市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

勤務時間中に統計調査のバイトをしていた安中市職員の情報非開示を容認した審査会の答申内容

2010-08-15 23:12:00 | 困ったちゃん岡田義弘・元市政

■平成21年12月24日に、市民から「調査員を委嘱された市職員の場合、庁用車で勤務時間に市内に出ることが可能な職員の多くは、その時間に堂々と各世帯に調査票を配布・回収していて給与の2重受け取りになっている。上司も気づいても黙認。単独や2人組などで勤務中にバイトのように調査員の仕事をしている。今年も国勢調査等あるので監視してください」という情報提供がありました。

 そこで、当会は平成22年2月15日に、安中市情報公開条例第6条第1項の規定により、行政文書開示請求書を岡田市長に提出したところ、肝心のいくつかの情報が非開示となりました。

 そのため、平成22年4月26日付で、次の内容で異議申立てを岡田市長あてに提出しました。

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【異議申立書】
平成22年4月26日(5月5日補正)
安中市長 岡田義弘 様
     異議申立人 〒370-0114安中市野殿980番地 小川 賢
行政不服審査法の規定に基づき、次のとおり行政文書部分開示決定に対して異議申立を行います。
1.異議申立に係る処分:
 平成22年2月16日付で受理された異議申立人の請求した行政文書について、安中市長岡田義弘の平成22年2月26日付安発企第24195号の安中市情報公開条例(以下「条例」という)第12条第2項の規定による行政文書開示決定等期間延長通知書により行われた平成22年3月31日付安発企第27325号の安中市情報公開条例(以下「条例」という)第11条第1項の規定による行政文書部分開示決定処分。
2.異議申立に係る処分があったことを知った年月日:平成22年4月1日(木)
3.異議申立の趣旨:本件文書の開示期間延長に基づく部分開示決定処分は、条例を不当に解釈し運用されたものであり、処分の取り消しを求めます。
4.異議申立の理由:
(1)異議申立人は、安中市に在住する住民である。
(2)安中市長は上記の行政文書開示決定等期間延長通知書で、延長の理由について「本件請求に係る情報については、実施主体である国の開示基準を確認する必要があり、現在その照会作業を行っているため、安中市情報公開条例第12条第2項の規定に基づき、期間を延長するものです」と述べた。
(3)安中市長は、上記の行政文書部分開示決定処分において、非開示部分を開示しない理由として、「統計調査員の氏名は、条例に規定する個人情報で、国の統計調査の公開に関するガイドラインにおいても『統計調査員の氏名、年齢、住所等の個人に関する情報については不開示とする』という指針に沿って不開示と致しました」と述べた。
(4)だが、開示された行政文書を見る限りでは、上記(2)項の照会作業の経緯を示す情報はなく、上記(3)項で参照用に添付された「国のガイドライン」にしても、これは平成21年4月1日付各府省統計主管課長等会議申合せで決定されたものであり、平成22年2月16日から3月2日までの開示決定期間を、年度末の3月31日まで延長する理由を説明するものではない。
(5)異議申立人は、昨年12月24日に市民から「国勢調査などで統計調査の調査員に市職員が委嘱されていて、報酬が支給されている。通常は、土日や時間外に調査業務を行うはずだが、庁用車で勤務時間に市内に出ることが可能な職員がいるらしく、勤務時間中に堂々と各世帯に調査票を配布・回収している職員がおり、給与の二重取りではないか。2月の統計調査でもそうしたことが行われるおそれがある」という情報提供をもとに、事実関係を確認するために情報開示請求を行ったが、結果的に、3月2日までに情報開示が得られず、統計調査の委嘱期間が終了した3月10日からさらに3週間後の3月31日にようやく開示通知が発せられ、しかも職員の氏名等が非公開とされてしまい、委嘱期間内に市民への注意喚起を行うことが不可能となった。
(6)故に、条例第12条第2項に定める「事務処理上の困難その他正当な理由」が説明されていないのに、本条項を理由に開示決定等期限を勝手に延長したことは不当であり、処分の取り消しを求める、
5.処分庁の教示の有無及びその内容:
 平成22年3月31日付安発企第27325号の行政文書部分開示決定通知書により、「この決定に不服がある場合には、この決定があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、市長に対して異議申立をすることができます」と通知されました。
  以 上
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■その後、平成22年6月4日付で、安中市から理由説明書が送られてきました。

