市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

安心な食と安全な技術が売りの日本を一瞬にしてダメにした東京電力と官僚と政治家

2011-04-12 23:48:00 | 前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災
■これまで、我が国の政府は福島第一原発事故の評価について、3月11日の東日本大震災と同時に発生した事故直後は、「レベル4」としていました。その後3月18日に「レベル5」に渋々上げた後、20日以上たった4月12日になって突然、2ポイントアップさせて、最悪の「レベル7」に変わりました。このため、日本政府や東電が、今回の原発事故について、現状の評価や先行きの予測能力が全くなかったことを世界に露呈してしまいました。
 一方では「本当は知っていたのに隠していたに違いない」という見方も世界の国々に植え付けてしまいました。その結果として、「日本は今回の原発事故を過小評価しようとしてきたのではないか」という批判を招くことになったのです。

■今回ようやく「レベル7」を宣言した原子力安全委員会によると、外部に出た放射性物質の大半は、福島原発1~4号機で水素爆発や火災などが相次いで発生していた3月15日頃までに放出されていたということですが、さらに2号機の圧力抑制室が内部での爆発で壊れて、高濃度の放射性物質が外部に放出されたため、3月15、16日にかけて、放射性物質の放出総量がさらに跳ね上がった結果だとしています。素人レベルの分析としか思えません。

 しかも、いまだに放出された放射性物質の量はチェルノブイリの10%程度にとどまっているなどと言っていますが、計算による放射性物質の量が、まちまちで、とくに経産省の役人が計算した原子力安全・保安院ではいまだに過小評価した数字を出しており、ますます世界の懸念を増幅させています。

■事故発生から間もなく、フランス原子力安全局は「レベル6」、米民間機関の科学国際安全保障研究所も「レベル6または7」との見解を示していました。当会も「レベル6.5」と見ていましたが、経産省の役人は「健康にかかわるものでない」として、世界の声に無視して、見直をしようとする姿勢は全く見せず、ませんでした。

 その後、3月15日に国際世論に押されるかのように渋々「レベル5」に変更しましたが、原子力安全・保安院の西山英彦審議官は「圧力や温度などが大きく変動し、評価が難しかった」と弁明したうえに、その後はずっと「レベル6にするには早い」と繰り返していました。

■さらに疑念があります。東電は低レベルの放射能汚染水だとして、大量の冷却用海水が由来と思われる水を、海に放流しましたが、この放流に先立ち、アメリカ政府にしか事前に通報をしませんでした。

 日本はいままで、IAEAでも、国際的なルールを守って、必ず異常事故や事象が起きた場合には速やかに世界各国に通報するよう、主張してきました。今回の放射能汚染海水の放出は、事象ではなく方針ですから、事前通報とすべきですが、またもや後付けで通報してしまいました。

 また、東電が、事故直後から放射性物質を含んだ蒸気を大気中に放出し続けていることについて、自ら排出した放射性物質の総量を把握してこなかったことに加え、今回のように放射能を帯びた大量の汚染水を海に放出したことについて、事前に、そうした必然性について認識していたはずですが、それらを隠して、どうしようもなくなってから、強引に実施するのをみると、実は、これまでにもこうした行為を、こっそりとやってきており、とくに抵抗感がなかったのではないのか、という疑惑も生じます。

■3月14日に経産省が発表した資料でも、これまで我が国で発生した原子力関係の事故を見ても、東電の新潟県刈羽原発や福島県福島原発での事故がまったく記載されていません。

 福島原発ではこれまでにも、冷却水循環ポンプの事故などがあったはずであり、それらがまったく無記載であることから、東電の隠ぺい体質を知りつつ、このような資料を作成した経産省は、天下り先としての東電をいまだに庇っているのではないか、という疑いの目を浴びることでしょう。

■我々国民としては、第2次大戦中の大本営発表を彷彿させるようなこれまでの政府の発表体質を呆れていましたが、4月12日の日本政府の「遅かりし」発表は、冒頭のタイトルに掲げた我が国のイメージを世界の国々に対して著しく損なってしまいました。

