■安中市の保守系大物市会議員で議長も務めたことのある現職市議が、今年2月、地元地区5カ所で開かれた集会で、清酒2本セットを熨斗紙付きて配布した問題について、当会は一罰百戒と再発防止の意味を込めて、平成27年5月29日(金)午後4時に、次の内容の告発状を持参して安中署の刑事課を訪れました。
↑安中警察署。刑事課は2階の右手にある。↑
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告 発 状
告発人
住所 群馬県安中市野殿980番地
職業 会社員
氏名 小川 賢(昭和27年3月5日生) 自署押印
電話 090-5302-8312
FAX 027-381-0364
被告発人
住所 群馬県安中市内
職業 安中市議会議員(元・同市議会議長経験者)
氏名 不詳
平成27年5月26日
群馬県警察本部長殿
一 告発の趣旨
被告発人の以下の所為は、公職選挙法第199条の2第1項及び第2項(政治家の寄付の禁止)、および、選挙運動の事前運動として公職選挙法第139条(飲食物の提供の禁止)に該当すると考えるので、被告発人を厳罰に処することを求め告発します。
二 告訴事実
添付書類によれば、被告発人は、平成27年2月、地元およそ5か所で開催された各地区住民の集会に、自分の名前を記載した熨斗紙を付けた日本酒(1升ビン)二本セットを無償配布=寄附しました。また、それ以前にも毎年二月に、いわゆる「春契約」と呼ばれる地元各自治会の役員などを決めるために地区ごとに数十人ずつが参加して開かれる集会に、同様の寄付をしていたといわれています。総務省によると、選挙区内の人に対する寄付行為は、選挙前か否かにかかわらずに禁じられており、群馬県選管によると、選挙運動の事前運動として飲食物の提供は禁じられており、いずれも公職選挙法に抵触する禁止行為に該当します。このように、被告発人の前記所為は公職選挙法第199条の2第1項および第2項及び同第139条に定める違反行為に該当すると思われるので、被告発人の厳重な処罰を求めるため、ここに告発します。
三 立証方法
1 新聞報道記事(2015年5月22日付東京新聞群馬版より)
四 添付書類
上記記事写し
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■安中署では、高柳課長が在籍中でしたが、公務多忙で手が離せない様子で、同課の若手刑事ら二人が隣接の面接室で告発の相談に応じてくれました。
30分間にわたる当会からの説明の中で強調したのは、昨年4月13日の安中市長選の投票日に発生したなりすまし投票事件のことです。
この事件は、平成26年4月13日に行われた安中市長選で、他人の投票所入場券を使って男女各1人ずつ計2人が詐偽投票(なりすまし投票)した疑いで、市選管が安中署に翌14日に情報提供したものです。
なぜ不正な投票行為が発覚したかというと、市内の某投票所で投票した男女各1人について、投票後に立会人の地元年配者が「普段見かけない人物だ」と不審に思い、入場券で氏名を確認したところ、本人でないことに気づいて、同席していた市職員に指摘し、市職員が市選管に連絡し、市選管が14日に調査したところ、やはり本人でないことが確認されたのです。
そのため、市選管は4月13日に選管確定として発表した投票者数を2人減らし、投票率を55・26%から55・25%に訂正する羽目になりました。しかし、投じられた票は有効とされ、候補者2人の得票数は変わらないという措置がとられ、不受理・持ち帰りを「マイナス2」として投票者数との差をつじつま合わせしたのでした。
なりすまし投票は公職選挙法の違反行為で最高刑は2年以下の禁錮または30万円以下の罰金という犯罪です。ところが、安中市選管は、目の前で不正行為があったら告訴又は告発をしなければならないという義務を行使しようとせず、単に選挙違反行為を警察に連絡しただけでした。本来であれば、自ら「被疑者を厳罰に処してもらいたい」とする告発を捜査機関に行わなければならないのです。
これまで何度も選挙違反に遭遇してきた当会では、市選管のこのような対応を苦々しく思っていたため、市選管に代わって告発状を提出する必要があると痛感し、市選管に告発状案を見せて、選管の代わりに警察に告発することを告げた上で、安中署に告発状を提出したのでした。
安中署は、当会の告発状の写しを取っただけで、原本をすぐには受理しようとしませんでした。すぐに受理すると、この事件を立件し、結果を告発者に伝える義務が発生するからです。しかしその後安中署は、このなりすまし投票事件をしっかりと捜査し、容疑者3名(なりすまし投票をした男女1人ずつのほかに共犯と思しき1名の計3名)を前橋地検に送検したのでした。群馬県警捜査2課の担当者も当会の告発については承知しており、きちんと捜査している旨、説明がありました。
