市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

キプロス問題から見えてくる安中市土地開発公社と安中市の異常な現状

2013-04-02 22:25:00 | 土地開発公社51億円横領事件
■先月16日から、全銀行口座からの引出を制限する預金封鎖が行われていたキプロスですが、3月28日正午(日本時間28日午後7時)から、13日ぶりに各銀行が営業を再開しました。しかし、窓口再開にあたり、キプロス政府は国外への資金流出などを防ぐため、預金の引き出しを1日あたり300ユーロ(約3万6000円)に制限しました。

 このキプロスは、南北に別れており、現在問題になっているのは島の南側にある人口約87万人のキプロス共和国です。北側にはイスラム系の住民が住んでおり、トルコの影響下にあります。いずれにしても日本では日頃あまり話題にならない地中海の島ですが、このキプロス共和国のせいで、EUが揺れ動いています。アベノミクス効果とやらで、急激な円安になっていましたが、このキプロス問題で、今日も1ドル93円の前半で為替が動いています。

 このキプロス問題を見ていると、なにやらEUとキプロスの関係が、安中市と土地開発公社のような気がしてなりません。

■ロシアの富豪の隠し資金やエネルギー関連の不正資金の流入などキプロスはマネーロンダリングのメッカだったといわれています。キプロスがEUに加盟したのは2004年でした。昨年からドイツではキプロスのバブル崩壊が話題になっていたように、長年にわたり、安い税金と抜け穴ばかりの同国の銀行は、高い金利を売り物に投資家のカネを集めていました。だからマネーロンダリングはやり放題だったのです。

 島国のキプロスでは、国家経済の70%が金融収入だったこともあります。その結果、銀行資産が経済規模の8倍になり、長い間、キプロスはバブルによる好景気で潤っていました。

 キプロスが脱税天国を目指したのは1970年代でした。ヨーロッパ、アフリカ、中東の真ん中という立地条件から、スイスには及ばなくてもリヒテンシュタイン並みのタックスヘイブンにすることが目標でした。

 1990年のソ連崩壊で、ロシア・マネーが流入し、好景気はピークを迎えました。郵便の私署箱だけの実体の無い会社が4万社を超えましたが、そのカネ金がどこから来たものかは一切不問にされていました。この結果、現在キプロスに投資されているカネのうち、少なくとも198億ユーロ(約2兆4000億円)がロシアからの資金だといわれています。

 ロシアはロシア系ユダヤ人が多く住むイスラエルと関係が深く、キプロスとも伝統的に縁が深い関係にあります。第2次世界大戦後、キプロスは非同盟諸国運動(Non-Aligned Movement:NAM)の1つとして、公式には東西どちらの陣営にも属していませんでしたが、ロシアはキプロスを積極的に支援していたのでした。

 大勢のキプロスの若者がモスクワに留学するとともに、ロシア人はキプロスをヨーロッパへの入口と見なしていた。キプロスの高級品店ではロシア語が通じ、ロシア人相手の商売が大いに繁盛していました。

 キプロスの好景気にもう一度拍車がかかったのが、2004年のEU加盟でした。2008年にはユーロが導入されました。キプロスは、裕福なロシア人が容易にキプロス籍を取れるように計らい、すでに80人のロシアの権力者や富裕者がキプロス国籍を取得してEU市民としての権利を享受しているといわれています。

 ちなみに、投資家でロシアの次に多いのが英国です。キプロスは1960年まで英国の植民地だったため今でも3500人の英国兵が駐屯しているからです。

■キプロスのバブルは破裂すべくして破裂しました。

 キプロスの金融機関は、ロシアなどから流入した資金を主にギリシャ国債などで運用していたと見られ、2010年のギリシャ危機の発生以降、多額の損失を被り経営状況は悪化していました。

 そして2012年6月、キプロス政府はEUに対して、同国内の銀行の経営悪化を理由に支援策の実施を要請し、これによってキプロスは、ギリシャやアイルランド、ポルトガル、スペインに次いでEU内で5ヵ国目の要請国となりました。それに対して、EUは要請を審議した上、とりあえず欧州中央銀行(ECB)の資金供給を継続することで、キプロスの緊急事態の発生を抑制する姿勢を示しました

 EUに支援要請を行った後も、キプロスの金融機関の経営状況は改善せず、今年3月16日、EU圏財務相会合で具体的な支援策が合意されました。EUとIMFが提示した支援策の概要は、キプロスの金融機関の資本強化に必要と見られる約170億ユーロのうち、100億ユーロはEUとIMFが提供し、約60億ユーロに関してはキプロスの金融機関の預金から税金を徴収して賄うというものでした。EUの血税をつぎ込むのだから、キプロスも少しは努力が必要だという主旨が読み取れます。

