市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

13年前の51億円横領事件、知られざる発覚前夜(その4)

2008-08-17 18:13:00 | 安中市土地開発公社事件クロニクル
<平成7年5月29日~6月9日逮捕まで>

■平成7年5月18日に安中市土地開発公社で発覚した借入残高の不一致は、史上最高額の横領着服事件の全容露見を告げる合図でした。そして6月3日の新聞報道、6月7日のタゴ逮捕に至ったわけですが、奇怪なことに市・公社もタゴも、そして群銀さえも、犯行は秘密口座を使った1990年4月16日から5年間だけのサギ行為であることを強調。それ以前の正規口座を利用した横領についてはなぜか誰も取り上げようとしませんでした。こうした疑問の数多くが未だに当事者の口から真相について語られないまま、現在に至っています。事件関係者の供述や陳述を突き合わせ、時間の流れをたどってみると、つじつまの合わない点がたくさんあることに賢明な皆さんは気付かれたと思います。今回は平成7年5月29日の不可解な1日からタゴ逮捕までを振り返ってみましょう。

▼5月29日(月)
 午前9時、公社のTH、TK、TDが建設部の縦覧室にタゴを呼び出して事情聴取。
 タゴの話を聞いたところ「29日にIと会えた。カネは別の口座に入っているので(ある所にストックしてあるので、とも言ったという)必ず穴埋めできる。当時安中支店の融資担当の代理をしていたIがカネを運用していた。I課長は高崎の自宅を処分し金利を作ると言っているが、差は1億円以内で、金利の不足分はオレが責任をもって支払う。TH係長やTK、TDには迷惑をかけない。Iは12時頃支店長と会うと言っていた。Iから銀行に電話を入れてもらい、支店長と相談したうえで、オレが今日の午後3時に安中支店長と会って話をつける。その結果を夕方までに報告する」などと言った。公社のTH係長は「3時に(タゴが)支店長に会う時は同席する」とタゴに言った。
 午後3時に社会教育課にタゴが退席したかを確認したところ、「3時から休みをもらった」と教育課の者が言ったので、THらは市役所のすぐ前にあるタゴの家を見に行った。ちょうどその時、タゴは車で出て行った。
 THらはその前に安中支店次長に「タゴが行ったら電話をくれ」と頼んでいたところ、4時20分頃、群銀Y次長から電話があり、「タゴが来ていない」とのことだった。慌ててTH係長とTKが群銀に行った。
 THらが安中叉店に「Iから電話があったか」と聞いたところ、「一切ない」と群銀が答えた。支店長Mが本店審査部調査後のIに確認したところ、Iは「(タゴとは)2月の結婚式以来会っていない」と言った。
 TH係長らはその後市役所に戻り、市長に報告し、銀行を市役所に呼んだ。
 午後5時にタゴから公社に電話があり、「TH係長はどうした?」とタゴが聞いたので「銀行に行った」と答えたところ、タゴは「じやあいい」と切った。その間、タゴは役所や自宅にも戻ってはいなかった。
 午後7時支店長Mと次長のSとYが市役所に来た。市長が指摘をし、群銀が答える形で話合いが行われた。市側・群銀側双方がテープを取りながら会談をした。再度、Iの件を話した。I本人に確認してくれと市側が要請した。
 「タゴ本人を呼んでこい」ということになったが本人が所在不明だった。午後6時頃、子供だけがタゴの家にいた。「お父さんもお母さんもいない」とのことだった。
 午後7時10分頃、再度本人を呼びに行ったところ、子供もいなかった。
 午後11時くらいまで、公社職員は帳簿等の調査をしながら、タゴの帰りを待っていた。
 午後11時頃、TH係長宅にタゴの妻から電話があり、「本人は出られない。本人は錯乱状態で初めて話を聞いた」と言ってきた。「今どこにいるんだ」とTHが聞くと「遠い所にいる」とタゴの妻が言うので「とにかく明日出て来い」とTHは言ったという。子供も一緒にいるとのことだった。午後11時30分にTHが市長に連絡した。
 その後、職員全員(市か公社かは不明)に連絡し、午前0時頃集合、タゴの身内にも連絡を取り、午前2時30分まで捜索したがタゴは見つからなかった。
【注1】この問題の経緯について、タゴの妻は次のように供述している。
 午後3時頃、店から目宅に帰った。20~30分後にタゴが帰ってきた。妻は「どうしたの?」と聞くと、タゴは「代休をとって帰ってきた」と言ったが、とくに変わった様子もなく、その後2人で市内に買物に行き、午後4時頃自宅に戻った。妻は車から降りたが、タゴは「出かけてくる」と言い残して、どこかへ出かけた。
 午後6時頃、市役所の人が訪ねてきたが二男が対応に出るとすぐに帰った。妻は(市役所の人が)何かの用事で来てくれたのならタゴに連絡を取らなければと思い、タゴの持っている携帯に電話をかけたが通じなかった。電話番号が使われていないということだったので妻は何かの都合でタゴが(番号を)変更したのだと思った。
その筆少したってからタゴから雷話があり、「子供を頼む」と話してきた。「何かあったのか?」と妻が問うと、タゴは「じゃあ話し合おう。長野方面に行け。携帯電話を持っていけ」と言った。妻は二男を連れてタクシーで軽井沢に向かい、そこで別のタクシーで小諸方面に向かった。
 途中タゴから電話が入り、小諸駅で待ち合わせをして、先に妻が待っていた。1時間以上待つとタゴが来て、妻と二男が車に乗り、小諸市内のホテルに泊まった。子供を寝かせたあと、タゴが「群銀のカネを37億使い込み、昨日自殺しようと思った」などと妻に告白した。
【注2】また、公社のK局長によると、この日の午後7時に、安中支店の支店長と両次長を市役所に呼んだとき、市側の出席者は小川市長、須藤助役、青木収入、K局長、TH係長、TH、TDの7名だった。この時M支店長らは前と同じようなことを主張していた。
【注3】タゴはこの日の出来事について次のように供述している。
タゴは29日には公社TH係長と会っていない。「29日になってTH係長から問い詰められたとか、月曜日(29日)にも出かけて行って、支店長代理のIに会って穴埋め出来ると言った」などとTH係長の調書にあるそうだが、タゴはそういう話を29日にした記憶はない。29日にはタゴは午後大事で役所に居られなかったので帰った。そのあとTH係長らには会っていない。ただ31日に事件が発覚して市長に呼ばれた云々という時には、当然会っているが。
【注4】この日、タゴは時間休4時間を取って早退したことに勤怠簿上でなっている。

