市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

前橋市役所強制わいせつ事件・・・5月15日に前橋地裁で開かれた刑事初公判で元職員が罪状認否留保

2019-05-16 23:19:00 | 前橋市の行政問題
■当会では2018年3月から、前橋市の当時現職の管理職員による不祥事について前橋市に通報してきましたが、前橋市職員課の対応は極めて腰の重いものでした。そうした中で、当該管理職員によるセクハラ行為に関して、同年5月26日付東京新聞が報じたのを契機に、この問題がひろく前橋市民のみならず県民に周知されることになりました。そのセクハラ事件のその後が注目されていましたが、令和の新元号になった直後の5月15日(水)に前橋地裁で刑事事件(平成31年(わ)第124号強制わいせつ事件)として、初公判が開かれ、当会も傍聴してきました。さっそく翌日の新聞記事朝刊で報じられたので内容を見てみましょう。

5月15日(水)午後1時30分から約13分半にわたり強制わいせつで書類送検された前橋市元管理職員にかかる刑事裁判の初公判が1階の1号法廷で開廷された前橋地裁。


**********東京新聞群馬版2019年5月16日
ZIP ⇒ 20190516vl.zip
前橋市セクハラ事件初公判
罪状認否 男性が留保

 前橋市の当時の女性嘱託職員が男性管理職からのセクハラ被害を訴え、 市が男性を停職の懲戒処分にした問題で、その後に県警に強制わいせつ容疑で書類送検され、同罪で起訴された男性の初公判が十五日、前稿地裁(水上周(あまね)裁判官)で開かれた。罪状認否で男性は「今の段階では中身は留保したい」と述べた。法廷では、女性に配慮して氏名や年齢などの個人情報は読み上げられなかった。
 冒頭陳述や市の処分内容などによると二〇一六年十二月二十八日夜に市内の居酒屋であった職場の忘年会で、飲酒した男性が座っていた女性の背後に密着し、両手でそれぞれ女性の両胸を触ったとされる。宴席で複数の同僚が行為を目撃したことを証言している。女性は昨年になって県警に相談していた。
 女性、男性ともその後に退職し、男性は会社員になった。男性は昨年六月に処分を受け、同年末までに書類送検され、今年三月末に起訴された。女性によると、今月に入って男性が謝罪して解決金を支払う内容の示談書が示され、男性側が支払ったという。
 女性は取材に「裁判が長引き、詳細な証言を求められるのはつらいので、示談に応じた。(認めずに留保するとは)納得いかず、いいかげんにしてほしい。怒りがまた込み上げてきた」と語った。(菅原洋)
*********

 この前橋市役所セクハラ事件については、これまでの当会のブログ記事も参照ください。
〇2018年5月2日:前橋市役所職員による勤務不正申告の実態について前橋市長に報告書を提出
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2628.html
〇2018年5月25日:不祥事の続く前橋市で今度は管理職の市職員によるセクハラ事件が急浮上!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2646.html
〇2018年5月26日:不祥事の続く前橋市で管理職によるセクハラ事件・・・今度は地元紙が記事を掲載!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2649.html
〇2018年5月28日:【速報】はからずも定例記者会見で露呈した前橋市長の危機管理意識とセクハラ問題意識の薄弱性!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2653.html
〇2018年5月29日:不祥事の続く前橋市役所…セクハラ等不正テンコ盛り職員を庇う?市長のオロオロ記者会見を報じた東京新聞
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2654.html
〇2018年6月13日:前橋市役所強制わいせつ事件…ようやく出た大甘処分と未だに罪を認めぬ元管理職で分かる役人の“本懐”とは
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2668.html
〇2018年6月19日:前橋市役所強制わいせつ事件・・・セクハラ被害軽視の背景にある自治労の果たすべき役割とは矢印
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2673.html
〇2018年6月24日:前橋市役所強制わいせつ事件・・・セクハラ被害軽視の背景にあるリーダーたる市長の果たすべき役割とは
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2677.html

■初公判当日に前橋地裁1階ロビーに貼られた開廷表には次のように書かれてありました。

*****開廷表*****
第1号法廷(1階))開廷表
令和元年5月15日
開始時刻/終了時刻 午後1時30分/午後2時30分
事件番号/事件名  平成31年(わ)第124号/強制わいせつ
被告人       ■■■■
担当部係      刑事第1部1係
裁判長(官)    水上周
書記官       宮内悠介
**********

