地下鉄乃木坂の6番出口を出て、道なりに通路を歩くと、そこは国立新美術館の入口になっている。この地下鉄の出口は、新しくできた美術館のための出口のようなものだ。
そこで入場券を買って中に入ると、東京フォーラムのような今風の内装だ。設計者は安藤忠雄だ。ガラス張りのカーブした壁面をゆるやかに曲がりながら、入口にたどり着く。
「異邦人たちのパリ展」は、20世紀にパリで花開いた芸術家たちの作品を集めたもの。それも、海外からパリに集まった異邦人(エトランゼ)たちの作品(パリのポンピドー・センター所蔵作品)を中心としたものだ。
スペインからやって来たピカソやイタリアから来たモディリアーニ、さらにロシアからシャガール、ポーランドからはキスリング、はたまた日本からは藤田嗣治などの画家たちがしのぎを削った。画家だけではない。スイスから来た彫刻家のジャコメッテイや、アメリカ人のカメラマンのマン・レイなど多彩を極めた。
まさに、芸術の都パリの一端が集約されている。ベル・エポック(良き時代)のパリだ。
国立新美術館を出て、新しくできた六本木の東京ミッドタウンの方に歩いてみる。元防衛庁のあったところだが、まったく風景が一変していた。
新宿西口の新都心と銘打った急速な変わり具合を見てきたが、都市とはこんなに急に変わり得るものなのだ。
中に入ったら、まずブランド店がすましこんで並んでいる。館内は、それに相応しい豪華な雰囲気が充ち満ちている。しかし、週末ということもあって、僕を含めて物見遊山の人が多いようだ。
それにしても、中に入っても目につくのは、案内係の多さだ。「東京ミッドタウン」と書いた看板を持った人間が何人も外に立っているばかりではない。中に置いてある館内案内のチラシを見ていたら、ガイド嬢がすっと近づいてきて、「どちらをお探しですか」と訊いてきた。探してなんかいないが、「バッグを探しているのですが、ランセル(パリが本店のバッグ専門店)はありますか」と訊いてやった。「その店はありませんが、バッグは左手の店に置いてあります」とその店の名前を言って去っていった。
先にオープンして話題をさらった六本木ヒルズを意識しているのは間違いない。ここには、サントリー美術館も移転してきた。
東京ミッドタウンを出て六本木の交差点の方に歩いていくと、交差点周辺にも「ミッドタウン」の看板を持った案内人が何人も立っているし、地下鉄内にも案内人がいる。
東京ミッドタウンから、次は六本木ヒルズへ。もうすっかり日も暮れている。最初、ここへ来た時はまるで迷子のように方向感覚が分からなくなった。
ここ、六本木ヒルズ構内には海外の街の交差点や空港にあるような案内表示木が立っている。建物の向こうにライトアップした東京タワーが輝いていて、その時だけほっとした。
国立新美術館から東京ミッドタウン、六本木ヒルズと歩いてみて、まるで異邦人になったような気がした。
昼間の六本木は何の変哲もない、凡庸で面白みのない街だが、夜には表情を変えた。
その印象を今、この街は変えようとしている。いや、変えてしまった。昼間もショッピングや美術館巡りに散策する、健全な顔を持った街になろうとしているようだ
六本木で遊び回っていたのは30代の時だったから、もう随分前のことだ。その頃、男性雑誌の編集をしていて、音楽欄も担当していたので、音楽関係者とよく遊び回った。
ただ、この3つの新六本木タウンのトライアングルの中心にある六本木交差点付近の風景は変わっていないので安心した。それでも、周辺を歩いてみると店はかなり様変わりしている。
外タレを招いて夜の招待場となったディスコもとおの昔になくなったし、よく音楽関係の友人と待ち合わせに使った六本木交差点近くの「パブ・カーディナル」も今は別の店になっている。女性とデイト・スポットに使ったギリシャ料理店の「ダブルアックス」はまだあるようだ。