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平成22年6月4日
異議申立人 小川 賢 様
     安中市情報公開・個人情報保護審査会 会長 釆女英幸
情報公開に係る異議申立言に対する実施機関の理由説明書の送付及び意見書の提出依頼について
 平成22年4月26日付けで提出された情報公開に係る異議申立書に対し、実施機関(安中市長:総務部企画課)から諮問があり、当該決定に係る理由説明書の提出を受けましたので、別紙のとおり送付いたします。
 この理由説明書に対する意見又は反論があるときは、審査の資料としたいので、意見書(書式任意)をご提出くださいますようお願いいたします。
 なお、不明な点がございましたら、下記事務局までご連絡ください。
 意見書提出期日  平成22年7月5日(月)までにお願いします。期日までに提出できない場合は、事務局までご連絡ください。

【情報公開に係る異議申立言に対する理由説明書】
 本件の請求に関しては、平成22年2月15日付け異議申立人より行政文書の開示請求があり、平成22年3月31日付けで、合併後に作成又は取得した文書については行政文書部分開示決定通知書により、合併前の文書については、承継行政文書の任意的公開回答書により通知を行ったところ、開示決定等期限を勝手に延長したことは不当であり、処分の取り消しを求めるとし、平成22年4月26日付けで決定に対する異議申立てがなされた。
 その際に異議申立人は、延長する理由である情報公開条例(以下「条例」という。)第12条第2墳に定める「事務処理上の困難その他正当な理由」が説明されていないとしているが、平成22年2月26日付け行政文書開示決定等期間延長通知書には、「本件請求に係る情報については、実施主体である国の開示基準を確認する必要があり、現在その照会作業を行っているため」とはっきり延長の理由を明記しており、下記経過のとおり県を通じ国へ照会を行っていたことも全くの事実である。
 照会内容は、5年前の統計調査時に国から示された各調査ごとの事務処理基準では、文書の不開示・部分開示について統一されておらず、市で判断するのが困難なため、その確認を行うこと、また、昨年国から示された「行政機関の保有する統計関係文書の公開に関するガイドラインについて」(別添。以下「国のガイドライン」という。)が、本件開示請求への対応にあたり前述の事務処理基準よりも優先されるか否かについて判断を求めたものである。そして県から国の回答を得るには時間を要するとの連絡を受けたため、決定期限(3月2日)までに回答を得られないことが想定されたことから、3月31日まで期間延長したものである。
 その後、国からの回答は3月4日に得られたものの、開示請求に「現在及び過去5年間に調査員の委嘱を受けた市職員についての報酬額等の一切の情報」とあったため、開示請求時に実施されていた「2010年世界農林業センサス」(以下農林業センサスという。)も開示の対象となるとの判断から、同調査の報酬額が確定した後に起案を行い開示決定通知を送付することとした。
 以上が、延長期限ぎりぎりではあるが平成22年3月31日付けで開示決定通知を発送することとなった理由であり、条例を不当に解釈し運用したものではなく、むしろ開示対象文書を拡大解釈して異議申立人の利益を考慮したものである。
 なお、開示又は公開した文書の中で合併後の文書は農林業センサスだけであり、それ以外の文書は、条例附則第3項により条例が適用されないため、合併前の文書に係る異議申立てについては認められない。
 また、開示通知を3月2日までに得られなかったために統計調査の委嘱期間内に市民ヘの注意喚起を行うことが不可能となった、とあるが、今回の農林業センサスでは調査員が調査票を世帯から歌集、検査し、市へ全ての調査書類等を提出する期限は2月15日としていたため、今回の開示請求でたとえ職員氏名等が開示になっていたとしても市民への注意喚起は不可能であり、それ以外の統計調査はその時期には実施していないため、異議申立人の主張は失当である。
 さらに異議申立人は、開示文書に県や国への照会作業の経緯を示す情報がなかったとも主張しているが、当該情報が、開示請求された文書ではないことは明らかであり、情報提供した「国のガイドライン」は開示対象文書ではなく単なる参考資料に過ぎない。
 よって、本件の開示期間延長は不当な期間延長とするものではなく、不開示とした調査員の氏名、職位、住所等についても、国のガイドラインが示すとおり個人情報に該当するため、本件の開示期間延長に基づく部分開示は条例に違背しておらず、適法である。
     記
・平成22年 2月16日  行政文書開示請求書を企画課にて受理
・平成22年 2月17日  県市町村課へ、調査員の情報開示について相談するため電話にて訪間日の日程調整
・平成22年 2月18日  県市町村課より電話、県への訪間日を決定
・平成22年 2月23日  県市町村課を訪問、今回の開示請求の対象となる調査の「市町村の事務処理基準」のなかで、開示請求があった場合の取扱いが各調査毎にばらつきがあったため、県市町村課を通し国へ照会依頼
・平成22年 2月24日  県市町村課より、現在国へ確語中であるが、回答を得られるまでに時間を要するかもしれない旨電子メールにて企画課宛連絡あり
・平成22年 2月26日  上記の連絡を県市町村課より受け、国の回答が決定通知書の決定期限である3月2日を過ぎる恐れもあることから、行政文書開示請求決定等延期通知書を企画課より通知
・平成22年 3月 4日  市町村課を通し電話で国より回答を受ける
・平成22年 3月31日  行政文書部分開示決定通知書を企画課より送付
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■このため、当会は平成22年6月8日付で次の内容の意見書を岡田市長に提出しました。