 法廷には10分前から傍聴者が集まり、午後1時半の開廷時には、当会会員、マスコミ関係者、前橋市関係者ら約20名ほど詰めかけました。法廷内には、左側に検事1名が着席し、右側に弁護人の熊川法律事務所の熊川俊充弁護士と刑事被告人の前橋市元職員が着席しました。その他、書記官1名と筆記者男女各1名が法廷内にいました。
※参考URL:熊川次男総合法律事務所 ⇒ http://kumakawa-law.jp/lawyers.html

 定刻1時半を少し回ってから裁判長が入廷し、さっそく始まった初公判では、まず50歳の男性被告人が証言台の前に呼び出され、氏名、生年月日、本籍、現住所、職業が述べられました。

 3月29日付で強制わいせつの罪名で起訴がなされ、起訴状が被告人に送られたことから、本件審理が開始されました。この時、裁判長から注意事項として、本事件では、被害者の名誉保護のため、被害者の特定につながる事項については法廷では明らかにしない決定をしており、もし被害者の名前をしっていたとしても、法廷内では決して口にしないように、との指示がありました。

 そのあと、検察官から起訴状の朗読がありました。その公訴事実によりますと、平成28年12月28日の午後6時ごろから午後8時ごろまでの間に、市内荒牧町4-10-38の荒牧大衆酒場おやじサーカスの2階で、床に座っていた被害者に対して、その背後に座り、両膝を被害者の臀部付近に密着させつつ、被害者の両脇に腕を突っ込んで、着衣の上から被害者の両乳房を両手でつかんで持ち上げることで、強いてわいせつな行為をしたとあり、罪名・罰条は強制わいせつ(平成29年法律第72号による改正前の刑法176条)で起訴された旨、読み上げがありました。

 そのあと、この公訴事実について審理がはじまりましたが、冒頭に裁判長から被告人に注意事項が伝えられました。それは「被告人には黙秘権が認められている」こと。したがって「この法廷では、最初から最後まで黙っていられる」こと。「答えたい質問には答え、答えたくない質問には答えなくても構わない」こと。「質問に答えなかったことにより不利益なことはない」こと。「勿論質問に対して答えることができいるが、被告人がこの法廷において話したことが自分にとって有利・不利になるかを問わず、この裁判証拠の証拠として扱われる」こと。「したがって、発言に当たっては、そのことを念頭に置いて発言をするように」と裁判長から被告人に指揮がありました。

 次に裁判長は被告人に対して「ではこうした前提で確認するが、さきほど、検察官が読み上げた事実でどこか違っているところはあったか?」と質問しました。これに対して被告人は熟考するためか、しばし沈黙のあと「・・・・今の段階では、答えについては留保としたい」と答えました。どうやら予め弁護人と相談した結果を口にしたようです。

 それを察した様子の裁判長は「今の段階ではないというと、後で明らかにするということなのか?あるいはもう、認否はしないということか?」と質しました。すると被告人は「・・・・」と沈黙しました。

 裁判長は「決めていない?弁護人と相談してからということか?」と質問したところ、被告人は小さく頷きました。裁判長は今度は被告弁護人の熊川弁護士に向かって、「弁護人の意見は現段階ではどのようなものか?」と尋ねました。

 熊川弁護士は「証拠の任意の開示を受けたのが月曜日(5月13日)であり、それから間もないため、精査したうえで、次回期日で認否を明らかにしたいと思う」と答えました。

 裁判長は被告人に対して「席にもどってよろしい」と伝え、被告弁護人には「(本件裁判の)進行については、認否がまだできないということなので、この段階で次回期日を決めることもあるし、認否は留保するということで手続きを進めるということもありうる」と判断を促しました。

 これに対して被告弁護人は「証拠関係の同意・不同意もできないが、直前までには進んでもらってもよい」と答えました。

 裁判長は「口頭陳述と証拠説明までは進んでもよいということか?」と念を押すと、被告弁護人は「はい」と答えました。裁判長は「検察官の方もそれでよいか?」と訊くと、検察官も「はい」と答えました。