夜の六本木は、今も昔も外国人と多くすれ違う。もうすっかり顔を変えた六本木では、僕もすっかり心は異邦人である。
そこで入場券を買って中に入ると、東京フォーラムのような今風の内装だ。設計者は安藤忠雄だ。ガラス張りのカーブした壁面をゆるやかに曲がりながら、入口にたどり着く。
「異邦人たちのパリ展」は、20世紀にパリで花開いた芸術家たちの作品を集めたもの。それも、海外からパリに集まった異邦人(エトランゼ)たちの作品(パリのポンピドー・センター所蔵作品)を中心としたものだ。
スペインからやって来たピカソやイタリアから来たモディリアーニ、さらにロシアからシャガール、ポーランドからはキスリング、はたまた日本からは藤田嗣治などの画家たちがしのぎを削った。画家だけではない。スイスから来た彫刻家のジャコメッテイや、アメリカ人のカメラマンのマン・レイなど多彩を極めた。
まさに、芸術の都パリの一端が集約されている。ベル・エポック(良き時代)のパリだ。
国立新美術館を出て、新しくできた六本木の東京ミッドタウンの方に歩いてみる。元防衛庁のあったところだが、まったく風景が一変していた。
新宿西口の新都心と銘打った急速な変わり具合を見てきたが、都市とはこんなに急に変わり得るものなのだ。
中に入ったら、まずブランド店がすましこんで並んでいる。館内は、それに相応しい豪華な雰囲気が充ち満ちている。しかし、週末ということもあって、僕を含めて物見遊山の人が多いようだ。
それにしても、中に入っても目につくのは、案内係の多さだ。「東京ミッドタウン」と書いた看板を持った人間が何人も外に立っているばかりではない。中に置いてある館内案内のチラシを見ていたら、ガイド嬢がすっと近づいてきて、「どちらをお探しですか」と訊いてきた。探してなんかいないが、「バッグを探しているのですが、ランセル(パリが本店のバッグ専門店)はありますか」と訊いてやった。「その店はありませんが、バッグは左手の店に置いてあります」とその店の名前を言って去っていった。
先にオープンして話題をさらった六本木ヒルズを意識しているのは間違いない。ここには、サントリー美術館も移転してきた。
東京ミッドタウンを出て六本木の交差点の方に歩いていくと、交差点周辺にも「ミッドタウン」の看板を持った案内人が何人も立っているし、地下鉄内にも案内人がいる。
東京ミッドタウンから、次は六本木ヒルズへ。もうすっかり日も暮れている。最初、ここへ来た時はまるで迷子のように方向感覚が分からなくなった。
ここ、六本木ヒルズ構内には海外の街の交差点や空港にあるような案内表示木が立っている。建物の向こうにライトアップした東京タワーが輝いていて、その時だけほっとした。
国立新美術館から東京ミッドタウン、六本木ヒルズと歩いてみて、まるで異邦人になったような気がした。
昼間の六本木は何の変哲もない、凡庸で面白みのない街だが、夜には表情を変えた。
その印象を今、この街は変えようとしている。いや、変えてしまった。昼間もショッピングや美術館巡りに散策する、健全な顔を持った街になろうとしているようだ
六本木で遊び回っていたのは30代の時だったから、もう随分前のことだ。その頃、男性雑誌の編集をしていて、音楽欄も担当していたので、音楽関係者とよく遊び回った。
ただ、この3つの新六本木タウンのトライアングルの中心にある六本木交差点付近の風景は変わっていないので安心した。それでも、周辺を歩いてみると店はかなり様変わりしている。
外タレを招いて夜の招待場となったディスコもとおの昔になくなったし、よく音楽関係の友人と待ち合わせに使った六本木交差点近くの「パブ・カーディナル」も今は別の店になっている。女性とデイト・スポットに使ったギリシャ料理店の「ダブルアックス」はまだあるようだ。
夜の六本木は、今も昔も外国人と多くすれ違う。もうすっかり顔を変えた六本木では、僕もすっかり心は異邦人である。