ところがいつになっても、通報した市選管に安中署はもちろん、前橋地検からもその後の捜査結果や容疑者の措置についての連絡が全然来ないというので、当会が、市選管に代わって安中署を訪れました。安中署では「既に送検済みなので、前橋地検に行ってみて話を聞いてくれ」というので、すぐに前橋地検に行きました。ところが、応対に出た若い男女の検察官は「告発状は受理されていないので、告発者を自称する者に捜査結果や処分結果などを説明する義務や責任はありません」と言われてしまいました。この一件の経緯は当会の次のブログを参照ください。↓
○2015年2月25日:2014年4月の安中市長選のなりすまし投票事件の被疑者らが不起訴処分となった経緯と背景に関する一考察↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1542.html
■当会は、このなりすまし投票事件の二の舞にされないように、安中署の刑事の皆さんには十分留意するように要請しました。幸い、受理するかどうかを含め、内容の検討状況と結果については、適宜必要に応じて連絡をしてくれるそうなので、当会の携帯電話番号を改めて伝えてあります。いずれにしても、前回のような前橋地検の酷い対応は二度と味わいたくありません。
なお、今回の告発状提出に先立ち、当会は群馬県選挙管理委員会を訪ねました。県選管に今回のような日本酒を有権者らに配布する行為は、一般的に言うと、公職選挙法の第何条に抵触する可能性があるのか、聞いてみました。
20150529_kensenkan_kifukinshinorule_1.pdf
20150529_kensenkan_kifukinshinorule_2.pdf
↑県庁9階の群馬県選管と、相談コーナーの机の上に貼ってある「明るい選挙キャンペーン」のチラシ2種類。↑
県選管の担当者のコメントは、「公選法第199条の2に定めた寄付の禁止に加えて、選挙運動の事前運動としての飲食物の提供の禁止をうたった公選法139条に該当する可能性がある」というものでした。
県選管いわく「公選法違反については判例で示されているのみで、選挙運動の定義に関しては昭和52年2月24日に最高裁で示された判例が踏襲されている」とのことです。
○ 昭和49(あ)1709 公職選挙法違反: 昭和52年2月24日 最高裁判所第一小法廷↓
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51083
判決文↓
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/083/051083_hanrei.pdf
また県選管の説明によれば、政治家の活動として、政治活動と選挙運動がありますが、選挙運動期間以外は政治活動の期間と言われながらも、いわゆる事前運動を帯びる政治活動があります。つまり、政治活動を仮装しながら選挙運動性を帯びる要素が有る場合は、それは選挙運動の前に、選挙運動の事前運動とみなされるというのです。
しかし、こうした公選法の取り扱いに詳しい選管ですが、選管いわく「選管とはその名の通り選挙の管理であり、政治活動の規制をすることではなく、選管はあくまで選挙の管理だけであって、取締りについては公選法の中で警察が行うことが明確に規定してあるため、我々選管には取り締まり権限がない」のだそうです。
そして、選管の説明によれば、「公選法は政治資金規正法というものは、国民の皆さんの不断の関心に委ねるというのが基本的な考え方」だということです。「そして、その観点から、県選管では、例えば、政治資金収支報告は全部インターネットで閲覧可能にしてある」のだそうです。
選管曰く「飲食物の提供ということだと公選法139条に抵触する可能性がある。これは選挙運動に関して、ということに限定されているので、これも関係するかどうか、事前運動性に抵触するかどうかがポイントとなるため、これも参考までに伝えておく」ということです。
■続いて、当会は告発状案を携えて、安中市選挙管理委員会を訪れ、副書記長に意見を聞きました。
副書記長を務める吉田法制課長に、「本来、告発というものは選管が行うべきものではないのでしょうか?」と当会の持論を申し上げたところ、「選管としてはあくまでも捜査権がないので管理するだけであり、選挙の執行の管理ということで公選法ではそういうことになっている。せいぜい、違反文書の撤去と、投票日における投票所から300m以内の選挙事務所の閉鎖の指示くらい。権限はその2つしかない。違反事項については全て警察の権限になる」ということで、やはり公務員による告発義務については、忘れているかのようです。
それでも当会からは「公費を使って公正な選挙キャンペーンをPRするのだから、きちんと何が違反で、どこまでが違反でないということを率先して示すには、告発という形で警察に捜査を委ねる必要があるのではないでしょうか」と、しつこく持論を説明しました。
その結果、当会の告発状案の前段に、「被告発人ら」という記載が2か所あり、後段では「被告発人」と記されている点を指摘していただけました。今回の日本酒配布問題では、元議長が、「名刺と共に干し大根を配布したことについては、自らの運動員が行ったのかもしれない」という趣旨のことを取材記者に語っているようですが、その場合であっても、やはり候補者自らの名前が書かれた名刺が使われていることから、元議長にきちんと事実関係を確認する必要があるので、被告発人は単数形にすることにし、その場で修正しました。
最後に、安中市役所3階の議会事務局を訪れました。隣の正副議長室では、なにやら人声がしていました。ちょうど副議長が議会事務局に入ってきたので、声をかけて挨拶をしました。
生憎、議会事務局長は不在でしたが、先日電話で話したことのある猿谷次長が議場で6月議会の準備をしているとのことで、わざわざ仕事の手を休んで、応対していただきました。
先日の電話では、当会が「告発も視野に入れています」と語ったところ、「ちょっとそんな・・・」と口走った次長ですが、すぐに撤回して「(当会が)告発を行うことについて特に問題は無い」ことを確認していただいた経緯があります。そのため、安中署に告発する前に、ぜひ告発状案について、見ていただく必要がありました。
当会から今回の告発の必要性と意義について詳しく説明し、告発状案の写しを渡したところ、猿谷次長は、「一応、議長とかに見せる」ということで、特に内容についてコメントはなさそうでした。
議会事務局では、今回の日本酒配布問題で元議長の発言に違和感を持った点として、元議長が「悪気はなかった。長年習慣化していて、票の依頼をしたつもりはない。誰からも指摘されなかったので知らなかった」という趣旨の発言がありました。なぜなら、議会事務局では再三再四にわたり、公選法について議員に冊子を配ったり、立候補者説明会で安中署から刑事担当者に来てもらい公選法違反行為について詳しく説明したりしたはずであり、「これまで指導がなかった、ということは有り得ないと思う。先日の小渕優子事件のあと、こういったことの寄付行為は安中市の広報に掲載させてもらっている。また、市議選の立候補者を対象にした事前説明会ではいろいろな例を挙げて、これはよくないということを説明している。公選法は議員活動の根本的なルールだ」からです。同じ見解を選管でも聞きました。
議会事務局でのヒヤリングを終えて廊下を進むと、各会派の控室の表札を目にしました。そこには元議長が所属する「平成の会」という文字は見当たりませんでした。あるのは、かつての会派名の「新政会」や「創政会」でした。不思議に思って、再度議会事務局に確認してみたところ、4月26日の選挙で新しく選ばれた議員による議長選出の際に、新しく会派構成が届け出られたのだそうです。
なぜか「平成の会」は「新政会」という名前に戻されました。この背景については、よくわかりません。ワンマン市政を敷いていた岡田義弘・前市長から、茂木英子・現市長に変わったため、議会の勢力図として、前市長派と現市長派の確執が背景にあるのかもしれません。この点は、後でもう少し詳しく検証する必要があるかもしれません。
議会事務局に新しい会派構成を訪ねたところ、既に、ホームページに掲載済みだということで、さっそく確認したところ、次の構成になっていることが分かりました。敬称略。
○新政会(8人):吉岡完司(議長)、今井敏博(副議長)、田中伸一、奥原賢一、斉藤盛久、遠間大和、罍次雄、巽久男、
○民声クラブ(3人):佐藤貴雄、吉岡登、小林克行
○朋の会(2人):高橋由信、太田進一
○日本共産党安中市議団(2人):金井久男、櫻井ひろ江
○公明党(2人):武者葉子、上原富士雄
○清風クラブ(2人);小川剛、柳沢浩之
○創政会(2人):柳沢吉保、廣瀬晃
○無所属(1人);櫻井喜久江
↑大忙しの議員。議会事務局の壁に掲示されている半月分の市内イベント日程表。↑
↑4月に新しく選出された市議らによる初めての6月定例議会を今や遅しと待つ安中市議会議場の入口。↑
■安中署では、当会の告発状はやはり受理しませんでしたが、「内容の確認のために、写しをとらせてほしい」と言われたので、快諾しました。小渕優子事件の際に東京地検特捜部から言われたように「連絡先をおしてほしい。必要な場合、こちらから連絡を取らせてほしい」というので、告発状に書いた携帯電話番号が正しいことを示しました。
おそらく警察ではきちんと今回の問題について捜査をするはずですが、問題は検察の対応です。小渕優子事件で、「姫」を不起訴にした東京地検の元特捜部長が現在の前橋地検の検事正をしているため、おそらく政治的な面を考慮して同じような処分結果を出す可能性があります。その場合、もし「起訴猶予」ではなく「嫌疑不十分」などと的外れな処分理由を告発者に示してきた場合は、公選法が完全に骨抜きになっていることを示す証左として、重要な指標となることでしょう。
