栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第65回宝塚記念回顧~エピファのステイヤー、雨の京都を下る

2024-06-24 15:13:03 | 血統予想

京都11R宝塚記念
◎2.ジャスティンパレス
○12.ブローザホーン
▲9.ソールオリエンス
△10.ローシャムパーク
△13.ルージュエヴァイユ
×5.ディープボンド
×7.プラダリア
京都は土曜メインの頃にはもう降り出していたが、これから日曜朝までかなりの雨量で、しかもメインまで降りつづくという予報どおりだと、しっかり重馬場は避けられない状況だろう。京都Dコースはインが荒れてきて、みんなそこを避けて走っているし内回りも外回りも外伸び優勢。このバイアスが道悪になってどうなるかだが、今降っていて滑る馬場だと、むしろ芝のないところのほうが走りやすいかもしれない。
ドウデュースは道悪が大きな割り引きとは思わないが、ピッチで一気に爆発して決めてしまうのが勝ちパターンだから、大回りのタフな馬場でダラダラ流れるレースで本領を発揮できるかどうか。いつでもどこでも同じぐらい強い馬なんていないのだから、ここはドウデュースを買うレースではないということで潔く無印でいってみる。
ジャスティンパレスはヌレイエフ的なナタのストライドでズドーンズドーンと走るので、春秋の天皇賞を見てのとおり大箱がベターには違いない。陣営は馬場が悪すぎるとどうかというニュアンスだが、ヌレイエフだからこなすし我慢するとみた。ディープボンドは京都の下りが上手いのでここもロンスパでくるだろうが、ルメールは好位につけてそれに呼応するスパートでくるはず。
ブローザホーンは生粋のステイヤーなので良の2200では根本的にスピードが足りないが、重馬場で前半ゆっくり入っての後半ロンスパならばTT質でも対応できる。京都外は競走中止を除けば[2-1-0-0]で、エピファ産駒らしく下るのも上手い。
ソールオリエンスは重の皐月賞を大外一気で勝ったが、キャラとしてはストライド系で、大阪杯も中山記念も有馬も内回りで差しにくそうに見える。雨の京都外2200で、ここでいいところがないようでは成長に疑問符を付けざるをえないが、血統的にはむしろ古馬になってからの馬だ。
ルージュエヴァイユは胴も脚も長いジャスタウェイ産駒で器用さは全くないが、コーナリングが悪いからこそ大阪杯もエリ女もコーナー加速できないまま最内を突いて持続力と底力で伸びてきた。雨でもう内も外も同じというバイアスならば、ここもみんなが外に膨れるところをショートカットする手はある。
ベラジオオペラは道悪実績はあるが、アイドリームドアドリーム牝系だから内回りの中距離が鬼で、京都外で長く脚を使うレースではローシャムパークやプラダリアのほうが先着するだろうという読みで。

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例によってNETKEIBAの全頭血統解説から1~3着を

ブローザホーン
デザートスネークの甥で、母オートクレールはJRA4勝(芝ダ1200~1600)。ダイヤモンドS2着ジョーヤマトも近親。母父デュランダルはマイルCSやスプリンターズSの勝ち馬。牝系はスタミナ十分で、母父にスピードが入ってエピファネイア産駒としてもバランスの良い配合になった。2400以上[4-1-1-1]、前走時424キロの小柄なステイヤー。前駆がいい走りのエピファ産駒だから、実績どおり京都外回りも合う。時計や上がりが速いと苦しいので渋ってスローなら。(距離○スピード○底力◎コース◎)



ソールオリエンス
ヴァンドギャルドの3/4同血の弟で、母スキアはフィユドレール賞(仏G3・芝2100m)勝ち馬。英オークス馬Loveも同牝系。母父Motivatorは英ダービー馬でタイトルホルダーの母父でもある。父キタサンブラックは年度代表馬で本馬やイクイノックスを出し成功。重厚で奥深い中距離血統で、クラシック三冠[1-1-1-0]と活躍したが、古馬になっての成長も見込めるはず。未だにコーナリングはイマイチなので、京都外2200で一雨あれば差しやすい状況に。(距離◎スピード○底力◎コース○)



ベラジオオペラ
エアアンセムやサトノヘリオスの甥。牝祖エアデジャヴーはオークス2着で、エアメサイアやエアシェイディの母でエアスピネルやエアウィンザーの母母。父ロードカナロアは世界の短距離王だが、中距離型の繁殖との間にアーモンドアイやパンサラッサなど中距離チャンピオンを出している。本馬も母父ハービンジャーが強い中距離馬で、この牝系らしく機動力に富み重賞勝ちは全て内回り。カナロア産駒だからスピードはここでも上位で、また前残りを目論む。(距離○スピード◎底力◎コース○)



前夜から降りつづいて馬場状態は終日重、京都芝Dコースは連続開催で見た目にインが荒れていて、その荒れたところをみんな避けて走っていて、宝塚においても3~4角であえてインを狙ったカラテ、ヒートオンビート、シュトルーヴェは枕を並べて大敗

