■未来塾側が安中市側を訴えた損害賠償控訴請求事件は、第1回口頭弁論が平成22年10月18日(月)午後1時50分~、第2回口頭弁論が平成22年12月20日(月)午前11時30分から東京高等裁判所第5民事部511号法廷で開かれ、平成23年2月21日(月)予定の第3回口頭弁論で結審することになりました。そのため、年明けから両者では、最後の仕上げを目指して活発な動きが展開されました。
最初に、ドーンとこれでもかとばかりに準備書面を提出してきたのは、控訴人の未来塾側です。最後の最後に、岡田市長が見つけてきたイカガワシイ鑑定書に対する決定打として、株式会社鈴木法科学検定研究所が作成した「意見書」を甲第60号証として証拠提出するための「第3準備書面」を平成23年2月7日付で東京高等裁判所に提出したのでした。
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【控訴人が提出した第3準備書面】
平成22年(ネ)第4137号 損書賠償等請求控訴事件
控訴人(一審原告) 松本立家 外1名
被控訴人(一審被告) 岡田義弘 外1名
第 3 準 書 面
平成23年2月7日
東京高等裁判所 第5民事部 御中
控訴人(一審原告)ら訴訟代理人
弁護士 山 下 敏 雅
同 中 城 重 光
同 釜 井 英 法
同 登 坂 真 人
同 寺 町 東 子
同 後 藤 真紀子
同 青 木 知 己
同 吉 田 隆 宏
同 船 崎 ま み
同 寺 田 明 弘
同 高 城 智 子
同 山 口 裕 末
第1 -審被告岡田の提出した「鑑定書」(丙22)に信用性のないこと
1 時計の針の音のズレを前提としても論理に重大な誤りがあること
一審被告岡田の提出した,日本音響研究所所長鈴木松美「鑑定書」(丙22)は,意見交換会の録音記録(甲39)について,市長室内の時計の針の音のズレを根拠として,編集加工されたものと結論づけている。
しかしながら,その針の音が「鑑定書」に記載されているとおり存在することを前提としてもその論理に重大な誤りがあることについては,すでに本件控訴審の一審原告第1準備書面7頁以降に詳述したとおりである。
2 「鑑定書」の時計の針の音の分析結果自体に根本的な誤りのあること
(1) さらに,別の専門家によれば,「鑑定書」が前提とする市長室内の時計の針の音の分析結果自体にも,根本的な誤りが存する。
(2) すなわち,元警察庁科学警察研究所副所長の鈴木隆雄によれば,鈴木松美が「鑑定書」で使用した分析機器のサンプリング周波数は22050Hz程度,分解能は1024ポイントであり,時間分解能は約0.05秒程度にすぎない。しかるに,「鑑定書」別表8では,時間分解能が小数点以下5析まで示されているものがある。これは,「メモリが1mmしか測れない物指しで0.1mmを測っているようなもので,まったく意味がない」ものである(甲60:3頁)。
また,「鑑定書では長針の衝撃音の分析結果として別添7のスペクトログラムが添付されているが,①この衝撃音の分析結果が,原録音のどの部分から抽出されたか明示されておらず,本当に衝撃音であるか否かも不明であり,また,②衝撃音の立ち上がりから減衰までに約0.08秒程度の時間があり,「鑑定書」が衝撃音の時間の測定をどの部分で行っているのかの明示もない(甲60:3頁)。
さらに,「鑑定書」の別添3~6の周波数分析結果の図からは,長針の衝撃音を読み取ることは不可能である(甲60:3頁)。
(3) 「鑑定書」8頁の番号15から2 1 1までの各部分に表示された時間を含む2分間の区間について,鈴木隆雄が周波数分析を行い,そのスペクトログラムを検討したものが,甲60号証の4真の表1及び添付の図3から図10である。
これについて鈴木隆雄は,「表1で示したように日音研鑑定言に記載されている部分について検討したが,30秒毎の長針の衝撃音は,明確には認められなかった」と結論づけている(甲60:5真)。
(4) さらに,「鑑定言」で30秒の長針衝撃音の欠落がないとされている番号10から14の部分の2分間について,鈴木隆雄が10秒ずつ区切って周波数分析を行い,そのスペクトログラムを分析しだものが,甲60号証の5頁の表2及び添付の図11である。
これについて鈴木隆雄は,「表2では,2分間の録音を10秒区間毎に連続で分析しているので,もし30秒毎の長針の衝撃音が明確な音であれば,少なくとも3個は認識できるはずでさるが,明確には認められなかった」と結論づけている(甲60:7真)。
(5) もし30秒毎の長針の衝撃音が明確な音ではなく小さな音であるとするならば,少なくとも現場で同じような録音実験を行い,そこに収録されている長針の衝撃音と比較して説明すべきである(甲60:7真)。しかし,「鑑定書」にはそのような実験を行い,比較した説明は一切ない。
正確に鑑定を行うのであれば,時系列的に30秒毎の長針の衝撃音の存在を示す分析スペクトログラムを示し,さらに衝撃音の詳細な分析を2個以上示して初めて科学的な鑑定といえるが,「鑑定書」ではそのような分析はない。
(6) 鈴木隆雄は,概要,以上のように分析したうえで,「日音研の鑑定書を根拠にした論議は,日音研の時刻鑑定の物理的な合理性が無いことから,基本的に成り立だない」と結論づけている(甲60:7頁)。
3 小括
以上のとおり,被告岡田の提出した「鑑定書」(丙22)は,市長室の針の音が「鑑定書」記載の通りであることを前提としてもその論理に重大な誤りがあるだけでなく,そもそもその針の音の鑑定結果自体に合理性がなく,いずれにしても信用性はない。
第2 録音記録(甲39)が編集加工されていないこと
1 デジタル録音の改ざんの検出可能性
ICレコーダーのようなデジタル式の録音機では,アナログ式の録音機のようなスイッチ信号の検出はできないものの,スペクトログラムの解析でその接続箇所の痕跡を抽出することが可能である。
周囲の暗騒音がほとんど入らないようなスタジオで少人数の音声が録音されたような場合であれば編集箇所を検出することは困難であっても,本件のような一般の録音では,対象となる会話音声の他に,必ず背景音が入る。この背景音まで偽装することは極めて困難である(甲60:2頁,7頁以降)。
2 不連続箇所・異常録音箇所のないこと
鈴木隆雄が録音記録(甲39)の録音すべてについて,10秒毎に録音の不連続箇所・異常箇所の有無を分析した結果,周波数分析をした結果を具体的に表3及び図12~26で示したうえ,「録音の最初部分にガサガサとこすれるような大きな音があり,また,録音の途中にもガサガサという音,カシッという言うような音やコツコツと何かにぶつかるような幾つかの雑音のある箇所はあるが,特に録音の不連続箇所や異常な箇所は認められなかった。
また,笑い声のある部分とその付近に急に大きな音のあったため音が歪んだ箇所があるが,特に録音の不連続箇所や異常な箇所は,認められなかった」と結論づけている(甲60:11)。
特に,鈴木隆雄は,本訴訟で争いとなっている,一審被告岡田の「確認をですね/さしていただきたいと考えております」との発言の前後部分(図12~14),及び,一審原告松本の「市長さん.お話しているのは私ですから,できれば私の方に向いていただけるとお答えもしやすいんですが」との発言の前後部分(図18~20)の部分も,具体的に分析結果を示したうえで,上記の通り結論づけている(表3)。
3 鈴木隆雄による結論
鈴木隆雄は,以上の分析結果から,
「 資料(1)の録音〔注:甲39号証の録音記録〕は編集加工された可能性は,極めて低い」
と結請づけている。
第3 鈴木隆雄の経歴・実績,及び,その鑑定結果の信用性が高いこと
鈴木隆雄は,元警察庁科学警察研究所副所長であり,多数の刑事事件・民事事件で鑑定実績があり(甲60内「鈴木隆雄 経歴書」),その鑑定結果の信用性は極めて商い。
本件控訴審の一審原告第1準備書面13頁以降で述べたとおり,損害賠償請求訴訟である東京地方裁判所平成12年5月30日判決(判例時報1719号40頁),及び√強姦殺人事件の再審請求事案である札幌高等裁判所平成13年2月16日決定(判例タイムズ1057号268頁)において,裁判所はいずれも,鈴木松美(木訴訟における丙22号証「鑑定書」の作成者)の鑑定意見を排斥し,この鈴木隆雄の鑑定意見を採用している。
以上
【控訴人が提出した証拠説明書】
平成22年(ネ)第4137号 損害賠償等請求控訴事件
控訴人(一審原告) 松 本 立 家 外1名
被控訴人(一審被告) 岡 田 義 弘 外1名
証拠説明書
平成23年 2月 7日
東京高等裁判所第5民事部 御中
控訴人(一審原告)ら訴訟代理人
弁護士 山 下 敏 雅 外
号証/標目/作成年月日/作成者/立証趣旨
甲60/意見書・原本/平成23年1月27日/鈴木隆雄/鈴木松美作成の「鑑定書」(丙22)が前提とする市長室内の時計の針の音の分析結果自体に根本的な誤りが存すること,録音記録(甲39)に不連続・異常箇所がなく,「編集・加工された可能性は極めて低い」こと,意見書作成者の経歴・実績等
【甲第60号証】
平成23年1月27日
意 見 書
(株)鈴本法科学鑑定研究所
鈴 木 隆 雄
<意 見 書>
平成22年11月17日付けで、東京パブリック法律事務所山下敏雅弁護士殿より下記の録音の鑑定についての意見書の作成を依頼されたので、鈴本法科学鑑定研究所の鈴木隆雄が次のように検討し、意見書を作成したので報告致します。
1.意見を求められた事項
(1)「丙第22号証」2009年12月15日付けの日本音響研究所鈴木創並びに鈴本松美作成の鑑定言に記載されている鑑定経過と鑑定結果は適切か否か。
(2)資料のCDに録音されている内容は編集改ざんされているか否か。
2.資料
資料(1)音声データ(甲第39号証) CD・R 1枚
資料(2)丙22号証(日本音響研究所作成鑑定書) 副本 1部
資料(3)甲40号証(反訴) 写し 1部
資料(4)原告第4準備書面 写し 1部
資料(5)甲48号の1~3 写し各1部
資料(6)準備書面(2) 写し 1部
3.各資料について
① 資料(1)音声データ(甲第39号証)のCD-Rについて
資料(1)は、写真1に示したように、CDのケースとCDの表面に「甲第39号証」と記載されたシールが貼られている。