 これまで原発政策を推進してきた自民党系の政治家や官僚、そして彼らが群がっていた東電が、実は原子力に関してド素人であり、利権の対象としてしか見ていなかったことがこれではっきりしました。

 時すでに遅しですが、今からでも情報開示をきちんと迅速に行っていくしかありません。

【ひらく会情報部】

※参考資料
<4月12日に経産省が発表した資料>
平成23年4月12日
東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故・トラブルに対するINES(国際原子力・放射線事象評価尺度)の適用について
 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故・トラブルに対するINES評価について、3月18日以降に得られた情報を踏まえ、レベル7と暫定評価しました。ただし、放射性物質の放出量は、同じレベルのチェルノブイリ事故の1 割程度です。
1.INESについて
 INESは、国際原子力機関(IAEA)及び経済協力開発機構の原子力機関(OECD/NEA)が、原子力施設等の個々の事故・トラブルについて、それが安全上どのような意味を持つものかを簡明に表現できるような指標として策定し、1992年3月に加盟各国に提言したものです。
 我が国においても、1992年8月1日から運用を開始しています。
2.東北地方太平洋沖地震による東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故・トラブル
 東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故・トラブルについては、3月18日にその時点で得られている情報での暫定的な評価(レベル5)をお知らせしていますが、今般、原子力安全・保安院においては、原子力安全基盤機構(JNES)の原子炉の状態等の解析結果から試算を行い、福島第一原子力発電所の原子炉から大気中への放射性物質の総放出量をまとめたところ、表に示すとおり、INES評価のレベル7に相当する値※となっています。
※ 放射線影響としてヨウ素131と等価となるように換算した値として数万テラベクレル(1016ベクレルのオーダー)を超える値。
また、原子力安全委員会において進められている大気中への放射性物質の総放出量の推定的試算の現段階での結果がとりまとめられました。この試算は、ヨウ素131とセシウム137について、モニタリングの測定結果から逆算により福島第一原子力発電所全体の放出量として求められており、INES評価は同じくレベル7に相当する値となっています。

福島第一での想定放出量 (参考)
核種 / 保安院概算 / 安全委員会発表値 / チェルノブイリでの放出量
ヨウ素131(a)/13 万テラベクレル(1.3×10^17Bq)/15 万テラベクレル(1.5×10^17Bq)/180 万テラベクレル(1.8×10^18Bq)
セシウム137/6 千テラベクレル(6.1×10^15Bq)/1 万2 千テラベクレル/(1.2×10^16Bq)8 万5 千テラベクレル(8.5×10^16Bq)
(ヨウ素換算値)(b)/24 万テラベクレル(2.4×10^17Bq)/48 万テラベクレル(4.8×10^17Bq)
340 万テラベクレル/(3.4×10^18Bq)
(a) + (b)/37 万テラベクレル(3.7×10^17Bq)/63 万テラベクレル(6.3×10^17Bq)/520 万テラベクレル(5.2×10^18Bq)
(注)原子力安全・保安院概算と原子力安全委員会発表値におけるヨウ素換算値は、INES ユーザーズマニュアルに基づく換算を当院が行った。
INESレベル7は、INESの評価の中で最も重い評価ですが、過去同じ評価となったチェルノブイリ発電所事故における環境への放射性物質放出量と比べると、現時点では約1割前後と見込まれています。
3.今後の進め方
 今回の情報は、福島第一原子力発電所全体での放出量についての現段階での結果であり、放射性物質の環境への放出は継続しており、今後も継続して情報を収集し、評価していくこととしています。
 また、最終的なINES評価については、原因究明が行われ再発防止対策が確定した後、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会に設置されたINES評価小委員会(委員長:関村 直人 東京大学大学院工学系研究科教授)が専門的、技術的な立場から検討し、正式評価を行います。
(本発表資料のお問い合わせ先)原子力安全・保安院 原子力安全広報課:渡邊、小山田
電 話:03-3501-1505 03-3501-5890

