Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

続:川崎ミューザリニューアル記念ブルックナー9番+テ・デウム批評(No.2251)

2013-04-08 22:06:31 | 批評

第1楽章は感動的な演奏だったが、続く楽章と「テ・デウム」の組み合わせ方が焦点が合わなかった スダーン + 東響


 第1楽章は、「ホルン11本の充実した響き」を中心に「ささやく場面」と「響き亘る場面」設定が鮮やかに描かれた。ブルックナー交響曲の中でも「第1楽章の規模」が最も大きい曲の1つだが、スケールの大きさを十全に描いた、と感じた。

第2楽章でのスダーンは、他のブルックナー指揮者とは真反対の「動機処理」、即ち『2小節単位で繰り返される同音反復の和音リズム』を数種類の異なるアーティキュレーション処理を施し、変化に富んだ演奏に仕上げた


 多くの場合「リンツから出て来た田舎くさい時代遅れの交響曲作曲家ブルックナー」と生前から21世紀の現代まで言われて来た原因の1つが、「スケルツォ楽章のリズムがあまりにも執拗なこと」である。
 スダーンは、アーティキュレーションに変化を付けて、野暮ったさを出さない。この処理は反面「リズム反復の面白さ」を後退させる。ベートーヴェン交響曲第7番以降の「ドイツ派交響曲」の伝統では、「同じリズムを繰り返す面白さ」を強調する指揮者が多い中、主張が強い解釈だった。具体的には、弦楽器の「音符の長さ」を微妙に変えていた。またそのため、ティンパニを相当に弱めに使っていたことも印象的。


 第3楽章アダージオ を「終楽章として」演奏しようとしたのか? 「中途楽章として」演奏しようとしたのか? が、はっきりしなかった。音のバランスとしては、ワーグナーテューバ4本に対して、ホルン7本使用で、「はっきりとホルンを目立たせる」方向の音作り。チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」の終楽章のように、いっぱいに「溜める」フレーズ処理の時もあれば、あっさりと進む処理の時もあり、統一感があまり無い感触。25分以上かかった楽章最後の箇所は、ややあっさり目だったので「中途楽章」の解釈が優っているように感じたが、(チャイコフスキー「悲愴」第3楽章終了時に多くの指揮者が行うように)左手で拍手を制することは無かった。特にフライング拍手も無かったのだが、スダーンが手を降ろすと拍手が結構大きく鳴った。


 「東響コーラス」合唱団員(女声86名、男声58名だと思う)と声楽ソリスト4名とオルガン奏者を入れるのに体感で5分くらい? 何だか「交響曲の続き」の感触は全く無いし、かと言って「休憩も無い」ので、「新しい曲」にも感じ難かった。

 「テ・デウム」の楽器編成について。2管編成でホルン4本の指定。それを交響曲第9番と同じメンバーで演奏したので、木管楽器は「1.5倍」、ホルンは「2.75倍」の編成。それを「東響コーラス」は標準編成(私高本が聴いた範囲では180名前後が標準なので2割少ない!)を随分下回る編成。
 スダーンも「合唱団の少人数」の処理に悩んだ様子。ブルックナー「テ・デウム」はソロも合唱もテノールに活躍の多い曲。ソリスト(キム)は目一杯歌い切ったが、合唱団は「in gloria!」のフレーズなどが、他パートに埋もれてしまった箇所も多く、残念><
 また、後に行くほど「声の疲れ」が合唱団にあり、「ソプラノの最後のハイC」は、東響コーラスとしては珍しいほど、輝きが薄かった。


 この演奏会で疑問に感じたことを列挙する。原因が大きい、と感じた順に書く。

  1. 合唱団員が人数的に「最善」を尽くす人数に大巾に満たなかった


  2. しかも、演奏会初めから「座って待機させる」スペースすら無かったので、第3楽章後に入場させ、「音楽の流れ」が完全に途切れた。根本原因は「Pブロック」に聴衆を入れたこと


  3. 第1楽章終了後に、「遅れ入場者」を着席させたが、2年ぶりのリニューアルオープンで会場案内が極めて遅く「音楽の流れ」が完全に途切れた



 この3点だと感じる。3年前のサントリーホール定期演奏会では、演奏会冒頭から合唱団員を着席して準備し、第3楽章終了直後に「テ・デウム」が開始されている。スダーンは「勝手が違ってしまった><」のでは無いだろうか?


「CD化が決まったブルックナー第6番の超名演」には諸条件が整わず到達しなかったが、第1楽章は素晴らしかった演奏会


と感じる。
 NHKが収録していたので、いずれ放映されるハズ。私高本 の批評が「ピントハズレ」かどうか? については、来場出来なかった皆様(全席完売!)もTVをご覧になってご確認頂ければ幸いである。
コメント
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