<平成7年5月29日~6月9日逮捕まで>
■平成7年5月18日に安中市土地開発公社で発覚した借入残高の不一致は、史上最高額の横領着服事件の全容露見を告げる合図でした。そして6月3日の新聞報道、6月7日のタゴ逮捕に至ったわけですが、奇怪なことに市・公社もタゴも、そして群銀さえも、犯行は秘密口座を使った1990年4月16日から5年間だけのサギ行為であることを強調。それ以前の正規口座を利用した横領についてはなぜか誰も取り上げようとしませんでした。こうした疑問の数多くが未だに当事者の口から真相について語られないまま、現在に至っています。事件関係者の供述や陳述を突き合わせ、時間の流れをたどってみると、つじつまの合わない点がたくさんあることに賢明な皆さんは気付かれたと思います。今回は平成7年5月29日の不可解な1日からタゴ逮捕までを振り返ってみましょう。
▼5月29日(月)
午前9時、公社のTH、TK、TDが建設部の縦覧室にタゴを呼び出して事情聴取。
タゴの話を聞いたところ「29日にIと会えた。カネは別の口座に入っているので(ある所にストックしてあるので、とも言ったという)必ず穴埋めできる。当時安中支店の融資担当の代理をしていたIがカネを運用していた。I課長は高崎の自宅を処分し金利を作ると言っているが、差は1億円以内で、金利の不足分はオレが責任をもって支払う。TH係長やTK、TDには迷惑をかけない。Iは12時頃支店長と会うと言っていた。Iから銀行に電話を入れてもらい、支店長と相談したうえで、オレが今日の午後3時に安中支店長と会って話をつける。その結果を夕方までに報告する」などと言った。公社のTH係長は「3時に(タゴが)支店長に会う時は同席する」とタゴに言った。
午後3時に社会教育課にタゴが退席したかを確認したところ、「3時から休みをもらった」と教育課の者が言ったので、THらは市役所のすぐ前にあるタゴの家を見に行った。ちょうどその時、タゴは車で出て行った。
THらはその前に安中支店次長に「タゴが行ったら電話をくれ」と頼んでいたところ、4時20分頃、群銀Y次長から電話があり、「タゴが来ていない」とのことだった。慌ててTH係長とTKが群銀に行った。
THらが安中叉店に「Iから電話があったか」と聞いたところ、「一切ない」と群銀が答えた。支店長Mが本店審査部調査後のIに確認したところ、Iは「(タゴとは)2月の結婚式以来会っていない」と言った。
TH係長らはその後市役所に戻り、市長に報告し、銀行を市役所に呼んだ。
午後5時にタゴから公社に電話があり、「TH係長はどうした?」とタゴが聞いたので「銀行に行った」と答えたところ、タゴは「じやあいい」と切った。その間、タゴは役所や自宅にも戻ってはいなかった。
午後7時支店長Mと次長のSとYが市役所に来た。市長が指摘をし、群銀が答える形で話合いが行われた。市側・群銀側双方がテープを取りながら会談をした。再度、Iの件を話した。I本人に確認してくれと市側が要請した。
「タゴ本人を呼んでこい」ということになったが本人が所在不明だった。午後6時頃、子供だけがタゴの家にいた。「お父さんもお母さんもいない」とのことだった。
午後7時10分頃、再度本人を呼びに行ったところ、子供もいなかった。
午後11時くらいまで、公社職員は帳簿等の調査をしながら、タゴの帰りを待っていた。
午後11時頃、TH係長宅にタゴの妻から電話があり、「本人は出られない。本人は錯乱状態で初めて話を聞いた」と言ってきた。「今どこにいるんだ」とTHが聞くと「遠い所にいる」とタゴの妻が言うので「とにかく明日出て来い」とTHは言ったという。子供も一緒にいるとのことだった。午後11時30分にTHが市長に連絡した。
その後、職員全員(市か公社かは不明)に連絡し、午前0時頃集合、タゴの身内にも連絡を取り、午前2時30分まで捜索したがタゴは見つからなかった。
【注1】この問題の経緯について、タゴの妻は次のように供述している。
午後3時頃、店から目宅に帰った。20~30分後にタゴが帰ってきた。妻は「どうしたの?」と聞くと、タゴは「代休をとって帰ってきた」と言ったが、とくに変わった様子もなく、その後2人で市内に買物に行き、午後4時頃自宅に戻った。妻は車から降りたが、タゴは「出かけてくる」と言い残して、どこかへ出かけた。