▼5月30日(火)
 朝、TH係長宅にタゴから電話があり、「今日は行けない。明日には帰るので、31日午後話をしたい」と言ってきた。
 午後1時30分、タゴは帰宅したらしく、タゴの懇意にしている知人が本人から事情聴取していた。知人の話では、タゴは小諸に行ったという話で、自殺を図ったと言い、タゴの左手首にキズバンが貼ってあった。(自殺用の)ホースを買ったそうで、共犯者はいないらしいということだった。
 タゴの妻は、この日タゴが帰ると、どうするかタゴと相談した。
【注】この日タゴは、役所では年休扱いとなっている。

▼5月31日(水)
 12時30分頃、タゴから「家に居る。弁護士とアポイントがとれた」と電話でTH係長のところに連絡が入った。
 午後3時30分になって、タゴが自宅にいることがわかり、午後3時すぎにTHとTKがタゴを自宅に迎えに行き、タゴを市役所の第一応接室に連れてきた。小川市長や須藤助役、青木収人役、大塚総務部長、大工原建設部長、加部局長、高橋弘安が集まってタゴ本人に事実確認した。
 「確認書」を作ってタゴに住所氏名を書かせて押印をさせた。そして市長が31日付をもって懲戒免職の処分を口頭で言い渡した。この確詔書をワープロで作るあいだに、小川市長はタゴに「警察に自首するように。警察に行く前にはこちらに連絡すること」と出頭を促した。タゴは「一日考えさせてください」と言った。
 午後6時頃、安中支店長Mと次長Sが市役所に来たが、この時、小川市長は公社のTH係長と共に対応した。
 夜、公社監事の坂東非常勤特別職員のところに小川市長が職員を通じて、6月1日午前6時30分に市役所に第二委員会室で至急の会議を開く旨連絡が入った。
 この日、タゴの妻は田中善信弁護士と穂積弁護士のところへ行った(午前中と考えられる)。
そして、夕方にもタゴと妻とタゴの弟が弁護士を訪れた。
 この時、弁護士は「市長に全部報告し、その上で処分をうけてそれから自首した方がいい」と話した。タゴは弁護士に事件の内容を言うと、弁護士は「これは大変だ。市の方の市長さんに報告しろ」と話したが、後になって、この時の段階では、タゴからの弁護依頼でなく、タゴに「そうした方がいいよ」というものであったと解説している。
 一方、群銀安中支店では、この日仕事が終わって帰る間際になって、支店長以下男子行員全員が集められ、支店長Mから「安中市土地開発公社のタゴが当支店から不正借入を行い、現在安中市役所で調査中なので、各自とも了解しておいて下さい」との話しがあった。
【注1】この日、市役所最後の日にタゴは年休扱いとされた。
【注2】この日、タゴは「かんら信金」を訪れ、定額預金2件それぞれ190万円と201万3638円を解約した。
 タゴは、平成2年7月20日にかんら信金から800万円の証書貸付(住宅ローン)を受け同年8月2日親戚の篠崎工務店(その後廃業)に800万円を振込んだ。このローンの返済でタゴは毎月8万円ずつ支払っていた。平成7年5月23日には、58回目の内入れとして8万円をかんら信金に支払った。この時の利息は1万3854円でローン残高は336万円あった。ところがタゴはその8日後の5月31日に、残高336万円と利息3608円をかんら信金に一括支払い、完済した。かんら信金側の記録ではこの日336万円を「回収」したことになっている。この点について、かんら信金は「一切ノーコメント」としている。

▼6月1日(木)
 タゴが弁護士のところを再び訪れ、弁護の依頼をした。タゴは「ぜひ自首をしたい」と弁護士に言ったところ、弁護士は「現金、骨董類は全部移動してはいけないよ」とタゴに言った。
 この日、午前9時30分から公社緊急役員会を開いた。この時、参加者は、タゴの不正について金額までは聞かされなかった。
午前10時30分から市議会全員協議会で事件の報告。午後2時頃、高崎市内の善如寺弁護士の事務所へ須藤助役、大工原建設部長、加部局長、高橋弘安係長、竹田清孝の5人で今後の事件対応を相談に行った。午後5時30分頃市役所に戻った。
 午後7時前にタゴの妻から高橋弘安係長に「明日の午後1時半に穂積弁護士と一緒に警察に行きます」と連絡が入ったので、高橋弘安は市長にこの旨を伝えた。
その後.市長、助役、収入役、総務部長、建設部長、秘書課長、加部局長、高橋弘安らで今後の対応について会議をし、とりあえず安中警察署長に相談しておいた方がいいだろうということになり、市長が直接安中署長に雷話で連絡した。市として事前に警察に調査依頼決定した。
 午後10時40分、高橋弘安係長は小川市長から「明日警察に行って、事前に署長に話しをするので、その結果でタゴに何時に警察へ出頭したらよいのか、市の方から連絡するからということを伝えてくれ」と指示を受け、高橋弘安は一人でタゴの自宅を訪れ20分ほどタゴと妻らと話した後、市役所に戻った。
 またこの日、市長から安中支店に本件について「刑事事件であることから、警察に申告する」と連絡があった。群銀でもサギの被害にあったものとして、タゴ本人の厳重処罰を求めて安中署に捜査依頼をすることになった。

▼6月2日(金)
 午前、小川市長が警察へ告発の相談に行った。
 一方、タゴはこの日午前中、弁護士が用事があったため、午後出頭するつもりだった。ところがこの日の朝、市長から警察に通報があり、その時「タゴさんが1時半に行くから」という通報だったことをタゴは逸早く知った。
 午後1時半、タゴが安中署に出頭した。調べに対しタゴは「総額35億円ぐらい公社の特別会計口座に振込んでもらい騙し取っている。これがバレて懲戒免職になったが、いろいろ考えた末、正直に話をして処罰を受けようと思って出頭した」と述べた。
タゴは弁護士から「現金その他骨董品全部動かしてはいけない」と言われていたので、「だから警察により、この日6月2日にタゴの自宅等にあった金品はすべて押収された」と、タゴは後日隠し金などはなく、「5月8日に引出したカネも殆ど使わず、自宅の金庫に1000万円くらい、自宅にある(タゴの)財布に200~300万円くらい、合計1300万円くらい残っており、5月19日に妻に100万くれた位だ」と言っている。

▼6月3日(土)
 この日の朝刊2紙(上毛新聞、朝日新聞)に初めてタゴ事件が報じられ、一般市民が事件を知った。すでに、市役所内部で事件が発覚してから、17日が経過していた。

