)(続編に続く)
コメント
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