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平成22年6月8日
安中市情報公開・個人情報保護審査会
会長 采女英幸 殿
     異議申立人 小川 賢
理由説明書に対する意見書の提出について
私が、平成22年4月26日付で行った、安中市情報公開条例に基づく異議申立てについて、平成22年6月4日付で貴会から安中市長の理由説明書の送付を受けました。
ついては、安中市情報公開・個人情報保護審査会要領に基づき、安中市長の理由説明書に対する「意見書」を下記のとおり提出しますのでよろしくお取り計らい下さい。
     記
意 見 書
(1)開示決定等期間延長通知の理由記載の不備について
 平成22年2月26日付け行政文書開示決定等期間延長通知書には、確かに「「本件請求に係る情報については、実施主体である国の開示基準を確認する必要があり、現在その照会作業を行っているため」との理由記載があるが、この説明には、①なぜ国の開示基準を確認する必要があるのか、②どの箇所を確認する必要があるのか、③どのような経緯で国へ照会を行っていた(あるいは、行っていく)のか、などが記載されておらず、説明不足であったことは全くの事実である。
 今回の市側の理由説明で、異議申立人からの開示請求を踏まえた市側の照会内容は、次のような内容であったという。
「5年前の統計調査時に国から示された各調査ごとの事務処理基準では、文書の不開示・部分開示について統一されておらず、市で判断するのが困難なため、その確認を行うこと」
「また、昨年国から示された「行政機関の保有する統計関係文書の公開に関するガイドラインについて」(別添。以下「国のガイドライン」という。)が、本件開示請求への対応にあたり前述の事務処理基準よりも優先されるか否かについて判断を求めたこと」
「そして県から国の回答を得るには時間を要するとの連絡を受けたこと」
「そのため、決定期限(3月2日)までに回答を得られないことが想定されたこと」
 今回、市側からは、以上の理由と経緯で、3月31日まで期間延長したものである、という説明が初めて為された。
 本来、期間延長等の理由については、条例で定めるとおり、期間延長等を決めた時点での理由を、書面できちんと通知書に記載しなければならない。また、その後、開示に至るまでの経緯で何か進展等があった場合には、そのことについても申請人に説明する必要がある。
 なお、市側が、異議申立人の開示請求に「現在及び過去5年間に調査員の委嘱を受けた市職員についての報酬額等の一切の情報」とあったため、開示請求時に実施されていた「2010年世界農林業センサス」(以下農林業センサスという)も開示の対象となる、との判断から、同調査の報酬額が確定した後に起案を行い、開示決定通知を送付する、と判断したのであれば、期間延長等通知書にその旨、きちんと記載すべきであり、それを怠ったことは原則開示の条例の趣旨と、安中市長が常日頃から標榜している説明責任の徹底方針に違背するものである。
(2)国のガイドラインをもとに市職員の個人情報を判断した過程の説明不足について
 今回の市側の理由説明書により、3月2日時点での開示期間延長等の背景が判明したものの、肝心の次の点について、今回の市側の理由説明書には触れられていない。
 すなわち、「その後、国からの回答は3月4日に得られた」としながら、①国からどのような回答を得られたのか、②また安中市はその回答をベースに、どのような法的根拠で判断をしたのか、③その判断はガイドラインのどの項目によるものか、④そして、その判断は情報公開法など関係法に定められた、どの条項によって為されたのか、など、市側の判断の根拠が不明である。
 このことについて、今回の市側の理由説明書の最後の段落に「よって、本件の開示期間延長は不当な期間延長とするものではなく、不開示とした調査員の氏名、職位、住所等についても、国のガイドラインが示すとおり個人情報に該当するため、本件の開示期間延長に基づく部分開示は条例に違背しておらず、適法である」とある。
 このことから、ここでは仮に、市側が、国ガイドラインの示す(6)名簿の「イ 統計調査員の名簿」に記載のある「統計調査員の名簿に記載された統計調査員の氏名、年齢、住所等の個人に関する情報については、情報公開法第5条第1号の特定の個人を識別することができる情報であり、同号ただし書きのいずれにも該当しないと解され、不開示とする」という理由だとしよう。
 一方、国のガイドラインでは、この個所の説明として「統計調査員の名簿に記載された統計調査員の氏名、年齢、住所等の個人に関する情報については、情報公開法第5条第1号の特定の個人を識別することができる情報であり、同号ただし書」前述ア参照)のいずれにも該当しないと考えられることから、不開示とする」とある。
 市側はこの説明書きを根拠に、申請人の請求に対して、統計調査員として任命された市職員の氏名等の情報を個人情報だと見なして非開示とした可能性がある。
 もしそうだとすれば、市側の主張は次の点と理由で失当である。
1)行政機関の保有する情報の公開に関する法律、いわゆる情報公開法の第5条第1号は、次の通り規定している。
(行政文書の開示義務)
第五条  行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
一  個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法 (昭和二十二年法律第百二十号)第二条第一項 に規定する国家公務員(独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号)第二条第二項 に規定する特定独立行政法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律 (平成十三年法律第百四十号。以下「独立行政法人等情報公開法」という。)第二条第一項 に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員、地方公務員法 (昭和二十五年法律第二百六十一号)第二条 に規定する地方公務員並びに地方独立行政法人(地方独立行政法人法 (平成十五年法律第百十八号)第二条第一項 に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員及び職員をいう。)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分
2)上記のただし書きに注目すると、同条第1号ハに示すように、「当該個人が公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」は非開示の対象にならないことがわかる。
3)今回の開示情報では、統計調査員として任命された市職員の所属先は開示されているが、職位は開示されていない。これは情報公開法に違背しており、不当である。
4)また、今回の開示情報には、統計職員として任命された市職員が担当した区域について、記号と広域での地区名しか示されていないが、開示された担当区域と記号との関係を示す情報があるはずである。この情報は、法令に定める公務員の当該職務遂行の内容に係る部分なので、開示しなければならない。
以上
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■その結果として、8月3日付で安中市情報公開・個人情報保護審査会から次の答申の写しが送られてきました。