 具体的にEUとIMFが提案した課税方法は、10万ユーロ超の預金については9.9%、10万ユーロ未満の預金については6.75%の税率でした。

 一方、キプロス政府自身としても、マネーロンダリングの温床でもあるオフショア・バンキング・モデルを是が非でも守るべく、本来ならユーロ圏の預金保険で保護されるはずの10万ユーロ以下の預金にも損失を負担させるため、全預金者に一度限りの税金をかける決断を下したのでした。

 しかし、この案はキプロス国内のみならず、ほかのユーロ圏諸国でも受け入れられなかったため、その後打ち出された現在のプランは、同国内第2位のキプロス・ポピュラー銀行(ライキ銀行)は「グッドバンク」と「バッドバンク」に分割されます。

 ライキ銀行の10万ユーロ以下の預金と、90億ユーロの資産は、国内最大手のキプロス銀行に移管され、残りは順次整理・処分されることになりました。

 ライキ銀行に10万ユーロ超の預金がある預金者に戻ってくる金額は、バッドバンクの資産価値に応じて決まることになり、キプロス銀行に10万ユーロを超える預金がある人は、その預金口座が凍結され元本削減の対象になります。削減の規模は未定ですが相当大きな数字(40%?)になるとささやかれています。さらにキプロスには、一時的な為替管理も導入されることになります。

■今回のキプロス問題で明らかになったことは、同じ1ユーロでも各国で異なる価値になることです。1ユーロはどこでも1ユーロですが、実際のところユーロは、そのほぼすべてがいろいろな銀行の負債だからです。

 キプロス問題では、銀行の負債1ユーロの価値はその銀行自体の支払い能力に、ひいてはその銀行を支える政府の支払い能力に依存しているという事実が浮き彫りにされました。

 もし、この銀行と政府の両方が支払い不能に陥れば、その銀行の預金者は預金の大きな部分を即座に失うだけでなく、一国の銀行システムが崩壊するのを防ぐ管理措置のために残りの資金も凍結されてしまう可能性が高いからです。

 ところが当初、これに抵抗したのがなんと、当のキプロスのアナスタシアディス大統領でした。小口預金を課税対象から外すと、大口預金者への課税率が上がってしまうため、ロシア人など大口投資家のカネが流出してしまうのを食い止めたかったのでしょう。税率を10パーセント以上にすることを断固拒否し、その代わり、小口預金者のお金に課税すると言い張ったのでしたが、「それはまずい」とEUの財務大臣たちに説得されそうになると、怒ったふりをして会議の席を立ちました。

 融資の条件である58億ユーロを、誰がどのように負担するか決めるのは、結局はキプロス政府です。小口預金者も課税対象にするという案はおそらくアナスタシアディス大統領から出たものであり、それが発表された途端、キプロス国内は前述のとおり大騒動になったのでした。

 こうして大統領は、大口投資家からの圧力と一般国民の板挟みになって、責任をEUや特にドイツのせいにしようとしました。キプロス政府は、法案を急遽修正し、20万ユーロ以下の預金には手を付けず、20万から100万ユーロの預金者に6.75%、100万ユーロ以上には9.9%課税という新案をひねり出しましたが、これでは58億ユーロに達しないことは初めから分かっていました。危機意識が足りない証左でした。

 そして、3月19日の夜、その新案が議会に上程されましたが、賛成した議員は皆無で、キプロスはEUからの援助を拒絶したことになります。銀行が破産すれば10%の預金損失どころか、国も破産します。

 にもかかわらず、キプロス市民は「我々もヨーロッパの一員として、ちゃんとした扱いを受ける権利がある」「金の問題ではない。誇りの問題だ」とインタビューに答えるばかりで、大統領自身もEUに大変不満を示し、「腐敗した銀行システムの改革を!」というコメントは結局出ませんでした。

 EUが突きつけた最後通牒は25日だったので、EUの1国が破産するかもしれないという不安と緊張が次第に高まりました。

 3月24日の夜、再度ブリュッセルで会議が開かれ、結局、キプロスの銀行システムの改革を条件に、援助は実行されることになりました。前述のように、キプロスで第2の銀行に大ナタが振るわれる一方で国内最大のキプロス銀行の方はこの整理の措置対象外となりました。

■この構図を安中市とその庇護のもとにある安中市土地開発公社に当てはめてみましょう。

(1)マネーロンダリングについて
 18年前のタゴ事件に見られるように、もともと土地開発公社は、市長や職員ら幹部、OB、政治家らの利権の巣窟として運営されているものです。したがって、公社が公共事業で土地を先行取得する場合にも、公社のプロパー事業として工業団地造成の場合にも、市の保証で銀行から資金を借り入れたり、事業のための事務費として市から補助金が支払われたりして、公社にカネが入りますが、この使途については、安中市と別法人ということで、詳しい情報は公開されません。まさに、伏魔殿の様相を呈している安中市土地開発公社にとって、これはぴったり当てはまります。