▼6月7日(水)
 タゴ逮捕。

【ひらく会情報部・この項おわり】

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13年前の51億円横領事件、知られざる発覚前夜(その3)

2008-08-17 18:10:00 | 安中市土地開発公社事件クロニクル
<平成7年5月1日~28日>

■平成7年5月18日に安中市土地開発公社内部で密かに発覚した史上空前の巨額横領詐欺事件。13年前のこの事件をたどるために、これまで平成7年3月と4月にかけて、市、公社、群銀そしてタゴの身辺に何が起きたのか、時系列的に見て来ました。今回はいよいよ、平成7年5月に公社内部で事件がどのように発覚し、関係者はどのように対応したのか、その様子を皆さんと共に検証してみたいと思います。

▼5月2日(火)
 タゴが、2時間休みをとり午後3時頃早退した。

▼5月8日(月)
 タゴが騙したカネの一部を払い戻しに群銀安中支店に行った。
 既に公社から異動した後なので、群銀が応じてくれるか心配しながら、タゴは12時25分に群銀を訪れたが、奥の応接室で、支店長Mと次長Sはいつものように対応した。
 タゴは払い戻したカネの使途を聞かれるのが一番嫌だったが、群銀からは市長選の話しなどが出ただけだった。タゴが払い戻したカネについて、支店長らは事業資金だと思い「新駅はいよいよ始まるのですか」などと言った。
 タゴは12時30分に現金1485万円を払戻した。機械からの出金時間は12時37分で1485万円のうち、機械からバラで一万円札85枚、更に機械が百万円の群銀の帯封もしくは日本銀行の帯封つきの札束4束(400万円)を出した。そして機械とは別に百万円の札束10束を更に束ねた大束1束(1000万円)を群銀が機械を使わず手で出した。
 この払戻しはタゴが直筆窓口に行き、公社理事印の押された払戻請求書を窓口にいた行員に出して請求したもので、S次長はこの様子を見ていて、タゴが公社のカネを引出しに来たものと思い、声をかけて応接室に通しお茶を出した。
 この時タゴは急いでいた様子で、ゆっくりとはせず、払戻しができたという連絡があるとすぐ窓口に行った。
タゴは、予め現金を入れるように行員に渡しておいた黒色で布製に見えるチェック付きのスポーツバッグ風の手提げを受け取り帰った。この時タゴは現金を数えて確認はしなかった。タゴが帰ったのは12時45分だった。
 この黒色の布製手提げは、タゴが現金を引き出すときいつも持参するものだった。なお、公社の預金ということで、払戻手数料は無料、また利息は非課税。

▼5月11日(木)又は12日(金)
 公社のSHとTKが県信の預金残高証明を取りに行ったら「普通の会社なら借入残高も必要だよ」と言われたが、公社定款になかったので、その場はそのまま帰った。

▼5月15日(金)
 群銀に行き、公社の預金残高証明をもらった際、借入金残高証明ももらえることを確認できた。

▼5月16日(火)
 群銀のY次長が、公社のTH係長に「公社の決算理事会があるから」ということで、貸出金の残高証明を頼まれた。5月24日の公社監査、30日の公社役員会に備えるための依頼だった。なお、TH係長は親戚に不幸があり、午後3時に早退した。

▼5月17日(水)
 群銀のYが借入残高証明を公社に持参した。借入残高は46億6596万円。この日公社のTH係長は忌引で休み、SHはカゼで午後早退、TKもTDも不在だったので、TAがこの書類を受け取り金庫に入れておいた。夕方、TKが戻り残高内容を知った。

▼5月18日(木)
 10時50分頃、公社TKがTH係長に借入残高証明の金額を打ち明ける。THは「コンピュータの打ち間違いだろうから、二人して銀行へ行ってくるべえ」とすぐに群銀に行った。この時T‘H係長は上司に報告せず、TKと二人で行った。
 11時10分頃、二人は安中支店の借入関係書類を持参し、群銀の応接室でS、Y、Kの3人に会い残高証明を出した。
 一方、群銀安中支店では、公社のTH係長から、次長Sが電話を受け、「銀行からもらった借入総額の残高証明と公社で把握している借入残高とが全く合わない」と連絡が入った。暫くして公社からTHとTKが支店に来たので次長のSとYが応対した。
 最初、公社TH係長が「銀行の残高証明が間違っているのではないか。明細があったら見せてほしい」と言ったので、支店S次長が借入明細を見せて、間違いないと説明した。TH係長が「金銭消費貸借契約証書を見せてほしい」というと、群銀は「このとおりある」と言って、袋の中に入っていた金証を見せた。「本人の字かどうかも分からない。いかにも付け加えているのではないか」とTH係長が言ったところ、支店長(?)が「本部の監査でも(タゴ)本人の筆跡に間違いない、ということで検査は済んでいる」と答えた。
 半期に1回利息を払う点について、公社が「総額が異なるのであれば平成7年3月31日に支払った利息では足りないのではないか」と質したところ、支店長(?)は「間違い無く頂いている。もうひとつ安中市土地開発公社理事長湯浅正次・特別会計口座番号058-969という口座がある」と答えた。
 公社TH(?)は「そんなはずはない」と言ったら、「平成2年4月16日開設の特別会計がある」と群銀が口座開設時に記入した普通預金印鑑票を見せてきた。「誰がつくったのか」と質問するとSが「タゴさんが作っております」と答えた。普通預金印鑑票はタゴの筆跡だった。公社が「特別会計口座にいくらあるのか」と聞くと、2億7500万円あった。「引き出し出来ないようにしてくれ」と頼み、過去の資料を(群銀)本部から取り寄せるなどして全部見せてほしいと群銀に依頼した公社の二人は、12時40分に市役所に戻った。群銀S次長がくれた借入明細書は、公社TH係長が「詳しく調べてみる」と言って、この時持ち帰った。
 午後1時近く、公社TH係長がK局長(都慨計画課長併任)のところに来て「課長、群銀の公社の借入残高証明書を取ったら、47億円もの借入をしていることになっていたので、コンピュータの打ち間違いと思い確認したら間違い無かった。どうもタゴがやったらしい」というような報告をした。
 とりあえず市長にも報告することにして、KとTH、TKは市長室に行ったが、外出中だった。その後外出から戻った市長に、THはKとTKと3人でこれまでに分かっている事を報告した(注:K局長はこの時同席せず「THが市長に連絡したらしい」と言っている)。
 市長の指示を受けて、とりあえず銀行にもう一度行って、それが事実かどうか確認してみようということになり、銀行に連絡して午後6時に行く事になった。TH係長は「市長も後から銀行に行く」とK局長に話し、先にTKと出かけ、K局長は遅れて行った。
 安中支店の応接室で、公社の3人は、群銀の支店長Mと次長SとYに会い、事の事実を聞いた。市長は安中市商工会青年部通常総会終了後、午後7時頃に姿を見せた。
 群銀は、預金取引履歴明細票の2枚だけを出してきた。払い出し伝票の原本を群銀が見せたので、公社の借入金台帳と照合した。公社は群銀にある金証も見た。この時、公社は(金証の)狭いスペースに書き込みがなされているので、明かにおかしい、と詳銀に指摘した。
 公社は、借入が31本あり、金額欄の数字の頭についているものが12本(注:本当は13本のはず)あったことを知り、その(特別会計口座開設)前の金証も原本が存在したことがわかった。群銀から「タゴの指示により、特別会計に振り分けた」と説明があったので、公社は「それはおかしい」と指摘。安中市
からの(そうした特別会計口座への振り分け)依頼書はないことも判明した。
 市長が到着して、支店長に説明を求めたところ「湯浅市長の特命で特別会計口座を作った」と支店長が説明した。「特命など聞いていない。特命の依頼書など無いはず。4月に派出所のTに公社の残高を書いた書類を渡したのに、なぜおかしいと言わなかったのか」と公社が群銀に言った。群銀側の資料は明細書が2枚、伝票も1組だったので19日昼までに、群銀は本部の資料も全部調査すると、言った。
 なお、社会教育係にいたタゴはこの日午後、3時間休みをとり、午後2時に早退していた。

▼5月19日(金)
 午後1時に、群銀(S次長?)から「全部(資料が)揃った」という連絡があったので公社は群銀に午後4時頃来庁するよう依頼した。
 午後4時頃、群銀のSとYの両次長が市役所を訪れ、小川市長、須藤助役、青木収入役、K、THが市役所第一応接室で応対した。「支店長は支店会議で来られない」と群銀が言うと、市長が「こんな重大な事件で支店長が来ないのはどう言う事だ」と怒ったりしていた。
 市長が「タゴが特別会計口座を作ったのはどんな理由からか」と聞くと、群銀(S次長?)は「タゴさんから『市長の特命を受けている』ということを言われたので作った」と話した。市長は「口座を作った時の市長は湯浅さんだが、そんなことはさせていないだろうし、引継ぎも受けていない。第一、オレだってそんなことは指示した覚えはない。特命したことを確認しているのか」という話をすると、両次長は「確認は取らなかったが、ちゃんとした印が押してあるし、正規な書類と判断して貸出をしている」と主張していた。
 尚、群銀S次長は、この日小川市長やK局長、TH係長が安中支店に来て、公社や市で把握している回議書と群銀の把握している借入明細書と比べて、群銀が受け取った金証の金額と、市や公社が保管している回議書に付いた金証の控えの金額とが違っていることが分かったと言っている。
 また、S次長は、この日安中支店に小川市長、K局長、TH係長が来た時に、「今後のことは、まず市側で詳しく調査して、タゴ本人も調べてみる」ということだったので、当初は市の調査に任せることにして、群銀はその対応を見守ることになったと言っている。
 また、この日の昼休みに、公社TH係長がカゼで休んでいた公社職員で4月にタゴの後任として異動してきたSHに、初めてタゴの不正の話をした。この後TH係長は、タゴの不正に関して、TK、TDだけと対処し、SHを加えることはしなかった。

▼5月19日(金)又は20日(土)
 タゴが帰宅後、妻に帯封のついたままの100万円1束を渡した。それまでタゴは妻に給料日の20日頃に毎月50万円~100万円を渡していた。今回は、初めて生活費として帯封のついたままの札束を妻にやったと言う。

▼5月22日(月)
 市が公社調査。

▼5月23日(火)
 市が公社調査、この頃タゴが5月8日に1485万円を現金で特別会計口座から引出したことが市において判明した。

▼5月24日(水)
 午前中、公社の監査。午後3時頃(2時から3時という話もある)、公社TH係長が小川市長の指示で本庁舎2階の第一応接室にタゴを呼び、TH、TK、TDの3人で事情聴取をした。(注:タゴは勤務時間終了間際の午後5時頃と言っている)
 係長らが「残高は何だ」と聞くと、タゴは「これは違う。オレがやったのではない。不正の事実はあるが、こんなに多くない」と答えた。更に群銀のIが主犯というニュアンスで「当時、群銀の融資係長をしていたIさんとの関わりがあった。Iさんと話をしたいので二日間待って下さい」と言った。
 I係長の他にも関与していた人がいるのかについても追求されたタゴは「I係長の他にも一人群銀にいたがその人の名前はカンベンして下さい」などと弁解していた。このためTH係長らは二日間待つことにして、タゴに「その間に話をつけて、その結果を26日の夕方までに報告するように」と言っておいた。
(注:この時タゴは「群銀のIさんともう一人に頼まれてやった。この金額は違う、Iさんと話をしてくるので時間がほしい」と答え、自らIの他にも関与者がいると話したと言う。タゴ自身の供述によると「(この日、公社の)監査の日にTH係長に呼ばれて話をした。突然言われたので、咄嵯的にIさんと親しくしていたもんだから、ついIさんの名前を出してしまった。具体的には『Iさんがよく承知している話なんだ』と言った。『群銀のIさんが関係しているので、少し時間を下さい』と。しかし、この問題については銀行側にも関与者がいて、共犯者がいるとは言っていない。『私はよく内容を知っている人がいるから』というふうに話した」と平成8年2月の第8回刑事公判で、弁解がましく言っている。)
 タゴは、この日の事情聴取に先立ち「私は幾日か前から(公社の)TH、TK、TDの態度がよそよそしいなと感じていた」と後日供述している。
 尚、公社K局長は「THらが24日、26日にタゴを呼んで問い詰めたことを聞いているが、タゴがどんなことを言ったのか詳しいことは聞いていないので分からない」と言っている。

▼5月25日(木)
 タゴは、「25日も都市計画課のTH、TK、TDから事情聴取を受けた」と供述しているが、市作成の時系列表には、25日の出来事には何も言及していない。

▼5月26日(金)
 午後4時30分頃、公社のTH、TK、TDがタゴを第一応接室に呼んで話しの結果を問い詰めたところ「Iとは電話連絡が取れたが、相手も本店調査部の役職で電話では話をできず、Iも誰かに相談すると言っていた。Iが忙しいので会うことができなかった。(28日の)日曜日に会うアポイントが取れたので必ず話をつけて、月曜日の朝一番に報告します」とタゴが言った。市長の指示により、公社THらはタゴに「リミットは29日」と通告した。また群銀次長にIの件を話し、調査を依頼した。

▼5月27日(土)
 夕方6時頃、タゴが特別会計口座の積金通帳と払戻請求書を自宅の焼却炉で燃やした。この日は市役所
の閉庁日だった。タゴはいつものように、妻の喫茶店の開店時間午前10時~午後3時迄、店に出て客の対応をしていた。
 (注:タゴの初期の自供によると、タゴは24~25日頃、今回のサギ事件がバレそうだと感じたので、「いつも持ち歩いていた黒色手提げバッグの中に入れておいた特別会計口座の普通預金通帳1冊と公社理事長印が押されていた払戻請求書を自宅の焼却炉で燃やして処分した」という)
 タゴは、通帳と払戻書を燃やしたことについて、「これは証拠隠滅の時間稼ぎというよりは、私が自分自身で自分のカタをつけるつもりだったから、全てのものを燃やして妻や子供に迷惑がかからないようにしよう、という事だけだった。気が動転していたものだから、自分でもハッキリ云々という気持は無かった。その時はそこまで頭が回っていなかった。私が死ぬことでそれが明確になると思っていた」と、後に第8回公判で言い逃れをしている。

▼5月28日(日)
 この日もタゴは、昼間、店に出て普通に過ごした。午後9時過ぎに息子を車で高崎駅に送り、自宅に戻った。夜中に自殺を図った。遺書は30日にゴミと一緒に捨てた。

【ひらく会情報部・続く】


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13年前の51億円横領事件、知られざる発覚前夜(その2)

2008-08-17 18:06:00 | 安中市土地開発公社事件クロニクル
<平成7年4月>

■平成7年5月18日に発覚した安中市土地開発公社51億円巨額横領事件(通称タゴ51億円事件)。15年間に着服した公金が約51億円。安中市の当時の予算が約160億円だったから、タゴはなんとその3分の1を懐に入れたことになります。「市役所の七不思議」と言われた世紀の横領男を公務員として重用した関係者がキモを冷やしたこの事件は、発覚から13年が経過しました。この間、当会は事件の真相解明をテーマに掲げて活動してきました。そしてこれからも引き続いて事件の真相究明と責任の明確化を目指していきます。そのためには、13年前にいったい何か起きたのか、その事実を知ることからすべては始まる、と当会は考えています。今回は平成7年4月に焦点を当てます。

▼4月1日(土)
 市役所は閉庁日。タゴの異動の発令日。タゴが教育委員会社会教育課社会教育係長に転任。入れ替わりに、SHが公社職員(安中市都市計画課併任)として任命された。

▼4月3日(月)
 タゴに異動の辞令が交付された。群銀の安中支店長Mが、餞別を届けにタゴ自宅を訪れた。ちなみにタゴはこのときのお礼を兼ねて4月中旬に群銀安中支店に挨拶に行った。

▼4月4日(火)
 この日付で群銀本店公務部長名の書面「公社向け融資・基金シェア調査について」が各支店長宛に送られた。安中支店のS次長は公務部から「市役所の担当役席に調査させるように」と言われた。
 この調査は安中市土地開発公社が群銀や他の金融機関から借り入れた総額のうち、群銀からの融資金額がどのくらいの割合を占めるのかを調べるものだ。
 この調査に基づいて、各市町村から指定を受けた群銀の各支店から、各自治体の税金関係の収納、歳費の取り扱い等のために各市町村役所内の派出所に派遣している群銀行員の人数の増減や手数料の見直しをするという。
当時(平成7年2月)、群馬県内の公社等に対する群銀の貸出金合計額は約523億円だった。このうち安中市土地開発公社には45億3900万円で、金体のなんと約8.7%に及んでいた。人口比で県人口の約2.4%に過ぎない安中市にしては、その貸出額は突出していた。

▼4月5日(水)
 この日群銀のTMが通常業務を終えて午後3時以降に安中支店に戻った後、S次長がTMに本店公務部の書面を手渡し、調査を命じた。
 書面の内容は、平成7年3月末時点での公社に対する融資額、および市町村に対する財政調整基金等の積立額が、他の金融機関に対して群銀がどの程度シェアを占めているのか、という内容だった。本店公務部への報告期限は4月13日となっていた。

▼4月6日(木)
 群銀派出所のTMはこの日の午後、公社の事務局次長兼都市計画課係長のTHのところに行き、「参考資料にしますので」と「平成7年3月末現在の公社の安中支店に対する借入額と併せて、農協とか信金の借入残高も教えていただければお願いします」と言った。
するとTH係長は「個別の金融機関の借入額は教えられません。(群銀)安中支店の残高はコンピュータで調べれば分かるんじゃないですか」と答えた。
 そこで群銀のTMは「それでは他の金融機関も含めて総体の残高を教えて下さい」と言ったところ、THは「休み明けには回答します」と答えた。
 [注]安中市が群馬県警に提出した時系列表によると、何故か4月12日(水)または19日(水)に群銀安中市派出所のTMが公社を訪れ、公社のTKに対し「公社の融資残高を教えてほしい」と言ったが、上司のTH係長がいないので、TKは「翌日来て下さい」と答えた。翌日TH係長が「群銀は借入残高を承知しているのになぜ聴くのか」と言ったところ、群銀TMは「いろいろの調べに使いたい。できれば他行分も教えて下さい」と答えた。
 THは「他行分の明細は教えられないが、公社全体の総額と群銀のものは教えても良い」と言って、公社の借入金総額約19億円と、群銀の約10億1700万円の借人分を書面で、その日のうちに公社TKが群銀派出所に届けた。そのときは銀行から何も連絡はなかった――となっている。
 一方、公社のTH係長は、4月15日(土)か16日(日)に群銀TMが公社に来たときは不在で、翌日来たTMに会って話したという。

▼4月9日(日)
 県会議員選挙投票日。新人の岡田義弘候補(現・安中市長)が、現職の中島博範候補(前・安中市長)を破って当選した。

▼4月10日(月)
 午前中、公社係長THが群銀派出所を訪れた。THは公社から群銀宛ての平成7年3月31日現在の借入残高を記載した書面を持ってきた。
 その書面には平成7年3月31日現在の公社借入残高は、約1914百万円、うち、群銀からの借入金総額は約1017百万円とあった。
 群銀のTMは、公社への安中支店の融資額が平成7年3月31日現在で、47億6569万6000円となっていることを支店内の端末で照会して事前に知っており、公社からの回答書の「約1017百万円」とは約37億円の差があることに気付いた。
 しかしTMは市役所で回答した金額は平成6年分という解釈でいたので、その金額を気にも留めずに支店に持ち帰り、融資係のK支店長代理に参考資料ということで直接手渡した。Kも回答書を見て、これは平成6年分のことだろうと、特に調査等することもなく終わったという。

▼4月中旬
 タゴがひとりで群銀に異動の挨拶に訪れた。この時タゴは群銀のS次長に「新しい人では分からないことかあるので、市長から引き続き公社の仕事を手伝ってくれるように頼まれている」などと言った。
また同じ頃、群銀安中支店の者がタゴの安中市教育委員会係長への昇任視いとして、ワインをあげたことに対するお礼を言いにタゴ自身が支店に現れたこともあった。

▼4月11日(火)
 群銀派出所のTMが、回答のお礼にと都市計画課(=安中市土地開発公社)を訪れたが、K局長もTH係長も不在だった。

▼4月12日(水)
 公社TH係長が群銀TMに電話をかけた。TMは、先日の礼と併せて、公社の群銀からの借入残高が平成6年分かどうか尋ねたところ、公社THは、「安中支店の分も、他の金融機関を含めての残高もいずれも平成7年3月31日現在の総借入残高です」と回答した。
 群銀TMは、市役所内部の事務手続き上のことで、群銀には分からない事務手続き上の相違から、やはり平成6年分であろうと解釈した。TMは本店公務部に対して回答書をこの日付で内部メールで送付した。
 この日公社のTKとSHが、公社役員に報酬を届けた(現金らしい)。この日公社では、公社変更登記申請書を作成した。

▼4月13日(木)
TKとSHが公社変更登記申請書を法務局安中出張所に持参し、登記した。

▼4月14日(金)
 午前9時45分から11時まで、さざんかタウン下磯部抽選会を市役所第3会議室で開催した。この日法務局へ公社理事のH市民部長分の登記申請書を取りに行った。

▼4月18日(火)
 公社で下磯部区画選定、分譲契約での相談コーナー開設のための文章作成と伺いを作成した。

▼4月19日(水)
 公社のSHが、4月26日予定の下磯部の選定会の相談コーナー開催の件で、群銀、東和、信組、かんら、労金、JAに挨拶することになったが、初めてなので公社のTH係長、TK主任と三人で行った。三人は午前10時頃まで公社で書類の整理等やり、そのあと公社の乗用車で出発した。
 まず労金安中支店でTKだけが行き、SHとTH係長はクルマで持っていた。労金とは公社はほとんど取引亦なかったため、TKだけが挨拶に行った。
 次に東和銀行安中支店の応接室に三人で入り、応対に出た同店次長と名刺交換。TH係長がSHを「タゴの後任」として紹介した。持参した「さざんかタウン下磯部の分譲にともなう依頼文と、市長の債務保証の関係の書類」を渡したりして、約30分くらいいた。
 三人はそのあと群報安中支店に行った。応接室に入り、応対に出たK支店長代理、S次長と名刺交換。TH係長がSHを「タゴの後任」として紹介した。約1時間くらいで群銀を出て、丁度昼なので三人で公社に戻った。
(注:群銀のS次長は、公社の三人がタゴの転勤で挨拶に来たが、「すぐに帰ったように記憶している」「このときは挨拶程度で、とくにタゴのことについて話は出なかったと思う」と述べている。)
 昼食後、午後1時頃から再び出発。TH係長は午後3時から用事があるため、TKやSHとは別のクルマで銀行に挨拶に向かった。午後の順番は最初にJA、次が県信組で、それぞれTH係長がSHを「タゴの後任」として紹介した。
 県信のあと、THは午後3時から用事があると言って別れ、SHとTKの二人でかんら信金安中支店に挨拶に行き、一連の挨拶まわりが終了した。SHはこの他には挨拶に回ったことはないと言っている。
 この日公社では、さざんかタウン下磯部契約予定の5月19日の相談コーナーでNTTと東電にも挨拶した。
 なお4月1日付で教育委員会社会教育課に異動後、この日タゴは初めて時間休2時間をとり、午後3時早退した。

▼4月20日(木)
 公社のTKとSHが県へ出張した。

▼4月23日(日)
 安中市長選挙投票日。現職小川勝寿候補が、新人吉田洋候補を僅差でかわし再選された。

▼4月24日(月)
 午後、公社のTH係長とSHが県へ出張した。

▼4月26日(水)
 さざんかタウン下磯部区画選定会を開いた。受付は午前9時45分~10時30分だった。

▼4月全般
 タゴは4月中に、2回にわたって4つの伊万里焼の皿を購入して、計1000万円を支払ったが、支払先は不明とされている。

【ひらく会情報部・続く】

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13年前の51億円横領事件、知られざる発覚前夜(その1)

2008-08-17 18:02:00 | 安中市土地開発公社事件クロニクル
<平成7年3月の出来事>

■平成7年5月18日に安中市土地開発公社内部で密かに発覚した史上空前の巨額横領詐欺事件。安中市民がそのことを知ったのは同年6月3日朝の新聞記事でした。あれから13年が経過しようとしています。この間、当会はあらゆる手段で真相解明に向けて情報収集と分析作業を続けてきました。そして今後とも引き続き真相解明の努力を続けて行きます。そのためには、13年前にいったいなにが起きたのか。その事実を知ることから、すべては始まる、と考えています。時計の針を13年前に戻してタイムスリップ。まずは平成7年3月から。

▼2月下旬か3月初め
 群馬銀行安中支店の清水次長が、それまで噂程度の情報として承知していた「信越線の安中駅と磯部駅の中間に新しい駅を県と市の合同で建設する」ことに関して、タゴから県と合意できたことを聞いた。
 上毛新聞2月5日にこの計画が載った。この直後、Sはタゴに「新駅南地区開発のことが新聞にでましたがどうですか」と聞いた。タゴはSに「この計画の代替用地を一部取得することになった。資金を借りることになる。金額は正式に決定していなので判らない。市長選の争点になるだろうし、反対運動もあるので、この用地取得は市長の特命でやっている」と返事をした。

▼3月9日(木)か、それ以前
 3月末の融資の具体的な下話がタゴから群銀(群馬銀行)にあった。群銀はいつものように午前中来たタゴを、いつも通り応接室に通してSが応対した。このときSはタゴに年度内に残っている事業計画のことをきいた。なぜなら群銀では3月中に貸出金残高予想報告書を5日、中旬、25日の3回に分けて本部に報告する事になっており、残る平成6年度内に貸し出しがあるかどうか確認しなければならなかった。

▼3月9日(木)
 タゴが午前10時54分に正規口座から2万1400円、特別会計口座から1521万6300円を現金で引き出した。

▼3月20日(月)
 タゴが午前中に群銀安中支店を訪れた。群銀SとTが応対した。タゴは店のフロアから応接室に入り、席に着くと世間話をした。Sはタゴが前からゴルフ好きなのを知っており、過去2回ゴルフに招待したことがあった。
 そこでSが「今度26日の日曜日にゴルフに行きませんか」と誘うと、タゴは「その日はもう市長とゴルフに行く約束になっているから」と断った。群銀Sがタゴを誘ったのは融資契約をしてくれる上客だからだった。そのうちタゴが、「前に話した信越線新駅南地区の開発事業に資金を借りたい。予定金額は2億5千万円位。他の金融機関もかなり金利が下がっているので、群銀も検討して下さい」と言った。Sは「判りました。本店と協議して一両日中に回答しますから」と伝えた。
 このとき、タゴは利息計算を取りに安中支店を訪れた。これはTが作成した公社利息明細という手書きの書面の写しで、今まで群銀から公社への融資に関して、貸出日、現在残高、レート(金利)、利息額を一覧表にしたもの。この表の作成は平成6年9月の決算期にタゴから『前任者にも作ってもらったので』と依頼されていた。Tが作成後、幾日もたたないうちにタゴが来て応接室で渡した。Tが、赤丸マーク分の返済期日が3月で、一覧表のすべての金利を払ってもらうこと等をタゴに伝えた。タゴは表を受け取り、支払方法等について「後で回答します」と言って帰った。
 なお、この時タゴは特別会計口座から1380万円を引き出して持ち帰った。
 タゴは安中支店に10分くらいいた。タゴが帰った後、Sは支店長の松井に報告後、電話で本店公務部に、『公社ヘの融資金額が2億5000万円くらいで長期貸付』と伝え、なるべく金利を安くするよう依頼した。これは群銀と県内の各土地開発公社との協定金利(長期プライムレート適用、この当時約4.7%)を破ることになるので、本店としては許可したくない事であり、本店は、「金利が下がっており、協定金利で交渉してもらいたい」と回答してきた。Sは「他行の金利も下がっていることから、何とか4%で承認してもらいたい」と公務部に頼み、ようやく了解を得た。
 公務郎の了解がでた後、Sはすぐに電話でタゴに「4%でお願いします」と伝えると、タゴもこれを了解した。Sはこれで群銀での融資が確実になったものと判断し、借り入れ申し込みを待った。

▼3月22日(水)
 タゴが公社で群銀Tからもらった利息計算書の写しをゴミ箱に捨てた。

▼3月23日(木)
 公社でタゴが竹田清孝と一緒に借り入れまたは契約延長に伴う起案文を作り、決裁を受けることになった。タゴとTKは隣り合って座っており、タゴの方から「変更は俺がやらあ。今回の借り入れはTKさん頼むよ」というふうな言い方で、TKに起案分を作る内容を振り分ける指示をした。
 この時、借り入れとして事業資金調達のため新幹線新安中駅北側南側駐車場用地購入資金等の利息返済のため961万2000円、中宿水口線、観梅公園用地購入資金等の利息返済のため436万2000円、古城団地内の宅地買収資金6588万円、さざんかタウン下磯部住宅団地の植栽工事費等3281万8000円があり、今までの借り入れ分の返済期日が来ているもののうちで、支払いができずに契約の延長が必要なものとして、群銀に12件、かんら信金(現・しののめ信金)に2件があった。
群銀分は、観梅公園園路用地取得費2件9092万2000円、同委託料3件2468万円、観梅公園・都市計画道(中宿・水口線)用地費・造成費・委託料の支払利息7件3345万5000円、合計1億4905万7000円。ただし実際にタゴが契約延長したのは4件。タゴがTKと一緒に作った起案分は単なるセレモニーだった。
 かんら信金分は、平成3年9月5日借り入れの5936万1000円と、同年10月31日借り入れの102万4000円、合計6038万5000円を平成12年3月31日まで先送りするもの。

▼3月24日(金)
 午前9時5分、公社の異動内示があり、区画整理係主査のMHが幹線対策課へ、タゴが教育委員会社会教育課へ、共に係長昇格となった旨、市幹部から公社の加部局長に連絡があった。K局長はその後本人に内示を伝えた。この時、既にタゴは100%近い確率で、異動になるだろうと思っていた。タゴの内示は、すぐに市役所内の群銀安中支店の派出所のTMから、S次長に連絡された。
 公社理事長がタゴとTKの作成した起案伺いを決裁した。これを受けて、タゴが961万2000円の正規の借入申込書を作成した。しかし、K局長は、この日理事長印を押印した記憶がなかった。タゴは2億5961万2000円の不正の借入申込書も作成した。
 午後1時30分に都市計画委員会の会議が予定されていたが、中止となった。

▼3月25日(土)又は26日(日)
 群銀安中支店長のMが、タゴが係長に昇進して安中市教育委員会に異動する事になったのを知り、タゴの自宅にワインの詰め合わせか何かを持って、お祝いに行った。