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【審査会から安中市長への答申と送付状】
平成22年8月3日
異議申立人 小川 賢 様
    安中市情報公開・個人情報保護審査会 会長 釆女英幸
情報公開の異議申立てに関する答申について(送付)
 安中市長から、あなたの情報公開の異議申立てに開する諮問かおり、提出された開係資料等をもとに平成22年7月1目及び同月26目開催の審査会において、審査した結果、別紙のとおり答申しましたので、安中市情報公開・個人情報保護審査会規則第5条によりその写しを送付します。
 なお、後日、答申結果を参考として諮問機関である安中市長から今回の処分の異議申立てに対する正式な決定があります。
     事務局:秘書行政課文書法規係 TEL382-1111内線(1043)

【答申書】
平成22年8月3日
実施機関
安中市長 岡田 義弘 様
     安中市情報公開・個人情報審査会 会長 釆女英幸
統計調査員の委嘱を受けた市職員の氏名等を不開示とした行政文書部分開示決定処分に対する異議串立てについて(答申)
    記
 平成22年5月14日付けで諮問のあった標記の件について、平成22年7月1日及び同月26日開催の審査会において審査した結果に基づき、別紙のとおり答申します。

(別 紙)
諮問第1号
統計調査員の委嘱を受けた市職員の氏名等を不開示とした行政文書部分開示決定処分に対する異議申立てについて(答申)
1 審査会の結論
 本件異議申立ての対象である実施機関(安中市長)が行った行政文書の部分開示決定処分において、2010年世界農林業センサス(以下「農林業センサス」という。)の調査員として委嘱された市職員の氏名、職位、印影、住所、電話番号及び口座情報について不開示とした決定は、妥当である。

2 異議申立ての主張の要旨
 異議申立人が主張する不服申立ての趣旨及び理由については、異議申立書及び意見書の記載によれば、おおむね次のとおりである。
 開示された行政文書には、開示決定等期間の延長理由にあった国への照会作業の経緯を示す情報はなく、添付されていた「国のガイドライン」も平成21年4月1日には決定されており、開示決定を3月31日まで延長する理由とはならない。
 このため、本件文書の開示期間延長に基づく部分開示決定処分は、条例を不当に解釈して運用されたものであり、処分の取消しを求める。
 また、実施機関が国のガイドラインにしたがって開示決定したとしても、市職員の職位まで不開示とすることは、情報公開法に違背して不当である。

3 異議申立てに対する実施機関の説明要旨
 国への照会作業については、群馬県を通じて国の総務省に行っていたのは全くの事実であり、その回答が開示決定期限までに得られないことが想定されたため、3月31日まで開示決定の期間を延長したものである。その後、総務省からの回答は3月4日に得られたものの、開示請求時に実施されていた農林業センサスも開示対象としたため、開示決定が3月31日になったもので、期間延長には正当な理由がある。なお、国への照会作業の経緯を示す情報は、開示請求された文書ではない。
 また、調査員の氏名、年齢及び住所等は、国のガイドラインによれば個人情報に該当し、不開示とされるとともに、農林業センサスが法定受託事務であることから事務の適正な執行に支障を及ぼすおそれがあると判断し、不開示としたものである。

