市政をひらく安中市民の会・市民オンブズマン群馬

1995年に群馬県安中市で起きた51億円詐欺横領事件に敢然と取組む市民団体と保守王国群馬県のオンブズマン組織の活動記録

多胡運輸タンクローリー炎上現場から安中市51億円事件を考える

2008-08-09 12:37:00 | 首都高炎上とタゴ運輸
■安中市土地開発公社51億円事件では、いまだに警察発表でも14億円あまり、当会の試算では20億円前後のカネが使途不明で闇に葬られたままです。地方自治体を舞台にした横領では史上最高額の事件の単独実行犯とされた当時安中市都市計画課兼務で同公社職員タゴ邦夫の実弟が、当時小さな運輸会社を経営していました。その会社、多胡運輸が引き起こした、我が国首都圏の経済や首都圏民の生活に甚大な損害を与えているタンクローリー炎上事件では、マスコミが会社名を報じようとせず、報じても「高崎に本社のある運輸会社」程度の扱いであることに違和感を抱いている人は当会だけではないと思います。

この事故は8月3日(日)早朝に発生しましたが、翌月曜日午後2時に国交省の実務トップの春田事務次官にマスコミ幹事社がインタビューをしています。内閣改造で谷垣新大臣の着任についての感想に続いて、週末に発生した東京ビッグサイトのエスカレーター事故と首都高でのタンクローリーの横転事故について見解を聞かれた次官は、タンクローリーの事故について次のように答えました。
「これも昨日3日の午前5時52分頃、首都高速道路の5号線の下りの所でタンクローリーが横転しまして側壁に衝突をして炎上したということです。衝突をして炎上した車両は多胡運輸という群馬県の高崎の方にある運送会社の車両でした。運転者は車外に避難したということではありますが、腰椎を骨折する重傷を負っているということです。事故により火災が発生をしまして首都高の5号線の下りの当該熊野町のところですけれども、ちょうど1階、2階といわゆる一つの所に上下に重なった形で構造物がある所でして、下り線ですので2階建ての下層部の方で実は横転をし、火災が発生しました。この下層部の方は遮音壁が損傷を受け、舗装路面の損傷も生じています。これは火災の関係と、直接ぶつかった関係と両方あると思います。その上が5号線の上りです。ここは下から炎が巻き上がった状況で、中央環状線との合流部の前後の橋梁桁の部分的な熱変形が生じているということで、それに伴い、路面が沈下し、最大60センチメートルから70センチメートル程度の路面沈下が見られるということです。それから、2階建ての上層部の橋脚の上層梁の部分が、火災によって被りコンクリートの剥落が生じ損傷が見られるとともに、遮音壁についても損傷が見られます。それから、騒音を吸収するために橋梁の下の面に設置をしている裏面吸音板が損傷を受けています。以上が道路の関係の被害ですが、合わせて近隣のマンションの外壁に損傷が生じたという状況です。現時点では復旧の見通しはまだ立っていません。本日の午前10時から、消防・警察の現場検証が入り、その後、首都高速道路会社が被災の構造物の詳細な調査を実施し、復旧計画を立案し、復旧作業に入ると聞いています。まだ、事故原因等の詳細は、そういった状況でもありまして明らかになっていません。今後の捜査の推移の中で、事故原因についても明らかになることだと考えています」
この時点ですでに国交省はマスコミに、事故を起こした会社名が「多胡運輸」であることを公表しています。ところが、マスコミは多胡運輸という名前をなかなか報じようとしていません。

■ところで、次官の発表によると、タンクローリーが横転して側壁に衝突して炎上した結果、「上下に重なった形の構造物の下層部の方は遮音壁が損傷を受け、舗装路面の損傷も生じており、火災と衝突の両方が原因。その上層部の6号線上りの部分は、下から炎が巻き上がった状況で、中央環状線との合流部の前後の橋梁桁の部分的な熱変形が生じている。それに伴い、路面が沈下し、最大60センチメートルから70センチメートル程度の路面沈下が見られる。それから、2階建ての上層部の橋脚の上層梁の部分が、火災によって被りコンクリートの剥落が生じ損傷が見られるとともに、遮音壁についても損傷が見られる。それから、騒音を吸収するために橋梁の下の面に設置をしている裏面吸音板が損傷を受けている。あわせて近隣のマンションの外壁に損傷が生じた」ということです。そこで当会では、8月7日(木)午後6時半頃、現場を訪れて事故の様子を確認しました。

池袋駅から東武東上線にのり3つ目の大山駅で下車し、地下通路をくぐり抜けて東の方向に10分ほど歩くと、山手通りとの立体交差があります。山手通りの上には二層になった首都高がそびえていますが、この辺には異常が見当たりません。熊野町はそこから南方向のため、左の坂道を上って山手通りにあがり、歩道を南方向に10分ほど歩くと黒焦げになった橋脚が見えました。ニュースで見たように、直ぐ脇のマンションがありました。歩道脇にオレンジ色のコーンが並べてあり、ガードマンが立っていました。マンションを見上げると、道路に面した6階から10階の外壁の色が変わっていました。熱で劣化した外壁の一部が歩道に落ちて歩行者や自転車に当らないように、注意していることが分かりました。


■暗くなってきたので明瞭な写真ではありませんが、1層目の首都高5号線下り車線側には橋脚3本の間にわたってネットがかけられており、内部が観察できません。しかし、火災の凄さを物語るかのように、中央の橋脚の上部には、炎が巻き上がった箇所が黒焦げになっており、コンクリートが剥がれ落ちて鉄筋のようなものが浮いて見えます。また、1層目(下り車線)の道路を支える桁の外側もコンクリートが剥がれ、オレンジ色の塗装がむき出しになっている箇所があります。丁度タンクローリーが横転して火災を起こした路面の下部に取り付けられている吸音版も横2列ほど全部剥がれ落ちていました。上部の2層目(上り車線)の照明灯は消えており、ここも損傷を受けているようです。


マンションは「プリオール熊野町」という10階建てのマンションですが、ちょうど付近で事故現場を見上げていた老夫婦に声をかけると「このマンションの裏に住んでいるが、最初はマンションの火事だとおもった」ということです。「物凄い煙と炎と、駆けつけた何十台もの消防車で、騒然とした状況だった」そうで、「いったいどうやって復旧するのだろうか。事故を起こした会社の責任はどうなるのか」と前代未聞の大事故にため息をついていました。

■現場を確認してから、そのまま少し南にいくとまもなく、国道254号線の川越街道との交差点に出ました。ここを左折して東方向に川越街道沿いに歩くと、下り方向は大渋滞を起こしています。5号線の上り口の案内表示はいずれも「閉鎖中」とあり、2層目の照明灯は点灯していましたが、車輌は一台も通っておらず、全部地上を走らざるを得ないため、大渋滞を引き起こしていることが分かります。川越街道をそのまま進むとまもなく、首都高の2層目と1層目が一体となりました。多胡運輸のタンクローリーは都内の出光興産の給油ステーションでガソリン14キロリットル、軽油6キロリットルを満載し、東池袋方面から埼玉方面に向かって、首都高5号線の下り線を走行し、山手通りの手前で、首都高上り線の下に潜り込むように右に下りながらカーブしている箇所で、スピードを出しすぎていたためか、曲がりきれずに側壁に衝突し、丁度カーブが終わったあたりで横転して、漏れ出したガソリンや軽油に引火して、大火災を発生したものです。


事故発生後、連日こうした大渋滞が発生し続けており、首都圏の社会経済に及ぼす損害は計り知れませんが、いまだに多胡運輸や出光興産の記者会見はなく、マスコミも事故を報じようとせず、8日からはじまった北京五輪一色で、多胡運輸が起こした事故に起因する大渋滞については、もはや関心がないようです。

8月8日に、首都高速道路会社が、片側通行が可能かどうか25トン車を使ってテストをしたようですが、鋼鉄は熱影響で極端に強度が低下するため、一見頑丈そうでも、機械的強度がどの程度劣化しているのかは、実際に、熱影響を受けた部分を取り出して、機械試験を行なわない限りわかりません。首都高の閉鎖により1日当たり億単位の損害が出ていると思われるため、復旧対策を早急に講ずる必要がありますが、安全性の確認には充分時間をかけなければなりません。

■事故を起こした多胡運輸の社長の実兄は、安中市職員として安中市土地開発公社を舞台に15年間も安中市の金庫番として長期配置され、51億円あまりの公金を、親族、同僚、上司、出入り業者、政治家、暴力団らにばら撒き続けた張本人です。自らも家族とともに豪遊したにもかかわらず、実兄が14年の懲役刑で千葉刑務所に服役しただけで(それも5年ほどで仮釈放)、その他の関係者は誰も責任をとっておりません。群馬銀行が安中市を相手取っておこした貸金返還請求訴訟で103年間にわたり、毎年2千万円ずつ返済するという常識を超えた和解が成立し、公金で知りぬぐいさせられている安中市民が、土地開発公社の役員や上司を相手取り、損害賠償請求の訴訟を起こしましたが、土地開発公社の損害であっても、安中市役所には損害がないとする安中市の主張を裁判所が認めて、無責任行政を追認したのですから、この事件の闇がどれほど深いのかが、容易に想像できます。

このため当会では、今回の多胡運輸が起こした大事故について強い関心を持っています。大事故発生から現在に至る推移を慎重に監視していますが、案の定というか、不可思議なことに、国や東京都、群馬県など行政の対応は、事故の発生責任を追及するどころか、大渋滞による損失さえも取りあげようとしません。そして一向に記者会見を開こうとしない多胡運輸社長で元職員の実弟は、安中公社51億円事件の真相を全く語ろうとしない政治家や役所OBらの姿勢を彷彿とさせます。仕事を多胡運輸に与えていた発注先の会社や、運んでいた石油元売の出光興産などへのマスコミの取材攻勢も、いまのところ全くなされた形跡がありません。北京五輪が始まり、このままウヤムヤにされそうです。

■当会は、これまで13年間、安中市で起きた世にも不思議な巨額横領事件の真相解明を追及してきており、横領事件の主犯格だった元職員の親族への金の流れを追及し続けた過程で、今回奇しくも発生した多胡運輸による首都高大事故の真相究明と責任の所在、行政・マスコミによる事故対処の軽重の度合いについても、重大な関心を持って取り組んでまいります。

【ひらく会事務局・多胡運輸首都高炎上事故特別調査班】

コメント (2)
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