午後6時頃、市役所の人が訪ねてきたが二男が対応に出るとすぐに帰った。妻は(市役所の人が)何かの用事で来てくれたのならタゴに連絡を取らなければと思い、タゴの持っている携帯に電話をかけたが通じなかった。電話番号が使われていないということだったので妻は何かの都合でタゴが(番号を)変更したのだと思った。
その筆少したってからタゴから雷話があり、「子供を頼む」と話してきた。「何かあったのか?」と妻が問うと、タゴは「じゃあ話し合おう。長野方面に行け。携帯電話を持っていけ」と言った。妻は二男を連れてタクシーで軽井沢に向かい、そこで別のタクシーで小諸方面に向かった。
途中タゴから電話が入り、小諸駅で待ち合わせをして、先に妻が待っていた。1時間以上待つとタゴが来て、妻と二男が車に乗り、小諸市内のホテルに泊まった。子供を寝かせたあと、タゴが「群銀のカネを37億使い込み、昨日自殺しようと思った」などと妻に告白した。
【注2】また、公社のK局長によると、この日の午後7時に、安中支店の支店長と両次長を市役所に呼んだとき、市側の出席者は小川市長、須藤助役、青木収入、K局長、TH係長、TH、TDの7名だった。この時M支店長らは前と同じようなことを主張していた。
【注3】タゴはこの日の出来事について次のように供述している。
タゴは29日には公社TH係長と会っていない。「29日になってTH係長から問い詰められたとか、月曜日(29日)にも出かけて行って、支店長代理のIに会って穴埋め出来ると言った」などとTH係長の調書にあるそうだが、タゴはそういう話を29日にした記憶はない。29日にはタゴは午後大事で役所に居られなかったので帰った。そのあとTH係長らには会っていない。ただ31日に事件が発覚して市長に呼ばれた云々という時には、当然会っているが。
【注4】この日、タゴは時間休4時間を取って早退したことに勤怠簿上でなっている。
▼5月30日(火)
朝、TH係長宅にタゴから電話があり、「今日は行けない。明日には帰るので、31日午後話をしたい」と言ってきた。
午後1時30分、タゴは帰宅したらしく、タゴの懇意にしている知人が本人から事情聴取していた。知人の話では、タゴは小諸に行ったという話で、自殺を図ったと言い、タゴの左手首にキズバンが貼ってあった。(自殺用の)ホースを買ったそうで、共犯者はいないらしいということだった。
タゴの妻は、この日タゴが帰ると、どうするかタゴと相談した。
【注】この日タゴは、役所では年休扱いとなっている。
▼5月31日(水)
12時30分頃、タゴから「家に居る。弁護士とアポイントがとれた」と電話でTH係長のところに連絡が入った。
午後3時30分になって、タゴが自宅にいることがわかり、午後3時すぎにTHとTKがタゴを自宅に迎えに行き、タゴを市役所の第一応接室に連れてきた。小川市長や須藤助役、青木収人役、大塚総務部長、大工原建設部長、加部局長、高橋弘安が集まってタゴ本人に事実確認した。
「確認書」を作ってタゴに住所氏名を書かせて押印をさせた。そして市長が31日付をもって懲戒免職の処分を口頭で言い渡した。この確詔書をワープロで作るあいだに、小川市長はタゴに「警察に自首するように。警察に行く前にはこちらに連絡すること」と出頭を促した。タゴは「一日考えさせてください」と言った。
午後6時頃、安中支店長Mと次長Sが市役所に来たが、この時、小川市長は公社のTH係長と共に対応した。
夜、公社監事の坂東非常勤特別職員のところに小川市長が職員を通じて、6月1日午前6時30分に市役所に第二委員会室で至急の会議を開く旨連絡が入った。
この日、タゴの妻は田中善信弁護士と穂積弁護士のところへ行った(午前中と考えられる)。
そして、夕方にもタゴと妻とタゴの弟が弁護士を訪れた。
この時、弁護士は「市長に全部報告し、その上で処分をうけてそれから自首した方がいい」と話した。タゴは弁護士に事件の内容を言うと、弁護士は「これは大変だ。市の方の市長さんに報告しろ」と話したが、後になって、この時の段階では、タゴからの弁護依頼でなく、タゴに「そうした方がいいよ」というものであったと解説している。
