2023(令和5)年1月15日で、新型コロナウイルスが日本で確認されて、いつの間にか3年がたった。
人生にはいろいろなことが起きるものだが、このような予期せぬ出来事であるパンデミック(世界的大流行)を経験・体験するとは思いもよらないことだった。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の風潮に呑み込まれないうちに、記憶を記録しておこうと思う。
<1> 最初の新型コロナウイルスの記憶
3年前の2020(令和2)年の1月3日、知人と川崎大師に初詣に行った。
実はその前の年末に横浜を散策して中華街で食事する予定だったのだが、知人が喉を痛めてまだ咳が治まっていないということで、日を延ばそう、年明けなら川崎大師の初詣に行こうという成りゆきだった。
まだ三が日ということで、川崎大師は参道から行列の人だった。
その仲見世には、喉飴の店が並んでいる。知人は、縁起ごとでもあり咳止めの喉飴を買った。中米旅行からの喉の炎症が長引いているという知人に、「中国(武漢)帰りでなくてよかったね」と冗談・軽口を言おうと思った。
というのは、そのつい先月の2019(令和元)年12月に、中国湖北省武漢市で「原因不明のウイルス性肺炎」の患者が出ている、というニュースを耳にしていたからだ。そのことは、毎日流されるニュースのなかの単なる気になる出来事という程度のことだった。
この3年前の、コロナという言葉がまだ一般に流布していなかった時期の、言おうとして言葉にしなかった些細な記憶が、私の新型コロナウイルスに関する最初といえる扉・出来事だった。
このときは、誰もが世界中を悩ませ苦しませる「パンデミック」(感染症の世界的大流行)になるとは思いもよらなかった。
正月の初詣は混雑していたし、マスクをしている人は誰もいなかった。
<2> 現在の新型コロナウイルス
2023年1月現在、政府の緩和策も相まって新型コロナウイルスへの不安や恐怖は薄らいでいるが、いまだマスクをつける日常は続いており、日本はオミクロン株による第8波の最中にある。
1日の感染者の数も死者の数も減っておらず、むしろ今年になって増えている。ここで、現在の新型コロナウイルスのデータを記しておこう。
〇日本国内の感染者数・死者数
国内感染者数、3174万7613人(前日比+12万3657人)、死者数、6万4296人(前日比+430人)。(2023年1月18日統計、朝日新聞)
〇世界の感染者数・死者数(累計)
感染者数、6億6753万2474人、死者数、672万6583人。(2023年1月18日統計、NHK特設サイト、ジョンズ・ホプキンス大学集計)
なお、数字は当然日々変わるし、統計のあり方により異なることがある。
<3> 2020(令和2)年、コロナの第1波到来のときの記録
2019年12月に中国武漢市において確認された新型肺炎の感染者が、翌2020年1月の中旬ごろ、武漢市で急増する。
さらに、韓国、日本、タイとアジア周辺に感染者が確認される。
・2020年1月16日、日本国内初の新型コロナウイルスの感染者を確認と厚生労働省が発表。
国内初の感染者はニュースになったが、まだ深刻に問題にすることはなかった。
・2月5日、大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスで乗客・乗員10人の感染が確認され、その対応が議論を呼ぶ。
・2月13日、神奈川県にて国内初の感染症による死者。
ヨーロッパでは、2020年1月末にフランスで最初の感染者が確認され、その後ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス等においても相次いで確認された。
1月末には、中国の累積感染者数が約1万人に膨れあがり、世界保健機関(WHO)は、1月30日に、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。
新規感染者数は、イタリアでは2月末から、フランス、ドイツ、スペインでは3月に入り感染の急拡大が始まった。イギリスではやや遅れて、3月中旬以降に急拡大した。
アメリカでは、1月中旬に初めての感染者が報告された後、3月に入り感染者が拡大し、3月下旬には累積感染者数が中国やイタリアを抜いて世界最多となった。
・3月11日、WHOが「パンデミック」(世界的流行)相当と表明した。
<4> その名は「COVID-19」
「新型コロナウイルス感染症」の正式名称は「COVID-19」。
「COVID-19」は、それ自体が正式名称であり、略称ではない。「Corona Virus Infectious Disease, emerged in 2019」に由来する命名である。
国際ウイルス分類委員会が感染症名を「COVID-19」と命名したのと同時に、WHOにより2020年2月11日に発表された。
日本において「新型コロナウイルス感染症」と呼称されているのは、「COVID-19」が正式発表される前に、日本政府が政令で定めたので、この名を通している。
<5> 第1波における日本の動き
2020年1月16日に国内初めての感染者が確認され、その後2月に入り感染者数は微増を続ける。
・2月下旬、安倍首相が、大規模イベントの2週間自粛、小中学校などについて3月2日から春休みまでの臨時休校を要請。
・2月28日、北海道(鈴木知事)が、週末の外出自粛を求める独自の緊急事態宣言。
3月10日ごろまで感染者数は全国で50人以下だったが、その後急増する。それまで中国・武漢関連の感染者が主だったのが、ヨーロッパなどからの旅行者や帰国者を通して各地に広がったとされる。
・3月24日、2020東京五輪・パラリンピックの延期決定。
・3月25日、東京都(小池知事)が、「不要不急」の外出自粛を要請。
「不要・不急」の反対語は、「必要・緊急」である。要は、大した用でないのなら外出は控えるように、ということである。
・3月29日、志村けんさん(70歳)死去。
・4月1日、安倍首相が、1世帯当たり布マスク2枚の配布を発表。
新型コロナウイルス感染者の増加にともない、国内からマスクが消えていた。中国産のマスクが販売され出したが、すぐに品切れの状態が続いた。それで、各自が手作りの独自のマスクを作るのが流行した。
そんな最中での政府の起死回生とばかりのマスク配布の発表だったが、段取りに手間どり配布が遅れ、配布が終わった6月末にはマスクが市中に出回り始めていたことや、マスクのサイズがやや小さかったこと、マスク契約額が総額260億円にのぼっていることなど、世間からは不評でアベノマススと揶揄された。
(写真は政府より送付されたマスク。「3つの密を避けましょう!」と見出しにある)
※当時、新型コロナウイルスへの対策として提唱された、避ける「3密」とは、「密閉」「密集」「密接」を指す。つまり、「換気の悪い密閉空間」、「多数が集まる密集場所」、「間近で会話や発声をする密接場面」のことである。
・4月7日、首都圏など7都府県を対象に、「緊急事態宣言」(1回目)を発出。
・4月17日、「緊急事態宣言」の対象区域を全国に拡大。
・安倍首相が、減収世帯向けの30万円給付を変更し、国民への一律10万円給付を発表。
3月下旬から4月にかけて感染者数は急増したが、緊急事態宣言発出以降、漸次減少傾向に入った。
・5月14日、39県で緊急事態宣言を解除。
・5月25日、全域での緊急事態宣言を解除。
2020年6月、新型コロナウイルス第1波は収束に入った。
<6> 新型コロナウイルス発生の黎明期は、知識の宝庫か洪水か?
新型肺炎である新型コロナウイルスが日本で確認されてから、コロナウイルスに対する情報、感染対策が専門家により、連日、テレビ、新聞などで解説・報道された。
コロナの実態、感染経路、感染者の症状、感染を防ぐ方法など、実に多くの情報が出回り、過剰なまでに私たちは知識を得ることになった。
ウイルスは、人間の口からどのように飛び散る(拡散する)のか、低い声と大きな声ではどのくらいの違いがあるのか。
マスクはどのくらいウイルスの侵入を防げるのか、布や不織布など材質の違いによって、どのくらい防御の差があるのか、マスクはしないよりした方がましという程度の効果なのか(この実証は次第に取りあげられなくなっていった)。
部屋の窓を閉めた場合と、開けて換気をよくした場合、ウイルスの流れはどう違うのか。
これらの例が、専門家によって実験・実証され、テレビなどで私たちの前に次々と提示された。
しかし、結局のところ、根本的なコロナウイルス対策は、ワクチンの作成を待つしかなく(それは置いといて)、マスクをつける、手を洗う、うがいをする、部屋の換気をよくする、人との間に一定の距離をとる、などの基本的な普段の行いに帰着したのだった。
人生にはいろいろなことが起きるものだが、このような予期せぬ出来事であるパンデミック(世界的大流行)を経験・体験するとは思いもよらないことだった。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の風潮に呑み込まれないうちに、記憶を記録しておこうと思う。
<1> 最初の新型コロナウイルスの記憶
3年前の2020(令和2)年の1月3日、知人と川崎大師に初詣に行った。
実はその前の年末に横浜を散策して中華街で食事する予定だったのだが、知人が喉を痛めてまだ咳が治まっていないということで、日を延ばそう、年明けなら川崎大師の初詣に行こうという成りゆきだった。
まだ三が日ということで、川崎大師は参道から行列の人だった。
その仲見世には、喉飴の店が並んでいる。知人は、縁起ごとでもあり咳止めの喉飴を買った。中米旅行からの喉の炎症が長引いているという知人に、「中国(武漢)帰りでなくてよかったね」と冗談・軽口を言おうと思った。
というのは、そのつい先月の2019(令和元)年12月に、中国湖北省武漢市で「原因不明のウイルス性肺炎」の患者が出ている、というニュースを耳にしていたからだ。そのことは、毎日流されるニュースのなかの単なる気になる出来事という程度のことだった。
この3年前の、コロナという言葉がまだ一般に流布していなかった時期の、言おうとして言葉にしなかった些細な記憶が、私の新型コロナウイルスに関する最初といえる扉・出来事だった。
このときは、誰もが世界中を悩ませ苦しませる「パンデミック」(感染症の世界的大流行)になるとは思いもよらなかった。
正月の初詣は混雑していたし、マスクをしている人は誰もいなかった。
<2> 現在の新型コロナウイルス
2023年1月現在、政府の緩和策も相まって新型コロナウイルスへの不安や恐怖は薄らいでいるが、いまだマスクをつける日常は続いており、日本はオミクロン株による第8波の最中にある。
1日の感染者の数も死者の数も減っておらず、むしろ今年になって増えている。ここで、現在の新型コロナウイルスのデータを記しておこう。
〇日本国内の感染者数・死者数
国内感染者数、3174万7613人(前日比+12万3657人)、死者数、6万4296人(前日比+430人)。(2023年1月18日統計、朝日新聞)
〇世界の感染者数・死者数(累計)
感染者数、6億6753万2474人、死者数、672万6583人。(2023年1月18日統計、NHK特設サイト、ジョンズ・ホプキンス大学集計)
なお、数字は当然日々変わるし、統計のあり方により異なることがある。
<3> 2020(令和2)年、コロナの第1波到来のときの記録
2019年12月に中国武漢市において確認された新型肺炎の感染者が、翌2020年1月の中旬ごろ、武漢市で急増する。
さらに、韓国、日本、タイとアジア周辺に感染者が確認される。
・2020年1月16日、日本国内初の新型コロナウイルスの感染者を確認と厚生労働省が発表。
国内初の感染者はニュースになったが、まだ深刻に問題にすることはなかった。
・2月5日、大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスで乗客・乗員10人の感染が確認され、その対応が議論を呼ぶ。
・2月13日、神奈川県にて国内初の感染症による死者。
ヨーロッパでは、2020年1月末にフランスで最初の感染者が確認され、その後ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス等においても相次いで確認された。
1月末には、中国の累積感染者数が約1万人に膨れあがり、世界保健機関(WHO)は、1月30日に、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。
新規感染者数は、イタリアでは2月末から、フランス、ドイツ、スペインでは3月に入り感染の急拡大が始まった。イギリスではやや遅れて、3月中旬以降に急拡大した。
アメリカでは、1月中旬に初めての感染者が報告された後、3月に入り感染者が拡大し、3月下旬には累積感染者数が中国やイタリアを抜いて世界最多となった。
・3月11日、WHOが「パンデミック」(世界的流行)相当と表明した。
<4> その名は「COVID-19」
「新型コロナウイルス感染症」の正式名称は「COVID-19」。
「COVID-19」は、それ自体が正式名称であり、略称ではない。「Corona Virus Infectious Disease, emerged in 2019」に由来する命名である。
国際ウイルス分類委員会が感染症名を「COVID-19」と命名したのと同時に、WHOにより2020年2月11日に発表された。
日本において「新型コロナウイルス感染症」と呼称されているのは、「COVID-19」が正式発表される前に、日本政府が政令で定めたので、この名を通している。
<5> 第1波における日本の動き
2020年1月16日に国内初めての感染者が確認され、その後2月に入り感染者数は微増を続ける。
・2月下旬、安倍首相が、大規模イベントの2週間自粛、小中学校などについて3月2日から春休みまでの臨時休校を要請。
・2月28日、北海道(鈴木知事)が、週末の外出自粛を求める独自の緊急事態宣言。
3月10日ごろまで感染者数は全国で50人以下だったが、その後急増する。それまで中国・武漢関連の感染者が主だったのが、ヨーロッパなどからの旅行者や帰国者を通して各地に広がったとされる。
・3月24日、2020東京五輪・パラリンピックの延期決定。
・3月25日、東京都(小池知事)が、「不要不急」の外出自粛を要請。
「不要・不急」の反対語は、「必要・緊急」である。要は、大した用でないのなら外出は控えるように、ということである。
・3月29日、志村けんさん(70歳)死去。
・4月1日、安倍首相が、1世帯当たり布マスク2枚の配布を発表。
新型コロナウイルス感染者の増加にともない、国内からマスクが消えていた。中国産のマスクが販売され出したが、すぐに品切れの状態が続いた。それで、各自が手作りの独自のマスクを作るのが流行した。
そんな最中での政府の起死回生とばかりのマスク配布の発表だったが、段取りに手間どり配布が遅れ、配布が終わった6月末にはマスクが市中に出回り始めていたことや、マスクのサイズがやや小さかったこと、マスク契約額が総額260億円にのぼっていることなど、世間からは不評でアベノマススと揶揄された。
(写真は政府より送付されたマスク。「3つの密を避けましょう!」と見出しにある)
※当時、新型コロナウイルスへの対策として提唱された、避ける「3密」とは、「密閉」「密集」「密接」を指す。つまり、「換気の悪い密閉空間」、「多数が集まる密集場所」、「間近で会話や発声をする密接場面」のことである。
・4月7日、首都圏など7都府県を対象に、「緊急事態宣言」(1回目)を発出。
・4月17日、「緊急事態宣言」の対象区域を全国に拡大。
・安倍首相が、減収世帯向けの30万円給付を変更し、国民への一律10万円給付を発表。
3月下旬から4月にかけて感染者数は急増したが、緊急事態宣言発出以降、漸次減少傾向に入った。
・5月14日、39県で緊急事態宣言を解除。
・5月25日、全域での緊急事態宣言を解除。
2020年6月、新型コロナウイルス第1波は収束に入った。
<6> 新型コロナウイルス発生の黎明期は、知識の宝庫か洪水か?
新型肺炎である新型コロナウイルスが日本で確認されてから、コロナウイルスに対する情報、感染対策が専門家により、連日、テレビ、新聞などで解説・報道された。
コロナの実態、感染経路、感染者の症状、感染を防ぐ方法など、実に多くの情報が出回り、過剰なまでに私たちは知識を得ることになった。
ウイルスは、人間の口からどのように飛び散る(拡散する)のか、低い声と大きな声ではどのくらいの違いがあるのか。
マスクはどのくらいウイルスの侵入を防げるのか、布や不織布など材質の違いによって、どのくらい防御の差があるのか、マスクはしないよりした方がましという程度の効果なのか(この実証は次第に取りあげられなくなっていった)。
部屋の窓を閉めた場合と、開けて換気をよくした場合、ウイルスの流れはどう違うのか。
これらの例が、専門家によって実験・実証され、テレビなどで私たちの前に次々と提示された。
しかし、結局のところ、根本的なコロナウイルス対策は、ワクチンの作成を待つしかなく(それは置いといて)、マスクをつける、手を洗う、うがいをする、部屋の換気をよくする、人との間に一定の距離をとる、などの基本的な普段の行いに帰着したのだった。