4 審査会の判断
(1)本件対象行政文書
  異議申立人は、現在及び過去5年間、調査員の委嘱を受けた市職員の所属先、職位、氏名、従事した調査事業名、それぞれの委嘱条件、従事期間、実際に従事した日数又は時間数、報酬額、報酬支払方法などにかかる一切の情報を開示請求しているが、実施機関の説明によれば、安中市と松井田町の合併後に行われた統計調査は、2010年に行われた農林業センサスだけであり、それ以外の統計調査に係る行政文書は、安中市情報公開条例(以下「条例」という。)附則第4順に基づく承継行政文書の任意的公開に当たるとしている。
 このため、これに関する不服申立ては不適法であるとして、本審査会にも諮問されていない。
 本審査会においても統計調査の実施時期、任意的に異議申立人に公開されたとする行政文書の日付け等を検証したところ、この事実に相違はなく、実施機関の対応は妥当であると考える。
 したがって、本件において審査の対象となるのは、農林業センサスに関して開示請求された行政文書のみであるため、異議申立人が意見書のなかで主張している「統計職員として任命された市職員が担当した区域について、記号と広域での地区名しか示されていないが、開示された担当区域と記号との関係を示す情報」については、本審査会の審査対象外である。
 また、国への照会作業の経緯を示す情報は、開示請求された文書ではないとする実施機関の判断も問題はなく、妥当である。
(2)行政文書開示決定の期間延長
 情報公開制度の目的は、請求に応じて行政文書を義務的に条例の定める期間内に開示することにあるため、行政側の恣意的な理由により開示決定が延長することは許されるものではない。
 しかし、延長することに合理的な理由が存する場合には、これを行わざるを得ず、本件においては、法定受託事務であったことから国や県に照会を行っていた事実に誤りがなく、しかも農林業センサスに関しては、報酬の支払い決定の決裁が平成22年3月19日であったことを考慮すれば、同年3月31日まで開示決定期間が延長されたことには、十分正当な理由があったと考えられる。
 そもそも、決定期限の延長は行政処分ではないと解されており、これについて行政不服審査法に基づく不服申立てを行うことはできず、たとえ決定期限の延長が適当でなかったとしても、それを理由として部分開示決定処分の取消しを求めることはできない。
 行政文書開示決定等期間延長通知書の延長理由の書き方としては、農林業センサスに関することが理由付記されていないという問題点はあるが、国に照会作業を行っているという当初の延長理由としては、開示請求者が客観的に了知しうる程度には記載がなされていると考える。
 なお、実施機関の説明によると、期間延長決定時には、開示請求を受けた日後に取得又は作成した行政文書は開示する予定はなかったが、開示請求を行った異議申立人の便宜を考慮して、平成22年3月19日に決裁となった農林業センサスの報酬支払いに関する行政文書も開示対象に加えたことから、開示決定が遅くなった。
 また、その経過については、4月2日に開示を受けた異議申立人の代理人には、説明しているとのことである。
(3)職位の開示
 実施機関が不開示決定処分としたのは、統計調査員の委嘱を受けた市職員の氏名、フリガナ、職名、印影、住所、口座番号及び電話番号である。
 このうち、氏名、フリガナ、印影、住所及び電話番号は、明らかに特定の個人を識別できる個人情報に該当し、口座番号については、特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより個人の権利利益を害するおそれがある情報である。
 異議申立人の主張によれば、不開示とされた情報のうち、職位に関する情報については、情報公開法第5条第1号ハに定める「当該公務員の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」であるから、不開示処分はこれに違背し、不当であるとしている。
 しかし、情報公開法(正式名称は「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」)第2条菓1項の「行政機関」の定義には、地方公共団体は含まれておらず、同法第41茶によっても、安中市を含めた地方公共回体に同法が適用とならないのは明らかであって、この点において異議申立人の主張は失当である。