一方、群銀安中支店では、この日仕事が終わって帰る間際になって、支店長以下男子行員全員が集められ、支店長Mから「安中市土地開発公社のタゴが当支店から不正借入を行い、現在安中市役所で調査中なので、各自とも了解しておいて下さい」との話しがあった。
【注1】この日、市役所最後の日にタゴは年休扱いとされた。
【注2】この日、タゴは「かんら信金」を訪れ、定額預金2件それぞれ190万円と201万3638円を解約した。
タゴは、平成2年7月20日にかんら信金から800万円の証書貸付(住宅ローン)を受け同年8月2日親戚の篠崎工務店(その後廃業)に800万円を振込んだ。このローンの返済でタゴは毎月8万円ずつ支払っていた。平成7年5月23日には、58回目の内入れとして8万円をかんら信金に支払った。この時の利息は1万3854円でローン残高は336万円あった。ところがタゴはその8日後の5月31日に、残高336万円と利息3608円をかんら信金に一括支払い、完済した。かんら信金側の記録ではこの日336万円を「回収」したことになっている。この点について、かんら信金は「一切ノーコメント」としている。
▼6月1日(木)
タゴが弁護士のところを再び訪れ、弁護の依頼をした。タゴは「ぜひ自首をしたい」と弁護士に言ったところ、弁護士は「現金、骨董類は全部移動してはいけないよ」とタゴに言った。
この日、午前9時30分から公社緊急役員会を開いた。この時、参加者は、タゴの不正について金額までは聞かされなかった。
午前10時30分から市議会全員協議会で事件の報告。午後2時頃、高崎市内の善如寺弁護士の事務所へ須藤助役、大工原建設部長、加部局長、高橋弘安係長、竹田清孝の5人で今後の事件対応を相談に行った。午後5時30分頃市役所に戻った。
午後7時前にタゴの妻から高橋弘安係長に「明日の午後1時半に穂積弁護士と一緒に警察に行きます」と連絡が入ったので、高橋弘安は市長にこの旨を伝えた。
その後.市長、助役、収入役、総務部長、建設部長、秘書課長、加部局長、高橋弘安らで今後の対応について会議をし、とりあえず安中警察署長に相談しておいた方がいいだろうということになり、市長が直接安中署長に雷話で連絡した。市として事前に警察に調査依頼決定した。
午後10時40分、高橋弘安係長は小川市長から「明日警察に行って、事前に署長に話しをするので、その結果でタゴに何時に警察へ出頭したらよいのか、市の方から連絡するからということを伝えてくれ」と指示を受け、高橋弘安は一人でタゴの自宅を訪れ20分ほどタゴと妻らと話した後、市役所に戻った。
またこの日、市長から安中支店に本件について「刑事事件であることから、警察に申告する」と連絡があった。群銀でもサギの被害にあったものとして、タゴ本人の厳重処罰を求めて安中署に捜査依頼をすることになった。
▼6月2日(金)
午前、小川市長が警察へ告発の相談に行った。
一方、タゴはこの日午前中、弁護士が用事があったため、午後出頭するつもりだった。ところがこの日の朝、市長から警察に通報があり、その時「タゴさんが1時半に行くから」という通報だったことをタゴは逸早く知った。
午後1時半、タゴが安中署に出頭した。調べに対しタゴは「総額35億円ぐらい公社の特別会計口座に振込んでもらい騙し取っている。これがバレて懲戒免職になったが、いろいろ考えた末、正直に話をして処罰を受けようと思って出頭した」と述べた。
タゴは弁護士から「現金その他骨董品全部動かしてはいけない」と言われていたので、「だから警察により、この日6月2日にタゴの自宅等にあった金品はすべて押収された」と、タゴは後日隠し金などはなく、「5月8日に引出したカネも殆ど使わず、自宅の金庫に1000万円くらい、自宅にある(タゴの)財布に200~300万円くらい、合計1300万円くらい残っており、5月19日に妻に100万くれた位だ」と言っている。
▼6月3日(土)
この日の朝刊2紙(上毛新聞、朝日新聞)に初めてタゴ事件が報じられ、一般市民が事件を知った。すでに、市役所内部で事件が発覚してから、17日が経過していた。
▼6月7日(水)
タゴ逮捕。
【ひらく会情報部・この項おわり】
■平成7年5月18日に安中市土地開発公社で発覚した借入残高の不一致は、史上最高額の横領着服事件の全容露見を告げる合図でした。そして6月3日の新聞報道、6月7日のタゴ逮捕に至ったわけですが、奇怪なことに市・公社もタゴも、そして群銀さえも、犯行は秘密口座を使った1990年4月16日から5年間だけのサギ行為であることを強調。それ以前の正規口座を利用した横領についてはなぜか誰も取り上げようとしませんでした。こうした疑問の数多くが未だに当事者の口から真相について語られないまま、現在に至っています。事件関係者の供述や陳述を突き合わせ、時間の流れをたどってみると、つじつまの合わない点がたくさんあることに賢明な皆さんは気付かれたと思います。今回は平成7年5月29日の不可解な1日からタゴ逮捕までを振り返ってみましょう。
▼5月29日(月)
午前9時、公社のTH、TK、TDが建設部の縦覧室にタゴを呼び出して事情聴取。
タゴの話を聞いたところ「29日にIと会えた。カネは別の口座に入っているので(ある所にストックしてあるので、とも言ったという)必ず穴埋めできる。当時安中支店の融資担当の代理をしていたIがカネを運用していた。I課長は高崎の自宅を処分し金利を作ると言っているが、差は1億円以内で、金利の不足分はオレが責任をもって支払う。TH係長やTK、TDには迷惑をかけない。Iは12時頃支店長と会うと言っていた。Iから銀行に電話を入れてもらい、支店長と相談したうえで、オレが今日の午後3時に安中支店長と会って話をつける。その結果を夕方までに報告する」などと言った。公社のTH係長は「3時に(タゴが)支店長に会う時は同席する」とタゴに言った。
午後3時に社会教育課にタゴが退席したかを確認したところ、「3時から休みをもらった」と教育課の者が言ったので、THらは市役所のすぐ前にあるタゴの家を見に行った。ちょうどその時、タゴは車で出て行った。
THらはその前に安中支店次長に「タゴが行ったら電話をくれ」と頼んでいたところ、4時20分頃、群銀Y次長から電話があり、「タゴが来ていない」とのことだった。慌ててTH係長とTKが群銀に行った。
THらが安中叉店に「Iから電話があったか」と聞いたところ、「一切ない」と群銀が答えた。支店長Mが本店審査部調査後のIに確認したところ、Iは「(タゴとは)2月の結婚式以来会っていない」と言った。
TH係長らはその後市役所に戻り、市長に報告し、銀行を市役所に呼んだ。
午後5時にタゴから公社に電話があり、「TH係長はどうした?」とタゴが聞いたので「銀行に行った」と答えたところ、タゴは「じやあいい」と切った。その間、タゴは役所や自宅にも戻ってはいなかった。
午後7時支店長Mと次長のSとYが市役所に来た。市長が指摘をし、群銀が答える形で話合いが行われた。市側・群銀側双方がテープを取りながら会談をした。再度、Iの件を話した。I本人に確認してくれと市側が要請した。
「タゴ本人を呼んでこい」ということになったが本人が所在不明だった。午後6時頃、子供だけがタゴの家にいた。「お父さんもお母さんもいない」とのことだった。
午後7時10分頃、再度本人を呼びに行ったところ、子供もいなかった。
午後11時くらいまで、公社職員は帳簿等の調査をしながら、タゴの帰りを待っていた。
午後11時頃、TH係長宅にタゴの妻から電話があり、「本人は出られない。本人は錯乱状態で初めて話を聞いた」と言ってきた。「今どこにいるんだ」とTHが聞くと「遠い所にいる」とタゴの妻が言うので「とにかく明日出て来い」とTHは言ったという。子供も一緒にいるとのことだった。午後11時30分にTHが市長に連絡した。
その後、職員全員(市か公社かは不明)に連絡し、午前0時頃集合、タゴの身内にも連絡を取り、午前2時30分まで捜索したがタゴは見つからなかった。
【注1】この問題の経緯について、タゴの妻は次のように供述している。
午後3時頃、店から目宅に帰った。20~30分後にタゴが帰ってきた。妻は「どうしたの?」と聞くと、タゴは「代休をとって帰ってきた」と言ったが、とくに変わった様子もなく、その後2人で市内に買物に行き、午後4時頃自宅に戻った。妻は車から降りたが、タゴは「出かけてくる」と言い残して、どこかへ出かけた。
午後6時頃、市役所の人が訪ねてきたが二男が対応に出るとすぐに帰った。妻は(市役所の人が)何かの用事で来てくれたのならタゴに連絡を取らなければと思い、タゴの持っている携帯に電話をかけたが通じなかった。電話番号が使われていないということだったので妻は何かの都合でタゴが(番号を)変更したのだと思った。
その筆少したってからタゴから雷話があり、「子供を頼む」と話してきた。「何かあったのか?」と妻が問うと、タゴは「じゃあ話し合おう。長野方面に行け。携帯電話を持っていけ」と言った。妻は二男を連れてタクシーで軽井沢に向かい、そこで別のタクシーで小諸方面に向かった。
途中タゴから電話が入り、小諸駅で待ち合わせをして、先に妻が待っていた。1時間以上待つとタゴが来て、妻と二男が車に乗り、小諸市内のホテルに泊まった。子供を寝かせたあと、タゴが「群銀のカネを37億使い込み、昨日自殺しようと思った」などと妻に告白した。
【注2】また、公社のK局長によると、この日の午後7時に、安中支店の支店長と両次長を市役所に呼んだとき、市側の出席者は小川市長、須藤助役、青木収入、K局長、TH係長、TH、TDの7名だった。この時M支店長らは前と同じようなことを主張していた。
【注3】タゴはこの日の出来事について次のように供述している。
タゴは29日には公社TH係長と会っていない。「29日になってTH係長から問い詰められたとか、月曜日(29日)にも出かけて行って、支店長代理のIに会って穴埋め出来ると言った」などとTH係長の調書にあるそうだが、タゴはそういう話を29日にした記憶はない。29日にはタゴは午後大事で役所に居られなかったので帰った。そのあとTH係長らには会っていない。ただ31日に事件が発覚して市長に呼ばれた云々という時には、当然会っているが。
【注4】この日、タゴは時間休4時間を取って早退したことに勤怠簿上でなっている。
▼5月30日(火)
朝、TH係長宅にタゴから電話があり、「今日は行けない。明日には帰るので、31日午後話をしたい」と言ってきた。
午後1時30分、タゴは帰宅したらしく、タゴの懇意にしている知人が本人から事情聴取していた。知人の話では、タゴは小諸に行ったという話で、自殺を図ったと言い、タゴの左手首にキズバンが貼ってあった。(自殺用の)ホースを買ったそうで、共犯者はいないらしいということだった。
タゴの妻は、この日タゴが帰ると、どうするかタゴと相談した。
【注】この日タゴは、役所では年休扱いとなっている。
▼5月31日(水)
12時30分頃、タゴから「家に居る。弁護士とアポイントがとれた」と電話でTH係長のところに連絡が入った。
午後3時30分になって、タゴが自宅にいることがわかり、午後3時すぎにTHとTKがタゴを自宅に迎えに行き、タゴを市役所の第一応接室に連れてきた。小川市長や須藤助役、青木収人役、大塚総務部長、大工原建設部長、加部局長、高橋弘安が集まってタゴ本人に事実確認した。
「確認書」を作ってタゴに住所氏名を書かせて押印をさせた。そして市長が31日付をもって懲戒免職の処分を口頭で言い渡した。この確詔書をワープロで作るあいだに、小川市長はタゴに「警察に自首するように。警察に行く前にはこちらに連絡すること」と出頭を促した。タゴは「一日考えさせてください」と言った。
午後6時頃、安中支店長Mと次長Sが市役所に来たが、この時、小川市長は公社のTH係長と共に対応した。
夜、公社監事の坂東非常勤特別職員のところに小川市長が職員を通じて、6月1日午前6時30分に市役所に第二委員会室で至急の会議を開く旨連絡が入った。
この日、タゴの妻は田中善信弁護士と穂積弁護士のところへ行った(午前中と考えられる)。
そして、夕方にもタゴと妻とタゴの弟が弁護士を訪れた。
この時、弁護士は「市長に全部報告し、その上で処分をうけてそれから自首した方がいい」と話した。タゴは弁護士に事件の内容を言うと、弁護士は「これは大変だ。市の方の市長さんに報告しろ」と話したが、後になって、この時の段階では、タゴからの弁護依頼でなく、タゴに「そうした方がいいよ」というものであったと解説している。