その内容をパソコンで開くと、分析図1に示したようにWAV形式の録音で「意見交換会(07.9.10)」.というファイル名で保存されている。
② 資料(2)は、日本音響研究所作成の鑑定言で、表紙に「丙第22号証」と記載されたシールが貼られ、同表紙に「日音研発第2200号」、「2009年12月15日」、「彰」等の記載がある。
鑑定書は、表紙を除き、本文が9ページ、別添資料が1~10まである。
③ 資料(3)は、反訳書で、表紙に「甲第40号証」という記載があり、1ページ目には反訳書の表紙があり、表紙を除く本文は62ページである。
④ 資料(4)は、前橋地方裁判所 高崎支部に提出された原告代理人弁護士
山下敏雅他の作成の平成21年7月15日付けの準備書面で「第4準備書面」の記載があり、表紙を含み3ページある。
⑤ 資料(5)は、ICレコーダのコピー写真で、甲48号証の1から3までの3枚の写真である。
⑥ 資料(6)は、東京高等裁判所第5民事部に提出された接控訴人安中市訴訟代理人弁護士渡辺明男の作成の平成22年12月17日付けの準備書面で「第2準備書面」の記載かおり、表紙を含み9ページある。
4.資料(2)日本音響研究所の鑑定言に対する意見
以下において日本音響研究所を「日音研」と呼び、日本音響研究所の資料(2)丙22号証(日本音響研究所作成鑑定書)を「日音研鑑定書」と呼ぶことにする。
(1)ICレコーダやその他の録音機に付いての編集改ざんの有無について
日音研鑑定書においてアナログ式のテープ録音機以外のデジタル方式の録音機では、録音の改ざんが全く検出不可能のごとく述べているが、それは全く誤りである。
参考のため、デジタル信号処理でICレコーダの録音を編集改ざんした例を、参考図1と参考図2に添付する。
参考図1は、ICレコーダの録音データをパソコンでデジタル信号処理により、録音の一部を削除し、接続した例で、背景にある暗騒音が接続された箇所で、周波数的に不連続な状態になっている。
また、参考図2も、ICレコーダの録音データをパソコンでデジタル信号処理により、録音の一部を削除し接続した例であるが、背景にある一定周波数の音が接続箇所で急に出現して、周波数的に不連続な状態になっている。
確かに、ICレコーダの録音ではアナログ式の録音機のようにスイッチ信号などは検出できないが、場面が異なる箇所を挿入したり、録音の一部を削除したりする操作をICレコーダに添付されでいるソフトやパソコンを使って編集処理を行っても、スペクトログラムの解析でその接続箇所の痕跡が抽出することが可能である。もちろん総ての資料について可能ではなく、周囲の暗騒音が殆ど入らないようなスタジオで、少人数の音声が録音されたような場合は、その録音の編集箇所を見つけるのは困難な場合があるが、一般の録音では対象となる会話音声の他に必ず周囲から入る音いわゆる背景音があり、その背景音まで偽装することは極めて困難である。
勿論日音研鑑定言に述べられているように、デジタル録音とアナログ録音を繰り返し処理したような場合は、検出できない場合もあるが、特殊な技術や専門的な知識がなければ、容易に編集改ざんが出来るものではない。
(2)日音研の述べている資料(1)音声データについての鑑定結果について
日音研鑑定書では、録音の分析では改ざん箇所が分からないから、音声の録音と同時に背景にある時計の長針の移動時に発せられる「カチン」という音を分析して、その時間間隔の不整合性や「カチン」という音が検出できない部分があることによって、当該録音の内容が編集されたものであると推定している。
この結論に至る手法は、極めて合理性がない。
一般に、編集改ざんがあると言う場合は、録音のどの箇所からどの箇所までと言うように具体的に説明するのが常道である。しかるに、日音研鑑定書では、時計の長針の移動時に発せられる「カチン」という音の有無だけで、具体的に編集改ざんの発言箇所の範囲を示していない。
図1-1~1-4に日音研の鑑定書に添付された0分から録音の最後の箇所までの周波数分析結果を示したが、Frequencyと言かれた周波数軸の上の方に「8000」と言かれた数字が見える。このことから、この資料の録音を、情報理論からするとサンプリング周波数を20,000Hz以上を使用していることになるが、日音研の鑑定書で示しているKAY社のソフトであるとすればサンプリング周波数は22050Hz程度と考えられる。また、分解能は1024ポイントであると述べられている。
ここで録音されている時間の分解能を計算してみると、1秒間の信号を22050Hzでサンプリングし1024ポイイントの分解能とすれば、その時間分解能は、1024/22050=0.046秒となり、約0.05秒程度となる。
日音研の鑑定書の別添8の表を見ると、時間分解能が小数点以下5桁まで示されているものがあり、物理学的に正しい表現ではない。メモリが1mmしか測れない物指しで0.1mmを測っているようなもので、まったく意味がない。
その点を無視して、目音研鑑定書のP8で上から7行目に時計の長針の衝撃音が58.626秒と表現されているが、科学的な表現としては極めておかしい。
また、目音研の長針の衝撃音を分析した別添7のスペクトログラムを見ると、検軸は2秒程度と考えられるが、長針の衝撃音は立ち上がりから減表するまで約0.08秒程度の時間がある。もし、そうであるとすれば、長針の音の測定をどの部分で行っているのか明示すべきである。
いずれにしても、目音研鑑定書の添付3~6の周波数分析結果の図からは、長針の衝撃音を読みとることは不可能で、さらに添付7に示された2秒間の衝撃音の分析結果は、原録音のどの部分から抽出されたかも明示されておらず、本当に衝撃音なのか否かもわからない。
衝撃音が図2(日音研鑑定書別添7)のような分析スペクトログラムのパターンであるならば、時系列的に30秒ごとの衝撃音を複数並べてその再現性を示して、初めて証明することができる。然るにそのような説明は無い。
(3)検証分析
そこで鑑定人は、日音研鑑定書P8で示された時刻を付近について番号15から211までの各部分について表示された時間を含む2分間の区間について周波数分析を行い、そのスペクトログラムを検討した。
分析結果の一部を、次の表1に示したように本意見書に添付する。
各図において、上段は原録音の波形、中断はその周波数分析結果のスペクトログラム、下段は時報の波形で10秒ごとで30秒が分かるようになっている。
また、各話者は、資料(3)の反訳書を参照し、松本氏を(松)、長澤氏を(長)、岡田氏を(岡)、■氏を(■)、■氏を(■)のように図中に表示した。
なお、不明者は○○としてある。
表1 資料録音の当該箇所の抜粋分析スペクトログラム
図3:
時間:5分00秒~7分00秒(300~420秒)
検討:最初の部分「えー今代表・・」(長)、「ガサガサという音」、「2000円徴収‥」(長)、「フリーマーケットの出席者から・・」(松)~「新潟の地震があった時にその募金・・」(松)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図4:
時間:7分00秒~9分00秒(420~540秒)
検討:「地震がありました 募金・・」(松)、「ちょっと では確認ですけど・・」(長)、「控えがあるのでは」・・」(松)~「ですから明確な・・」(松)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図5:
時間:47分30秒~49分30秒(2850~2970秒)
検討:「市長は何もお答え・・」(松)、「じやあ それですね」(長)~「私の方はご質問‥」(松)
の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図6:
時間;49分30秒~51分30秒(2970~3090秒)
検討:「寄付を・・」(松)、「今日は6月2日・・」(松)~「教えていただきたい・・」(松)
の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図7:
時間:69分00秒~71分00秒(4140~4260秒)
検討:「結論が出ない・・」(松)、「そういう誤解を・・」(岡)~「2000円取ると・・」(松)
の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図8:
時間:71分00秒~73分00秒(4260~4380秒)
検討:「それはあれですね」(松)、「イベントを開催する‥」(■)~「あの上後閑の道路の件で・・」(岡)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図9:
時間:110秒30秒~112分30秒(6630~6750秒)
検討:「わけですから」(●)、「いやいや それはわからない・・」(岡)~「言ってる訳だか
ら・・」(岡)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図10:
事件:112秒30秒~114分30秒(6750~6870秒)
検討:「ま、言い置いて・・」(松)、「どうもご苦労様でした」(岡)~「まあ どう言おうと・・」(岡)~「ありがとうございました」(○○)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
表1で示したように日音研鑑定書に記載されている部分について検討したが、30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められなかった。
そこで、さらに詳細に信号の有無を確かめるために、日音研鑑定書で特に30秒の長針衝撃音の欠落がないとされる別添8に示された箇所10~14、すなわち資料録音の6分~8分の2分間について、10秒づつ区切って周波数分析を行い、そのスペクトログラムを検討した。
その分析結果を、次の表2に示したように本意見書に添付する。
なお、資料録音の6分~8分の全体を分析した図11は、上段は原録音の波形、中断はその周波数分析結果のスペクトログラム、下段は時報の波形で10秒ごとで30秒が分かるようになっている。
