栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第74回安田記念回顧~今日も僅差の完勝、香港チャンピオンの凄み

2024-06-03 12:10:23 | 血統予想

東京11R安田記念
◎14.コレペティトール
○7.ロマンチックウォリアー
▲2.ガイアフォース
△5.ナミュール
△10.ソウルラッシュ
×4.ジオグリフ
×9.パラレルヴィジョン
×13.ステラヴェローチェ
×15.ヴォイッジバブル
×17.セリフォス
最近の短距離~マイルのG1予想は層の薄さやレベルの低さを嘆いてばかりで、3月の高松宮は香港のビクターザウィナーに◎を打った。ここもグランアレグリアやソングライン級のチャンピオンマイラーは不在。土曜夜から雨予報で1分34秒ぐらいの決着になるともう何が勝っても驚けない状況だ。
しかしその場合、ロマンチックウォリアーは東京マイルの高速戦でビュンと速い脚を使うタイプには見えないが、馬場が渋れば底力とパワーと粘着力はワールドクラスだから、好位抜け出しの横綱相撲で1人気に応えてしまうかもしれない。
ソウルラッシュも馬場が渋って時計がかかるのはプラスだが、これがモレイラで現在2番人気。馬券的な狙いとなると、重で勝ち時計1分34秒想定ならばコレペティトールでいってみたい。
道悪の安田記念となると2014年までさかのぼらなければならないが、このときグランプリボスをねじ伏せて勝ったのがドバイ帰りのジャスタウェイ。コレペティトールの3/4同血の兄にはキングオブドラゴン(父ハーツクライ)がおり、またその3つ上の兄アメリカズカップ(父マンハッタンカフェ)は重のきさらぎ賞に勝つなど道悪の鬼として鳴らした。ジャスタ牡駒らしく古馬になって体重が増えて本格化してきたが、マイラーズCも京都金杯もほぼ同じ時計で走破しているように、ピュアマイラーではなく1800型だから1600で時計勝負になると苦しい。重まで悪化するようなら岩田父の一発に期待。

----------

例によってNETKEIBAの全頭血統解説より導入文と1~3着を

連対馬4角順位平均7.7、差し優勢の東京マイル戦
Sキャットなどナスキロ差し重視、前残りならヌレサド
23年と22年の勝ち馬ソングラインはキズナ×シンボリクリスエス、21年ダノンキングリーはディープインパクト×Storm Cat、20年グランアレグリアはディープインパクト×Tapit、18年モズアスコットはMiswaki4×3で母父Storm Cat系。そもそも安田記念は差し優勢なレースだが(過去5年の連対馬の4角順位は平均7.7)、ディープインパクトやStorm CatやSeattle Slew経由のナスキロ血脈が生むストライドが長い直線で爆発するレースともいえる。いっぽう4角5番手以内で馬券に絡んだ馬は、セリフォス、シュネルマイスター、インディチャンプ、アエロリットと、いずれもNureyev≒Sadler's Wellsの血を引いており、先行型ならヌレサドを重視する手か。

ロマンチックウォリアー
母母Folk OperaはEPテイラーS(米G1・芝10F)勝ち馬。母父Street Cryはストリートセンスやニューイヤーズデイの父。父AcclamationはDark Angel(マッドクールの父)の父として知られるNorthern Dancer傍系。母方の影響が強い香港の中距離チャンピオンで、母がHalo4×4なので機動力と粘着力に富む。父系は短距離だしマイルでゴールデンシックスティの2着があるが、東京高速マイルをストライドでビュンと差すイメージではないかも。(距離◎スピード○底力◎コース○)



ナミュール
ラヴェルやアルセナールの半姉で、マルシュロレーヌやバーデンヴァイラーの姪。母サンブルエミューズはフェアリーS3着。3代母キョウエイマーチは桜花賞馬。そこにハービンジャーで「重厚で緩い中距離馬×フィジカルなマイラー」の配合が絶妙にハマった感がある。長い直線での爆発力は最右翼で、距離的には1800がベストだろう。ヴィクトリアマイルは不甲斐ない内容だったが、マイルCSのように中盤緩んで脚をタメられればまた豪脚炸裂。(距離○スピード◎底力◎コース◎)



ソウルラッシュ
ディオの3/4兄で、ヒラボクディープの甥で、ヘネシー、Editor's Note、カフェブリッツなども同牝系。ルーラーシップ×マンハッタンカフェ×Storm Catまでアディラートと同じで、Storm Catのマイラーっぽさが強いところも似ている。マイルに転じてからは[6-2-1-4]で着外はいずれもG1。今でもマイラーというよりは1800寄りに見えるのだが、マイルの前傾ラップにも高速決着にも対応するし地力がある。モレイラなら圏内必至。(距離○スピード○底力◎コース◎)



