ぱたの関心空間

関心空間と徒然なるままに。

ガレキとラジオ@京都みなみ会館

2013-07-01 15:32:47 | 映画感想
タイトルは「ガレキ」と「ラジオ」だけど、勿論ラヂオの話。

震災の後、南三陸町で立ち上がり10ヶ月程で閉局した災害FM局「FMみんな」を追いかけたドキュメンタリー。
スタッフは全員素人、スタジオはコミュニティセンターの通路の一角、みたいなところ。

南三陸町といえば、震災で6割の家が被災、1割近くの人が犠牲になるなど甚大な被害あった自治体の一つである。
津波が襲った後の何もない(いや、ガレキとか流されなかった建物の骨組みとかはあるけど)町の情景は映し出されるし、家族をなくして一人ぼっちになってしまったリスナーの女性も登場するが、基本的にはラジオ局メンバーの悲喜交々を追うという内容。
震災を扱った映画というとどうだろう。震災で被った人々のとてつもない深い哀しみを追いかける、というのが普通のパターンだろう。先日観た「3.11後を生きる」とか、「遺体〜明日への十日間」なんかは、真っ正面からそういう映画だった。だけど、この映画はちょっと違う。

なんというか、簡単に言えば明るいんだな。
慣れない素人集団がありあわせの機材で、失敗したり家族に無下な言葉を投げかけられたり自分たちなりの演出を凝らしてみたりする姿はそもそも喜劇であり、それでも町のために、自分たちの為にと懸命に頑張り感動を作り出して行く過程は極上のヒューマンドラマである。

泣き虫な儂は、やっぱりこの映画でもダダ泣なのだが、涙があふれるのは子供達とクリスマスイルミネーションを灯す点灯式のシーンであり、4組のカップルが白いドレスとタキシードで門出を祝う出発式のシーン。あぁ、「3.11後を生きる」のお祭りのシーンで泣けてしまったのもこれだね。
前向きで嬉しく愉しいところで出る涙っていうのは、哀しい話で流す涙とだいぶ後味が違うもんだ。

見ている方向が前、という点では「先祖になる」も同じだな。

監督がどういうつもりでこの映画を撮ったのかは知らないが、ラジオに目をつけたっていうのは、嬉しいよね。
だって、人々を繋げるメディアなんだよ、ラジオってさ。
なんか、隣にいるみたい、みたいな感じがするんだよ、ラジオってさ。

テレビとラジオの違いってなんだ?って考えることがある。
だって、同じ公共の電波を使うマスメディアでありながら、全然違うのだ、テレビとラジオは。不思議なことに、同じ局の放送を(例えば、天下のNHKだって!)見て聴く時にでさえ、その印象は全く違うものになるのだから。
ま、分析はいくらでも出来る。しかし、大事なのは、結果としてラジオがどんだけ人々の支えになっているのか、ってことだと思うのだ。

ここで大事なのは繋がっている、という実感なんだと思う。
一番わかりやすいのは、やっぱりリスナーの幸子さんの話。一人で仮設住宅にいても、ラジオが流れていれば近くに人の息づかいを感じる事が出来る。単純だけど、そういう事。
この震災で彼女のように家族をなくし、仮設住宅で孤独に沈む人がどれだけいるだろう。仕事を、故郷を無くし、社会的なつながりを自ら見出せないまま立ち止まってしまった人がどれだけいただろう。
そんな人たちにとって、ラジオがあるっていうことがどれだけ心の支えになるのだろう、どれだけ人に、また人と繋がれることの喜びを思い出せてくれただろう。どれだけ毎日の生活を勇気付けるのだろう。

今回の震災でも多くの災害ラジオ局が開設されたと聞く。災害FM局の本来の役割は、「災害が発生した場合に、その被害を軽減するために役立つこと」らしいのだが、もちろんそういった役割と同じ、場合によってはそれ以上の役割を果たしていたであろうことは容易に想像がつく。

もちろんラジオだって万能ではない、万能でないどころか、ちっとも十分でもない。んなこたぁわかっとる。でもその果たす役割の大きさって結構大きいと思うのだ。

クリスマスイルミネーションも出発式も、一人の力ではなかなか出来ないと思う。
ラジオの繋がる力があったから、こんな感動的ないいイベントが出来た、そう感じます。

役所広司さんのナレーションは、津波にのまれて亡くなったと思われる「僕」の立場、はっきり言わないから憶測だけど。
でも、はっきり言わないからこそナレーションの「ぼく」と一体になって「FMみんな」のみんなの活躍を見守っている自分になれるんだ。

「ぼく」は言う。
「『がんばれ』はキライ。『がんばる』は好き。」
うん、儂も『がんばれ』はキライ。
それは自分が頑張れない事に気づかされてしまう言葉だから。
あと、『がんばろう』もちょっと好きだな。
隣に立って同じ方向を向いている気がするから。

でも、儂が一番言いたいのは『がんばりすぎないで』。
みんな一人一人、それぞれのペースを持っているから。だからそれぞれのペースで一歩を踏み出して行けばいい。時には立ち止まってみたっていい。前を向いて、未来を信じるなら、その時にラジオみたいにあたたかく寄り添ってくれる存在があるのなら、それでいい。

京都みなみ会館での上映は5日まで。ロビーで写真展もやってます。
えっ?そんなん行く時間ないって?
しゃーないなー>http://www.311movie.com/...

ガレキとラジオ@京都みなみ会館の画像

ガレキとラジオ@京都みなみ会館の画像

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