 そのあと証拠調べの手続きに入りました。裁判長が検察官に「口頭陳述をしてください」と告げると、検察官が陳述を始めました。

「検察官が証拠によって証明書をつくった事実は次の通り。
第一 身上と経歴等
 被告人は前橋市で出生し、大学卒業後、前端市役所で勤務し、市役所職員だった。現在は無職・・ではなく(さきほどの被告人の陳述に沿って)会社員と訂正する。住居地で妻子と居住している。前科・前歴は不見当(←当会注:「不見当」とは「見当たらない」という意味だが、「開示しない」という意味もある)
第二 犯行状況等
 被告人は、判示した前市役所に勤務して、28年12月28日の午後6時頃から同8時頃にかけて、公訴事実記載の飲食店で被害者を含む部下職員らと一緒に忘年会に参加していた。被告人は、前記忘年会の間に床に座っていた被害者の背後に座り両膝をその臀部付近に密着させつつ、公訴事実記載の犯行におよんだ。被害者は本件被害に遭ったあと、前期市役所職員らに被害の相談をするなどしたうえ、平成30年6月頃警察に被害の相談をするなどして本件が発覚した。
第三 その他情状等
 上記の事実を立証する為、証拠等関係カード記載の各書証の取り調べを請求する。」


 検察官の口頭陳述が終わると、裁判長は被告弁護人に向かって「請求等についての弁護人の意見は?きょうは明らかにできないか?」と訊きました。弁護人は「はい」と答えました。

 裁判長は「任意開示の話があるが、既に任意開示は受けてはいる、ということか?」と確認を求めたところ、被告弁護人は「はい、もう謄写済です」と答えました。裁判長は「必要なものは入手されているということか?」と念を押すと、弁護人は頷きました。

 「そうすると証拠意見を検討してもらうことになるが、検討の期間はどの程度か?」と裁判長が弁護人に尋ねると、弁護人は「さほど時間がかからず10日ほどで、検討できると思う」と答えました。

 裁判長は「証拠意見の検討ができれば、あわせて罪状認否について、あらためて罪状認否もおこなえるということか?」と被告弁護人に質問しました。弁護人は「はい」と答えました。

 すると裁判長は「次回弁護人の証拠意見を聞いたうえで証拠調べを続けるということになる。次回期日だが、(証拠意見については)10日後ということで、来週いっぱいで提出していただくことでよろしいか?」と弁護人に確かめると、弁護人熊川弁護士は「はい」と述べました。裁判長は「証拠意見が決まったら、速やかに検察官に提出願いたい」と弁護人に指揮すると、被告弁護人は「はい」と答えました。

 裁判長は「裁判員裁判の関係で次回期日は6月となる。6月5日水曜日の午前10時はどうか?」と検察と被告弁護人の双方に尋ねました。しかしその日時は検察官の都合があわず、書記官に法廷のスケジュールを確認させたあと、裁判長は「そうすれば6月12日水曜日午後2時半以降はどうか?」と提案しました。結局、裁判所の書記官からコメントがついたため、「6月水曜日午後3時半からでも大丈夫か?」とあらためて提案があり、検察・被告弁護人の双方とも「はい」と答えました。

 最後に裁判長は「それでは次回期日は6月12日午後3時半からと決まった。今日はこれにて閉廷します」と宣言すると、法廷を退室していきました。

 以上の通り、本日の初公判は約13分半で終わりました。それにしても、これだけマスコミを騒がしたセクハラ事件ですが、被告の元職員の様子は、実に平静を保っていました。通常であれば被告人として、憔悴しきった姿がイメージされますが、公務員はよほど腰が据わっているのでしょう。

 あるいは無頓着で鈍感なのかもしれませんが、いずれにしても、被告の元前橋市職員のこの平静さは、国選弁護人ではなく、自ら報酬を支払って委任した熊川俊充弁護士の存在が大きいと思われます。

 その原資としては、起訴される前に前橋市役所を退職したことから元職員には満額の退職金が支払われたことがうかがえます。2000万円?とも想定される高額の退職金の一部を弁護士費用に使えば、裁判を有利に運べると思ったのでしょう。だから公訴事実の認否を保留したものと推察できます。

■当会は、このセクハラ事件と関連して、元職員による不倫相手の時間外等手当不正支払による損害賠償請求事件を前橋地裁に提起して、現在係争中です。今回のセクハラ事件ではもっと詳しい冒頭陳述があるものと期待していたのですが、きわめて短かったので拍子抜けしました。引き続き当会としてこのセクハラ事件の刑事裁判の様子を慎重に見極めていきたいと存じます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

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