 そこで、安中市においては、情報公開法ではなく、条例が適用となるため、情報公開法第5条第1号ただし書ハに相当する条例の条項を検討すると、第7条第2号ただし書ウが該当となる。
 同号ただし書ウにも「当該公務員等の職」とあるが、実施機関の説明では、市職員の職名まで不開示としたのは、開示された行政文書と職員名簿等と照合すれば、個人を特定することができることを理由としてあげている。
 確かに、開示された行政文書の中には所属課に加えてその職員の所属係まで明らかにされているため、該当する係にその職名の職員は1名又はごく少数しか存在せず、市職員名簿と照合することにより、十分、個人を特定することができる。
 また、市職員名簿は、公表されていないが、市の情報公開制度により異議申立人が入手することも可能である。
 さらに、職名が不開示とされた行政文書を具体的に検討すると、営利企業等従事許可申請書であり、これは市職員が農林業センサスの調査員に従事するに当たって、地方公務員法第38茶第1項の許可を受けるための申請書である。
 営利企業等の従事許可申請は、主に職員の私的理由により、営利企業等に従事する場合に、職務能率を低下させるおそれや悪影響を及ぼさないという任命権者の判断に基づき許可されるものであって、本来、当該職員の職務遂行とは直接には関係のないものである。
 言い換えれば、営利企業等従事許可申請書に記載された職名をもって、市職員が統計調査業務に従事するわけではないので、当該職名は統計調査員としての職務遂行に係る情報とは言えない。
(4)公務員の氏名の開示
 上記(3)のとおり、営利企業等従事許可申請書に記載された職名を不開示とした決定は、妥当であると思われるが、本件で、さらに詳細な検討を要する点は、情報公開法とは違って、条例では公務員等における個人情報の不開示の例外として、公務員の氏名まで開示することになっていることである。
 統計調査員は、非常勤の国家公務員又は地方公務員とされており、条例第7条第2号ただし書ウで定義する「公務員」とは、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員、裁判等を含むとされており、統計調査員が同号ただし書ウに規定する「公務員」に該当するとすれば、「農林業センサス市職員分調査員名簿」及び「2010農林業センサス調査員報酬内訳」に記載された調査員の氏名については、開示しなければならないことになる。これは、市職員が統計調査員として任命されている場合に限ったことではなく、安中市においては国と異なり、広く公務員である統計調査員全員の氏名については、個人情報であることだけをもって不開示とはできない。
 国において統計調査員の氏名が個人情報として不開示とされるのは、安中市の条例と違い、情報公開法では公務員の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、公務員の氏名までは開示の対象としていないことが理由である。
(5)法定受託事務における情報公開
 農林業センサスのような基幹統計事務については、地方自治法施行令及び統計法施行令において法定受託事務と定められている。
 法定受託事務は、「国が本来果たすべき役割に係るもの」であり、「総合行政の確保の観点」等から、よるべき基準である処理基準によって地方公共団体に対し、その処理が紐かく定められていることが多い。このため、実施機関が本件行政文書の開示決定に当たって、国又は県に統計調査員の氏名の開示について、照会を求めたことは当然であって何ら問題はない。
 実施機関の説明では、平成21年4月1日付け「行政機関の保有する統計関係文書の公開に関するガイドラインについて」のなかで、国の方針として統計調査員の氏名は不開示とするとされており、国勢調査における市町村事務処理要領においても、調査関係書類の公開に当たっては、調査員氏名等の記載部分を適宜の方法で抹消するようになっているとのことである。
 同ガイドラインは、国における統計調査関係文書の開示・不開示の判断を行うに当たって一般的な取扱いの指針であって、そのまま安中市に適用されるものではないが、調査実施者である地方公共団体に開示請求がなされた場合についても、ガイドラインの趣旨を体して定めることとされている。
(6)条例第7条第6号の該当性
 実施機関は、行政文書部分開示決定通知書において、統計調査員の個人情報を開示しない理由として条例第7条第2号のほか、同条第6号に該当するとしているため、その妥当性について次に検討する。
