かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

列車で、九州へ

2007-01-01 19:35:06 | ゆきずりの*旅
 年末の夜、冬の稲妻が走った次の日の東京は晴天だった。
 その日、僕は実家のある九州の佐賀に帰った。
 
 最近はしばしば東京と佐賀を行き来しているが、いつも列車だ。東京から博多まで新幹線。そこから、鹿児島本線で、鳥栖を経て、佐世保線で佐賀、肥前山口方面へ向かう。
 海外への渡航以外は、どんなに遠くだろうと大概が列車だ。北海道へも列車で行った。列車が好きなのだが、バスや船もいい。

 北海道へは、青函連絡船に乗って渡ったこともあったが、青函トンネルができて直接青森と函館は結びついた。
 JRも味なことをやるなあと思ったのは、津軽海峡の海底に駅を造り、そこで下車してもいいようにしたことだ。海底に住んでいる人がいるわけでもなく、そこに町があるわけでもないのだから、用事がある人などいないはずだ。だが、この試みは遊び心があって面白い。
 海底駅はすべての列車が停まるわけではない。特急など素通りする列車がほとんどだが、僕は、喜んで停まる列車に乗って、海底の駅で降りてみた。
 そこは、地下の坑道のようであった。そして、映画によく出てくる地底都市を思った。
 北海道へは、東京から船で行ったこともある。東京湾からカーフェリーで釧路へ行き、そこから道内を車で一周して、帰りは苫小牧から茨城の大洗に戻った。
 
 九州へ帰るとき、まっすぐに東海道新幹線を使うばかりではなく、京都から福知山線を経て山陰本線で西へ向かったこともあった。その場合は、松江や山口、萩に寄った。
 かつては夜行寝台列車(ナイト・トレイン)があり、時々それに乗って行ったが、今はない。寝台列車は、帰省というより旅という感じがした。

 九州へ、船で行ったこともある。
 東京湾から四国の徳島に寄り、門司へ行く船だった。船は、東京湾を夜11時ごろ出発する。夜の船着場は寂寥感が漂っていて、どこの街でもそうだが哀愁を感じさせる。
 船内で眠ったら、翌日徳島に着く。そこで一時停泊して、瀬戸内海を通って門司へ着くのだ。
 船の旅は、独特の雰囲気がある。みんなが無口だが、目に見えない連帯感が覆っている。ここでは、険悪そうな人相の人も穏やかに変貌しているように見える。そして、みんなが遠くを見ているような目になる。

 深夜バスも体験した。
 新宿を夜に出発して、早朝福岡に着く。バスはしんどいかと思ったが、思いのほか快適で、夜はバスのなかでDVD(ビデオ)による映画も上映して退屈しなかった。軽く一眠りしたら、もう九州だった。
 
 今の列車は速い。東京・博多間を新幹線特急「のぞみ」で約5時間で行く。速くなるのは歓迎だが、旅の楽しみは奪われる。列車が好きだと言っても、リニアモーターカーのようなスピードを欲してはいないのだ。速いだけだったら、飛行機で十分だと思う。
 列車には、速度以外の愉悦感がある。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする