市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

子どもたちに年間20ミリシーベルトの被ばく量を平気で許容した政官と東電の利権まみれの亡国論理

2011-05-07 23:11:00 | 前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災
■4月29日に、内閣官房参与の肩書の東大大学院教授が、涙ながらに記者会見を開き、参与を辞任するというニュースがマスコミから流されました。子どもたちの通う小学校等の校庭利用で、文科省が採用した放射線の年間被ばく量が20ミリシーベルトという屋外活動制限基準を強く批判して「とんでもない高い数値であり、容認したら、私の学者声明は終わりだ。自分の子どもをそんな目にあわせるのは絶対に嫌だ」というシーンを見た人は沢山いると思います。
 この前段として、4月19日に文科省が、学校等の校舎・校庭等の利用判断における放射線量の目安として、年間20ミリシーベルトという基準を、福島県教育委員会や関係機関に通知しました。政府は、これは屋外で3.8マイクロシーベルト/時に相当するとしています。

 3.8マイクロシーベルト/時は、労働基準法で18歳未満の作業を禁止している「放射線管理区域」(0.6マイクロシーベルト/時以上)の約6倍に相当する線量です。また、年20ミリシーベルトは、ドイツの原発労働者に適用される最大線量に相当しています。

■当会では、3月19日に、「被災者の受入れに加え、日本の将来を担う世代の一刻も早い西日本或いは海外への疎開措置を望む」http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/612.html#readmoreと題して、逸早く、日本の次代を担う子どもたち全員を、放射線被ばくのリスクのない場所に、緊急疎開させる措置が必要だとアピールしました。

 この根拠としては、ICPR(国際放射線防護委員会)の勧告に基づく線量限度基準があります。これによると、周辺管理区域外での一般公衆の線量限度は年間1ミリシーベルトとなっています。これは、人が日常生活で自然に浴びる放射線量が年間2.4ミリシーベルトとした場合、日常生活以外に人が浴びる放射線量の上限とされています。

 一方、今回の原発事故対策のような放射線業務従事者の線量限度は年間50ミリシーベルトとであり、5年間で100ミリシーベルトです。

 ところが、福島第1事故対策の為、作業員の上限は3月11日の事故発生直後は上記の年間50ミリシーベルトとされていましたが、3月15日から突然250ミリシーベルトに引き上げられました。

■当会では、こうしたご都合主義でいかようにも基準を変える政府、原子力委員会や原子力保安院、そして東電や御用学者らの言うことが信用ならないため、将来に禍根を残さないように、逸早く政府が非常事態宣言を出して、18歳以下の子どもたちや妊婦は、直ちに年間1ミリシーベルト以下の地域に疎開させるべきだと主張しました。

 原発事故発生後、2週間を経過した3月25日に、郡山市内に在住する知人に電話をしたところ、「既に放射線被ばく量(累計)が5ミリシーベルトを超えている」というので、「いつでも群馬県に避難していいよ」と伝えたことがあります。

 知人は、定年退職なので「もう人生はおまけのようなものだから」と自嘲気味に言っていましたが、その後、郡山市では、毎時4マイクロシーベルトから現在1.5マイクロシーベルトまで下がっているとはいえ、累計では6週間で約1000時間が経過しており、この間の平均知を2.5マイクロシーベルトとすると、2.5ミリシーベルトが更に加算されている勘定です。このままでいくと毎月1ミリシーベルトずつ積み上がるため、原発が再度水蒸気爆発など起こさなくても年末までにはあと8ミリ増える可能性があり、今年の年間トータルでは15.5ミリシーベルト被ばくする計算になります。

■もう、放射線に影響でガンになるかどうかなど、どっちでもよくなった団塊の末端世代はともかく、育ち盛りの子どもたちは、われわれ大人たちよりも数倍も新陳代謝が活発です。したがって、外部環境により細胞が傷つけられ白血病やガンになり易いとも言えます。

 さて、冒頭で紹介した涙の記者会見をして見せた御仁は、内閣官房参与の小佐古敏荘(こさこ・としそう)・東大大学院教授(61)です。小佐古は菅政権の福島第一原発事故対応について「法律や指針を軽視し、その場限りだ」と批判し、記者会見に先立って首相官邸を訪れ、4月30日付の辞表を提出しました。

 記者会見で、 小佐古は「通常の放射線防護基準に近い年間1ミリシーベルトで運用すべきだ」と述べ、緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)による放射性物質の拡散予測が4月下旬までに2回しか公表されなかったことも触れ、「今のやり方は、東京で数字をぼっと決めてやっている」と批判し、菅政権の対応について「私がやってきたことからは外れているので、これ以上とどまっている理由はあまりない」と語りました。