(2)責任の所在について
 メンバー国のキプロスがコケるとEUも深刻な事態になることが懸念される為、EUがキプロス支援に踏み切ったわけです。一方、安中市の場合も、公社の保証人になっているので公社がコケると、安中市にもろに損失が及んできます。
 ところが実際は、タゴ事件で公社に約48億円、安中市に約3億円強の損失が出たわけで、本来であれば既に公社はコケているはずなのに、何事も無かったかのように存続してます。そのかわり、事件に深く関係して共同正犯同然の群馬銀行に、本来市民生活のために役立てるはずの和解金を毎年2000万円も、今後89年間(最後の年は1000万円)支払い続けることになっています。にもかかわらず、誰もその責任を負っていません。市民らが当時の公社関係者を相手取って損害賠償請求の裁判をしましたが、岡田義弘氏(元市議で公社理事・監事、事件発覚直前に県議にシフト)が「公社の被害は安中市と別法人なので、その被害について市民が提訴する資格はない」と主張。裁判所もそれを認め、最高裁で確定させられてしまいました。
 キプロスの場合には、EUが支援しきれなくなり、自己負担を一部キプロス側にもとめたわけですが、キプロス市民が「我々もヨーロッパの一員として、ちゃんとした扱いを受ける権利がある」「金の問題ではない。誇りの問題だ」と声をあげ、大統領自身もEUに不満を示しました。
 安中市の公社では、一般国民はおらず、公社の理事長を岡田市長が兼務していて、双方代理という違法状態が続いており、まったく事態の異常さを認識する気配はありません。この点は、キプロス問題と違う点です。

(3)負担の最終のツケについて
 キプロス問題で、EUは約100億ユーロをキプロスに支援し、キプロスでは国民や預金者であるロシアや不正資金保有者らが約60億ユーロを預金から税金として強制徴収されることで決着に向けた対応がなされています。
 安中市と公社の関係で言うと、公社を舞台にしたタゴ事件で約51億円余りの公金が、元職員から親族、市役所幹部、議会関係者、金融機関、出入業者、愛人、暴力団、知人らに渡り、彼らのバブリィな生活の源泉となりました。しかし、元職員が14年の実刑を受けただけで、事件関係者は誰ひとり弁済をせず、民事時効もあと2年あまりで到来する状況です。結局、公社は別法人だとして存続させ、その公社に対して、安中市が保証人となり補助金を出し続けるということは、結局、安中市民がタゴら事件関係者の豪遊と公社の伏魔殿経営のツケを子、孫、ひ孫まで3代に渡って、尻拭いさせることに他なりません。
 ここで忘れてはならないのが、タゴの偽造書類を不審に思わず、せっせと騙され続けた群馬銀行の存在です。さしずめ、キプロス問題で負担を余儀なくされるほかのEUの国民と小口預金者のキプロス国民にとっては、「腐敗した銀行システムの改革を!」と叫びたい気持ちに共通するものがあります。
 今回のキプロス支援策に関して、最も強硬な姿勢をとっているEUの盟主であるドイツの国民から見れば「問題が深刻化したのはキプロスの自業自得で、支援を受けるのであれば、相応の負担をすべき」という論理が成り立ちます。この論理でいえば、安中市の場合、3世代先までツケ払いすることになるタゴ51億円事件で、公社関係者はタゴがムショにちょっと入っただけで(しかもそのことにより使途不明金14億円強を合法的にせしめることができた)、誰一人事件の責任をとらないのは、まったく異常であり、安中市民として「問題が深刻化したのは公社関係者の事業自得であり、安中市が公社を存続するのであれば、公社関係者にも相応の負担をさせるべき」という声を岡田市長件公社理事長に浴びせかけないと辻褄があいません。

(4)問題が及ぼす影響について
 今後EU内で、財政状況の悪化により一段の支援を求める国が出た場合に、今回のキプロスと同じように預金の一部が強制的に取り上げられる懸念があるとすれば、人々は銀行に預金をしなくなる可能性が懸念されています。あるいは、すでに預けてある預金をすぐに引き出しに行くかもしれません。そうした事態が発生すると、当該国の金融機関の経営状態はますます悪化することになり、それがきっかけとなって、金融システム全体に不安が生じることも懸念されます。
 一方、安中市のタゴ51億円事件の問題は、安中市民による安中市制への信頼が大きく損なわれたことです。しかし、事件を既に18年目を迎えようとしており、タゴ事件の真相を知らない若者が市民に占める割合も無視できないほどになりました。さらに、タゴ事件について何も知らされないまま安中市と合併させられた旧松井田町の住民は、元職員が作った決算書から繰越金が500万円消えていたにもかかわらずハンコを押した当時市議だった岡田義弘・公社監事が現在市長と公社理事長に就いていることに何の違和感も持っていません。なぜなら、安中市がそうした負の情報を松井田在住の市民に教えていないからです。

■かくして、世界的に見ても、安中市民の直面する市政の実態の異常さがあらためて浮き彫りになるのです。

【ひらく会情報部】

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