 実施機関の説明によると、社会状況の変化に伴い、近年、統計調査員の確保が極めて困難になってきており、統計調査員の氏名が一般に公開されることになると、個人情報保護意識の高まりと相まって、統計調充員の確保が一層困難になるおそれがある。また、統計調査に対する不満もあって、氏名が明らかになることにより外部から特定の調査員に対して誹膀中傷等が加えられるおそれも考えられるところである。事実、前回の安中市における国勢調査でも、30人以上の調査員から辞退が相次いだため、急遽、市職員に依頼して、調査を実施したという経過がある。
 以上のことから、今後、統計調査員の氏名が公になれば、統計調査の適正かつ円滑な実施に支障を及ぼすおそれがあることは明らかであり、これは今回の照会作業における基幹統計調査を所管する国(総務省)や県統計課と共有する統一的見解であるとしている。
 この説明に関しては、国を含めて実施機関の一方的な主張であり、統計調査員の氏名の公開に対する調査員確保の困難性との関連について具体的な検証がなされておらず、統計調査員の氏名を開示することによる利益侵害のおそれが現実として存在することの証明もなされていない。また、統計調査により得られたデータの信頼性確保の要請からも、必要に応じ調査員の氏名は開示される必要があるように思われる。
 しかし、統計調査を円滑に実施するためには、統計調査員の確保が必要不可欠であり、年々、調査員の確保が困難となっている状況にあることは全くの事実である。
 国においても統計調査員確保対策事業を毎年実施してきているものの統計調査員の確保が困難である状況が改善する見込みが立っていない状況から、調査実施者が統計調査員を確保するため、統計調査員個人の権利利益を害さないよう最大限配慮に努めなければならないごとには、-一定の理解ができるとともに、これは統計調査役が市職員である場合も同様である,
 市職員が統計調査員として報酬を得るためには、一般職としての勤務時間外に職務を行わなければならず、統計調査を時間内に行うことは当然論外であるが、市職員が自ら希望して統計調査員に任命されたわけではなく、実施機関の依頼にやむなく応じている市職員も少なくないことから、市職員であることを理由に、当該公務員の本務とは無関係な統計調査員として個人情報が開示されるのは、条例の解釈を誤るものと言わざるを得ない。
 また、本件の統計調査事務が法定受託事務であることから、全国で統一的な事務処理が要請されているため、国において不開示とされる情報が、安中市で開示されるのは、不合理であるとも考えられる。
 以上の検討の結果、統計調査役の氏名を開示することは、統計調査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり、条例第7条第6号に該当すると考えられる。
(7)結論
 本審査会としては、7月1日及び同月26日の両日において、慎重に審査したところ、農林業センサスの調査員として委嘱された市職員の氏名、職位及び印影については、個人に関する情報ではあるものの、統計調査役が公務員であることから、条例第7条第2号ただし書ウに該当する。
 このため、直ちに不開示とすることには疑問があるが、調査役個人の権利利益を不当に侵害するおそれがあることにあわせ、同条第6号に該当するため、不開示決定処分は妥当であると考える。
 また、住所、電話番号及び口座情報については、個人に関する情報であり、特定の個人を識別できる又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがあることは明らかであるため、条例第7条第2号に該当することを理由として不開示とした決定は、妥当であり、行政文書の開示決定期間延長についても正当な理由があったと認められる。
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■ひどいものです。統計調査員に市民からの応募が少なく、一旦応募してもドタキャンする例が多いので市職員を統計調査員にしたというが、その過程に関する証拠が示されないため、言い逃れに聞こえます。また、「国のガイドラインに従って統計調査員に関する情報を取り扱う」としながら、いざ情報開示という段になると、「国の情報公開法は適用せず、市条例を適用する」と理由の説明の仕方を変えてきます。