一方、群銀安中支店では、この日仕事が終わって帰る間際になって、支店長以下男子行員全員が集められ、支店長Mから「安中市土地開発公社のタゴが当支店から不正借入を行い、現在安中市役所で調査中なので、各自とも了解しておいて下さい」との話しがあった。
【注1】この日、市役所最後の日にタゴは年休扱いとされた。
【注2】この日、タゴは「かんら信金」を訪れ、定額預金2件それぞれ190万円と201万3638円を解約した。
タゴは、平成2年7月20日にかんら信金から800万円の証書貸付(住宅ローン)を受け同年8月2日親戚の篠崎工務店(その後廃業)に800万円を振込んだ。このローンの返済でタゴは毎月8万円ずつ支払っていた。平成7年5月23日には、58回目の内入れとして8万円をかんら信金に支払った。この時の利息は1万3854円でローン残高は336万円あった。ところがタゴはその8日後の5月31日に、残高336万円と利息3608円をかんら信金に一括支払い、完済した。かんら信金側の記録ではこの日336万円を「回収」したことになっている。この点について、かんら信金は「一切ノーコメント」としている。
▼6月1日(木)
タゴが弁護士のところを再び訪れ、弁護の依頼をした。タゴは「ぜひ自首をしたい」と弁護士に言ったところ、弁護士は「現金、骨董類は全部移動してはいけないよ」とタゴに言った。
この日、午前9時30分から公社緊急役員会を開いた。この時、参加者は、タゴの不正について金額までは聞かされなかった。
午前10時30分から市議会全員協議会で事件の報告。午後2時頃、高崎市内の善如寺弁護士の事務所へ須藤助役、大工原建設部長、加部局長、高橋弘安係長、竹田清孝の5人で今後の事件対応を相談に行った。午後5時30分頃市役所に戻った。
午後7時前にタゴの妻から高橋弘安係長に「明日の午後1時半に穂積弁護士と一緒に警察に行きます」と連絡が入ったので、高橋弘安は市長にこの旨を伝えた。
その後.市長、助役、収入役、総務部長、建設部長、秘書課長、加部局長、高橋弘安らで今後の対応について会議をし、とりあえず安中警察署長に相談しておいた方がいいだろうということになり、市長が直接安中署長に雷話で連絡した。市として事前に警察に調査依頼決定した。
午後10時40分、高橋弘安係長は小川市長から「明日警察に行って、事前に署長に話しをするので、その結果でタゴに何時に警察へ出頭したらよいのか、市の方から連絡するからということを伝えてくれ」と指示を受け、高橋弘安は一人でタゴの自宅を訪れ20分ほどタゴと妻らと話した後、市役所に戻った。
またこの日、市長から安中支店に本件について「刑事事件であることから、警察に申告する」と連絡があった。群銀でもサギの被害にあったものとして、タゴ本人の厳重処罰を求めて安中署に捜査依頼をすることになった。
▼6月2日(金)
午前、小川市長が警察へ告発の相談に行った。
一方、タゴはこの日午前中、弁護士が用事があったため、午後出頭するつもりだった。ところがこの日の朝、市長から警察に通報があり、その時「タゴさんが1時半に行くから」という通報だったことをタゴは逸早く知った。
午後1時半、タゴが安中署に出頭した。調べに対しタゴは「総額35億円ぐらい公社の特別会計口座に振込んでもらい騙し取っている。これがバレて懲戒免職になったが、いろいろ考えた末、正直に話をして処罰を受けようと思って出頭した」と述べた。
タゴは弁護士から「現金その他骨董品全部動かしてはいけない」と言われていたので、「だから警察により、この日6月2日にタゴの自宅等にあった金品はすべて押収された」と、タゴは後日隠し金などはなく、「5月8日に引出したカネも殆ど使わず、自宅の金庫に1000万円くらい、自宅にある(タゴの)財布に200~300万円くらい、合計1300万円くらい残っており、5月19日に妻に100万くれた位だ」と言っている。
▼6月3日(土)
この日の朝刊2紙(上毛新聞、朝日新聞)に初めてタゴ事件が報じられ、一般市民が事件を知った。すでに、市役所内部で事件が発覚してから、17日が経過していた。
▼6月7日(水)
タゴ逮捕。
【ひらく会情報部・この項おわり】