このところ、金木犀が満開だ。
窓を開けると、かすかにあの匂いが流れてくる。庭に1本植えてあるのだ。
今週、枝々に白い豆粒のような蕾が付きだしたなと思ったら次の日は金色の小さな花になっていた。
不思議であるが、金木犀は一斉に咲く。
わが家の庭に咲いたと思ったら、外を歩くと、いたるところの金木犀も咲いている。匂いがそれを知らせてくれる。
普通、花の咲くのは、同種の花でも木によって咲く時期は少しずれるものだが、金木犀は申し合わせたように同時に咲き、一斉に匂いを放つ。どうしてだろう。
同じ地域だけだろうか? 九州も東北も一斉に咲いているのだろうか?
九州の実家の庭にも1本あるので、母に電話で訊いたら、今年は咲いていないと言う。剪定で枝を切りすぎたのだ。
金木犀は中国原産の雌雄異株で、日本にあるのは雄株だけだそうだ。だから、実をつけない。
一斉に花をつけるのは、このことに関係があるのだろうか? どうせ実にならない雄だけだからという。
しかし、もうすぐ花も散り、この季節を過ぎると、また何の変哲もない常緑樹に戻る。
香りが、何かを呼び戻し、事件の解決の手がかりになるというミステリーはよくある。
「時をかける少女」(筒井康隆原作)では、理科室で嗅いだラベンダーの匂いで少女は気を失う。そのことを契機に、タイムスリップを行うようになる。
ある香り、ある匂いは、それに纏わるある記憶を呼び起こすことがある。一瞬にして過去の情景が甦ることがある。まるで、パブロフの犬のように。
僕の場合、金木犀の花の匂いは、高校時代へ戻してくれる。
高校の校庭に大きな金木犀があり、その横をセーラー服の女学生が歩いていたのだった。
男子生徒と女子生徒がにこやかに会話を交わし、何事かが起きるというのは、小説や映画の中の出来事だった。ただ、例外の生徒はどこにでもいた。
僕も含めた多くの男子は、遠くから女子のスカートをなびかせながら走り去る姿を見ているのみであった。
窓を開けると、かすかにあの匂いが流れてくる。庭に1本植えてあるのだ。
今週、枝々に白い豆粒のような蕾が付きだしたなと思ったら次の日は金色の小さな花になっていた。
不思議であるが、金木犀は一斉に咲く。
わが家の庭に咲いたと思ったら、外を歩くと、いたるところの金木犀も咲いている。匂いがそれを知らせてくれる。
普通、花の咲くのは、同種の花でも木によって咲く時期は少しずれるものだが、金木犀は申し合わせたように同時に咲き、一斉に匂いを放つ。どうしてだろう。
同じ地域だけだろうか? 九州も東北も一斉に咲いているのだろうか?
九州の実家の庭にも1本あるので、母に電話で訊いたら、今年は咲いていないと言う。剪定で枝を切りすぎたのだ。
金木犀は中国原産の雌雄異株で、日本にあるのは雄株だけだそうだ。だから、実をつけない。
一斉に花をつけるのは、このことに関係があるのだろうか? どうせ実にならない雄だけだからという。
しかし、もうすぐ花も散り、この季節を過ぎると、また何の変哲もない常緑樹に戻る。
香りが、何かを呼び戻し、事件の解決の手がかりになるというミステリーはよくある。
「時をかける少女」(筒井康隆原作)では、理科室で嗅いだラベンダーの匂いで少女は気を失う。そのことを契機に、タイムスリップを行うようになる。
ある香り、ある匂いは、それに纏わるある記憶を呼び起こすことがある。一瞬にして過去の情景が甦ることがある。まるで、パブロフの犬のように。
僕の場合、金木犀の花の匂いは、高校時代へ戻してくれる。
高校の校庭に大きな金木犀があり、その横をセーラー服の女学生が歩いていたのだった。
男子生徒と女子生徒がにこやかに会話を交わし、何事かが起きるというのは、小説や映画の中の出来事だった。ただ、例外の生徒はどこにでもいた。
僕も含めた多くの男子は、遠くから女子のスカートをなびかせながら走り去る姿を見ているのみであった。