栗山求/望田潤監修「パーフェクト種牡馬辞典2024-2025」

第81回桜花賞回顧~蜜月の正攻法、クロフネ娘の先行で

2021-04-12 11:17:04 | 血統予想

阪神11R 桜花賞
◎8.メイケイエール
○5.アカイトリノムスメ
▲18.サトノレイナス
△4.ソダシ
△13.エリザベスタワー
×2.ファインルージュ
×11.ジネストラ
アカイトリノムスメは兄たち以上に母アパパネ似で、俊敏自在でセンス抜群でしかも追って斬れる。とはいえ、クイーンも赤松もバキューンと爆発してアッサリ決めてしまったというほどの華麗な勝ち方ではなかった。好走の可能性が一番高いのはこれだと思うが、何でもできる馬だけに色気満々の武史が途中で動かしすぎてしまうような気もする。桜花賞は思い切って行くか直線まで我慢して追い込むか、どっちかにメリハリつけたほうが勝ちやすいレースだ。
サトノレイナスとエリザベスタワーは母方が奥行きのある中距離血統で、これからまだまだよくなる雰囲気があるが、マイラーではなく中距離馬だから、今の高速馬場で前半も後半も速いラップになって中距離馬の斬れで全部差せるかどうか。ソダシは完成度が高く乗りやすいし勝負強い。白くて操縦性の高いアエロリットというイメージだが、操縦性が高くて好位でふつうに乗れることが、好位でふつうに乗って勝ってきたことが吉田隼人としては意外に難しいのでは。
阪神JFで◎にしたときからずっと同じことを書いているが、今年の牝馬路線で“ハッとする脚”を見せて華麗に勝ったのはファンタジーのメイケイエールだけだ。JFも例によって行きたがってしまったが、それでも残り400~200のみんながスピードに乗るところで最も加速していたのはこの馬。今はもうゴールドシップで大向こうをうならせた頃のノリではないが、ケンカせずにハナに立ってしまえばあとは抜いて走れるし、桜花賞史上最速の馬場を46秒-46秒で走破できればレースレコードだ。
3歳春の牝馬が外マイルで天賦の才を爆発させて勝つのが桜花賞なのだから、体質や可動やしなりやバネやアクションや加速が一頭だけ違うメイケイに◎。他に考えることなんかないと思います。美しく勝つだろうし美しく負けるだろうと思います。

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例によってNETKEIBAの前走血統解説より1~3着馬を

ソダシ
ユキチャンの姪で、ハヤヤッコのイトコで、メイケイエールも近親。ちなみにハヤヤッコはキングカメハメハ×クロフネ×シラユキヒメで、本馬はクロフネ×キングカメハメハ×シラユキヒメ。白毛とダート上級が出ることで有名な一族だが、本馬はNureyevやHalo≒Droneのニアリークロスで芝もOK。マイラーというよりは1800タイプに見えるが、完成度が高くパワー十分で勝負強い。操縦性の高いアエロリットというイメージ。ここも好位差しで主導権を。(距離○スピード○底力◎コース◎)



サトノレイナス
サトノフラッグの全妹で、ダンサールの3/4妹で、亜2000ギニー馬Le Bluesの姪。母バラダセールは亜オークス(亜G1・ダ2000m)や亜1000ギニー(亜G1・ダ1600m)に勝った。母系に重厚なスタミナ血脈が強く、ディープ牝駒らしいしなやかな斬に加えて地力や持続力も感じさせる。兄と似たタイプの奥深い中距離馬で、マイル戦ではうなりながらの追走というほどではないから、JFより緩みないペースで流れたときにひと脚使えるかがポイントに。(距離○スピード○底力◎コース◎)



ファインルージュ
レンプランサやエストの下で、ザラストロの姪で、メイショウチタンのイトコ。母パシオンルージュはJRA3勝(1000~1200m)。牝祖ココパシオンはシェーヌ賞(仏G3・芝1600m)勝ち馬でココナッツパンチの母。母父ボストンハーバーはクロコスミア、ベルカント、ラプタス、イベリスなどの母父。フェアリーSでHペースを中団からアッサリ差し切りは評価できるが、キズナ×ボストンハーバーだからG1で大駆けというタイプではないかも。(距離◎スピード◎底力○コース○)



「46秒-46秒で走破できればレースレコード」と書きましたが、桜花賞史上最速馬場で行われた今年は前後半45.2-45.9、1.31.1はもちろんコースレコード

それを3番手から直線先頭に立って押し切ったソダシで45.7-45.4ぐらいで、決してHペースというか前傾ラップではなく、ソダシにしてもスタート直後はうなってて吉田隼人がなだめていたほどでとにかく馬場が速い

カレンチャンの高松宮の通過順が2-2、スプリンターズが6-6、スリープレスナイトのスプリンターズが5-4、アエロリットのNHKマイルが2-2、ホエールキャプチャのヴィクトリアマイルが3-3、フサイチリシャールの朝日杯が2-2-2、クラリティスカイのNHKマイルが5-5、ホワイトフーガのJBCレディースが4-3-3-1