 この御仁は放射線安全学などが専門で、東日本大震災発生後の3月16日、原発事故の助言を政権に求められて参与に就任しました。菅直人首相は小佐古ら計6人の原子力専門家らを次々に内閣官房参与に任命したのでした。

 政府に重用される専門家というのは原発推進論者と相場が決まっており、この御仁もこれまで御用学者として活動してきた人物と言われています。自分の責任を棚に上げて、自分は子どもたちの将来を案じて決断したと言わんばかりに、記者会見で涙まで流してみせましたが、そうした背景を知らなくても、一目見て、これは演技だなと直感しました。

 しかも、記者会見で「御用学者」としての自らの誤りを認めて謝罪するのならまだしも、ただ単に菅政権を批判するだけでは、責任逃れが目的の辞任と記者会見だったようです。

■それでも、福島以外でのほほんとしている政治家、それも原発推進に邁進してきた自民党議員は、原発事故の先行きがどうなるか全く予断を許されないこの時期に、はやくも、原発推進をぶち上げ始める始末です。

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自民 原発推進派はや始動 「原子力守る」政策会議発足
 東京電力福島第一原発の事故に収束のメドが立たない中、国策として原発を推進してきた自民党内で早くも「原発維持」に向けた動きが始まった。原発推進派の議員が集まり、新しい政策会議を発足。「反原発」の世論に対抗する狙いだ。
 この会議は「エネルギー政策合同会議」。自民党内の経済産業部会、電源立地及び原子力等調査会、石油等資源・エネルギー調査会の三つを合体させた。電力需要対策とエネルギー戦略の再構築の検討を目的に掲げるが、党幹部は「原発を守るためにつくった」と明かす。
 幹部には原発推進派が名を連ねる。委員長は元経済産業相の甘利明氏。旧通産省(現経産省)出身の細田博之元官房長官が委員長代理、西村康稔衆院議員が副委員長に就いた。先月12日の会合では、幹部陣の隣に東電の元副社長で現在は東電顧問の加納時男・元参院議員が「参与」として座った。
 甘利氏は「安易に東電国有化に言及する閣僚がいる」と指摘する資料を配布。会議後に河野太郎衆院議員が「原発推進派が並ぶ人事はおかしい」と抗議したが、認められなかった。
 自民党は中曽根康弘元首相らを中心に「国策・原子力」の旗を振ってきた。1955年、研究と開発を進める原子力基本法を制定。74年に「電源三法」を制定し、立地自治体に手厚く補助金を出してきた。電力業界は資金と選挙で自民党を支援。電力各社でつくる電気事業連合会(電事連)は80年代前半から11年間で約65億円を党機関紙の広告費として自民党に支払った。
 谷垣禎一総裁は震災後の3月17日の記者会見で「現状では、原発を推進していくことは難しい状況」と述べたが、1週間後には「安定的な電力供給ができないと製造業など維持できるのかという問題もある」と軌道修正した。党内では「推進派から反発されたため」と受け止められた。会議は大型連休後、中長期のエネルギー戦略の議論を始める。
 甘利氏は「我々は市民活動家ではない。膨大なコストや不安定を覆い隠し『自然エネルギーで何とかなる』と言うのは無責任だ。現実問題として原子力を無くすわけにはいかない」と言っている。
(2011年5月5日朝日新聞記事)
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■やはり、自民党としては、八ッ場ダムと同じように、打ち出の小槌ともいえる原発の利権をよほど手放したくないのでしょう。こういう連中が再び権力の座に就かないように、原発族議員らの行動を注意深く監視する必要があります。

 それにしても、こうしている間にも福島第1原発から30キロ以遠であっても比較的原発に近い場所にいる子どもたちへの放射線の被曝量が積み重なっております。なぜ、政府は思い切った疎開措置を取ることができないのでしょうか。もしかして東電の補償対象額を増やしたくないと思っているのだとしたら、言語道断です。

【ひらく会情報部】

※参考データ
・ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に基づく線量限度等(参考)
①周辺管理区域外での一般公衆の「線量限度」:1mSv/年
②放射線業務従事者の「線量限度」:50mSv/年および100mSv/5年
・通常時(異常時外)の線量当量率基準値当(参考)
①敷地境界外での一般公衆の「線量目標値」:空気カーマ50μGy/年
②敷地周辺の公衆の受ける「線量目標値」:50μSv/年
③乾式貯蔵キャスク表面の「設計基準値」:2mSv/h
④乾式貯蔵キャスク表面から1mの点における「設計基準値」:100μSV/h
・異常事象時における線量当量率基準値等(安全評価)(参考):
①異常事象時(事故時)での敷地周辺公衆の被曝限度:5mSv/1事故
②安全設計にかかる項目―遮断:乾式キャスクの線量率評価等:乾式貯蔵キャスク表面から1mの天における「設計基準値」:10mSv/h

コメント (2)
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