まずはオスカー獲得、おめでとうございます。やはり、「いい作品だったなぁ」と思っていただけに、うれしかったです。
私自身はイギリス大好きだけれど、こういう国王がいらっしゃったとは知らなかったし、またそこに「王冠を捨てた恋」が絡むとは全然知りませんでした。反省です・・・。
明るく、社交的な兄の陰で、おとなしい弟は・・・と来ると、(男女の差はあれ)「ブーリン家の姉妹」を連想しますが、あの話の舞台もイギリスでしたねぇ。
社交的な兄にガイ・ピアースはピッタリ。うまく配役したものです。そして、彼の心を奪ってゆくアメリカ人の既婚女性、シンプソン夫人が、まぁ~なんとも憎たらしく描かれていましたね。何と言ってもイギリス映画ですから、良くは書けないのでしょうね。同じ話をマドンナが映画化すると聞いているのですが、果たしてどんな感じに描かれるのか、いまから楽しみです。
さて、件の主人公は家族には「バーティ」と呼ばれています。生来の吃音を治すため、ありとあらゆる先生と方法を試しますが、一向によくなりません。いくら次男坊でも皇族。大勢の前で挨拶のひとつもしなくてはならないというのに。
ヘレナ・ボナム・カーター演ずる妻は、優秀だというクチコミを信じて、医学博士でも学者でもない、言語矯正の専門家ライオネル(ジェフリー・ラッシュ)を訪ねます。
そして、皇族だろうと王だろうと、全く対等に接することを条件に、彼は治療をひきうけるのです。その治療の過程が丁寧に描かれます。映画はヒトラー率いるドイツに宣戦布告する、そしてその意義を国民に訴えるスピーチが成功するところで終わります。しかし、このライオネルは死ぬまで王に仕えたのだそうです。
献身的な妻にすぐれた先生、そしてがんばる王。これがアカデミー好みでなくてなんだというのでしょう!超正統派の名作ですね。
しかし、それにしても、バーティが幼い頃に受けた仕打ちにショックを受けてしまいました。左利きを右に矯正されたり、O脚(X脚?)を矯正されたり、というのは、まぁ一般でもあるかとも思いますが、乳母が兄を気に入っていて、弟を虐待した、というのはなんなのでしょう。
そんな幼い子を裏でこっそりつねって、泣いたら罰として食事を抜く・・・そんな虐待に両親が気づくまで3年かかったと。そして、そのせいで今でも胃腸が弱いと・・・。
皇室の乳母ともなれば、立派な家柄から雇われているはず。ましてや、相手は王の子。仕事であるはずの乳母が、自分勝手な理由で虐待など許されるはずはない。もちろん、自分の子でも虐待は許されないが、こんな思い上がりはもってのほか。あんまりだ。
悲しくて涙が出そうだった。どんな理由であれ、子供(一つの命)は祝福されて生まれてくるはず。「生まれつきの吃音はない」と言ったライオネルの言葉が心に沁み入ります。
そして病気で生まれてきた末弟は、隠されたまま13歳で亡くなったとも。皇室も・・・大変なところなのですねぇ・・・、生きるということは、本当に試練です。
そんなこんなで、見ているこちらは感情をつい高ぶらせながら、王に同調してゆくわけです。我知らず、この次男坊の王を応援しながら。
王の幸せだったところは、すばらしい妻がいたこと(3度もプロボーズしてよかったね!)、いい先生に巡り合えたこと、そして素晴らしい娘が二人もいたこと。
見応えのある作品でした。
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