▼3月27日(月)
 タゴが午後、群銀を訪れ「融資の件だが、正式に公社の決裁がおりたので、2億5961万2000円の手続きを進めて下さい」と借入申込書を差し出した。借入申込書の利率は4.0%とあった(公社控は3.9%)。これは安中支店のS次長やM支店長が本店と交渉してタゴに通知していた数字と一致している。借入申込書の各七の項目「本件借入金額は安中市の当公社あて平成6年度借り入れ分の債務保証額の範囲内であるには、平成6年9月末の融資の際、公社負債総額を支店Kがタゴにきいたところ「秘密だから」と教えてもらえなかったため、Kはそれなら「負債の総額までもが債務保証の範囲内であることを申込書に明記してもらい、この理事長決裁を受けてもらうことで再確認してもらおう」と考え、その後タゴに申し入れて実行してもらっていた。
 タゴはこの時、「前に話した新安中駅南地区の開発の件です」と言って群銀に借入申込書を渡した。この内容は1枚の申込書に2億5961万2000円と436万2000円の二つの資金融資額が記されていた。タゴが「2億5961万2000円は用地取得費で436万2000円は事務費です」とS次長に説明した。Sは、この事務費は過去の借入金の利息返済の費用を含むさまざま経費と理解していた。
 S次長は異動内示後に支店に来たタゴに「昨年は自治大学に行って勉強して早速の昇任ですね。今回は本当におめでとうございます」とタゴが市職員から選択されて平成6年10月から12月まで自治大学に行き勉強してきたことを知っていたので、そのことを踏まえて挨拶した。
 タゴはSの言葉に対し返礼を言ってから「教育委員会に異動になったが、市長から『公社の仕事をすべて知り尽くしているので、タゴ君が抜けると大変だから、当分の間兼務をなさい』と言われたので、まだしばらくはよろしく」と言った。
 タゴが差し出した借入申込書は、S次長が受け取ってKに渡され、Kが理事長印や内容を確認して手続きを進めた。タゴは申込書を提出するとすぐ群銀をでた。タゴは10分くらいしか支店にいなかった。また、Kはタゴに金銭消費貸借契約書の未記入のもの2枚を群銀の茶色の封筒に入れて渡した。
 支店のKはタゴから受け取った借入申込書をもとに本店審査部に、この融資をしてよいか否かの決裁をとるため、貸出申込書を作成した。その際、貸出申込書に記載すべき回答として、K自身すでにタゴから聞いて承知していたが、念のためS次長に『公有地取得事業』の具体的な名称を聞いてみたところ『信越線新安中駅周辺区域取得』とSが答えた。KはS次長がタゴから直接聞いた事業名称を教えてくれたと判断し、申請書にそのまま記載した。
 なお、この日、タゴは10時18分にも正規口座から5600円、1万3500円の2件払い戻していた。

▼3月28日(火)
 午前、タゴは安中支店で合計4回分の融資契約の延長依頼手続きをした。これはそれまでの群銀からの33回の借入のうち、この3月末に期限の来るものの延長契約の話をするため、タゴが安中支店を訪れたもの。タゴは群銀に「4口分は期限を変更し、他の4口分は返済する」と言ったので、群銀はタゴに変更契約書の未記入のもの4枚を渡した(29日に渡したという供述もある)。
 また、この日タゴはXからどうしても金を貸してほしいと頼まれ、公社特別会計口座から1340万円を引き下ろし、群銀駐車場で待ちかまえていたXにそのうち1000万円を渡した。
 タゴはこの日午後、時間休3時間をとり早退した。

▼3月29日(水)
 タゴが午後0時30分頃、自分の机でレターケース内の金証(金銭消費貸借契約証書)用紙に金額2億5961万2000円を記入し、理事長印を押して偽造しクリアケースに入れる。
 この日は午前10時30分から11時50分まで、市役所第一委員会室で南地区代表委員会を開いた。この委員会は、安中南地区まちづくり推進委員会第4回代表委員会のことで、公社の区画整理係が担当している。K局長は昼休みに、南地区代表委員会で支給された弁当を自席で食べた。
 安中支店融資担当のKが貸出条件変更申請書という表題の今までしていた融資の期限の延長契約をしてよいか否かを本店審査部に上げる稟議書を作成した。このため貸出申請書(稟議書)の申請日を3月29日とした。本店への申請が29日になったのは、3月31日に返済期限の到来するこれまでの融資分のうち、どれを延長して、どれを返済してもらえるかについて、タゴから申し出が29日まで遅れたため。結局S次長は、8本返済期日が到来しているもののうち、4本を返済してもらうことにした。
 つまり、この日タゴは群銀に返済期日の変更を申し出た。安中支店のS次長は、変更契約証書をタゴに渡した場面は覚えていないと後日供述した。

▼3月30日(木)
 タゴが変更契約書6枚に偽造した金証を混ぜ、秘書課係長Yから市長公印を貰った。本来の金証は封筒に入れて、公社事務局のゴミ箱に捨てた。

▼3月31日(金)
タゴが午前10時8分に群銀安中支店で正規口座から16万7400円と1万2600円を払戻した。
何かの正規な経費の払戻しらしいが、S次長はこの時タゴに面会していない。
安中支店のKは、午後3時に支店表出入口のシャッターが閉まった後、イライラしながらタゴの来店を待っていた。午後3時30分頃タゴが訪れ裏口から支店に入った。
SとKがタゴを応接室に通し、タゴが次々とバッグから取り出す書類をKが受け取った(S次長はタゴが訪れた時、何かの用で席を外し、戻ったところタゴが来ていることを伝えられて応接室にあとから行ったという供述もある)。
額面2億5961万2000円の金証、額面436万2000円の金証、4枚の変更契約証書、正規通帳1冊、特別会計口座通帳1冊、払戻請求書3枚。Kはこれらを受け取ると融資後方事務担当のAに全て渡し、これらの印鑑照合等の作業をさせた。
Kはその間、預金入金票を何枚か用意して応接室に戻り、タゴに渡して「今回はどのように振り分けますか」と、公社で2つ持っている各口座への振り分け金額を尋ねた。
タゴは特別会計口座の通帳を示し「2億5000万円をこれに」もう一方の正規通帳を示し「961万2000円、436万2000円をこれに入れて下さい」と言った。
これら手続をKが進めて、終了後は支払い済みの融資契約の証書4枚、新規の融資の計算書2枚、変更契約の計算書4枚、支払い利息分の計算書33枚位、支払い済みの融資契約の計算書4枚をタゴに渡した。この時、16時1分に436万2000円、15時59分に2億5961万2000円の貸付金の処理がされた。
 融資金は、16時10分、正規口座に961万2000円と436万2000円、16時9分に特別会計口座に2億5000万円が入金された。さらに公社に対する融資金の元金と利息返済分として16時14分に正規口座から3674万8000円、16時15分に特別会計口座から8888万7241円、16時15分に正規口座から1935万7578円の合計1億4499万2819円が払い戻され、群銀が受領した。この合計額の中には、今回の融資の1口分の利息2万8450円と478円が含まれている。この金額を除けばKが作成してタゴに渡した手書きの一覧表と一致する。
 次に返済日になっても支払いできないものの期日を延ばす変更契約の分として、8574万9000円、4億97万3000円、1967万円、1971万3000円の合計5億2610万5000円があった。元金と利息分の返済には、今回の融資金額では間に合わない分が正規口座から払い戻されていた。この日安中市の収入役から公社の正規通帳に3783万2778円に合わない分が正規口座から払い戻されていた。この日安中市の収入役から公社の正規通帳に3783万2778円が振り込まれており、タゴはこれにより預金残高が増えているのを承知でこのような払戻をした。
 こうして特別会計口座から8888万7241円が返済のために払い戻されていたが、同時にこの口座に2億5000万円が振り込まれ、タゴのものになったのであった。

【ひらく会情報部・続く】

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