また、各話者は、資料(3)の反訳書を参照し、松本氏を(松)、長澤氏を(長)、岡田氏を(岡)、■氏を(■)、■氏を(■)のように図中に表示した。なお、不明者は○○としてある。
また、最初の図11は、分析した2分間の全体の録音を示している。
10秒毎の分析結果は、表2に示したとおりである。
表2 資料録音6分~8分の部分を10秒毎に分析スペクトログラム
図11:
時間:6分00秒~8分00秒(360~480秒)分析した2分間全体の録音
検討:「ていうことは事実でございます」(松)、「新潟に地震が・・」(松)~「震災を受け
た地域・・」(長)付近の部分である。
図11-1:
時間;360~370秒
検討:「ていうことは事実でございます」(松)、「はい」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-2:
時間:370~380秒
検討:「ガサガサという音」、「そのへんは・・・」(長)、「今・・・」(長)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-3:
時間:380~390秒
検討:「代表の方・・」(長)、「募金・・」~「先ほど・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-4:
時間:390~400秒
検討:「・・ありました」(松)、「募金箱をもって‥」(松)、「関してはですね」(松)~「たとえばの話・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-5:
時間:400~410秒
検討:「まあ 簡単に言うと」、「あるのとないのと・・」(松)、「実はですね」(松)~「阪神淡路大震災が・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-6:
時間:410~420秒
検討:「募金とか・・」(松)、「新潟の・・」(松)「その募金をって・・」(松)~「そのことを・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-7:
時間:420~430秒
検討:「地震がありました‥」(松)、「ということで回して‥」(松)、「市を通じて寄付‥」(松)、「ガサッという音」~「はい」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-8:
時間:430~440秒
検討:「えーと新潟では30万・・」(松)、「思います・・」(松)、「そのことを 募金箱を持って歩いて・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-9:
時間:440~450秒
検討:「そのことが なったんではないかと」(松)、「思ってるんでうけども いかがなもんでしょうか」(松)~「いや いかがなもんでしょうかっていうよりも 事実確認だけで・・」(岡)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明催には認められない。
図11-10:
時間:450~460秒
検討:「いや ですから」(松)、「そういうこと・‥」(松)、「募金箱を持って回って‥・」 (松)、「そういう場面に‥・レ(松)~「しかしながら 普段の運営・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-11:
時間:460~470秒
検討:「そういうことです」(松)、「ちょっと確認ですけども・・」(長)、「たとえば市長から言われた募金箱・・・」(長)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認めら
れない。
図11-12:
時間:470~480秒
検討:「・・けっこう地震とかね」(長)、「災害があります・・」(長)、「そうですね」(■)、 「あの-」、「そういうまあ 災害を受けた・・・」(長)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
表2では、2分間の録音を10秒区間毎に連続で分析しているので、もし30秒毎の長針の衝撃音が明確な音であれば、少なくとも3個は認識できるはずであるが、明確には認められなかった。
また、もし30秒毎の長針の衝撃音が明確な音ではなく小さな音であるとするならば少なくとも現場で同じような録音実験を行い、そこに収録される長針の衝撃音と比較して説明すべきである。
以上をまとめると、日音研鑑定では、30秒毎の長針の衝撃音については、明確な説明が無く、衝撃音と称する1個の音を分析した例だけを示しただけで、その音が衝撃音かどうか証明されていない。
正確な鑑定を行うのであれば、時系列的に30秒毎の長針の衝撃音の存在を示す分析スペクトログラムを示し、さらに衝撃音の詳細な分析を2個以上示して初めて科学的な鑑定といえるが、その様な説明がなければ科学的な鑑定とはいえない。
元来、衝撃音といえども音が小さければ周囲の騒音に埋没されてしまい聞こえないことは生理的聴覚の学問分野では、音のマスキング現象として広く知られていることであり、例えば普段、家の中で聞こえている相手の会話音声が、騒音の大きい工場内では聞き取れないことでも分かる。
したがって、日音研の鑑定書を根拠にした論議は、日音研の時刻鑑定の物理的な合理性が無いことから、基本的に成り立たないことになる。
(2)編集改ざんについて
準備書面(2)P3~8にある論議で、特にマイク時計の距離で時計の長針の衝撃音が必ず録音されていると述べているが、衝撃音より大きい音があれば上記の物理的に録音時に大きい音にマスクされて聞こえなくなることは当然で、周波数分析を行っても認識できなくなることは当然である。
また、編集改ざんに関して30秒単位として編集加工が可能であるように述べられているが、録音の一部を削除して録音を繋げたり、録音のある部分に録音を挿入したりすると、アナログ録音でもデジタル録音でも繋げた部分に音の周波数の不連続部分が生じスペクトログラム上に現れる。
この場合、例えば音を録音を専門におこなうスタジオのように周囲からの雑音の少ない環境で録音された音声で、音声のない部分を切断して編集した場合は、接続箇所の検出が難しい場合はある。しかし、一般に複数の人達がいて当該話者以外の周囲の人達が身動きし、机などを触ったり、小声で話したりするとそれが背景騒音となり録音される。その様な部分まで考慮して編集録音することは至難なことである。
5.録音資料に編集改ざんがあるかの鑑定
5-1 資料(1)録音の改ざん編集の有無の鑑定が可能か否かの検討
資料(1)の録音について聴取検査を行った結果、雑音はあるが録音内容の聴取が可能であることが確認された。
次に、資料(1)の録音内容が鑑定可能な録音状態にあるか否かを調べるために、資料(1)の全体の録音についてCSLに内蔵されているフィルタ15.77Hzを使用して分析した。
分析結果を検討した結果、資料(1)の録音内容が鑑定可能な周波数帯域まで録音されており、その録音状態は鑑定可能な状態であることが分かった。
5-2 資料(1)の録音の不連続箇所や異常録音箇所の有無の検討結果
資料(1)の録音を、資料(3)反訳書を参照しながら、10秒毎に連続に分析し、録音の不連続箇所や異常箇所の有無を調べた。
資料(1)の録音の開始から終了までについて、周波数分析した結果の一部を、次の表3に示す。
表3の資料(1)の録音開始から終了までの分析結果の抜粋の中で、話者を反訳書の名称に基づき、松本氏を(松)、岡田氏を(岡)、長澤氏を(長)、■氏を(■)、■氏を■と表示する。
また、時間の表示は、1分1秒は1′1″のように「分」は「′」、「秒」は「″」のように表示する。
表3 資料(1)の録音開始から終了までの分析結果の抜粋
分析図:図12
録音箇所:2′45″~2′55″付近
内容:「はい」(?)、「たいへん(反訳書にない)お待たせいたしまして」(岡)、「すいません」(岡)、「あのー」(岡)、「確認・・・」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図13
録音箇所:2′54″~3′04″付近
内容:「確認をですね」(岡)、「さしていただきたいと考えておりおります」(岡)、「あのー」 (岡)、「まず フ」(岡)、「これまでフリーマッケッ・」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図14
録音箇所:3′03″~3′13″付近
内容:「フリーマーケット何回かやって」(岡)、「・・・してきたと思うんですが」(岡)、「この
-」(岡)、「行政に・・」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図15
録音箇所:8′45 ″~8′55″付近
内容:「ちゃんとテーマをね」(長)、「はい そうですね はい」(松)、「募金というものは明確な趣旨がないとですね」(松)、「あの-できません」(松)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図16
録音箇所:8′55 ″~9′05″付近
内容:「ですから明確なる まあ一つのこういう事っていうか」(松)、「災害という その趣旨において」(松)、「ガサガサという音」、「あの公明正大に・・」(松)がある。
検討所見:「ガサガサ」というような雑音はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図17
録音箇所:9′05″~9′15″付近
内容:「だということでございます」(松)、「ガサガサという音」がある。
検討所見:ガサガサ」というような雑音はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図18
録音箇所:15′03″~15′13″付近
内容:「市から許可をうけて」(岡)、「はい」(松)、「2000円・」(岡)、「はい」(松)、「誰か・・・」(岡)、「市長さん」(松)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図19