(参考)
原子力施設等の事象の国際評価尺度
  レベル  基準1「人と環境」    基準2「施設における放射線バリアと管理」    基準3「深層防護」
■事故レベル7(深刻な事故)
 基準1「人と環境」
  ・計画された広範な対策の実施を必要とするような、広範囲の健康および環境への影響を伴う放射性物質の大規模な放出。→旧ソ連・チェルノブイリ発電所事故(1986年)
■事故レベル6(大事故)
 基準1「人と環境」
  ・計画された対策の実施を必要とする可能性が高い放射性物質の相当量の放出。
■事故レベル5(広範囲な影響を伴う事故)
 基準1「人と環境」
  ・計画された対策の一部の実施を必要とする可能性が高い放射性物質の限定的な放出。・放射線による数名の死亡。→イギリス・ウインズケール原子炉事故(1957年)
 基準2「施設における放射線バリアと管理」
   ・炉心の重大な損傷。・高い確率で公衆が著しい被ばくを受ける可能性のある施設内の放射性物質の大量放出。これは、大規模臨界事故または火災から生じる可能性がある。→アメリカ・スリーマイルアイランド発電所事故(1979年)
■事故レベル4( 局所的な影響を伴う事故)
 基準1「人と環境」
  ・地元で食物管理以外の計画された対策を実施することになりそうもない軽微な放射性物質の放出。・放射線による少なくとも1名の死亡。→JCO臨界事故(1999年)
 基準2「「施設における放射線バリアと管理」
  ・炉心インベントリーの0.1%を超える放出につながる燃料の溶融または燃料の損傷。・高い確率で公衆が著しい大規模被ばくを受ける可能性のある相当量の放射性物質の放出。→フランス・サンローラン発電所事故(1980年)
■異常な事象レベル3(重大な異常事象)
 基準1「人と環境」
  ・法令による年間限度の10倍を超える作業者の被ばく。・放射線による非致命的な確定的健康影響(例えば、やけど)。
 基準2「施設における放射線バリアと管理」
  ・運転区域内での1 Sv/時を超える被ばく線量率。・公衆が著しい被ばくを受ける可能性は低いが設計で予想していない区域での重大な汚染。
 基準3「深層防護」
  ・安全設備が残されていない原子力発電所における事故寸前の状態。・高放射能密封線源の紛失または盗難。・適切な取扱い手順を伴わない高放射能密封線源の誤配。→スペイン・バンデロス発電所火災事象(1989年)
■異常な事象レベル2(異常事象)
 基準1「人と環境」
  ・10 mSv を超える公衆の被ばく。・法令による年間限度を超える作業者の被ばく。
 基準2「施設における放射線バリアと管理」
  ・50 mSv/時 を超える運転区域内の放射線レベル。・設計で予想していない施設内の区域での相当量の汚染。
 基準3「深層防護」
  ・実際の影響を伴わない安全設備の重大な欠陥。・安全設備が健全な状態での身元不明の高放射能密封線源、装置、または、輸送パッケージの発見。・高放射能密封線源の不適切な梱包。→美浜発電所2号機蒸気発生器伝熱管損傷事象(1991年)
■異常な事象レベル1(逸脱)
 基準3「深層保護」
  ・法令による限度を超えた公衆の過大被ばく。・十分な安全防護層が残ったままの状態での安全機器の軽微な問題。・低放射能の線源、装置または輸送パッケージの紛失または盗難。→「もんじゅ」ナトリウム漏れ事故(1995年) 敦賀発電所2号機1次冷却材漏れ(1999年)浜岡発電所1号機余熱除去系配管破断(2001年)美浜発電所3号機2次系配管破損事故(2004年)
■尺度未満レベル0
  安全上重要ではない事象
  0+ 安全に影響を与え得る事象
  0- 安全に影響を与えない事象
■評価対象外 安全に関係しない事象
注)INESが正式に運用される以前に発生したトラブルについては、推定で公式に評価されたレベルもしくは試行で評価されたレベルを表記。

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