他方、安中市議会の動静も注目されます。安中市議会の自浄作用がどの程度機能しているのかを占う意味で重要だからです。
【ひらく会情報部】
※参考情報
平成27年5月29日に群馬県選管に公選法の解釈について相談したところ、次の資料を小冊子として参考用に渡されました。群馬県のHP↓
http://www.pref.gunma.jp/07/u0100024.html
にも掲載されているので今後の参考のために紹介します。
【やさしい公職選挙法】
(公財)群馬県市町村振興協会が発行している、「やさしい公職選挙法(平成26年度版)」を掲載しています。
公職選挙法の基本的なところをまとめておりますので、「選挙のしくみ」に掲載している各ページとあわせてご覧ください。
0 表紙、目次、奥付等
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304561.pdf
1 私たちの政治
・暮らしと政治の関係、民主主義などについて解説しています。
(1)暮らしと政治
(2)民主政治と明るい選挙
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304564.pdf
2 選挙制度のあらまし
・選挙制度の理念、選挙権、立候補の手続き、選挙区、選挙人名簿などについて解説しています。
(1)3つの柱
(2)どんな種類の選挙があるか
(3)公正な選挙を行う機関 選挙管理委員会
(4)選挙権はいつから与えられるか
(5)誰でも立候補できます
(6)立候補のルール
(7)選挙区の区域と定数
(8)選挙人名簿はどのようにして作られるか
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304565.pdf
3 投票に参加するために
・期日前投票、不在者投票などについて解説しています。
(1)投票の秘密はどのようにして守られるか
(2)こんなときにはどうしたら投票できるか
(3)簡単にできる期日前投票と不在者投票
(4)郵便等による不在者投票制度
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304709.pdf
4 選挙運動のルール
・選挙運動期間、戸別訪問の禁止、連呼行為、街頭演説に係る制限、禁止される寄附に係る制限などについて解説しています。
(1)選挙運動とは
(2)選挙運動期間とは
(3)選挙終了後の挨拶は
(4)選挙事務所は
(5)選挙運動を禁止される者は
(6)地位を利用しての選挙運動は
(7)戸別訪問は
(8)飲食物の提供は
(9)気勢を張る行為は
(10)連呼行為は
(11)署名運動は
(12)選挙運動用自動車・スピーカーは
(13)文書、図画については
(14)街頭演説は
(15)演説会は
(16)公職の候補者等の寄附は
(17)後援団体の寄附は
(18)年賀状の挨拶状は
(19)挨拶を目的とする有料広告は
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304567.pdf
5 公営による選挙運動
・選挙公営(国や地方公共団体が公費により各候補者の選挙運動に便宜を与える制度)について解説しています。
(1)投票記載所の氏名等の掲示
(2)選挙公報
(3)個人演説会の公営施設使用
(4)新聞広告
(5)政見放送、経歴放送
(6)通常葉書
(7)特殊乗車券
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304568.pdf
6~8 誰でもできる選挙運動・選挙運動に使ってもよいお金・選挙浄化の徹底
・候補者以外の方もできる選挙運動、選挙運動費用の制限額、連座制などについて解説しています。
6 誰でもできる選挙運動
(1)個々面接
(2)電話の利用
(3)選挙運動用「葉書」の利用
(4)幕間演説
(5)個人演説会
(6)労務提供
(7)選挙運動資金の寄附
7 選挙運動に使ってもよいお金
8 選挙浄化の徹底
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304569.pdf
参考資料
(1)群馬県における国・県の選挙別投票率
(2)群馬県の参議院議員通常選挙年代別投票率の推移
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304570.pdf
(3)選挙区及び定数
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304571.pdf