録音箇所:15′13″~15′23″付近
内容:「市長さん あの」(松)、「お話しているのは 私ですから」(松)、「できれば私の方に向いていただけると」(松)、「お答えしやすいんですが」(松)、「いや」(岡)、「そういう重箱の隅みたい・・・」(岡)、(「そういう重箱の隅みたい・・・」(岡)の部分に笑い声が重なっている)がある。
検討所見:笑い声のある部分に急に大きな音のため音が歪んだ箇所があるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図20
録音箇所:15′22″~15′32″
内容:「・・いう重箱の隅みたい‥・」(岡)、(「そういう重箱の隅みたい・・・」(岡)の部分に笑い声が重なっている)、「笑い声」、「もっとおおらかに」(岡)、「でも話をする時は人の目を・・」(■)、「もっとおおらかに」(岡)、「おおらかに」(岡)、「はい で」(松)、「えーとですね 誰に・・」(松)がある。
検討所見:笑い声のある部分とその付近に急に大きな音のため音が歪んだ箇所があるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図21
録音箇所:72′20″~72′30″
内容:「・・あれですか おい岡田って言うような」(松)、「そういう あれですか」(松)、「数はわかりませんが そういう市民の・・」(松)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図22
録音箇所:72′30″~72′40″
内容:「しってます しってます」(岡?)(反訳書に無い)、「そうですね それで」(松)、「お
い 岡田っていって」(松)、「我々のこの15年間 続いてきたこのことを その一言で」(松)、「やめろとおっしゃるんですか」(松)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図23
録音箇所:72′40″~72′50″
内容:「やめろとか やめろとかですね」(岡)、「カシッという音」、「あの そういうことを今言ってるんじゃなしに 事実を」(岡)、「今の‥」(■)がある。
検討所見:カシッというような音はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図24
録音箇所:72′50″~73′00″
内容:「それじゃ うかがいますけど」(岡)、「はいどうぞ」(松)、「コツコツという音」、「あの 上後閑の道路の件でねえ」(岡)がある。
検討所見:カツコツというような音はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図25
録音箇所:73′00″~73′10″
内容:「こうに回っている道路」(岡)、「怒鳴りこんできてますよ」(岡)、「そのくらい市民の皆さんは敏感なんですよ」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図26
録音箇所:73′10″ ~73′20″
内容:「・・意味分かりません」(松)、「い 以前 以前からやってる」(岡)、「道路工事でありながら」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
資料(1)の録音について、録音開始から終了まで約1時間58分23秒間の録音内容を分析区間10秒単位で連続分析し、表3にその結果の一部を示したが、録音全体のスペクトログラムを検討した。
その結果、録音の最初部分にガサガサとこすれるような大きな音があり、また、録音の途中にもガサガサという音、カシッと言うような音やコツコツと何かにぶつかるような幾つかの雑音のある箇所はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は認められなかった。
また、笑い声のある部分とその付近に急に大きな音のため音が歪んだ箇所があるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められなかった。
したがって、資料(1)の録音は編集加工された可能性は、極めて低い。
以上の意見書の作成は、平成22年12月20日に着手し、平成23年1月27日に終了した。
また、この検封書には、次の資料を添付する。
写真 1枚
分析図 1枚
参考図 2枚
図 41枚
平成23年1月27日
鈴本法科学鑑定研究所
鈴木隆雄
(日本法科学鑑定人協会会員)
添付物:
写真1 資料(1)CD 甲第39号証
分析図1 資料(1)CDに記録されているWAV形式のファイル「意見交換会」(07.9.10)
参考図1 ICレコーダの録音データをパソコンによるデジタル信号処理で、原音から一部を削除して再統合して編集した場合のスペクトログラム
参考図2 ICレコーダの録音データをパソコンによるデジタル信号処理で、原音から一部を削除して再統合して編集した場合のスペクトログラム(一定周波数の雑音がある場合)
図1-1 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添3 0分から30分の周波数分析結果の写し
図1-2 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添4 30分から60分の周波数分析結果の写し
図1-3 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添5 60分から90分の周波数分析結果の写し
図1-4 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添6 90分から最後の周波数分析結果の写し
図2 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添7 長針による衝撃音の周波数分析結果の写し
図3 資料(1)録音5分から7分(300秒~420秒)の原録音波形と時報の比較
図4 資料(1)録音7分から9分(420秒~540秒)の原録音波形と時報の比較
図5 資料(1)録音47分30秒から49分30秒(2650秒~2970秒)の原録音波形と時報の比較
図6 資料(1)録音49分30秒から51分30秒(2970秒~3080秒)の原録音波形と時報の比較
図7 資料(1)録音69分00秒から71分00秒(4140秒~4260秒)の原録音波形と時報の比較
図8 資料(1)録音71分00秒から73分00秒(4260秒~4380秒)の原録音波形と時報の比較
図9 資料(1)録音110分30秒から112分30秒(6630秒~6750秒)の原録音波形と時報の比較
図10 資料(1)録音112分30秒から114分30秒(6750秒~6870秒)の原録音波形と時報の比較
図11 資料(1)録音6分00秒から8分00秒(360秒~480秒)の原録音波形と時報の比較
図11-1 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間1(360~370秒)の分析
図11-2 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間2(370~380秒)の分析
図11-3 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間3(380~390秒)の分析
図11-4 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間4(390~400秒)の分析
図11-5 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間5(400~410秒)の分析
図11-6 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間6(410~420秒)の分析
図11-7 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間7(420~430秒)の分析
図11-8 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間8(430~440秒)の分析
図11-9 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間9(440~450秒)の分析
図11-10 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間10(450~460秒)の分析
図11-11 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間11(460~470秒)の分析
図11-12 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間12(470~480秒)の分析
図12 資料(1)録音2′45″~2′55″付近
図13 資料(1)録音2′54″~3′04″付近
図14 資料(1)録音3′03″~3′13″付近
図15 資料(1)録音8′45″~8′55″付近
図16 資料(1)録音8′55″~9′05″付近
図17 資料(1)録音9′05″~10′40″付近
図18 資料(1)録音15′03″~15′13″付近
図19 資料(1)録音15′13″~15′23″付近
図20 資料(1)録音15′22″~15′32″付近
図21 資料(1)録音72′20″~72′30″付近
図22 資料(1)録音72′30″~72′40″付近
図23 資料(1)録音72′40″~72′50″付近
図24 資料(1)録音72′50″~73′00″付近
図25 資料(1)録音73′00″~72′10″付近
図26 資料(1)録音73′10″~73′20″付近
鈴木隆雄経歴書(2ページ)(平成23年1月21日現在)