典型的な逃げ馬が不在で、ディープボンドかベラジオオペラが逃げるのかと思いきや、川田ルージュエヴァイユが果敢にハナを奪うと12秒台後半にペースダウンし、前後半のラップは61.0-12.9-58.1、ゆっくり入って坂の下りから速くなる後半4Fロンスパに

上の解説でも書いたとおり、428キロのステイヤーのブローザホーンにとって中距離のスピードを要求されるレースになると苦しく、NETKEIBAのMahmoudさんとの対談でも「雨が降ってなおかつ前半スローならば、ステイヤーのブローザホーンにも好走の目が出てくる」と言っていたんですが、まさにそのゾーンのレースになりました

エピファ産駒らしい前駆のいいフォームで京都外を下るのはお手のもの、4角~直線で惰性で勢いがついて、斜めに外に出しながら伸びてくるときの脚は人馬一体で、いつかG1を勝つだろうとは思っていましたが菅原くんおめでとう

「弱い4歳世代」最大の戦犯のように言われていたソールオリエンスですが、あの重馬場の皐月賞を大外一気で勝ってしまったのがね、あれはたとえばテイエムオペラオーの皐月賞の勝ち方なんかと似ていて、中山内回りをコーナリング能力で勝ったレースでは全くなかったわけで、そもそも京成杯で思いっきり膨れてた馬ですからね(^ ^;)

ベラジオオペラとは勝ったり負けたりで何度も鎬を削ってきてまさに同期のライバルですが、けっきょくのところ大箱(宝塚とダービー)ではソールがベラジオに先着しているわけで、ストライドで差すタイプだし、内回りでコーナーで脚を使うよりは外回りで構えて差したほうが味がある馬なんじゃないかと

だから内回りの大阪杯と中山記念と有馬記念で差しにくかったのを「ベラジオオペラに比べると成長していない」と言われてしまうのはちょっとかわいそうやなと、キタサンブラック×Motivatorが成長しないわけがないのでね

ドウデュースについては未だにマイラーなのか中距離馬なのかという議論が持ち上がるわけですが、Mahmoudさんとの対談でもあれこれ語ったように、マイラー質の凄い爆発力を中距離で発揮できる稀有な存在で、そういう馬に友道メソッドでつくりあげられてきたというイメージです

ようは前半はタメるだけタメて、どの区間で爆発させるか、それが中山阪神の内回りだと一気の捲りという形になるわけで、京都外回りならばダービーのように直線爆発の絵でユタカは乗ってたんじゃないかと思います

いずれにしてもハマッたときの爆発力は現役ナンバーワンなのですが、そのゾーンがあまり広くないというね、それが通算[6-1-1-5]という競走成績にも現れているかと

今日ゾーンにハマらなかったのは、川田がスローで逃げたのでうなってしまったこと、うなったところで落ち着かせようとしたが外に菅原・戸崎・武史がいて、周りに馬がいる形でなだめることができなかったこと(ダービーで途中ポツンと1頭になったシーンを思い出します)、なだめているうちに外に出すタイミングを逸し内に行くしかなかったことで、馬群の中でうなってしまうと点火しないのはドバイや秋天と同じでした

パドックを見て「最も良く見えるのは+12キロのベラジオオペラで、次がジャスティンパレス」とコメントしておきましたが、ベラジオは大阪杯より更に筋肉の張りが目立ちまさに充実期、同じような条件下だった京都記念で負けたプラダリアに競り勝ったわけで、この数ヶ月間でもたしかに成長していると思わせるし、阪神内2200ならこの馬が勝ってたかもしれないですね

ジャスティンパレスはフォトパでは余裕残しに見えたんですが、当日のパドックの雰囲気はよかったと思うし、こんなに動けないとはさすがに驚きで、思った以上に道悪が苦手だったのか…と言うしかないですね

ブローザホーンはMixed Marriageと同じPersian Maidに辿り着く牝系で、そこにAssertのスタミナが入ったこのアサーティンの枝からはダイヤモンドS2着ジョーヤマトなどが出ており、重厚なスタミナ牝系のエピファネイア産駒となると重々しすぎるぐらいですが、母オートクレールはデュランダル×フォーティナイナーで1200~1600で4勝をあげたマイラーでした

中距離馬やステイヤーにもスピードが必要なのは言うまでもないことで、特にエピファネイアのような2400超で強かった種牡馬こそ、デアリングハートやケイティーズファーストといったマイラー質の血を「1/4マイラー」の形で取り込んだり、トップデサイル(BCJフィリーズ2着)やオートクレールのようなマイラー質の繁殖と配合しなければならない

いっぽうベラジオオペラの父、世界の短距離王ロードカナロアはというと、代表産駒の母父はMontjeuにスペシャルウィークにハービンジャーで、女傑アーモンドアイの母はエリザベス女王杯のフサイチパンドラ

ロードカナロア×サクラバクシンオーが短距離で大成功しているという事実もあるのですが、エピファネイアにマイラーのスピードを入れ、ロードカナロアに中距離のスタミナを入れる、シンプルでオーソドックスな考え方こそが配合論のイロハのイなのです

コメント (7)
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