 そもそも、市職員が国勢調査をするのに、なぜ「営利企業等従事許可申請書」が必要なのか、まったく理解できません。国の実態を調査する重要な調査なのだから、そもそも守秘義務のある公務員が業務を行うのが本来の姿です。

 人手が足りなければ、とりあえず郵送ベースで各世帯に用紙を配布して自主的に記載して返送してもらい、記載ミスの場合や返送のない場合に限り、最寄りの市職員が当該世帯を訪問して、記載の仕方の説明や指導をすればよいのです。

 国勢調査に従事する市職員の氏名を個人情報だとして開示しない安中市の方針は、最近問題となっている高齢者不在問題や、年金不正支払い問題などとも関連しており、非常に問題です。

■市職員であれば、まったく知らない一般の統計調査員より、少しは安心して調査用紙に記入する個人情報について相談する一般世帯が多いと思われます。もちろん、タゴ51億円事件を起こした体質の市役所ですから、市民の情報をいい加減に扱われる懸念はよその自治体より大きいかもしれません。しかし、高齢者不在問題で全国の100歳以上の不明者が現時点で281人に達していることから、今度の国勢調査では、市職員が率先して調査にあたるべきかもしれません。

 市職員の中には暇な職員も結構多いはずです。前述のように郵送ベースで調査票を配布・回収し、回収漏れの世帯を対象に市職員が効率よく勤務時間中に戸別訪問することも検討の余地がありそうです。そうすれば、市民との対話の機会を増え、一石二鳥だと思われます。

 審査会から安中市長への答申内容にもとづき、近々、岡田市長から、決定書が届く見込みです。市長の決定内容が審査会の答申内容をひっくり返すことになるかどうかは、残念ながら期待薄でしょう。

【ひらく会情報部】

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1 コメント

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Unknown (ひらく会情報部)
2010-08-25 15:22:54
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