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■訴訟指揮に基づいて、平成23年2月10日までに最後の切り札をだした未来塾に対して、岡田市長はどのような対応をとったのでしょうか。
【ひらく会情報部・この項つづく】
最初に、ドーンとこれでもかとばかりに準備書面を提出してきたのは、控訴人の未来塾側です。最後の最後に、岡田市長が見つけてきたイカガワシイ鑑定書に対する決定打として、株式会社鈴木法科学検定研究所が作成した「意見書」を甲第60号証として証拠提出するための「第3準備書面」を平成23年2月7日付で東京高等裁判所に提出したのでした。
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【控訴人が提出した第3準備書面】
平成22年(ネ)第4137号 損書賠償等請求控訴事件
控訴人(一審原告) 松本立家 外1名
被控訴人(一審被告) 岡田義弘 外1名
第 3 準 書 面
平成23年2月7日
東京高等裁判所 第5民事部 御中
控訴人(一審原告)ら訴訟代理人
弁護士 山 下 敏 雅
同 中 城 重 光
同 釜 井 英 法
同 登 坂 真 人
同 寺 町 東 子
同 後 藤 真紀子
同 青 木 知 己
同 吉 田 隆 宏
同 船 崎 ま み
同 寺 田 明 弘
同 高 城 智 子
同 山 口 裕 末
第1 -審被告岡田の提出した「鑑定書」(丙22)に信用性のないこと
1 時計の針の音のズレを前提としても論理に重大な誤りがあること
一審被告岡田の提出した,日本音響研究所所長鈴木松美「鑑定書」(丙22)は,意見交換会の録音記録(甲39)について,市長室内の時計の針の音のズレを根拠として,編集加工されたものと結論づけている。
しかしながら,その針の音が「鑑定書」に記載されているとおり存在することを前提としてもその論理に重大な誤りがあることについては,すでに本件控訴審の一審原告第1準備書面7頁以降に詳述したとおりである。
2 「鑑定書」の時計の針の音の分析結果自体に根本的な誤りのあること
(1) さらに,別の専門家によれば,「鑑定書」が前提とする市長室内の時計の針の音の分析結果自体にも,根本的な誤りが存する。
(2) すなわち,元警察庁科学警察研究所副所長の鈴木隆雄によれば,鈴木松美が「鑑定書」で使用した分析機器のサンプリング周波数は22050Hz程度,分解能は1024ポイントであり,時間分解能は約0.05秒程度にすぎない。しかるに,「鑑定書」別表8では,時間分解能が小数点以下5析まで示されているものがある。これは,「メモリが1mmしか測れない物指しで0.1mmを測っているようなもので,まったく意味がない」ものである(甲60:3頁)。
また,「鑑定書では長針の衝撃音の分析結果として別添7のスペクトログラムが添付されているが,①この衝撃音の分析結果が,原録音のどの部分から抽出されたか明示されておらず,本当に衝撃音であるか否かも不明であり,また,②衝撃音の立ち上がりから減衰までに約0.08秒程度の時間があり,「鑑定書」が衝撃音の時間の測定をどの部分で行っているのかの明示もない(甲60:3頁)。
さらに,「鑑定書」の別添3~6の周波数分析結果の図からは,長針の衝撃音を読み取ることは不可能である(甲60:3頁)。
(3) 「鑑定書」8頁の番号15から2 1 1までの各部分に表示された時間を含む2分間の区間について,鈴木隆雄が周波数分析を行い,そのスペクトログラムを検討したものが,甲60号証の4真の表1及び添付の図3から図10である。
これについて鈴木隆雄は,「表1で示したように日音研鑑定言に記載されている部分について検討したが,30秒毎の長針の衝撃音は,明確には認められなかった」と結論づけている(甲60:5真)。
(4) さらに,「鑑定言」で30秒の長針衝撃音の欠落がないとされている番号10から14の部分の2分間について,鈴木隆雄が10秒ずつ区切って周波数分析を行い,そのスペクトログラムを分析しだものが,甲60号証の5頁の表2及び添付の図11である。
これについて鈴木隆雄は,「表2では,2分間の録音を10秒区間毎に連続で分析しているので,もし30秒毎の長針の衝撃音が明確な音であれば,少なくとも3個は認識できるはずでさるが,明確には認められなかった」と結論づけている(甲60:7真)。
(5) もし30秒毎の長針の衝撃音が明確な音ではなく小さな音であるとするならば,少なくとも現場で同じような録音実験を行い,そこに収録されている長針の衝撃音と比較して説明すべきである(甲60:7真)。しかし,「鑑定書」にはそのような実験を行い,比較した説明は一切ない。
正確に鑑定を行うのであれば,時系列的に30秒毎の長針の衝撃音の存在を示す分析スペクトログラムを示し,さらに衝撃音の詳細な分析を2個以上示して初めて科学的な鑑定といえるが,「鑑定書」ではそのような分析はない。
(6) 鈴木隆雄は,概要,以上のように分析したうえで,「日音研の鑑定書を根拠にした論議は,日音研の時刻鑑定の物理的な合理性が無いことから,基本的に成り立だない」と結論づけている(甲60:7頁)。
3 小括
以上のとおり,被告岡田の提出した「鑑定書」(丙22)は,市長室の針の音が「鑑定書」記載の通りであることを前提としてもその論理に重大な誤りがあるだけでなく,そもそもその針の音の鑑定結果自体に合理性がなく,いずれにしても信用性はない。
第2 録音記録(甲39)が編集加工されていないこと
1 デジタル録音の改ざんの検出可能性
ICレコーダーのようなデジタル式の録音機では,アナログ式の録音機のようなスイッチ信号の検出はできないものの,スペクトログラムの解析でその接続箇所の痕跡を抽出することが可能である。
周囲の暗騒音がほとんど入らないようなスタジオで少人数の音声が録音されたような場合であれば編集箇所を検出することは困難であっても,本件のような一般の録音では,対象となる会話音声の他に,必ず背景音が入る。この背景音まで偽装することは極めて困難である(甲60:2頁,7頁以降)。
2 不連続箇所・異常録音箇所のないこと
鈴木隆雄が録音記録(甲39)の録音すべてについて,10秒毎に録音の不連続箇所・異常箇所の有無を分析した結果,周波数分析をした結果を具体的に表3及び図12~26で示したうえ,「録音の最初部分にガサガサとこすれるような大きな音があり,また,録音の途中にもガサガサという音,カシッという言うような音やコツコツと何かにぶつかるような幾つかの雑音のある箇所はあるが,特に録音の不連続箇所や異常な箇所は認められなかった。
また,笑い声のある部分とその付近に急に大きな音のあったため音が歪んだ箇所があるが,特に録音の不連続箇所や異常な箇所は,認められなかった」と結論づけている(甲60:11)。
特に,鈴木隆雄は,本訴訟で争いとなっている,一審被告岡田の「確認をですね/さしていただきたいと考えております」との発言の前後部分(図12~14),及び,一審原告松本の「市長さん.お話しているのは私ですから,できれば私の方に向いていただけるとお答えもしやすいんですが」との発言の前後部分(図18~20)の部分も,具体的に分析結果を示したうえで,上記の通り結論づけている(表3)。
3 鈴木隆雄による結論
鈴木隆雄は,以上の分析結果から,
「 資料(1)の録音〔注:甲39号証の録音記録〕は編集加工された可能性は,極めて低い」
と結請づけている。
第3 鈴木隆雄の経歴・実績,及び,その鑑定結果の信用性が高いこと
鈴木隆雄は,元警察庁科学警察研究所副所長であり,多数の刑事事件・民事事件で鑑定実績があり(甲60内「鈴木隆雄 経歴書」),その鑑定結果の信用性は極めて商い。
本件控訴審の一審原告第1準備書面13頁以降で述べたとおり,損害賠償請求訴訟である東京地方裁判所平成12年5月30日判決(判例時報1719号40頁),及び√強姦殺人事件の再審請求事案である札幌高等裁判所平成13年2月16日決定(判例タイムズ1057号268頁)において,裁判所はいずれも,鈴木松美(木訴訟における丙22号証「鑑定書」の作成者)の鑑定意見を排斥し,この鈴木隆雄の鑑定意見を採用している。
以上
【控訴人が提出した証拠説明書】
平成22年(ネ)第4137号 損害賠償等請求控訴事件
控訴人(一審原告) 松 本 立 家 外1名
被控訴人(一審被告) 岡 田 義 弘 外1名
証拠説明書
平成23年 2月 7日
東京高等裁判所第5民事部 御中
控訴人(一審原告)ら訴訟代理人
弁護士 山 下 敏 雅 外
号証/標目/作成年月日/作成者/立証趣旨
甲60/意見書・原本/平成23年1月27日/鈴木隆雄/鈴木松美作成の「鑑定書」(丙22)が前提とする市長室内の時計の針の音の分析結果自体に根本的な誤りが存すること,録音記録(甲39)に不連続・異常箇所がなく,「編集・加工された可能性は極めて低い」こと,意見書作成者の経歴・実績等
【甲第60号証】
平成23年1月27日
意 見 書
(株)鈴本法科学鑑定研究所
鈴 木 隆 雄
<意 見 書>
平成22年11月17日付けで、東京パブリック法律事務所山下敏雅弁護士殿より下記の録音の鑑定についての意見書の作成を依頼されたので、鈴本法科学鑑定研究所の鈴木隆雄が次のように検討し、意見書を作成したので報告致します。
1.意見を求められた事項
(1)「丙第22号証」2009年12月15日付けの日本音響研究所鈴木創並びに鈴本松美作成の鑑定言に記載されている鑑定経過と鑑定結果は適切か否か。
(2)資料のCDに録音されている内容は編集改ざんされているか否か。
2.資料
資料(1)音声データ(甲第39号証) CD・R 1枚
資料(2)丙22号証(日本音響研究所作成鑑定書) 副本 1部
資料(3)甲40号証(反訴) 写し 1部
資料(4)原告第4準備書面 写し 1部
資料(5)甲48号の1~3 写し各1部
資料(6)準備書面(2) 写し 1部
3.各資料について
① 資料(1)音声データ(甲第39号証)のCD-Rについて
資料(1)は、写真1に示したように、CDのケースとCDの表面に「甲第39号証」と記載されたシールが貼られている。
その内容をパソコンで開くと、分析図1に示したようにWAV形式の録音で「意見交換会(07.9.10)」.というファイル名で保存されている。