今年の安田記念は、香港から2頭襲来、土曜夜からの雨予報、展開的にはウインカーネリアンとドープネどちらがハナでどんなペースを刻むか、このあたりがひとまずポイントやったと思います

ウインカーネリアンは2年連続で46-46ぐらいのペースで逃げて東京新聞杯を好走していて、これがハナならここも平均ペースが想定されましたが、三浦皇成は番手でジックリ運ぶ選択をしたので、前後半46.4-45.9とやや後傾に

特に中盤が11.9-12.0と緩んで、上がり3Fが11.3-11.2-11.4ですから1800質の安田記念、終わってみれば香港の中距離チャンピオンが格の違いをみせつける完勝で、マイルCSのように脚をタメられたナミュールが同じぐらいの豪脚で追い込んで、ソウルラッシュにわずかに先着したのもマイルCSと同じ

ソウルラッシュはロマンチックを前に見る狙いどおりのポジション、4角もきれいに捌いてあとは外から差すだけやったんですが、やっぱりルーラーシップ産駒らしいというか、マイルG1を勝ちきるにはマイラーとしての爆発力が超一流ではないというね、そういういつもの惜敗やったかなと思います(まあそれは他の日本馬にもいえることですが)

ガイアフォースはこの時期は歩きにあまり硬さがなくて夏仕様=芝仕様、とはいえパワーごり押しタイプには違いないので、こちらはもう少し流れてくれたほうが持ち味は活きたかと

セリフォスは枠が外すぎるかと思ったんですが川田は後方で巧く折り合いをつけ、直線は外からビュンときたんですが最後は同じ脚色で、馬場が渋るとなかなかソウルラッシュに先着できないですね

コレペティトールは荒れ馬場の京都金杯を1.33.8で走破してイン差し、稍重で1分32秒台の決着ではマイラーズCと同じで手も足も出ないという内容でした

「日本の芝一流馬にはあんまりいないタイプ。たしかにゴツいが、見せる筋肉じゃなくて実戦で鍛え上げられた体幹やインナーマッスルがすごい感じ。ケンカの強い土木作業員のオッサンみたい」

ロマンチックウォリアーのパドックを見てこう記しておいたんですが、タロイモばかり食ってるのにナチュラルに強いサモア人のようなイメージ、と言ってもいいかな

実戦と調教によって身につけてきた必要十分な筋肉、ブレのない安定感抜群のフォーム、ノリのステラヴェローチェが懸命にブロックしてもびくともせず鼻歌交じりで押し返したあの体幹力、名手マクドナルドを背にした叩き上げのチャンピオンは全くもって隙がなかった

母がStreet CryとSingspielを通じるHalo4×4ですから、サンデーサイレンス系のしなやかさとはまた違って、強靭なHalo、強靭な機動力という感じで、4輪駆動だし決してチャキチャキのマイラーには見えないんですが、このペースなら楽に追走できて強靭さでねじ伏せられる

今日も着差以上の完勝で、いつもちょっとしか勝たない馬ですが、SingspielのJCなんかもこんな勝ち方でしたよね

父AcclamationはダイアデムS(英G2・芝6F)に勝った傍系Northern Dancer系で、そこにMachiavellianを通じてHaloのスピードを取り込んだのは、種牡馬として成功しているDark AngelやMehmasと同じ図式で、高松宮のマッドクールにつづくAcclamation父系の勝利でもありました



「血統表を見れば見るほど、ロマンティックウォリアーは素晴らしい種馬になっただろうと思わされるが、でもタマがないからこんな強靭なチャンピオンに完成したのかもしれないし…」溜息混じりにそう言う関係者は多いです

ナミュール、ソウルラッシュ、セリフォスはだいたいいつもこんな接戦ですが、この3頭が香港マイルでゴールデンシックスティに完敗しヴォイッジバブルにも先着を許したのを目の当たりにすれば、ロマンチックはマイルでもゴールデンシックスティに1馬身しか負けてないですからね、こやつらが相手なら安田記念は美味しいレースや

その思惑どおりに完勝されてしまうとは、香港は仕入れがほぼ豪州ですから短距離で及ばないのはまあ仕方ないし、逆に中距離で優勢なのも当然やと思いますが、その中間のマイルはね…もうちょっと頑張ってほしいなと

グランアレグリアやソングラインならばロマンティックをビュンと差し切ったかと思うし、それぐらいのマイルチャンピオンが毎年出てほしいと願いますが、チャンピオンの凄みを目の当たりにできたのはよかったです

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする