市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

首都高ローリー横転炎上事故の45億円損害賠償請求権を時効にした首都高が証明する多胡運輸の恐るべき実力

2011-08-25 23:59:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■民法709条には「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と不法行為による損害賠償責任が定められています。また、同729条には「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする」とあります。


8月25日に首都高総務グループから送られてきた情報不開示通知の入った封筒。8月24日に投函され、簡易書留郵送料380円となっている。
 平成20年8月3日午前5時50分頃、首都高速道路5号池袋線で発生したタンクローリー火災事故で首都高は、同年10月14日に上下線とも全面開通させましたが、事故発生から開通に至るまでに要した費用として復旧工事費約20億円に加え、通行止めや渋滞などから発生したと推測される25億4000万円の減収分の合計の約45億円を同年10月28日に算出しました。首都高は、「燃料価格高騰による自動車の利用控えの影響も考慮して減収分を精査する。20年度末までにすべての復旧工事を終了し、全費用が確定した後に請求する」とし、事故を起こした多胡運輸に対しては、「支払い能力のある無しにかかわらず賠償請求はきっちり行う」と宣言していました。

 それから3年が経過した先日8月3日を前に、当会では首都高に対して、本当にこの件で原因者に損害賠償請求をしたのかどうかを確認するために、情報開示を請求していました。その回答が8月25日にありました。

■首都高からの回答は、次の通り「不開示」という残念な通知でした。

**********
                          総務第23号
                          平成23年8月24日
 市政をひらく安中市民の会
   事務局長 小川 賢 様
                     首都高速道路株式会社
                      代表取締役社長 橋本圭一郎(社長印)
     首都高速道路株式会社が保有する情報の開示について(通知)
 平成23年7月27日付けで受理しました開示の求めについて、下記のとおり不開示
とすることとしましたので、通知いたします。
                  記
1 開示の求めがあった情報の名称及びその件数
 平成20年8月3日(日)早朝に発生した多胡運輸所有の大型タンクローリーによる横転炎上事故で、同年10月14日に記者会見した佐々木克己社長(当時)は「損害が経営に与える影響は小さくない。賠償請求をきちんとやりたい」と述べた件に関して、これまでに首都高が多胡運輸やその元請、或いはガソリン等の運搬を依頼した荷主らに対して為した賠償請求にかかる一切の情報。

 以上1件。

2 不開示とした情報とその理由
(1)不開示とした情報
 上記1の情報
(2)不開示とした理由
 「首都高速道路株式会社が保有する情報の開示に関する規則」第5条第四号ニの規定に該当するため不開示とした。
(参考) 首都高速道路株式会社が保有する情報の開示に関する規則(抜粋)
第5条 会社は、開示の求めがあったときは、開示の求めに係る保有情報に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示の求めを行う者に対し、当該保有情報を開示するよう努めるものとする。
一―三 略
四 会社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
 イ―ハ 略
 二 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれ
 ホ―ト 略

3 手数料等の額
(1)手数料等の額
 315円(消費税及び地方消費税を含みます。)
〔手数料等の内訳〕
 開示の求めに係る手数料 315円(1件。消費税及び地方消費税を含みます。)
(2)手数料のお支払い方法
 銀行振込
 <振込先> みずほコーポレート銀行 本店
       普通預金 0040193
       首都高速道路株式会社
 なお、銀行振込手数料は開示を求めた方のご負担となります。
(3)お支払い期限
 本通知をお受け取りになってから30日以内にお支払いください。
                                以 上


**********

■封筒には、ご丁寧にも社長印が押印された請求書が同封されていました。

**********
                         No.2011-323
          請  求  書
                     平成23年8月24日
市政をひらく安中市民の会事務局長 小川 賢 殿
                    千代田区霞が関1丁目4番1号
                     首都高速道路株式会
                     代表取締役社長
                        橋本圭一郎(社長印)
          下記金額を請求します。
           金額315円

 ただし 保有情報の開示手続きにかかる開示の求めに係る手数料として

     納入期限 開示決定通知書を受け取ってから30日以内
     振込先  みずほコーポレート銀行本店
          普通預金0040193
          口座名義首都高速道路株式会社
※なお、振込手数料は、各自ご負担願います。
 また、当方の領収証は、振込銀行が発行する送金済みを証する書面をもって代えさせていただきます。

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■首都高が当会の情報開示の求めに対して「不開示」とした理由は、同社の「首都高速道路㈱会社が保有する情報の開示に関する規則」に基づくとしておりますが、同社のホームページを見ても、その規則の全文はどこにも掲載されていません。ホームページに掲載されているのは、次の記述のみです。

**********
開示・不開示の検討
開示の求めがあった保有情報について、不開示情報にあたるかどうかの検討を当社で行います。
〔不開示となる情報〕
保有情報に次の情報が含まれる場合は不開示となります。
【1】特定の個人を識別できる情報や個人の権利利益を害するおそれがある情報。
ただし、次の(1)から(3)に該当する場合は開示します。
(1)法令の規定や慣行により公にされる情報。
(2)生命、身体、財産を保護するために公にすることが必要な情報。
(3)公務員、独立行政法人等の役職員の職務遂行に係る情報。
【2】当社以外の法人、団体、個人事業主の権利等を害するおそれがある情報。
ただし、生命、身体、財産を保護するために公にすることが必要な情報の場合は開示します。
【3】当社以外の法人、団体、個人事業主から公にしないとの条件で任意に提供された情報。
ただし、生命、身体、財産を保護するために公にすることが必要な情報の場合は開示します。
【4】国の機関、地方公共団体、独立行政法人等の情報で次の(1)から(3)に該当するもの。
(1)公にすると率直な意見交換や意思決定などの中立性を損なうおそれのある情報。
(2)公にすると国民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報。
(3)公にすると特定の者に不当に利益や不利益を及ぼすおそれがある情報。
【5】当社が行う事務・事業に関する情報で公にすると当該事務・事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報。
**********

 今回、同封された通知書には、「参考」として、当該規則の該当条項の「第5項」のただし書きの「第四号 会社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」の「ニ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれ」が引用されています。上記のホームページ上にある「開示・不開示の検討」の【5】に該当していることになります。

 つまり、「当該事務事業の性質上、適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」「会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害するおそれ」が首都高の不開示の理由であることが判ります。

■まず、首都高にとって史上最大の物損事故の損害賠償に関して、利用者が「請求に係る情報」を請求したことが、「適正な事務事業の遂行に支障を及ぼすおそれがある」と判断しているのかどうか、について考えてみましょう。

 首都高自身はもとより、首都高を利用しようとした不特定多数の国民が2カ月もの間、不便を強いられたわけですから、首都高としても原因者に対して適正な損害賠償請求という事務事業を行う責務があるはずです。「利用者に原因者の多胡運輸への請求額を示すと、多胡運輸に対する損害賠償請求に支障を及ぼす」という理屈はあり得えません。

■それでは、もうひとつの理由である「ニ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、会社の財産上の利益又は当事者としての地位を害する恐れがある」と首都高が判断しているのかどうか、検討してみましょう。首都高が具体的な条項として「ニ」を示したことから、これが不開示の理由だということになるからです。

 今回、当会は、首都高が民事時効の到来以前に、多胡運輸への損害賠償をしたかどうかを確認したかどうかを知りたかったわけです。多胡運輸への損害賠償請求は「交渉」に該当すると考えられます。また、多胡運輸が支払いを拒否すれば裁判沙汰になり、この場合は「争訟」に該当することになります。

 そうすると、「会社の財産上の利益を害するおそれ」または「当事者としての地位を害するおそれ」があると首都高は主張していることになるわけですから、多胡運輸と交渉中あるいは裁判中ということになります。

 首都高がそのような状況にあると仮定すると、当会が請求した「原因者の多胡運輸や元請のホクブトランスポート、そして荷主の出光興産に対する賠償請求にかかる一切の情報」のうち、「会社の財産上の利害を害する」、つまり首都高の賠償請求が減額されたり、取はぐれたりするおそれがあるということになります。あるいは、「交渉当事者としての地位を害する」、つまり、交渉先の多胡運輸等に対して立場が弱くなるおそれがあるということになります。

■ということは、首都高の回答から推察すると、決して多胡運輸に対して損害賠償請求を放棄しているわけではないことをうかがわせます。つまり、多胡運輸に対して、何らかの形で交渉中だということになります。

 もしそうであれば、当会が請求した一切の情報を、全部「不開示」とするのも不自然です。なかには、首都高の立場に影響を与えないものもあるはずです。ましてや、開示することにより賠償請求額が減額されたり取はぐれたりする恐れのある情報というのは、もっと限られてくると思います。

 開示しても首都高の立場に影響を及ぼさないという情報は、多胡運輸など原因者への請求書或は請求書を送った証拠となる送り状ないし請求することを社内的に稟議して決めた際の起案書などが考えられます。

 請求の内訳の細部にわたっては、多胡運輸との交渉で、値切られる恐れがあるかもしれませんが、全体として例えば45億円という賠償請求額を利用者に開示してもなんら問題にはならないはずです。45億円のうち、たとえば通行止めによる通行料の減収分をあきらめて20億円の復旧工事費だけを請求したという情報を開示しても、開示規則に反することはないはずです。

■むしろ、多胡運輸などに対して損害賠償請求をしていることを公表したほうが、利用者への信頼の観点から、メリットが大きいはすです。いや、むしろそうすることが、利用者に対する責務ではないでしょうか。

 首都高のホームページには、「ETC利用照会・残高照会 / 通行料金が「未払い」となってしまったお客様へ」と題して、首都高の利用者が料金所を通過する際、 ETCカードを挿入し忘れた状態で通行したり、または誤って一般レーンを通過してしまった等により、通行料金が「未払い」となった場合は、そのまま目的地まで走行後、あとで事後申告したうえでETCカードもしくは現金で、未払い分の通行料金の支払いを利用者に求める手順が詳しく掲載されています。

 そして、未払いのまま連絡のない場合には、不正通行として取り扱い、レーンに設置してある不正通行対策監視カメラ等を活用し、割増金も含めた通行料金を請求させていただくことがある、と警告しています。

 このように首都高は利用者に対しては、数百円単位の未払いについて、利用者の責任の自覚にうったえて、もし責任の自覚がない場合には、厳しく取り立てるとしています。

■しかし、3年前の事故は首都高史上最大の物損事故で、十億円単位という損害額は、ETCの取り扱いミスという故意又は過失とは比べ物にならない桁違いのケースです。

 本来であれば、事故を起こした多胡運輸からの自己申告による連絡、つまり事故に関する通知なり謝罪なり、なんらかのコンタクトが首都高に対して行われるはずです。もし、それが一定の期間、ない場合には、今度は首都高から事故による損害について、請求をする旨の意思表示があってしかるべきです。

 当会は、そのようなやり取りを示す情報もあると考えて、今回の情報開示の求めに踏み切りました。

 ところが、全面的に「不開示」とされたことから、なんらかの対応を検討する必要があると考えています。

【ひらく会事務局】

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