② 資料(2)は、日本音響研究所作成の鑑定言で、表紙に「丙第22号証」と記載されたシールが貼られ、同表紙に「日音研発第2200号」、「2009年12月15日」、「彰」等の記載がある。
鑑定書は、表紙を除き、本文が9ページ、別添資料が1~10まである。
③ 資料(3)は、反訳書で、表紙に「甲第40号証」という記載があり、1ページ目には反訳書の表紙があり、表紙を除く本文は62ページである。
④ 資料(4)は、前橋地方裁判所 高崎支部に提出された原告代理人弁護士
山下敏雅他の作成の平成21年7月15日付けの準備書面で「第4準備書面」の記載があり、表紙を含み3ページある。
⑤ 資料(5)は、ICレコーダのコピー写真で、甲48号証の1から3までの3枚の写真である。
⑥ 資料(6)は、東京高等裁判所第5民事部に提出された接控訴人安中市訴訟代理人弁護士渡辺明男の作成の平成22年12月17日付けの準備書面で「第2準備書面」の記載かおり、表紙を含み9ページある。
4.資料(2)日本音響研究所の鑑定言に対する意見
以下において日本音響研究所を「日音研」と呼び、日本音響研究所の資料(2)丙22号証(日本音響研究所作成鑑定書)を「日音研鑑定書」と呼ぶことにする。
(1)ICレコーダやその他の録音機に付いての編集改ざんの有無について
日音研鑑定書においてアナログ式のテープ録音機以外のデジタル方式の録音機では、録音の改ざんが全く検出不可能のごとく述べているが、それは全く誤りである。
参考のため、デジタル信号処理でICレコーダの録音を編集改ざんした例を、参考図1と参考図2に添付する。
参考図1は、ICレコーダの録音データをパソコンでデジタル信号処理により、録音の一部を削除し、接続した例で、背景にある暗騒音が接続された箇所で、周波数的に不連続な状態になっている。
また、参考図2も、ICレコーダの録音データをパソコンでデジタル信号処理により、録音の一部を削除し接続した例であるが、背景にある一定周波数の音が接続箇所で急に出現して、周波数的に不連続な状態になっている。
確かに、ICレコーダの録音ではアナログ式の録音機のようにスイッチ信号などは検出できないが、場面が異なる箇所を挿入したり、録音の一部を削除したりする操作をICレコーダに添付されでいるソフトやパソコンを使って編集処理を行っても、スペクトログラムの解析でその接続箇所の痕跡が抽出することが可能である。もちろん総ての資料について可能ではなく、周囲の暗騒音が殆ど入らないようなスタジオで、少人数の音声が録音されたような場合は、その録音の編集箇所を見つけるのは困難な場合があるが、一般の録音では対象となる会話音声の他に必ず周囲から入る音いわゆる背景音があり、その背景音まで偽装することは極めて困難である。
勿論日音研鑑定言に述べられているように、デジタル録音とアナログ録音を繰り返し処理したような場合は、検出できない場合もあるが、特殊な技術や専門的な知識がなければ、容易に編集改ざんが出来るものではない。
(2)日音研の述べている資料(1)音声データについての鑑定結果について
日音研鑑定書では、録音の分析では改ざん箇所が分からないから、音声の録音と同時に背景にある時計の長針の移動時に発せられる「カチン」という音を分析して、その時間間隔の不整合性や「カチン」という音が検出できない部分があることによって、当該録音の内容が編集されたものであると推定している。
この結論に至る手法は、極めて合理性がない。
一般に、編集改ざんがあると言う場合は、録音のどの箇所からどの箇所までと言うように具体的に説明するのが常道である。しかるに、日音研鑑定書では、時計の長針の移動時に発せられる「カチン」という音の有無だけで、具体的に編集改ざんの発言箇所の範囲を示していない。
図1-1~1-4に日音研の鑑定書に添付された0分から録音の最後の箇所までの周波数分析結果を示したが、Frequencyと言かれた周波数軸の上の方に「8000」と言かれた数字が見える。このことから、この資料の録音を、情報理論からするとサンプリング周波数を20,000Hz以上を使用していることになるが、日音研の鑑定書で示しているKAY社のソフトであるとすればサンプリング周波数は22050Hz程度と考えられる。また、分解能は1024ポイントであると述べられている。
ここで録音されている時間の分解能を計算してみると、1秒間の信号を22050Hzでサンプリングし1024ポイイントの分解能とすれば、その時間分解能は、1024/22050=0.046秒となり、約0.05秒程度となる。
日音研の鑑定書の別添8の表を見ると、時間分解能が小数点以下5桁まで示されているものがあり、物理学的に正しい表現ではない。メモリが1mmしか測れない物指しで0.1mmを測っているようなもので、まったく意味がない。
その点を無視して、目音研鑑定書のP8で上から7行目に時計の長針の衝撃音が58.626秒と表現されているが、科学的な表現としては極めておかしい。
また、目音研の長針の衝撃音を分析した別添7のスペクトログラムを見ると、検軸は2秒程度と考えられるが、長針の衝撃音は立ち上がりから減表するまで約0.08秒程度の時間がある。もし、そうであるとすれば、長針の音の測定をどの部分で行っているのか明示すべきである。
いずれにしても、目音研鑑定書の添付3~6の周波数分析結果の図からは、長針の衝撃音を読みとることは不可能で、さらに添付7に示された2秒間の衝撃音の分析結果は、原録音のどの部分から抽出されたかも明示されておらず、本当に衝撃音なのか否かもわからない。
衝撃音が図2(日音研鑑定書別添7)のような分析スペクトログラムのパターンであるならば、時系列的に30秒ごとの衝撃音を複数並べてその再現性を示して、初めて証明することができる。然るにそのような説明は無い。
(3)検証分析
そこで鑑定人は、日音研鑑定書P8で示された時刻を付近について番号15から211までの各部分について表示された時間を含む2分間の区間について周波数分析を行い、そのスペクトログラムを検討した。
分析結果の一部を、次の表1に示したように本意見書に添付する。
各図において、上段は原録音の波形、中断はその周波数分析結果のスペクトログラム、下段は時報の波形で10秒ごとで30秒が分かるようになっている。
また、各話者は、資料(3)の反訳書を参照し、松本氏を(松)、長澤氏を(長)、岡田氏を(岡)、■氏を(■)、■氏を(■)のように図中に表示した。
なお、不明者は○○としてある。
表1 資料録音の当該箇所の抜粋分析スペクトログラム
図3:
時間:5分00秒~7分00秒(300~420秒)
検討:最初の部分「えー今代表・・」(長)、「ガサガサという音」、「2000円徴収‥」(長)、「フリーマーケットの出席者から・・」(松)~「新潟の地震があった時にその募金・・」(松)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図4:
時間:7分00秒~9分00秒(420~540秒)
検討:「地震がありました 募金・・」(松)、「ちょっと では確認ですけど・・」(長)、「控えがあるのでは」・・」(松)~「ですから明確な・・」(松)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図5:
時間:47分30秒~49分30秒(2850~2970秒)
検討:「市長は何もお答え・・」(松)、「じやあ それですね」(長)~「私の方はご質問‥」(松)
の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図6:
時間;49分30秒~51分30秒(2970~3090秒)
検討:「寄付を・・」(松)、「今日は6月2日・・」(松)~「教えていただきたい・・」(松)
の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図7:
時間:69分00秒~71分00秒(4140~4260秒)
検討:「結論が出ない・・」(松)、「そういう誤解を・・」(岡)~「2000円取ると・・」(松)
の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図8:
時間:71分00秒~73分00秒(4260~4380秒)
検討:「それはあれですね」(松)、「イベントを開催する‥」(■)~「あの上後閑の道路の件で・・」(岡)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図9:
時間:110秒30秒~112分30秒(6630~6750秒)
検討:「わけですから」(●)、「いやいや それはわからない・・」(岡)~「言ってる訳だか
ら・・」(岡)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図10:
事件:112秒30秒~114分30秒(6750~6870秒)
検討:「ま、言い置いて・・」(松)、「どうもご苦労様でした」(岡)~「まあ どう言おうと・・」(岡)~「ありがとうございました」(○○)の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
表1で示したように日音研鑑定書に記載されている部分について検討したが、30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められなかった。
そこで、さらに詳細に信号の有無を確かめるために、日音研鑑定書で特に30秒の長針衝撃音の欠落がないとされる別添8に示された箇所10~14、すなわち資料録音の6分~8分の2分間について、10秒づつ区切って周波数分析を行い、そのスペクトログラムを検討した。
その分析結果を、次の表2に示したように本意見書に添付する。
なお、資料録音の6分~8分の全体を分析した図11は、上段は原録音の波形、中断はその周波数分析結果のスペクトログラム、下段は時報の波形で10秒ごとで30秒が分かるようになっている。
また、各話者は、資料(3)の反訳書を参照し、松本氏を(松)、長澤氏を(長)、岡田氏を(岡)、■氏を(■)、■氏を(■)のように図中に表示した。なお、不明者は○○としてある。