(4)寄附の制限
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304572.pdf
↑安中警察署。刑事課は2階の右手にある。↑
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告 発 状
告発人
住所 群馬県安中市野殿980番地
職業 会社員
氏名 小川 賢(昭和27年3月5日生) 自署押印
電話 090-5302-8312
FAX 027-381-0364
被告発人
住所 群馬県安中市内
職業 安中市議会議員(元・同市議会議長経験者)
氏名 不詳
平成27年5月26日
群馬県警察本部長殿
一 告発の趣旨
被告発人の以下の所為は、公職選挙法第199条の2第1項及び第2項(政治家の寄付の禁止)、および、選挙運動の事前運動として公職選挙法第139条(飲食物の提供の禁止)に該当すると考えるので、被告発人を厳罰に処することを求め告発します。
二 告訴事実
添付書類によれば、被告発人は、平成27年2月、地元およそ5か所で開催された各地区住民の集会に、自分の名前を記載した熨斗紙を付けた日本酒(1升ビン)二本セットを無償配布=寄附しました。また、それ以前にも毎年二月に、いわゆる「春契約」と呼ばれる地元各自治会の役員などを決めるために地区ごとに数十人ずつが参加して開かれる集会に、同様の寄付をしていたといわれています。総務省によると、選挙区内の人に対する寄付行為は、選挙前か否かにかかわらずに禁じられており、群馬県選管によると、選挙運動の事前運動として飲食物の提供は禁じられており、いずれも公職選挙法に抵触する禁止行為に該当します。このように、被告発人の前記所為は公職選挙法第199条の2第1項および第2項及び同第139条に定める違反行為に該当すると思われるので、被告発人の厳重な処罰を求めるため、ここに告発します。
三 立証方法
1 新聞報道記事(2015年5月22日付東京新聞群馬版より)
四 添付書類
上記記事写し
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■安中署では、高柳課長が在籍中でしたが、公務多忙で手が離せない様子で、同課の若手刑事ら二人が隣接の面接室で告発の相談に応じてくれました。
30分間にわたる当会からの説明の中で強調したのは、昨年4月13日の安中市長選の投票日に発生したなりすまし投票事件のことです。
この事件は、平成26年4月13日に行われた安中市長選で、他人の投票所入場券を使って男女各1人ずつ計2人が詐偽投票(なりすまし投票)した疑いで、市選管が安中署に翌14日に情報提供したものです。
なぜ不正な投票行為が発覚したかというと、市内の某投票所で投票した男女各1人について、投票後に立会人の地元年配者が「普段見かけない人物だ」と不審に思い、入場券で氏名を確認したところ、本人でないことに気づいて、同席していた市職員に指摘し、市職員が市選管に連絡し、市選管が14日に調査したところ、やはり本人でないことが確認されたのです。
そのため、市選管は4月13日に選管確定として発表した投票者数を2人減らし、投票率を55・26%から55・25%に訂正する羽目になりました。しかし、投じられた票は有効とされ、候補者2人の得票数は変わらないという措置がとられ、不受理・持ち帰りを「マイナス2」として投票者数との差をつじつま合わせしたのでした。
なりすまし投票は公職選挙法の違反行為で最高刑は2年以下の禁錮または30万円以下の罰金という犯罪です。ところが、安中市選管は、目の前で不正行為があったら告訴又は告発をしなければならないという義務を行使しようとせず、単に選挙違反行為を警察に連絡しただけでした。本来であれば、自ら「被疑者を厳罰に処してもらいたい」とする告発を捜査機関に行わなければならないのです。
これまで何度も選挙違反に遭遇してきた当会では、市選管のこのような対応を苦々しく思っていたため、市選管に代わって告発状を提出する必要があると痛感し、市選管に告発状案を見せて、選管の代わりに警察に告発することを告げた上で、安中署に告発状を提出したのでした。
安中署は、当会の告発状の写しを取っただけで、原本をすぐには受理しようとしませんでした。すぐに受理すると、この事件を立件し、結果を告発者に伝える義務が発生するからです。しかしその後安中署は、このなりすまし投票事件をしっかりと捜査し、容疑者3名(なりすまし投票をした男女1人ずつのほかに共犯と思しき1名の計3名)を前橋地検に送検したのでした。群馬県警捜査2課の担当者も当会の告発については承知しており、きちんと捜査している旨、説明がありました。
ところがいつになっても、通報した市選管に安中署はもちろん、前橋地検からもその後の捜査結果や容疑者の措置についての連絡が全然来ないというので、当会が、市選管に代わって安中署を訪れました。安中署では「既に送検済みなので、前橋地検に行ってみて話を聞いてくれ」というので、すぐに前橋地検に行きました。ところが、応対に出た若い男女の検察官は「告発状は受理されていないので、告発者を自称する者に捜査結果や処分結果などを説明する義務や責任はありません」と言われてしまいました。この一件の経緯は当会の次のブログを参照ください。↓
○2015年2月25日:2014年4月の安中市長選のなりすまし投票事件の被疑者らが不起訴処分となった経緯と背景に関する一考察↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/1542.html
■当会は、このなりすまし投票事件の二の舞にされないように、安中署の刑事の皆さんには十分留意するように要請しました。幸い、受理するかどうかを含め、内容の検討状況と結果については、適宜必要に応じて連絡をしてくれるそうなので、当会の携帯電話番号を改めて伝えてあります。いずれにしても、前回のような前橋地検の酷い対応は二度と味わいたくありません。
なお、今回の告発状提出に先立ち、当会は群馬県選挙管理委員会を訪ねました。県選管に今回のような日本酒を有権者らに配布する行為は、一般的に言うと、公職選挙法の第何条に抵触する可能性があるのか、聞いてみました。
20150529_kensenkan_kifukinshinorule_1.pdf
20150529_kensenkan_kifukinshinorule_2.pdf
↑県庁9階の群馬県選管と、相談コーナーの机の上に貼ってある「明るい選挙キャンペーン」のチラシ2種類。↑
県選管の担当者のコメントは、「公選法第199条の2に定めた寄付の禁止に加えて、選挙運動の事前運動としての飲食物の提供の禁止をうたった公選法139条に該当する可能性がある」というものでした。
県選管いわく「公選法違反については判例で示されているのみで、選挙運動の定義に関しては昭和52年2月24日に最高裁で示された判例が踏襲されている」とのことです。
○ 昭和49(あ)1709 公職選挙法違反: 昭和52年2月24日 最高裁判所第一小法廷↓
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51083
判決文↓
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/083/051083_hanrei.pdf
また県選管の説明によれば、政治家の活動として、政治活動と選挙運動がありますが、選挙運動期間以外は政治活動の期間と言われながらも、いわゆる事前運動を帯びる政治活動があります。つまり、政治活動を仮装しながら選挙運動性を帯びる要素が有る場合は、それは選挙運動の前に、選挙運動の事前運動とみなされるというのです。
しかし、こうした公選法の取り扱いに詳しい選管ですが、選管いわく「選管とはその名の通り選挙の管理であり、政治活動の規制をすることではなく、選管はあくまで選挙の管理だけであって、取締りについては公選法の中で警察が行うことが明確に規定してあるため、我々選管には取り締まり権限がない」のだそうです。
そして、選管の説明によれば、「公選法は政治資金規正法というものは、国民の皆さんの不断の関心に委ねるというのが基本的な考え方」だということです。「そして、その観点から、県選管では、例えば、政治資金収支報告は全部インターネットで閲覧可能にしてある」のだそうです。
選管曰く「飲食物の提供ということだと公選法139条に抵触する可能性がある。これは選挙運動に関して、ということに限定されているので、これも関係するかどうか、事前運動性に抵触するかどうかがポイントとなるため、これも参考までに伝えておく」ということです。
■続いて、当会は告発状案を携えて、安中市選挙管理委員会を訪れ、副書記長に意見を聞きました。
副書記長を務める吉田法制課長に、「本来、告発というものは選管が行うべきものではないのでしょうか?」と当会の持論を申し上げたところ、「選管としてはあくまでも捜査権がないので管理するだけであり、選挙の執行の管理ということで公選法ではそういうことになっている。せいぜい、違反文書の撤去と、投票日における投票所から300m以内の選挙事務所の閉鎖の指示くらい。権限はその2つしかない。違反事項については全て警察の権限になる」ということで、やはり公務員による告発義務については、忘れているかのようです。
それでも当会からは「公費を使って公正な選挙キャンペーンをPRするのだから、きちんと何が違反で、どこまでが違反でないということを率先して示すには、告発という形で警察に捜査を委ねる必要があるのではないでしょうか」と、しつこく持論を説明しました。
その結果、当会の告発状案の前段に、「被告発人ら」という記載が2か所あり、後段では「被告発人」と記されている点を指摘していただけました。今回の日本酒配布問題では、元議長が、「名刺と共に干し大根を配布したことについては、自らの運動員が行ったのかもしれない」という趣旨のことを取材記者に語っているようですが、その場合であっても、やはり候補者自らの名前が書かれた名刺が使われていることから、元議長にきちんと事実関係を確認する必要があるので、被告発人は単数形にすることにし、その場で修正しました。
最後に、安中市役所3階の議会事務局を訪れました。隣の正副議長室では、なにやら人声がしていました。ちょうど副議長が議会事務局に入ってきたので、声をかけて挨拶をしました。
生憎、議会事務局長は不在でしたが、先日電話で話したことのある猿谷次長が議場で6月議会の準備をしているとのことで、わざわざ仕事の手を休んで、応対していただきました。
先日の電話では、当会が「告発も視野に入れています」と語ったところ、「ちょっとそんな・・・」と口走った次長ですが、すぐに撤回して「(当会が)告発を行うことについて特に問題は無い」ことを確認していただいた経緯があります。そのため、安中署に告発する前に、ぜひ告発状案について、見ていただく必要がありました。
当会から今回の告発の必要性と意義について詳しく説明し、告発状案の写しを渡したところ、猿谷次長は、「一応、議長とかに見せる」ということで、特に内容についてコメントはなさそうでした。
議会事務局では、今回の日本酒配布問題で元議長の発言に違和感を持った点として、元議長が「悪気はなかった。長年習慣化していて、票の依頼をしたつもりはない。誰からも指摘されなかったので知らなかった」という趣旨の発言がありました。なぜなら、議会事務局では再三再四にわたり、公選法について議員に冊子を配ったり、立候補者説明会で安中署から刑事担当者に来てもらい公選法違反行為について詳しく説明したりしたはずであり、「これまで指導がなかった、ということは有り得ないと思う。先日の小渕優子事件のあと、こういったことの寄付行為は安中市の広報に掲載させてもらっている。また、市議選の立候補者を対象にした事前説明会ではいろいろな例を挙げて、これはよくないということを説明している。公選法は議員活動の根本的なルールだ」からです。同じ見解を選管でも聞きました。
議会事務局でのヒヤリングを終えて廊下を進むと、各会派の控室の表札を目にしました。そこには元議長が所属する「平成の会」という文字は見当たりませんでした。あるのは、かつての会派名の「新政会」や「創政会」でした。不思議に思って、再度議会事務局に確認してみたところ、4月26日の選挙で新しく選ばれた議員による議長選出の際に、新しく会派構成が届け出られたのだそうです。
なぜか「平成の会」は「新政会」という名前に戻されました。この背景については、よくわかりません。ワンマン市政を敷いていた岡田義弘・前市長から、茂木英子・現市長に変わったため、議会の勢力図として、前市長派と現市長派の確執が背景にあるのかもしれません。この点は、後でもう少し詳しく検証する必要があるかもしれません。
議会事務局に新しい会派構成を訪ねたところ、既に、ホームページに掲載済みだということで、さっそく確認したところ、次の構成になっていることが分かりました。敬称略。
○新政会(8人):吉岡完司(議長)、今井敏博(副議長)、田中伸一、奥原賢一、斉藤盛久、遠間大和、罍次雄、巽久男、
○民声クラブ(3人):佐藤貴雄、吉岡登、小林克行
○朋の会(2人):高橋由信、太田進一
○日本共産党安中市議団(2人):金井久男、櫻井ひろ江
○公明党(2人):武者葉子、上原富士雄
○清風クラブ(2人);小川剛、柳沢浩之
○創政会(2人):柳沢吉保、廣瀬晃
○無所属(1人);櫻井喜久江
↑大忙しの議員。議会事務局の壁に掲示されている半月分の市内イベント日程表。↑
↑4月に新しく選出された市議らによる初めての6月定例議会を今や遅しと待つ安中市議会議場の入口。↑
■安中署では、当会の告発状はやはり受理しませんでしたが、「内容の確認のために、写しをとらせてほしい」と言われたので、快諾しました。小渕優子事件の際に東京地検特捜部から言われたように「連絡先をおしてほしい。必要な場合、こちらから連絡を取らせてほしい」というので、告発状に書いた携帯電話番号が正しいことを示しました。
おそらく警察ではきちんと今回の問題について捜査をするはずですが、問題は検察の対応です。小渕優子事件で、「姫」を不起訴にした東京地検の元特捜部長が現在の前橋地検の検事正をしているため、おそらく政治的な面を考慮して同じような処分結果を出す可能性があります。その場合、もし「起訴猶予」ではなく「嫌疑不十分」などと的外れな処分理由を告発者に示してきた場合は、公選法が完全に骨抜きになっていることを示す証左として、重要な指標となることでしょう。
他方、安中市議会の動静も注目されます。安中市議会の自浄作用がどの程度機能しているのかを占う意味で重要だからです。
【ひらく会情報部】
※参考情報
平成27年5月29日に群馬県選管に公選法の解釈について相談したところ、次の資料を小冊子として参考用に渡されました。群馬県のHP↓
http://www.pref.gunma.jp/07/u0100024.html
にも掲載されているので今後の参考のために紹介します。
【やさしい公職選挙法】
(公財)群馬県市町村振興協会が発行している、「やさしい公職選挙法(平成26年度版)」を掲載しています。
公職選挙法の基本的なところをまとめておりますので、「選挙のしくみ」に掲載している各ページとあわせてご覧ください。
0 表紙、目次、奥付等
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304561.pdf
1 私たちの政治
・暮らしと政治の関係、民主主義などについて解説しています。
(1)暮らしと政治
(2)民主政治と明るい選挙
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304564.pdf
2 選挙制度のあらまし
・選挙制度の理念、選挙権、立候補の手続き、選挙区、選挙人名簿などについて解説しています。
(1)3つの柱
(2)どんな種類の選挙があるか
(3)公正な選挙を行う機関 選挙管理委員会
(4)選挙権はいつから与えられるか
(5)誰でも立候補できます
(6)立候補のルール
(7)選挙区の区域と定数
(8)選挙人名簿はどのようにして作られるか
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304565.pdf
3 投票に参加するために
・期日前投票、不在者投票などについて解説しています。
(1)投票の秘密はどのようにして守られるか
(2)こんなときにはどうしたら投票できるか
(3)簡単にできる期日前投票と不在者投票
(4)郵便等による不在者投票制度
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304709.pdf
4 選挙運動のルール
・選挙運動期間、戸別訪問の禁止、連呼行為、街頭演説に係る制限、禁止される寄附に係る制限などについて解説しています。
(1)選挙運動とは
(2)選挙運動期間とは
(3)選挙終了後の挨拶は
(4)選挙事務所は
(5)選挙運動を禁止される者は
(6)地位を利用しての選挙運動は
(7)戸別訪問は
(8)飲食物の提供は
(9)気勢を張る行為は
(10)連呼行為は
(11)署名運動は
(12)選挙運動用自動車・スピーカーは
(13)文書、図画については
(14)街頭演説は
(15)演説会は
(16)公職の候補者等の寄附は
(17)後援団体の寄附は
(18)年賀状の挨拶状は
(19)挨拶を目的とする有料広告は
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304567.pdf
5 公営による選挙運動
・選挙公営(国や地方公共団体が公費により各候補者の選挙運動に便宜を与える制度)について解説しています。
(1)投票記載所の氏名等の掲示
(2)選挙公報
(3)個人演説会の公営施設使用
(4)新聞広告
(5)政見放送、経歴放送
(6)通常葉書
(7)特殊乗車券
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304568.pdf
6~8 誰でもできる選挙運動・選挙運動に使ってもよいお金・選挙浄化の徹底
・候補者以外の方もできる選挙運動、選挙運動費用の制限額、連座制などについて解説しています。
6 誰でもできる選挙運動
(1)個々面接
(2)電話の利用
(3)選挙運動用「葉書」の利用
(4)幕間演説
(5)個人演説会
(6)労務提供
(7)選挙運動資金の寄附
7 選挙運動に使ってもよいお金
8 選挙浄化の徹底
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304569.pdf
参考資料
(1)群馬県における国・県の選挙別投票率
(2)群馬県の参議院議員通常選挙年代別投票率の推移
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304570.pdf
(3)選挙区及び定数
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304571.pdf
(4)寄附の制限
http://www.pref.gunma.jp/contents/000304572.pdf