かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

◇ JSA

2008-04-15 17:20:27 | 映画:アジア映画
 パク・チャヌク監督 ソン・ガンホ イ・ビョンホン イ・ヨンエ 2000年韓国

 JSAとは、朝鮮半島を北と南に分断する38度線のあたりの共同警備区域(Joint Security Area )をいう。この軍事国境線には、かの有名な板門店があり、このあたりは緊張感が溢れている。
 朝鮮半島は、第2次世界大戦後の1950年の朝鮮戦争勃発により、北と南に分かれて争われ、1953年北緯38度線を持って境界線となった。北はソ連・中国の、南はアメリカのバックアップのもと、軍事的睨み合いを続けてきた。
 その後東西ドイツは一体化し、ソビエト連邦は崩壊、中国は経済的資本化を進めているが、朝鮮半島はずっと南北に分かれたまま緊張関係を残して今日に来ている。

 1999年、11発の発砲が起こり、2人の北朝鮮の兵士が射殺される事件が起こった。現場にいた北朝鮮兵士(ソン・ガンホ)と韓国兵士(イ・ビョンホン)が、事情徴集を受ける。この事件を円満に解決するため、中立監査委員会より女性の責任捜査官(イ・ヨンエ)が派遣される。
 供述は、お互い喰い違っている。そして、死体に撃ち込まれた銃弾からも不審な点が多い。
 映画は、その発砲事件が起きた騒乱になる日までの、北と南の兵士を映し出す。兵士たちに何が起きていたのか。
 実は、一触即発の境界線の中の、暗闇の奥で、北と南の兵士の間に交流が秘やかに行われていた。それも、友情にまで昇華する交流が。
 映画は、それでも重苦しい雰囲気を保って進んでいく。頻繁に映し出される兵士のタバコに火をつけるライターの明かりが、2国の間にたちこめる暗雲の空気の中の一筋の明かりを象徴しているかのようである。
 映画は、現在と過去が錯綜して分かりづらいが、迫力ある映像で、最後まで引きつけていく。
 そして、最後は意外な結末が待っている。その静止した画像が余韻を残す。

 人は、国のために命をかけるのであろうか? 
 それとも、友情のために?
 いや、自分の真実を貫くために?
 人が、命をかけられるのは、何なのだろう。

 韓国映画は、この映画によって奥行きが深くなったと言っていい。その後、興味深い、素晴らしい映画やドラマを作り続けている。
 北朝鮮の兵士を演じた兄貴格のソン・ガンホがいい演技をしている。南の若い兵士イ・ビョンホンはこの映画のあと韓国を代表する人気俳優へと上りつめていった。
 中立監査委員の責任捜査官のイ・ヨンエが、最初はあの「チャングムの誓い」の彼女とは分からなかった。清楚で凛々しく美しい。
コメント
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