また、最初の図11は、分析した2分間の全体の録音を示している。
10秒毎の分析結果は、表2に示したとおりである。
表2 資料録音6分~8分の部分を10秒毎に分析スペクトログラム
図11:
時間:6分00秒~8分00秒(360~480秒)分析した2分間全体の録音
検討:「ていうことは事実でございます」(松)、「新潟に地震が・・」(松)~「震災を受け
た地域・・」(長)付近の部分である。
図11-1:
時間;360~370秒
検討:「ていうことは事実でございます」(松)、「はい」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-2:
時間:370~380秒
検討:「ガサガサという音」、「そのへんは・・・」(長)、「今・・・」(長)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-3:
時間:380~390秒
検討:「代表の方・・」(長)、「募金・・」~「先ほど・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-4:
時間:390~400秒
検討:「・・ありました」(松)、「募金箱をもって‥」(松)、「関してはですね」(松)~「たとえばの話・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-5:
時間:400~410秒
検討:「まあ 簡単に言うと」、「あるのとないのと・・」(松)、「実はですね」(松)~「阪神淡路大震災が・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-6:
時間:410~420秒
検討:「募金とか・・」(松)、「新潟の・・」(松)「その募金をって・・」(松)~「そのことを・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-7:
時間:420~430秒
検討:「地震がありました‥」(松)、「ということで回して‥」(松)、「市を通じて寄付‥」(松)、「ガサッという音」~「はい」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-8:
時間:430~440秒
検討:「えーと新潟では30万・・」(松)、「思います・・」(松)、「そのことを 募金箱を持って歩いて・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-9:
時間:440~450秒
検討:「そのことが なったんではないかと」(松)、「思ってるんでうけども いかがなもんでしょうか」(松)~「いや いかがなもんでしょうかっていうよりも 事実確認だけで・・」(岡)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明催には認められない。
図11-10:
時間:450~460秒
検討:「いや ですから」(松)、「そういうこと・‥」(松)、「募金箱を持って回って‥・」 (松)、「そういう場面に‥・レ(松)~「しかしながら 普段の運営・・」(松)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
図11-11:
時間:460~470秒
検討:「そういうことです」(松)、「ちょっと確認ですけども・・」(長)、「たとえば市長から言われた募金箱・・・」(長)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認めら
れない。
図11-12:
時間:470~480秒
検討:「・・けっこう地震とかね」(長)、「災害があります・・」(長)、「そうですね」(■)、 「あの-」、「そういうまあ 災害を受けた・・・」(長)付近の部分である。30秒毎の長針の衝撃音は、明確には認められない。
表2では、2分間の録音を10秒区間毎に連続で分析しているので、もし30秒毎の長針の衝撃音が明確な音であれば、少なくとも3個は認識できるはずであるが、明確には認められなかった。
また、もし30秒毎の長針の衝撃音が明確な音ではなく小さな音であるとするならば少なくとも現場で同じような録音実験を行い、そこに収録される長針の衝撃音と比較して説明すべきである。
以上をまとめると、日音研鑑定では、30秒毎の長針の衝撃音については、明確な説明が無く、衝撃音と称する1個の音を分析した例だけを示しただけで、その音が衝撃音かどうか証明されていない。
正確な鑑定を行うのであれば、時系列的に30秒毎の長針の衝撃音の存在を示す分析スペクトログラムを示し、さらに衝撃音の詳細な分析を2個以上示して初めて科学的な鑑定といえるが、その様な説明がなければ科学的な鑑定とはいえない。
元来、衝撃音といえども音が小さければ周囲の騒音に埋没されてしまい聞こえないことは生理的聴覚の学問分野では、音のマスキング現象として広く知られていることであり、例えば普段、家の中で聞こえている相手の会話音声が、騒音の大きい工場内では聞き取れないことでも分かる。
したがって、日音研の鑑定書を根拠にした論議は、日音研の時刻鑑定の物理的な合理性が無いことから、基本的に成り立たないことになる。
(2)編集改ざんについて
準備書面(2)P3~8にある論議で、特にマイク時計の距離で時計の長針の衝撃音が必ず録音されていると述べているが、衝撃音より大きい音があれば上記の物理的に録音時に大きい音にマスクされて聞こえなくなることは当然で、周波数分析を行っても認識できなくなることは当然である。
また、編集改ざんに関して30秒単位として編集加工が可能であるように述べられているが、録音の一部を削除して録音を繋げたり、録音のある部分に録音を挿入したりすると、アナログ録音でもデジタル録音でも繋げた部分に音の周波数の不連続部分が生じスペクトログラム上に現れる。
この場合、例えば音を録音を専門におこなうスタジオのように周囲からの雑音の少ない環境で録音された音声で、音声のない部分を切断して編集した場合は、接続箇所の検出が難しい場合はある。しかし、一般に複数の人達がいて当該話者以外の周囲の人達が身動きし、机などを触ったり、小声で話したりするとそれが背景騒音となり録音される。その様な部分まで考慮して編集録音することは至難なことである。
5.録音資料に編集改ざんがあるかの鑑定
5-1 資料(1)録音の改ざん編集の有無の鑑定が可能か否かの検討
資料(1)の録音について聴取検査を行った結果、雑音はあるが録音内容の聴取が可能であることが確認された。
次に、資料(1)の録音内容が鑑定可能な録音状態にあるか否かを調べるために、資料(1)の全体の録音についてCSLに内蔵されているフィルタ15.77Hzを使用して分析した。
分析結果を検討した結果、資料(1)の録音内容が鑑定可能な周波数帯域まで録音されており、その録音状態は鑑定可能な状態であることが分かった。
5-2 資料(1)の録音の不連続箇所や異常録音箇所の有無の検討結果
資料(1)の録音を、資料(3)反訳書を参照しながら、10秒毎に連続に分析し、録音の不連続箇所や異常箇所の有無を調べた。
資料(1)の録音の開始から終了までについて、周波数分析した結果の一部を、次の表3に示す。
表3の資料(1)の録音開始から終了までの分析結果の抜粋の中で、話者を反訳書の名称に基づき、松本氏を(松)、岡田氏を(岡)、長澤氏を(長)、■氏を(■)、■氏を■と表示する。
また、時間の表示は、1分1秒は1′1″のように「分」は「′」、「秒」は「″」のように表示する。
表3 資料(1)の録音開始から終了までの分析結果の抜粋
分析図:図12
録音箇所:2′45″~2′55″付近
内容:「はい」(?)、「たいへん(反訳書にない)お待たせいたしまして」(岡)、「すいません」(岡)、「あのー」(岡)、「確認・・・」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図13
録音箇所:2′54″~3′04″付近
内容:「確認をですね」(岡)、「さしていただきたいと考えておりおります」(岡)、「あのー」 (岡)、「まず フ」(岡)、「これまでフリーマッケッ・」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図14
録音箇所:3′03″~3′13″付近
内容:「フリーマーケット何回かやって」(岡)、「・・・してきたと思うんですが」(岡)、「この
-」(岡)、「行政に・・」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図15
録音箇所:8′45 ″~8′55″付近
内容:「ちゃんとテーマをね」(長)、「はい そうですね はい」(松)、「募金というものは明確な趣旨がないとですね」(松)、「あの-できません」(松)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図16
録音箇所:8′55 ″~9′05″付近
内容:「ですから明確なる まあ一つのこういう事っていうか」(松)、「災害という その趣旨において」(松)、「ガサガサという音」、「あの公明正大に・・」(松)がある。
検討所見:「ガサガサ」というような雑音はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図17
録音箇所:9′05″~9′15″付近
内容:「だということでございます」(松)、「ガサガサという音」がある。
検討所見:ガサガサ」というような雑音はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図18
録音箇所:15′03″~15′13″付近
内容:「市から許可をうけて」(岡)、「はい」(松)、「2000円・」(岡)、「はい」(松)、「誰か・・・」(岡)、「市長さん」(松)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図19
録音箇所:15′13″~15′23″付近