クロフネ産駒は基本的にはパワーで押してナンボで、こうしてみるとG1勝ちは全部マイル以下で、ほとんどが先行押し切りで、そして牝馬に偏ってます

ソダシは解説で書いたようにハヤヤッコと血脈構成がほとんど同じで、母系にNureyevが入るのはアエロリットと同じで、まあアエロリットほどNureyevが強く表現されてはいないですが脚質としては似ているというか、白くて操縦性と完成度が高いアエロリットというイメージですかね

毎年桜の季節になるとパンツとアンカツの話をするんですが、アンカツさんが外回り桜花賞マスターといわれるほどの良績を残したのは、決して牝馬が上手やからではないと思うんですよね

繊細な牝馬を繊細に乗ることが得手ではないからこそ、ゴリゴリ先行するか後ろからバキューンと差すか、天賦の才を外マイルでいかに爆発させるかというレースなのだから、その二択で乗るしかないんやで…という胆力と開き直りなんですよねたぶん



デアリングタクト(13-12)とレシステンシア(2-2)、グランアレグリア(3-1)とシゲルピンクダイヤ(15-12)、アーモンドアイ(15-16)とラッキーライラック(3-3)、そして今年がソダシ(3-3)とサトノレイナス(15-16)

外回り桜花賞はだいたいこういう二択で決まるもので、桜花賞を勝つような天賦の才は一筆書きで爆発させるべきで、小出しに使ってはいけないのだ…というのが名人の教えなのだろうと

ソダシは操縦性が高くてレースが巧すぎるので、JFみたいに好位差しで手堅く乗ったら、ノリが離して逃げてルメールや川田が後ろで決め打ったら、離れた4~5番手でレースが一番難しいのは吉田隼人ではないか…と私は思ってました

だから好発から迷わず3番手、アエロリットのように正攻法で押し切ろうとしたのがまず素晴らしいし、デビュー戦からずっとコンビを組んできた吉田隼人だからこそ、大一番のここで正攻法で乗れたのでしょう

土曜の阪神牝馬は47.1-44.9の超スローになり、中距離馬のデゼルが中距離馬の追走で上がり32.5でナデ斬りましたが、Darshaanのフレンチな牝馬の斬れでスローを差し切るのはシゲルピンクダイヤ的でデンコウアンジュ的といえます

サトノフラッグの全妹でディープの中距離馬のサトノレイナスが桜花賞で好走するには、いかにこのデゼル的なフォーマットに落とし込むかだろうと思っていて、そこはさすがルメール、4角16番手から唯一上がり32秒台の末脚で追い込んでもう少しでした

桜花賞初騎乗でアカイトリノムスメが回ってきた横山武史はインタビューでも勝つ気満々で、きょうだいのなかでも最も母アパパネ似でTom Fool機動力でセンス抜群で何でもできて、しかも追ってからディープ産駒らしく斬れる才媛

だからここも好走は間違いないけれど、何でもできるアパパネの娘に、今最も馬を動かせる新進気鋭のジョッキーが勝つ気満々で乗るとなると、これはソダシを負かしにいくケイバになるだろうという読みもできました

脚を小出しに使って負かしにいってこの着差ですから力負けではなく、アンカツさんならルメールと同じポジションから2着に追い込んだかもですが、初めて乗る桜花賞で勝ちにいくと宣言して勝ちにいく武史も末恐ろしい

デビューからソダシとコンビを組みつづけてきた隼人がクロフネらしく乗り、同じくサトノレイナスとずっとコンビを組みつづけてきたルメールがディープらしく追い込んだのに対し、当日初めてメイケイエールに跨ったノリは、メイケイエールらしさとは何なのか、メイケイエールとはどんな馬なのか、そこすら手探りだったかもしれません

出遅れからハナに立つまでの大立ち回りでもう馬券は諦めてましたが(^ ^;)、いつもそうなんですがパドックでは猫のように大人しいし、調教や返し馬では何とか制御がきいてるし、レースでも暴れながら先頭に立った瞬間に嘘のように力が抜けて、惚れ惚れするほど美しいフォームになるんですよね

今日も先頭に立った直後のフォームとストライドは群を抜いて美しくて、ああもうダメやろうけど本命にしたのは間違いではなかった、いや間違いなんやろうけど、何回やっても俺はメイケイエールが◎でいいわ…と思えるような走りをね、400mぐらいは見せてくれました(^ ^;)

周りに馬がいるとパニックになって無我夢中で走ってしまうのは、エピファネイアなんかと近いAureole魂の亜種じゃないかとも考えられ、締まりの強いマイラーのミッキーアイル×緩い中距離馬のハービンジャーの組み合わせが絶妙で身のこなしや歩きは父より美しいのですが、スタートが遅いのは多分にハービンジャーの影響で、そこがまた難題すぎますね…

ソダシの配合についてはJFの回顧を参照してくださいということで、そこで書いたようにこのウェイブウインドの牝系はNureyevの血を得ることで成功してきたとも言え、ソダシの母もメイケイエールもそのパターンですよね

第72回阪神JF回顧~純白の女王、白いパンツは見えたか
https://blog.goo.ne.jp/nas-quillo/e/59fa3bc68ae39ad0a2cc9fa1c83318b3

コメント (6)
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