海上自衛隊の、イージス艦「こんごう」からの迎撃ミサイルSM3の発射成功が、嬉々とした内容の報道が紙面を賑わしている。なにはともあれ、アメリカ以外の国が初めて成功したのだから、喜ぶべきと国民を操作するしているようにも思える。
しかし、これには幾つもの我が国が抱える、大きな問題を放棄するか触れないようにしている報道姿勢である。まず、大気圏外の迎撃であり、国際的な「平和的な宇宙開発」合意に大きく抗するものである。
我が国から見ても、「集団的自衛権」の内容に抵触する攻撃である。少なくとも、このことに対する論議は、皆無の中での実験である。これは専守防衛論議を高めた結果であって、大気圏外の攻撃についての「集団的自衛権」解釈は存在しない以上慎重であるべきである。
このミサイル開発に積極的で実質な功績者である、守屋前政務次官は何度目かの逮捕を受 けて収監中の身である。このミサイルの開発は、日本の三菱重工がやっていることをみると、なにやらきな臭いものを感じる。
この開発は「日米産学複合体」の、軍事的部門の道を開いたことになる。民間の開発によるものであれば、当然武器輸出の営利を視野に入れることになる。
SM3の開発だけで、412億円の巨費が投じられている。さらに失敗の受け皿に、陸上のパトリオット(PAC3)の設置が必要とされている。PAC3の配備で、優に1兆円を超える金額になる。さらに、守屋の描いたシナリオが完成すると、6兆円程度の計画になる。
この背景には、北朝鮮をすっかり悪者に仕立て上げたマスコミの功績がある。もちろん、金正日体制は強力な軍事国家で不法行為を重ねてはいるが、到底この国の国家予算の数年分をかける程の事業ではない。
事前に知らされている弾道を、7分後に撃墜したことが成功で実用的であるとは信じがたい。このエセ実験の成功に浮かれ、ことの本質と目的と背景を看破しないこの国報道は、戦争に対する貞操感が希薄になってしまったことを感じる。