内容:「市長さん あの」(松)、「お話しているのは 私ですから」(松)、「できれば私の方に向いていただけると」(松)、「お答えしやすいんですが」(松)、「いや」(岡)、「そういう重箱の隅みたい・・・」(岡)、(「そういう重箱の隅みたい・・・」(岡)の部分に笑い声が重なっている)がある。
検討所見:笑い声のある部分に急に大きな音のため音が歪んだ箇所があるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図20
録音箇所:15′22″~15′32″
内容:「・・いう重箱の隅みたい‥・」(岡)、(「そういう重箱の隅みたい・・・」(岡)の部分に笑い声が重なっている)、「笑い声」、「もっとおおらかに」(岡)、「でも話をする時は人の目を・・」(■)、「もっとおおらかに」(岡)、「おおらかに」(岡)、「はい で」(松)、「えーとですね 誰に・・」(松)がある。
検討所見:笑い声のある部分とその付近に急に大きな音のため音が歪んだ箇所があるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図21
録音箇所:72′20″~72′30″
内容:「・・あれですか おい岡田って言うような」(松)、「そういう あれですか」(松)、「数はわかりませんが そういう市民の・・」(松)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図22
録音箇所:72′30″~72′40″
内容:「しってます しってます」(岡?)(反訳書に無い)、「そうですね それで」(松)、「お
い 岡田っていって」(松)、「我々のこの15年間 続いてきたこのことを その一言で」(松)、「やめろとおっしゃるんですか」(松)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図23
録音箇所:72′40″~72′50″
内容:「やめろとか やめろとかですね」(岡)、「カシッという音」、「あの そういうことを今言ってるんじゃなしに 事実を」(岡)、「今の‥」(■)がある。
検討所見:カシッというような音はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図24
録音箇所:72′50″~73′00″
内容:「それじゃ うかがいますけど」(岡)、「はいどうぞ」(松)、「コツコツという音」、「あの 上後閑の道路の件でねえ」(岡)がある。
検討所見:カツコツというような音はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図25
録音箇所:73′00″~73′10″
内容:「こうに回っている道路」(岡)、「怒鳴りこんできてますよ」(岡)、「そのくらい市民の皆さんは敏感なんですよ」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
分析図:図26
録音箇所:73′10″ ~73′20″
内容:「・・意味分かりません」(松)、「い 以前 以前からやってる」(岡)、「道路工事でありながら」(岡)がある。
検討所見:特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められない。
資料(1)の録音について、録音開始から終了まで約1時間58分23秒間の録音内容を分析区間10秒単位で連続分析し、表3にその結果の一部を示したが、録音全体のスペクトログラムを検討した。
その結果、録音の最初部分にガサガサとこすれるような大きな音があり、また、録音の途中にもガサガサという音、カシッと言うような音やコツコツと何かにぶつかるような幾つかの雑音のある箇所はあるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は認められなかった。
また、笑い声のある部分とその付近に急に大きな音のため音が歪んだ箇所があるが、特に録音の不連続箇所や異常な箇所は、認められなかった。
したがって、資料(1)の録音は編集加工された可能性は、極めて低い。
以上の意見書の作成は、平成22年12月20日に着手し、平成23年1月27日に終了した。
また、この検封書には、次の資料を添付する。
写真 1枚
分析図 1枚
参考図 2枚
図 41枚
平成23年1月27日
鈴本法科学鑑定研究所
鈴木隆雄
(日本法科学鑑定人協会会員)
添付物:
写真1 資料(1)CD 甲第39号証
分析図1 資料(1)CDに記録されているWAV形式のファイル「意見交換会」(07.9.10)
参考図1 ICレコーダの録音データをパソコンによるデジタル信号処理で、原音から一部を削除して再統合して編集した場合のスペクトログラム
参考図2 ICレコーダの録音データをパソコンによるデジタル信号処理で、原音から一部を削除して再統合して編集した場合のスペクトログラム(一定周波数の雑音がある場合)
図1-1 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添3 0分から30分の周波数分析結果の写し
図1-2 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添4 30分から60分の周波数分析結果の写し
図1-3 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添5 60分から90分の周波数分析結果の写し
図1-4 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添6 90分から最後の周波数分析結果の写し
図2 日本音響研究所鑑定書(丙第22号証)の別添7 長針による衝撃音の周波数分析結果の写し
図3 資料(1)録音5分から7分(300秒~420秒)の原録音波形と時報の比較
図4 資料(1)録音7分から9分(420秒~540秒)の原録音波形と時報の比較
図5 資料(1)録音47分30秒から49分30秒(2650秒~2970秒)の原録音波形と時報の比較
図6 資料(1)録音49分30秒から51分30秒(2970秒~3080秒)の原録音波形と時報の比較
図7 資料(1)録音69分00秒から71分00秒(4140秒~4260秒)の原録音波形と時報の比較
図8 資料(1)録音71分00秒から73分00秒(4260秒~4380秒)の原録音波形と時報の比較
図9 資料(1)録音110分30秒から112分30秒(6630秒~6750秒)の原録音波形と時報の比較
図10 資料(1)録音112分30秒から114分30秒(6750秒~6870秒)の原録音波形と時報の比較
図11 資料(1)録音6分00秒から8分00秒(360秒~480秒)の原録音波形と時報の比較
図11-1 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間1(360~370秒)の分析
図11-2 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間2(370~380秒)の分析
図11-3 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間3(380~390秒)の分析
図11-4 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間4(390~400秒)の分析
図11-5 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間5(400~410秒)の分析
図11-6 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間6(410~420秒)の分析
図11-7 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間7(420~430秒)の分析
図11-8 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間8(430~440秒)の分析
図11-9 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間9(440~450秒)の分析
図11-10 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間10(450~460秒)の分析
図11-11 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間11(460~470秒)の分析
図11-12 資料(1)録音6分から8分(360秒~480秒)の区間12(470~480秒)の分析
図12 資料(1)録音2′45″~2′55″付近
図13 資料(1)録音2′54″~3′04″付近
図14 資料(1)録音3′03″~3′13″付近
図15 資料(1)録音8′45″~8′55″付近
図16 資料(1)録音8′55″~9′05″付近
図17 資料(1)録音9′05″~10′40″付近
図18 資料(1)録音15′03″~15′13″付近
図19 資料(1)録音15′13″~15′23″付近
図20 資料(1)録音15′22″~15′32″付近
図21 資料(1)録音72′20″~72′30″付近
図22 資料(1)録音72′30″~72′40″付近
図23 資料(1)録音72′40″~72′50″付近
図24 資料(1)録音72′50″~73′00″付近
図25 資料(1)録音73′00″~72′10″付近
図26 資料(1)録音73′10″~73′20″付近
鈴木隆雄経歴書(2ページ)(平成23年1月21日現在)
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■訴訟指揮に基づいて、平成23年2月10日までに最後の切り札をだした未来塾に対して、岡田市長はどのような対応をとったのでしょうか。
【ひらく会情報部・この項つづく】